育種学雑誌
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19 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • サマライ S.M., 谷口 晋, 松尾 孝嶺
    1969 年 19 巻 6 号 p. 407-412
    発行日: 1969/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    日本型×印度型の1組合せについてF4までの集団を無選抜で維持し、F4で結実した76個体について、F5で系統を栽培して収量ならびに米質に関与する10形質を調査した。その結果雑種系統では両親の諸形質、とくに米質を支配する形質と収量を支配する形質とが数個の例外を除いて殆んど自由に組み換えられることが認められた。このことは印度型の米質をもち、日本型の収量その他の諸形質をもつ品種の育成が困難でないことを示している。
  • 志村 勲, 安野 正純
    1969 年 19 巻 6 号 p. 413-418
    発行日: 1969/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    The kernel color of normal chestnuts is generally observed to be buff or creamy yellow, but a kernel character called orange kernel has appeared in the nuts of several varieties in Japanese chestnut cultivars (Castanea crenata Sieb. et Zucc.). The occurence of this character is expressed phenotypically only when a gene is in homozygous condition. All seedlings derived from orange-kernel chestnuts showed albino character under the day-light condition, but these seedlings under the low light intensity (400 Lx.) developed light-green leaves.
  • 杉山 範子, 志村 喬
    1969 年 19 巻 6 号 p. 419-424
    発行日: 1969/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    耐凍性の異るチャの6品種、ヤブキタ、U-22、ベニホマレ、Y-3、キヤンおよびX-10を用い、耐凍性とでん粉の糖への転化との関係や枝の組織・細胞におけるアミラーゼとフォスフォソラーゼの分布を組織化学的に観察した。アミラーゼの組織化学的検出は、TREMBLAY(1963)の変法により、でん粉のうすいフィルムを組織切片にあて、過沃素酸SCHIFF試薬で染色し、フォスフォリラーゼ検出にはYINおよびSUN(1947)の方法で観察した。秋から初冬にかけての耐凍性増大時期における各品種の枝の糖含量の増加は、でん粉含量の減少と平行して進み、でん粉の糖化割合の大きい品種ほど耐凍性が増大した。でん粉の糖化と温度の関係は、葉のついた枝を-7℃に2週間おいたとき、最も多くでん粉が糖化し、0℃においたものがこれにつぎ、20℃や自然状態においたものが最も少かった。皮層細胞に沃度沃度カリを作用させると、11月上旬まではでん粉が検出できたが、11月中旬を過ぎると、もはや検出されなかった。アミーラゼやフォスフォリラーゼは、でん粉を加水分解して糖に転化させる酵素であるが、組織化学的に観察したところでは、晩秋から初冬にかけ、これら酵素の活性には品種間のちがいが認められなかった。しかし皮層細胞と他の組織の細胞を比較すると、皮層細胞では糖含量が最も多く、耐凍性もまた最も強いが、この皮層細胞に両酵素の最も高い活性がみられた。また皮層細胞において、アミラーゼやフォスフォリラーゼの細胞内分布をみると、空胞内には活性がなく、細胞膜に近い細胞の周辺部の細胞質に両酵素の活性が高いことが認められた。したがってこれらの細胞質の部分に糖が蓄積されるものと推定される。
  • 堀 雅明, 常脇 恒一郎
    1969 年 19 巻 6 号 p. 425-430
    発行日: 1969/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    異種起原の雄性不稔細胞質を利用して一代雑種コムギを育成する研究が世界各地で盛んに進められているが、それとの関連において、パンコムギの主要量的形質におよぼす3異種細胞質の遺伝的影響を研究した。Aegilops caudata、Ae. ovata、Triticum timopheevi起原の細胞質をもつT.v.e., Salmon、Comp. 44、ABD-13(いずれも6倍性コムギ)の核置換系続と正常系統の出穂期、草丈、分けつ数、乾物重、花粉および種子稔性を調査し、比較した。Ae. ovata細胞質は出穂を約15日遅延させ、草丈を約11cm低くした。T. timopheevi細胞質は乾物重を約20%減少させた。3細胞質ともほとんどすべての系統を完全に雄性不稔にした。異種細胞質のこのような一般的効果のほかに、細胞質と核の間に特異的な相互作用が幾例か観察された。また、Comp. 44はAe. caudata細胞質に対する稔性回復因子を、ABD-13はT. timopheevi細胞質に対する稔性回復因子をもっていることが確認された。
  • 岩崎 文雄, 塚田 元尚, 細田 友雄
    1969 年 19 巻 6 号 p. 431-436
    発行日: 1969/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    The experiment was carried out to study the morphological and histochemical changes of the floral organs during the growth in Brassica. The following results were obtained : (1) The rapid elongation of stamen and filament was observed. (2) Histochemical reactions (PAS, Brachet and protein reactions) were the strongest at the flowering time.
