育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
16 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 早瀬 広司
    1966 年 16 巻 4 号 p. 213-219
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    「加賀節成」から分離した強雌・強雄の両系統間に4回の接木試験を行ない,雌雄花の着生の変化を調査した。第1試験は連続雌花になつた16~17節の葉柄に子葉展開直後の実生を接ぎ,先端部は切断した。第2試験は強雌・強雄両系統の7~8葉期にその先端を切断し,交互に接ぎ替えた。第3試験は第2試験の接木に失敗した株に,強雌雄両系統の子葉展開直後の実生を接木した。第4試験は3葉期にこの両系統の先端を切端して側枝を出させ,伸長の最も良い第2節の側枝にこの両系統の実生を接木した。接木の成功率は台木として葉柄より蔓の先端の方が良く,接穂として蔓の先端の生長部よりも実生の方が高かった。子葉展開直後の実生を接穂とした何れの試験においても性表現に変化が認められたかった。他方蔓の先端の生長部を接穂として接木した場合は同じ系統内の接木の方が成功率が高く,強雄系統を接穂とした雄花叢に両性花が発生した。これは接穂の先端部にある雄花となる原基が生理的両性花期にあり,活着までの不安定な条件により変化したのであろう。
  • 渡辺 好郎, 小野 信一
    1966 年 16 巻 4 号 p. 220-230
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネ属の野生異質四倍種, Oriza minuta PRESL.(2n=48,BBCC)の発芽種子をコルヒチンで処理して1個体のオクトプ1ゴイト(2n=96,BBBBCCCC)を得た。PMCで観察される四価染色体の数はDiakinesisで4~13(平均9.14),MIで3~15(平均7.26)で,前報のオクトプロイド Oriza latifolia PESV.(2n=96,CCCCDDDD)に比べ約二倍の形成量を示した。三価あるいは一価染色体は雨期を通じてほとんどみられない。分裂の時期がAIから花粉四分子期にすすむにつれて異常率(遅滞染色体,染色体橋または小核などを有するPMCの百分率)が著しく増加し,不完全花粉粒の形成を結果する。この主因はMIにおける“bivalentのnon-orientation”によるものと思われる。しかし雌性側の配偶子はやや正常に機能するようであり,自殖または自然受粉による種子稔性は0%に近かったが,オクトブロイド latifolia の花粉で多数の複二倍体が得られた。また,栽培イネのテトラフロイド'品種との交雑能力は未倍加の両種間のそれより低かったが,未熟胚の胚培養によって若干の複二倍体が得られた。本オクトプロイドは未倍加のテトラフロイドに比べ多くの形質においてギガ'ス型を示すが,穂数,小穂数は著しく少なくなる。オクトフロイド latifolia と同様,葯の発達遅延が顕著であり,PMCの成熟分裂は穂の先端小穂が止葉菜輸より抽出する頃にならなければ開始されない。
  • 蓬辰 雄三, 鳥山 国士
    1966 年 16 巻 4 号 p. 231-242
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    水稲における耐冷性の遺伝機構を解明するため,耐冷性極強の染分と,長尾および高橋によって作成された標識遺伝子を含む6つの検定親との間にそれぞれ検定交雑を行ない,各F3系統について連鎖関係を調べた。耐冷性遺伝子との間に連鎖関係の認められた標識遺伝子は, d2, bc, nl および gh であり,これらはそれぞれ第2,11,9,6連鎖群に含まれる。一方,相関関係の認められなかった標識遺伝子は Rc, Rd, bl および g で,これらはそれぞれ第3,4,10,4連鎖群に含まれる。なお,第1報の結果を併せ考慮した場合,第1,12連鎖群はともに耐冷性遺伝子と相関関係はないものと推定されたので,これらの結果を総合すると,耐冷性遺伝子数として4コ以上が推定された。一方,第1報で耐冷性の遺伝子分析に用いた染分X青森5号のF2, B1, B2 およびF3 系統を用いて,耐冷性の遺伝子数を4~6コとし,単純に各遺信子は同等の相加的な作用力をもち,かつ優性度を0.85と仮定して理論分布を算出すると,F2 および F3 の分布は実測値より耐冷性弱へ大きくずれた。そこで遺伝子の働きを加算的ではあるが保持する遺伝子数が増加するにつれて作用力が次第に頭打となる(xa^<5-n>)と仮定すると,実測値とかなりよく一致した。恐らく耐冷性の如き形質は遺伝子の働きが互に作用し合うような,かなり複雑な遺伝機構をもつものであろう。
  • 清沢 茂久
    1966 年 16 巻 4 号 p. 243-250
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    外国稲 Tadukan の抵抗性を導入した抵抗性品種 PiNo.1は Pi-a 遺伝子と新遺伝子 Pi-ta を持つ。Pi-ta 遺伝は菌糸稲72,北1,研54-20,研54-04に中度抵抗性を示す。Pi-ta のみを持つ系統がえられた。Pi-ta 遺伝子は Pi-a, Pi-i と独立に行動し,多分 Pi-k 遺伝子とも独立に行動する。
  • 池田 長守, 宇渡 清六
    1966 年 16 巻 4 号 p. 251-259
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    日本,中国,北米および欧州の栽培および野生の M.avensis, およびそれらの人為雑種の細胞遺伝学的研究を行なって,次の結果を得た。1。北米に分布する var. canadensis および東亜に分布する var. piperascens は,いずれも2n=96で8倍変種である。かつ,両変種間には,染色体の構造的変異は起こっていない。2.欧州に分布する var.agrestisおよび var.praecox は,共に2n=72で6倍変種である。3.var. canadensis と var. agrestis との間の雑種は,2n=84,PMCのMIに36II+12Iを示した。これは,2N=96の var. canadensis は,2n=72の var.agrestis に,12個から成る染色体組が1対添加して,天然に合成されたことを示す。4.北米で採集された2n=84の1系統(栄養系)はPMCのMIに36II+12Iを示した。これは,var.canadensis のごとき8倍変種と,不明の6倍変種との自然交雑によって生じた7倍雑種と推定した。なお, M. arvensis にしばしば見られる完全雄性不稔の現象は,葯の中で胞原細胞の分化するところ,すなわち,減数分裂の始まる前に起る,組織の早期崩壊に原因することを見出した。
