本実験では日本第一号原子炉(JRR-1)の第7および第16実験孔に放出される放射線の生物学的効果を比較測定した。実験材料には二倍性のコムギとエンパクの乾燥種子を用いて,3.7~30.5×10
12n
th/cm^2の中性子を照射し,芽生の生存率,第1,3葉の伸長たどを比較測定した。なお第1図に示すような装置設計によって照射方法に遺憾なきよう十分の注意をはらった。実験結果によれば照射総線量は同じでも第16実験孔では第7実験孔の場合よりも芽生はひどく生長を阻害された。上記の線量照射には第16実験孔では秒単位,第7実験孔では時間単位での照射を必要とすることから,前老での線量率は極めて高いものと考えられる。従って第16と第7実験孔における生物学的影響の差異は主として線量率の大小の差異にもとづくものと思われる。次に策1図Cの装置によって第7実験孔で照射すると各線量区の内側と外側の種子の間で明らかに放射線の影響差が認められる。このことは放射線の生物学的効果を比較実験する場合には厳密た線量測定を行なう必要があることをもの語るものであろう。
抄録全体を表示