  • 津田 周弥, 細川 定治
    1969 年 19 巻 6 号 p. 437-444
    発行日: 1969/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Mass-selections for either one of high root weight or sugar content frorn three populations of sugar beets irradiated with high dose level by <137>Cs revealed that the negative genetic correlation between these characters was diminishable to a certain extent.
  • 木下 俊郎, 高橋 万右衛門
    1969 年 19 巻 6 号 p. 445-456
    発行日: 1969/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    てん菜の単胚性系統H-19の種子にガンマー線照射処理(50、100、150及び200kR)を行なったところ、処理当代(M1)の植物は種々の程度の花粉不稔を示し、その中には葯が白色萎凋し、不稔花粉より成る完全不稔型がみられた。種子稔性の高いM1個体について、次代(M2)を養成し、雄性不稔性を再び高頻度で生ずる系統を選抜して次代を養成したところ、雄性不稔性は、M2からM3へ、またM3からM4へ母系を通して比較的高い頻度(約50%以上)で伝えられる事が示された。γ-20及びγ-27系統のM2世代に生じた正常型個体とH-19の無処理個体間で正逆交雑を行なった結果、同一組合せでも母系を異にすることにより、雄性不稔性の出現に顕著な差がみられた。したがってガンマー線照射によって生じた雄性不稔性には細胞質遺伝子が関与すると考えられる。またγ-27系統中の完全不稔型個体とH-2002の正常型個体間の交雑のF2では稔性型(N及びS.S.a):不稔型(S.S.b及びC.S.)を3:1の比に生ずるので、雄性不稔型細胞質には単純優性の花粉稔性回復遺伝子が関与している。この花粉稔性回復遺伝子は単胚性遺伝子と約36%の組換価をもって連鎖するので、さきに報告した(長尾・木下1962)S細胞質の花粉稔性回復遺伝子の一つであるX遺伝子そのものか、あるいはこれと密接に連鎖する遺伝子であると考えられる。正常細胞質を有する複胚系統H-2002を用いた種子照射実験でも、H-19の場合と同様に細胞質型雄性不稔が誘起されることが確かめられた。ガンマー線誘発の雄性不稔個体について小胞子の発育を調査したところ、細胞質型雄性不稔に於ける如く、タペート細胞の顕著な異常が小胞子の退化と密接な関連を有していることが明らかとなった。これらの結果から、ガンマー線照射によって生じた雄性不稔性は、H-19あるいはH-2002の有する正常細胞質型になんらかの変化を生じたためか、あるいはプラズマジーンの突然変異にもとずく可能性が示された。
  • 斉尾 乾二郎
    1969 年 19 巻 6 号 p. 457-459
    発行日: 1969/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    いくつかの形質測定値の線形結合のうちで、その全変異にたいして遺伝変異が最大になるものは、形質測定値をベクトル変量であらわすと、遺伝ベクトル変量Yおよび表現型ベクトル変量Xとの間の第1正準変量であることがわかる。また第1正準相関の平方がその合成形質(形質の線形結合)の遺伝率となる。このときEを環境ベクトル変量とすれば、X=Y+Eという模型にもとづいている。ここにYのいずれの成分もEのいずれの成分とも無相関であるとする。実際の問題への適用を考えてみると、イネのいもち病抵抗性、ダイズの草型、カイコの強健性等々のように、どのような尺度で評価してよいかきめにくい形質の評価基準として、この概形結合をもちいうる。すなわち評価したい形質の尺度となりうる可能性をもった関連形質をいくつかとりあげ、それらの線形結合のうちで遺伝率最大のものを、求める評価基準とするわけである。このとき線形結合にくみいれるためにとりあげる形質は、その測定値で推定した標本遺伝共分散行列が正半定符号であるものだけとする。これは正半定符号でない行列をもちいて正準解析をするわけにはいかないからであるが、このことはまた、間接的であるにせよ、遺伝統計量の標本誤差の大きい形質測定値をおとしたことになり、十分意味のあることである。いずれにしても、評価基準というものは環境変異にたいして安定していなけれぼならないという観点からすれば、この線形結合は最良のものである。なお大豆の草型のデータにもとづいた数値例をあげた。
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