  • 丹羽 勝
    1966 年 16 巻 4 号 p. 260-266
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    劣性遺伝子WsをホモにもつタバコNicotiana tabacum は葉緑素形成能力を欠き白子となる。wsに対する優性遺伝子 Ws(pbg)をもつ N. plumbaginifoliaの染色体は tabacum の核中では不安定であるので,種間雑種の植物は斑入り一となる。24対の tabacum 染色体(ws ws)に1本の plumbaginifolia 染色体が付加された植物の自殖により得られた種子を水に浸漬し,X線5,000Rを照射した。処理当代の一部の植物に斑入りの見られない緑色の部分があらわれ,上位葉程この部分の占める部分が多くなっていることが見られた。また,第5葉展開後に茎が枝分れし,一方の枝についた葉のみが斑入りのない緑色となった植物も観察された。これらの植物の花粉母細胞減数分裂の観察および次代植物の分離から,斑入りのない緑色があらわれるのは Ws(pbg) が tabacum と plumbaginifoliaためであることがわかった。tabacum と plumbaginifoliaの染色体間の相互転座により移行した Ws(pbg)の次代への伝達率は低いことが観察された。種間移行の頻度は約5%であった。
  • 戸津 侃公
    1966 年 16 巻 4 号 p. 267-271
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.小麦(♀)とライ麦(♂)間の交雑を行なうに当つて胚移植の効果を検討した。2.供試材料は,小麦7品種。ライ小麦1系統で,こライ麦との交雑親和性に関して,小麦4品種は低く,2品種は高く,ライ小麦は高い系統である。ライ麦品種はペドクーザである。3.組合せは胚/胚乳で示すと次の7である。但し小麦/-は胚乳を分離した胚を他の胚乳に移植せずそのまま生育させたものである。(1)小麦/ライ麦×ライ麦(2)小麦/胚乳切断ライ麦×ライ麦(3)小麦/小麦×ライ麦(4)小麦/-xライ麦(5)小麦xライ麦/小麦(6)小麦/-xライ麦/小麦(7)小麦×ライ麦(標準) 4.以上(1)-(6)組合せを(7)標準と比較するに胚移植の効果は認められたい。
  • 中尾 佐助, 渡部 忠広
    1966 年 16 巻 4 号 p. 272-277
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.ヒマラヤミツマタの3年生について,根端細胞の染色体数をしらべ,約2n=108であることを確めた。ミツマタ属の基本染色体数X=9とすれば12倍体(12X)とみることができる。2.ヒマラヤミツマタの外形はわが国のミツマタに極めてよく似ているが.常緑注であり,葉もやや大きく,葉肉は極めて厚い。3.気孔の長さはミツマタの人為八倍体よりもさらに大きく,100:112の比である。4.気孔の孔辺細胞内の葉緑粒数もミツマタの人為八倍体よりも多く,100:126比である。5.毛茸の長さもミツマタの人為八倍体のものより長く,100:146の比である。6.単せん維の長さはミツマタの人為八倍体より却っ、て短かく,100:68の比である。
  • 森田 潔
    1966 年 16 巻 4 号 p. 278-280
    発行日: 1966/12/25
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    “Shititoui”, Cyperus tegetiformis Roxb. (C. malacelesis Lam.), propagates by underground stems and cannot propagate by seeds, but “Wangul” (Cyperus lwasakii M. and C. glomeratus L.) propagates very well by seeds. So, the minimum temperature of seed germination of Wangul is one of the important characteristics to consider seriously in cultivation. In order to know the minimum temperature of Wangul, germination tests were carried out in 1941-43, at the South Branch of the Chosen Government Agri. Exp. St., using such eight varieties such as Pukchon (S. Hamgyeng pref. of North Korea) . Kanghwa (Kyengkwi pref. of Middle Korea) and Uisong (N. Kyengsang pref. of South Korea) differing in harvest period (early or late) and in the form of the stem. By using weighing bottles with a diameter of 3cm and height of 5cm containing 4cm deep river sand and 3.5cm of deep water, the experiment was carried out in a thermostat at 30°C, considered to be the optimum temperature, and at 10-18°C. Examination of the number of sprouting seeds was carried out at 10a. m. every day. The last germination test was on the 14th day. The result obtained was that the minimum temperature for seed germination of “Wangul” is 13`15°C.
feedback
Top