育種学雑誌
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19 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 西山 市三, / , H.L. Shands
    1969 年 19 巻 3 号 p. 117-120
    発行日: 1969/06/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    燕麦品種カノータの正常および異数性植物(2n=40~42)を、1965年9月から翌年5月まで温度19.4℃に調節された温室で栽培し(幼苗期を除いて)、(1)3月2日以前、(2)それから3月30日まで、さらに(3)5月12日までの3期間に成熟した穂について種子稔生を調査した。初めの2回の調査では異数性植物は完全不稔か、またはごく低い稔性を示したが、3回目には稔性はかなり向上した。それでも夏期の圃場栽培のものにくらべると明らかに稔性はおとっていた。正常植物(2n=42)の稔性はいつも異数性植物ほど低下しなかった。この事実は異数性植物は正常植物よりも低温抵抗性が弱いことを裏がきするものである。第3期に異数性植物の稔性が向上したことは不良環境が改善されたためであろう。恐らく日光の照射量が増強して1時的にも室温、植物体温などがあがるなど諸微細要件が補足されてきたためと想像される。
  • 清沢 茂久
    1969 年 19 巻 3 号 p. 121-128
    発行日: 1969/06/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    西パキスタンのイネ品種Pusurは日本のいもち病菌菌系の大部分に対して高度の低抗性を示す。この品種の低抗性の遺伝子分析を行なった。Pusur中には少なくとも3つの主働遺伝子が存在し、そのうちの1つは既知のPi-a遺伝子であり、他の1つはPi-k遺伝子座上の遺伝子であり、使用した7菌系のうち北1・研54-20・研54-04・稲168に高度(R型)の低抗性を示す。Pi-k遺伝子の反応とは少し異なるので、Pi-kpの記号を与えた。残りの1つの主働遺伝子は、稲72・北1・研54-20・研54-04・稲168に中度(M型)の低抗性を示す。Pusurの低抗性はこれら3遺伝子のみでは説明できないため、それ以外の抵抗性遺伝子の存在が考えられる。
  • 野沢 謙
    1969 年 19 巻 3 号 p. 129-136
    発行日: 1969/06/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    現在、本邦とその周辺地域に保存されている在来諸家畜(牛、馬、豚および出羊)の集団の大きさに関する調査結果を総括した。大部分の場合、WRIGHTの意味の有効な大きさの推定も併せてなされた(Table 1)。これらのうち、純粋種として充分の個体数が現存し、絶滅の危険が感じられたいのは韓国在来牛、済州島馬および台湾における南支型在来豚の3種に過ぎず、他は集団サイズの縮小によってか、或は雑種化によってストック消滅の途を歩んでいるとみなされる。この地域における在来家畜のストックを育種素材、或は学術的研究材料として保存しようとする場合、最も重大な問題点は、経済動物としての需要が減少した場合においても、それらの保存が一般農家の負担にほとんど完全に依存しており、国その他の公共機関からの財政的補助が極めて少いことにあると考えられる。
  • 田野 茂光, 山口 彦之
    1969 年 19 巻 3 号 p. 137-143
    発行日: 1969/06/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ニトロソ化合物の一種NMUの突然変異誘発効果と処理条件の影響について実験を行った。二条オオムギの乾燥種子を0.1、0.2、0.4mMのNMU水溶液に3時間浸漬後、水洗して発芽させ、幼植物長を測定した結果、濃度の増加とほぼ直線的な関係で生長阻害が認められた。20kRのX線を照射し、さらに0.2mMのNMUで処理した場合には、桿長、穂長に対して相乗的な抑制効果がみられた。この相乗的効果は葉緑突然変異誘発率でも明らかであったが、処理当代の不稔性では認められなかった。NMU処理で誘発された葉緑変異のスペクトラムで興味のあることは、X線では種々の変異体が得られたのに対してでNMUはだviridisけが誘発されたことである。溶液中でのNMUは自然分解が溶液のpHによって異なり、アルカリ性で分解の促進されることが知られている。本実験でもpH8.0の緩衝液中で2.5時間内に約30%の分解を示した。さらにDNAまたはRNAと混合した場合、NMUの減少はDNAとの混合液中でNMUのみの溶液中での減少よりも大であったが、RUAとの混合液中ではこのようなことは認められなかった。このことはNMUの分解物がDNAとより高い結合力をもつことを示唆する。根端細胞での染色体異常は、pH5.8またはpH7.0の中性および弱酸性域でNMU処理したものに多く、弱アルカリ性域ではわづかに少なかった。これらの結果は微生物での結果とやや異なり乾燥種子のNMU処理ではNMUが種子中で突然変異を誘発する部位まで到達するのに微生物を処理する場合にくらべて相対的に時間がかかり弱酸性溶液中で分解が少く、その結果アルキル化剤としての特性が保持され、より効果的に作用するであろうと推定された。
  • 小林 仁, 秋田 重男
    1969 年 19 巻 3 号 p. 144-148
    発行日: 1969/06/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Relationship between root type and variability of daughter roots was studied in this paper by comparing growth of plants with different root types, and the factors concerning restriction to mother roots growing in indirect-daughter type ascertained as a result.
