育種学研究
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7 巻, 4 号
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原著
  • 岩尾(虫鹿) 純子, 湯尾 崇央, 武田 真, 宮尾 安藝雄, 廣近 洋彦, 一井 眞比古
    2005 年 7 巻 4 号 p. 171-178
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/13
    ジャーナル フリー
    植物の根は,作物の栽培上大変重要な器官であるにもかかわらず,その遺伝学的研究は少ないのが現状である.本研究では,イネ内在性レトロトランスポゾンTos17の挿入変異系統群であるミュータントパネルを用いて,根の形態に関わる遺伝子の単離を目的として実験を行った.最初に,イネ品種日本晴由来のミュータントパネルのR1世代5,568系統を水耕栽培し,幼苗期に根突然変異体を分離する系統をスクリーニングした.続いて,後代検定で根突然変異系統と確認された56系統について,Tos17をプローブとするゲノミックサザン分析による表現型との連鎖解析を行った.その結果,Tos17でタグされた根突然変異系統が1系統(NC6949)獲得された.詳細な形態観察により,この突然変異体は少冠根,少側根,矮性,細葉及び不稔の表現型を示すことが明らかとなった.この突然変異系統では,第1染色体短腕上に座乗するputative alliinase遺伝子の第3エキソンにTos17が挿入されていることが明らかとなった.我々はこの遺伝子をOsAll1Oryza sativa alliinase 1)と名付けた.相補性検定により,OsAll1のゲノム配列全長を導入した形質転換イネでは,osall1突然変異体で観察されたすべての形態異常が回復したことから,これらの形態異常はOsAll1遺伝子の破壊に起因していることが示唆される.一方,イネゲノムにはOsAll1遺伝子を含め4個のalliinase様遺伝子が存在する.カルス,葉及び根におけるこれらの遺伝子の発現様式を解析した結果,これらは独自の発現様式を示すことが明らかとなった.これらの結果から,OsAll1は進化の過程で他のalliinase様遺伝子と機能的に分化したことが推察された.
  • 牛木 純, 石井 俊雄, 石川 隆二
    2005 年 7 巻 4 号 p. 179-187
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/13
    ジャーナル フリー
    水稲乾田直播栽培が行われている岡山県の11地区において発生した雑草イネ23集団について,ふ毛長,フェノール反応,塩素酸カリ抵抗性から日本型・インド型を判別した結果,8地区では日本型(14集団),1地区ではインド型(2集団),2地区では両型(日本型4集団,インド型3集団)の雑草イネが発生していた.さらに,これらの雑草イネの稈長,到穂日数,穂首抽出長,籾長幅比の4形質から,クラスター分析を行った結果,いずれかの形質に顕著な特徴をもつ9つのタイプに分けられた.日本型雑草イネの多くは,発生した圃場に作付けされていた栽培イネ(アケボノおよび雄町)に稈長,出穂日など多くの形質が似ていたが(タイプ1および3),アケボノよりも稈長が約15 cm短い集団(タイプ2)や出穂日がアケボノよりも2または3週間早い集団(タイプ5および6)なども存在した.一方,インド型の雑草イネは,発生した圃場に作付けされていた栽培イネとは形態が著しく異なり,アケボノよりも稈長が約30 cm長い集団(タイプ7),あるいは約50 cm短い集団(タイプ9)が存在した.これらの雑草イネのタイプを発生地区に対応させると,日本型雑草イネは互いに20 km以上離れた広範囲の地区に発生していたが,インド型雑草イネは半径3 km以内のごく限られた範囲の地区に発生していた.このような各タイプの地理的分布は,それぞれの遺伝的起源および生理形態的特徴から推定される生態を反映した結果であると考えられた.
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