育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
21 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 笹原 健夫
    1971 年 21 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 1971/04/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    単位葉面積当り光合成能力および単位葉窒素含量当り光合成能力と葉肉柵状組織の構造要因、すなわち、細胞数、細胞表面積、細胞体積および細胞間げきの関係について検討した。用いた材料は、Brassica campestrisの4系統、oleaceaの2系統、napusの4系統、合成napusの3系統、同質4倍体campestrisの1系統おび同質4倍体oleraceaの1系統である。光合成能力の測定は、Warburg検圧計を光合成測定用に改良したものを用いた。光合成測定のすんだ材料は風乾後、Tompkins(1941)らの方法によって全窒素含量を分析した。単一細胞の表面積は4πab、体積は2πb2(a-(1/3)b)(但しa,bはそれぞれ長径短、径の半分)によって求めた。また、単位葉面積当り葉肉内細胞表面積総和は4πabに単位葉面積当り細胞数を乗じて求めた。葉肉柵状組織の構造要因として、葉肉内細胞表面積総和、窒素含量および窒素含量に対する細胞表面積の比の重要性が指摘された。すなわち、単位葉面積当り光合成能力は、葉肉内細胞表面積総和と明瞭な正の相関々係を示した。また、単位窒素含量当りの光合成能力と窒素含量に対する細胞表面積の比および窒素含量に対する葉面積の比の間にも明瞭な正の相関々係がみられた。単位葉面積当り光合成能力の高い系統は、単一細胞の大きさ、単位葉面積当り細胞数において光合成能力の低い系統を陵駕していた。細胞が大きく、細胞数が多いことは、光合成能力の高い系統の葉肉の充実度を高める結果となった。
  • 高野 義大, 角田 重三郎
    1971 年 21 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 1971/04/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    栽培稲Oryza sativaおよびそれ以外の種をふくむ多数の稲系統について、葉光合成率の差を観察した。葉面積当りの光合成率(PA)は葉面積当りの窒素含量と正に相関していた。この関係は窒素含量が遺伝的原因によって変った場合も環境によって変った場合も成り立っていた。Oryza officinalisとその近縁種のminutaおよびeichingeriは、栽培稲Oryza sativaに比べて、一般に葉面積当り窒素含量が低く、それに伴って葉面積当り光合成率(PA)も低かった。これは遺伝子型による差の一例とみることができよう。葉面積当りの光合成率(PA)の葉面積当り窒素含量に対する回帰は曲線的で、sativaの栽培品種について、2次回帰としての推定が試みられた。この推定によると、本研究で観察されたsativaの栽培品種の最高葉面積当り窒素含量においても、なおPAは最高期待値に達していない。それ故、育種(あるいは栽培法の改良)によって、さらに葉面積当り窒素含量を高めれば、なお高いPAを実現することができるだろう。葉の単位窒素当りの光合成率(PN)は葉面積当り窒素含量と負相関の関係を示した。ある植物集団の保持しうる葉窒素の全量に限りがある場合には、葉面積当り窒素含量を増加することは必ずしも植物の生長にとって有利ではない。その上、葉面積当り窒素含量がちがう葉にみられるPAの差異は、高照度下においては顕著であるが、低照度下では明らかでない。それ故、葉面積当り窒素含量の高い“厚い葉”を持つことは、葉面積の広い“薄い葉”を持つことに比べて、窒素供給のレベルや日照レベルの低い場合には必ずしも有利でない。officinalisやその近縁種の低い葉面積当り窒素含量は低照度の生育地に対する適応の結果と見られる。葉面積当り光合成率(PA)の差が、同じ葉面積当り窒素含量を持つ材料の間においても認められた。出穂後に観察された止葉の全部ではないが多数の葉がその葉窒素含量の割には、低い光合成率を示した。人為4倍体の葉も、その葉窒素含量の割には低い光合成率を示した。一方、glaberrimaやbreviligulataの葉は、それらの窒素含量の割には、高い光合成率を示した。これらの結果は、葉窒素含量以外の要因も稲の葉の光合成率の差異に関与していることを示すものである。
  • 志村 勲, 安野 正純, 大友 忠三
    1971 年 21 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 1971/04/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    The pollination tests were conducted to clarify the period of female flower receptivity and the effects of the pollination time on the number of nuts in the burr. The results are reported here.
