水稲における耐冷性の遺伝機構を解明するため,耐冷性極強の染分と,長尾および高橋によって作成された標識遺伝子を含む6つの検定親との間にそれぞれ検定交雑を行ない,各F
3系統について連鎖関係を調べた。耐冷性遺伝子との間に連鎖関係の認められた標識遺伝子は, d
2, bc, nl および gh であり,これらはそれぞれ第2,11,9,6連鎖群に含まれる。一方,相関関係の認められなかった標識遺伝子は Rc, Rd, bl および g で,これらはそれぞれ第3,4,10,4連鎖群に含まれる。なお,第1報の結果を併せ考慮した場合,第1,12連鎖群はともに耐冷性遺伝子と相関関係はないものと推定されたので,これらの結果を総合すると,耐冷性遺伝子数として4コ以上が推定された。一方,第1報で耐冷性の遺伝子分析に用いた染分X青森5号のF
2, B
1, B
2 およびF
3 系統を用いて,耐冷性の遺伝子数を4~6コとし,単純に各遺信子は同等の相加的な作用力をもち,かつ優性度を0.85と仮定して理論分布を算出すると,F
2 および F
3 の分布は実測値より耐冷性弱へ大きくずれた。そこで遺伝子の働きを加算的ではあるが保持する遺伝子数が増加するにつれて作用力が次第に頭打となる(xa^<5-n>)と仮定すると,実測値とかなりよく一致した。恐らく耐冷性の如き形質は遺伝子の働きが互に作用し合うような,かなり複雑な遺伝機構をもつものであろう。
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