育種学研究
Online ISSN : 1348-1290
Print ISSN : 1344-7629
ISSN-L : 1344-7629
8 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 田口 和憲, 中司 啓二, 高橋 宙之, 岡崎 和之, 吉田 智彦
    2006 年 8 巻 4 号 p. 151-159
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/20
    ジャーナル フリー
    テンサイの一代雑種においては根重や糖量などの収量形質には,高いヘテロシス効果が認められる.ヘテロシス効果がどの程度交配に用いられる親系統間の近縁関係に依存するかを明らかにする目的で,5種類の雄性不稔系統とそれぞれの維持系統との間の片側ダイアレル交配15組合せの母本を準備し,共通の花粉親を交配した.得られた一代雑種を供試し,収量形質と交配親系統間の近縁係数の関係を解析した.また,北農研で育成された計1039の交配組合せについて育成系譜のデータベースを構築し,親系統間の近縁係数とヘテロシス効果との関係を解析した.一代雑種を構成する親系統間の近縁係数と糖量の相関関係は極めて高く,近縁係数が増大するに従い,ほぼ直線的に糖量が低下した.親系統間の近縁係数が0.1を超える交配組合せでは,糖量が標準品種「モノホマレ」を超えるものはなかった.わが国において1993年から2004年の11年間に生産力検定が行われた単交配F1 424組合せおよび三系交配F1 250組合せの交配に用いられた親系統間で,糖量と近縁係数との関係を調査した.その結果,近縁係数が0.1を越える交配組合せにおいては,「モノホマレ」以上の糖量を示した組合せは少なく,糖量の多い交配組合せは親系統間の近縁係数が0.1以下の交配組合せが大半であった.よって,テンサイの一代雑種品種育成では,親間の近縁係数が0.1以下となる交配組合せを選ぶことにより,ヘテロシス効果を効率的に利用できることが明らかとなった.
  • 叢 花, 坂 智広, 許 東河, 岩田 洋佳, 菊池 文雄, 藤巻 宏
    2006 年 8 巻 4 号 p. 161-169
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/20
    ジャーナル フリー
    中国・新疆ウイグル自治区(新疆)の普通系コムギ地方品種の多様性と分化の様相を明らかにする目的で,全ゲノムに分布するマイクロサテライトDNA(SSR)多型および数種の形質変異の解析を行った.2004,2005年の両年にわたり,新疆コムギ地方品種75,新疆改良品種3,近隣諸国を含む外国品種61の139品種を供試して,42種類のプライマーセットを用いてSSRの多型分析を行い,電気泳動ザイモグラムの一致度行列をベースにして主座標分析を行った.その結果,比較的寄与度の高い主座標値の分布について,新疆品種と外国品種との間には明瞭な差異が認められ,新疆コムギ地方品種が外国のコムギ品種とは異なる遺伝的特徴を持つことが分かった.日本などのコムギ品種よりは,近隣国のコムギ品種と遺伝的に近い可能性が考えられる.また,新疆地方品種の春播型コムギと秋播型コムギの間にもSSR多型に関する分化がみられ,両者は遺伝的に異なる祖先に由来する可能性が考えられる.さらに,2003年と2004年の両年にわたり新疆ウイグル自治区ウルムチ市において,新疆コムギ地方品種71点を供試して,到穂日数,稈長,穂長,一穂着粒数,一穂小穂数,千粒重の変異を調べ,春播型コムギと秋播型コムギの間の品種分化の様相を明らかにした.また,農業形質の変異を総合的にとらえるために主成分分析を行った.その結果,春播型コムギと秋播型コムギの地方品種の間で,草型,穂相,粒の大きさなどに関して,表現形質の分化が生じていることが分かった.これらの結果から,新疆コムギ地方品種,とくに春播型コムギと秋播型コムギの間には,SSR多型に関しても農業形質に関しても,はっきりと遺伝的ならびに表現型に分化が生じていることが明らかとなった.
  • 馮 瑩瑩, 高橋 秀和, 赤木 宏守, 森 宏一
    2006 年 8 巻 4 号 p. 171-176
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,栽培稲(O. sativa,キタアケ,AA = 24)と異なるガンマ線量(0 Gy,9.7 Gy,19.4 Gyおよび48.6 Gy)を照射した野生稲(O. punctata,W1564,BBCC = 48)の細胞融合雑種を4個体供試して,in situハイブリダイゼーション法により雑種個体の染色体の構成および構造を解析した.雑種個体の染色体数にはガンマ線照射量(ドース)の増加に伴って減少傾向がみられた.これはキタアケ由来のAゲノム染色体の減少が1つの原因とみられた.また,ガンマ線照射量の増加と共にW1564由来のBおよびCゲノムのシグナルの重複が多数検出された.これらの染色体はガンマ線照射によってW1564由来の2種のゲノム染色体が再編成されたキメラ染色体とみられた.
ノート
feedback
Top