  • 野口 弥吉, 中島 哲夫, 山口 俊彦
    1971 年 21 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 1971/04/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    水稲においても、Ageが進むほど出穂しやすくなることが知られている。このようなAging effectの本質について検討する目的で、瑞豊ならびに農林8号を供試して実験を行なった。葉令(主桿葉数)が進んだ植物体では、1、2回の短日処理によって幼穂分化と出穂がみられた。一方、葉令が進めば、いわゆる限界日長時間も長くなり、20時間日長下でさえも時として瑞豊の幼穂分化がみられた。したがって花芽形成に影響するAging effectを単純にAgingによって短日感応性が増大する現象と理解することは妥当でない。長日条件による花芽形成の抑制効果がAgingによって低下するとも考えうるのである。長日による花芽形成の抑制は長日による栄養生長の助長に関係しているので、葉令または生育日数は大であるにもかかわらず、栄養生長(出葉速度)の旺盛な材料も含めて実験を行なってみた。その結果、幼穂分化・出穂は、葉令や生育日数よりも、むしろ栄養生長能の強さに密接に関連して変動することが明らかとなった。したがって、花芽形成に対するAgingeffectの本質は、葉令や生育日数の増加にともなって一般的にはおこる栄養生長能の強さの低下にあると推察された。
  • 蒲生 卓麿, 一場 静夫
    1971 年 21 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 1971/04/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    The hydrolyzing ratio (R) by enzymic digestion of the fibroin isolated from cocoon filaments was different hereditarily among silkworrh strains. Selection experiments on the R value was carried out for 2 or 3 generations successively by the inbreeding of moths producing cocoons giving high or low value. The R value and size of cocoons were significantly different between the high and low lines. Since the reelability was higher in the low line of R values, the determinatjon of R values can be usefull for a measure in selection experiments on reelability of cocoons.
  • Binet F.E., 志方 守一
    1971 年 21 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 1971/04/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    伴性、および常染色体遺伝子座における同型接合体頻度を示す数式表現、およびその数値計算を、同胞交配の場合についておこなった。計算に際して用いたモデルは、伴性遺伝子座については3対立遺伝子、常染色体遺伝子座については2対立遺伝子を想定し、いずれの場合も1遺伝子座を考慮した。前老については遺伝子型頻度を用いず、交配型を用い、後者については遺伝子型頻度の1種の平均値を用いた。双方につき、代数的表現を導くとともに、数値計算を例について行ない、表に収めた。後者の例については、BINETとLESLIE(1960)の結果が本報告の特殊例であることを指摘した。BINETとLESLIE(1960)は2倍体の2つの対立遺伝子について兄弟姉妹交配を続けた場合の第γ番目の世代におけるヘテロ接合子の頻度は、最初のヘテロ接合子頻度のhr倍であることを示した。ここではhrはhr=0.948e<-0.212r>[1+(-1)r・0.0557e<-0.952r>].本報告では、この結果との比較をも行なうこととする。第1の場合として、2種類の性によってのみ生殖が起る場合を想定し、それら2種類の性をXXおよびXYでそれぞれ表わす。3種類の対立遺伝子をO、A、Bとし、XA、XB、XOの如くに性染草体上に置かれた遺伝子を(A)、(B)、(0)と書くことにし、それらにより作られる遺伝子型を(OO)、(OA)、(OB)、(AA)などと書く。これらの遺伝子または遺伝子型を交配する時の交配型を本文中の表の如く4つの型に類別し、この4種類の交配型の第γ世代における頻度rP_m,(m=I,II,III,IV)を求めることができて、表IIの如き結果が得られる。常染色体については、同じく兄弟姉妹交配を繰返すとき、近交係数の回帰方程式を書き下すことが知られている。この回帰方程式に適当な初期条件を与えることにより、ヘテロ接合子あるいはホモ接合子の各世代における頻度を計算することが可能である。本報告では、最初に掲げたBINETとLESLIE(1960)の求めたヘテロ接合子の頻度を求める式が、特定の初期条件にのみ対応するものであることを指摘し、一般化近交係数を用いてベクトル方程式を考慮することにより、可能な初期条件のうち任意の条件から出発して逐次、各世代のヘテロ接合子頻度を求めうることを示した。伴性遺伝子、常染色体遺伝子の双方につき、兄弟姉妹交配の繰返しによるヘテロ接合子頻度を何世代かについて例示し、作表した。本報告で触れた回帰方程式、および数値計算結果の性質については、次の機会に述べたい。
  • 松岡 通夫
    1971 年 21 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 1971/04/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Two different patterns were recognized in the changes of germination capacity of Hemerocallis pollen tested on agar plate during 24∼39 hours before and after blooming. H. fulva var. Iittorea and several varieties of H. dumortierii except var. exaltata showed high percentages of pollen germination even before the time of blooming, while the pollen of other species germinated well only after blooming. Pollens stored at 5°C for about a month could be successfully used for practical pollination.
  • 池橋 宏, 伊藤 隆二
    1971 年 21 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 1971/04/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    従来、計量育種の研究対象は主に形質の絶対量であったが、育種家は、草型指数などとして、形質の相対比をしばしば重視している。この間隙をうめる見地から、形質比の統計的性質を調べ、実際への適用を試みた。2次元正規分布の2変数の比の統計的性質の検討から、構成2形質の統計量により、それらの比の統計量を推定する式を求めた。これらの式を水稲のF3系統の成績に適用し以下の結果を得た。(1)形質比の遺伝力は、構成形質の統計量から推定でき、その値は2形質の表現型相関→大、遺伝相関→小のとき大きく、実際にかなり高くなり得る。(2)形質比とその分子形質の回帰式も、構成形質の統計量から、実際の値の分布と一致したものが得られた。(3)形質比と分子形質の相関係数も、近似度は劣るが、構成形質の統計量から推定できる。形質比の遺伝力は構成形質より高くなり得ることから、これによる選抜が効果的な場合上の結果から、その効果の推定ができよう。
feedback
Top