  • 鈴木 善弘
    1969 年 19 巻 3 号 p. 149-158
    発行日: 1969/06/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ナス、トマトおよびジャガイモ種子の熟度(登熟、追熟)と寿命の関係について研究した。ナス、トマト、ジャガイモ種子が発芽力を生ずる時期は、登熟期間中の環境、とくに親植物体の栄養状態、日照、温度等の条件によってことなるが、一般にナスはトマト、ジャガイモに比較して開花後日数からかぞえておそい。またナス、トマトともに品種によっても差が認められる。種子の寿命も植物の種類、品種、種子貯蔵中の環境条件によって著るしくことなるのであるが、さらに開花受粉後、親植物体から採種果を収穫する迄の日数であらわす登熟、採種果から種子を採取する迄の日数であらわされる追熟の程度によって進行する種子内部の生理的条件によって大きな影響をうける。種子の寿命を長期間保持するためには、貯蔵中における種子周辺の環境条件の調節とともに、種子の熟度によっておこる生理的状態についても十分考慮することが必要である。
  • 米沢 勝衛, 安室 喜正, 赤藤 克已
    1969 年 19 巻 3 号 p. 159-170
    発行日: 1969/06/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    自殖性作物における3つの異なるタイプの育種法、すなわち交配育種法、突然変異育種法ならびにこれら2者の組合せ育種法の相対的な効率に関するいくつかの知見を、理論的に導き出した諸式によって得た。交配育種法とは、育種素材として選ばれた2つの親間の交配に由来する後代集団に対して選抜を行なう方法であり、突然変異育種法とはそのうちの一方の親に突然変異処理を行ないその後代集団に選抜を行なう方法である。また、組合せ育種法は、両親のF1個体に突然変異処理を行ない以下同様にする方法である。なお、理論式を導き出すにあたっては、関与するすべての遺伝子座間に連鎖がないことを仮定した。結論は次のごとくである。(1)一般に、突然変異育種法は、育種素材のある限られた遺伝子座あるいは形質のみを改良し他の大部分の遺伝子座あるいは形質は元のままの状態で保持したい場合に有効である。(2)このような場合、突然変異育種法の他の育種法に対する相対効率は、育種上留意すべき遺伝子座あるいは形質の数が多いほど大きいと考えられる。(3)ある素材親のものでの突然変異育種法の交配育種法に対する相対効率は、優良遺伝子から劣悪遺伝子への人為突然変異率(m1)にはほとんど影響されず、主に劣悪遺伝子から優良遺伝子への人為突然変異率(m2)によって決まる。一方、組合せ育種法の交配育種法に対する相対効率は、これら両突然変異率の値そのものではなく、これらの比によってのみ決まる。(4)突然変異育種法が組合せ育種法よりも有利であるための条件はそれが交配育種法より有利であるための条件とほぼ等しい。(5)組合せ育種法が交配育種法より有利であるための条件は、上記m1およびm2の大きさがあまり違わないかあるいは後者が前者より大きい場合には、突然変異育種法の交配育種法に対する条件よりもかなりゆるやかである。しかし、組合せ育種法の交配育種法に対する相対効率自体は、どのような素材親のもとでもあまり大きくない。(6)突然変異育種法においては、選抜開始期を4世代以上遅らせることはそれ程有利ではない。
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