育種学研究
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8 巻, 3 号
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原著
  • 中村 澄子, 鈴木 啓太郎, 伴 義之, 西川 恒夫, 徳永 國男, 大坪 研一
    2006 年 8 巻 3 号 p. 79-87
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/30
    ジャーナル フリー
    いもち病はイネの最も重要な病害である.近年,いもち病真性抵抗性遺伝子型を異にする複数の同質遺伝子系統を混合栽培するマルチラインの利用が試みられ,平成17年産から新潟県産コシヒカリは,「コシヒカリ新潟BL」に全面的に作付転換された.本研究では,「コシヒカリBL」と従来のコシヒカリを識別するために,RAPD法,およびSTS化RAPD法を用い,イネいもち病真性抵抗性遺伝子 PiaPiiおよびPita-2を識別するSTS化プライマー群を開発した.これらのマーカーの染色体上の座乗位置の特定ならびに同質遺伝子系統24品種,公表遺伝子型が明確な日本栽培イネ51品種を用いたPCR実験の結果から,開発したマーカーが確かに標的とするいもち病抵抗性遺伝子を識別することを確認した.また,複数のプライマーを併用することにより,1回のPCRで数種類のBLを識別する実用的なマルチプレックスPCR用プライマーミックスを開発した.本研究において開発したDNAマーカーを用いることにより,「コシヒカリ新潟BL」を他県産コシヒカリ,および日本栽培稲69品種と識別することが可能である.
  • 中澤 佳子, 生井 潔, 小島 昭夫, 小林 俊一, 田﨑 公久, 天谷 正行
    2006 年 8 巻 3 号 p. 89-98
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/30
    ジャーナル フリー
    ニラのアポミクシス(複相大胞子形成と単為発生から構成される)の遺伝様式を解明する手がかりを得るため,アポミクシス四倍体ニラ(Allium ramosum, syn. A. tuberosum 2n=32)の交雑集団において,胚珠観察法を用いて単為発生を調査した結果,10個体の非単為発生個体を選抜することができた.フローサイトメーターによる倍数性調査を行ったところ,全個体が四倍体であった.9個体の非単為発生個体については,交雑を確認するためにアポミクシス品種と交雑検定を行った.この結果,1個体(00-03-14)を除いて100%の交雑率を示した.「テンダーポール」を検定親(花粉親)とした組合せでは,単為発生と非単為発生個体がほぼ1:1に分離したが,他の組合せでは単為発生個体の頻度が高く,非単為発生因子を優性と仮定した場合に矛盾が生じた.このことから,単為発生を支配する主働遺伝子は単一の優性因子であると推察され,カイ二乗検定を行った結果,「テンダーポール」はその遺伝子座について単式遺伝子型であることが示唆された.5個体の非単為発生個体(97-11-7,97-12-43,97-12-85,00-02-3,00-02-187)を種子親とした検定交雑では,F1世代に六倍体が高頻度で出現した.このうち(97-12-43×「テンダーポール」)F1の六倍体80個体について花粉親特異的なRAPDマーカー4個の遺伝子型を調べたところ,76個体(95%)でマーカーの分離が認められた.このことから,種子親である非単為発生個体において,複相大胞子形成に起因する非減数性卵細胞が受精して六倍体を生じたものと推察された.以上の結果,本研究において四倍体ニラの両性生殖個体が得られ,F1で六倍体を生じた両性生殖個体は複相大胞子を形成していると推察された.
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