育種学雑誌
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25 巻, 6 号
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  • 藤本 文弘, 鈴木 茂
    1975 年 25 巻 6 号 p. 323-333
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イタリアンライグラスの3品種(ワセユタカ,鳥取在来,Magnolia ryegrass)について,個体植条件で高乾物重方向へ3世代の選抜を行ない,選抜に対する反応と集団内変異への影響を調査した。またワセユタカから近交度の異なる集団をつくり,乾物重における近交弱勢および合成集団におけるヘテローシスを調べた。これらの結果から,イタリアンライグラスにおける集団内変異とその育種的意義について検討し,次のような結果をえた。 1)集団間の遺伝変異係数,集団内変異係数は,ともに生草重と乾物重で最も高く,乾物率で最も低かった。草丈の変異係数は11月,12月に高かった。集団内変異は,乾物重では選抜によって減少する傾向があったが,他の形質では必ずしも減少しなかった。 2)乾物重は3集団ともに選抜により増加し,第3世代でも選抜効果が停滞する傾向はみられなかった。実現された遺侯力はワセユタカで最も高く,Magnolia ryegrassで最も低かった。 3)選抜対象とならなかった形質の世代による推移を調べると,草丈・茎数・生草重が増加し,出穂日は早くなった。乾物重との遺伝相関は草丈と生草重は正,出穂日とは負で高く,乾物重の選抜効果は初期生育(主として草丈)と生草重の向上,出穂の早生化をともなっていた。 4)乾物重は集団の近交度の増加によって減少し,近交係数0.1の増加により約11%の近交弱勢を示した。また近交により集団内変異が増大した。合成集団は乾物重でヘテローシスを示し,集団内変異が減少した。 5)条播における収量調査では,選抜集団と合成集団は第1回刈取(1月)では原品種より高い収量を示したが,第2回刈取(4月)ではその差は小さくなり,第3回刈取(5月)では原集団と有意差がなかった。 6)これらの結果を他の作物における選抜実験の報告と比較して,他殖性集団における変異と集団の改良,近交弱勢とヘテローシスについて検討を加え,イタリアンライグラスの集団内変異について考察を行たった。また,日本の品種に集団内選抜を加えることによって秋から早春の牧草生産をさらに高める可能性について,条播の結果をも含めて論議を行なった。
  • 高橋 隆平, 林 二郎, 守屋 勇
    1975 年 25 巻 6 号 p. 334-342
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    二条×六条の品種間交雑から多収性大麦品種を得ることは困難であると一般にいわれている。この問題を検討するため,条性遺伝子Vvの農業諸形質に及ぼす多面的作用の有無,程度および遺伝的背景との関係について調査した。材料として,日本のビール用大麦品種,キリン直1号と栃木ゴールデンメロンをそれぞれ片親とし,3種の在来大麦品種を交雑し,その雑種のF2以後FgまでVvヘテロ個体を選抜しつつ自殖を重ねてそれぞれ34対の二・六条同質遺伝子系統対を育成して用いた。このほか,戻し交雑法で作られた2組の同質遺伝子系統も比較試験に用いた。3年にわたり3~4回の反復試験を行なった結果から次のことが明らかになった。 調査した12の農業形質のすべてに関して,二条と六条系統間に有意差が認められたが,条性遺伝子の影響の強弱およびそれと遺伝的背景との交互作用の大小により,それらは3群にわけられた。条性遺伝子の作用を強くうけるのは1穂粒数,1000粒重,稔実率,穂軸節間数(小穂段数)および穂長で,1穂粒数以外は二条型(VV)の方が対応する六条型(VV)よりも大きい値を示した。条性遺伝子の影響が少なく,主として遺伝的背景の支配をうけるのは出穂期,稗長,穂数,穂密度,程の太さの5形質であった。 粒収量について六条型が二条型よりも平均して若干優れており,また粒の粗蛋白含量については二条型の方が六条型に比し,たいていの系統対で高い値を示した。しかし,この両形質に対しては条性遺伝子と遺伝的背景との交互作用の影響がかなり顕著に認められた。そのため,同質遺伝子系統を戻し交雑法で育成する場合,二条あるいは六条の何れの現品種を反復親に用いるかによって全く逆の結論が導かれることが指摘され,ヘテロ型自殖法により多くの系統対を作り,平均の遺伝的背景の下で遺伝的効果を比較することが有利であることが論ぜられた。 なお,調査した半数以上の形質に対し,二条遺伝子と六条遺伝子は異なる遺伝的背景の下で同じ強さで働くものではなく,二条遺伝子の方が強い影響を与えることが認められた。
  • 丹羽 勝, 鳥越 則昭, 橋本 吉史, 古舘 宏
    1975 年 25 巻 6 号 p. 343-348
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    (1)開花期の異なるダイズ品種相互の間で接木を行ない,穂木の開花日を調査した。播種後約1ケ月を経過した植物を台木とし,播種後約1週間の幼植物を割り接ぎした。穂木の葉は子葉以外はすべて取り去った。 (2)十勝長葉,シソメジロ,中鉄砲,ダルママサリ,Jackson,アキセソゴクの6品種相互の間で36組合わせの接木を行ない,自然日長下で育てた。穂木の開花日は台木に用いた品種によって異なり,台木品種の対照植物の開花日との間に高い正の相関が見られた。穂木に用いた品種による開花日の差は有意であったが,台木品種による差にくらべると小さく,対照植物の開花日との間には有意な相関が見られなかった。しかし,もっとも早生の十勝長葉はどの品種に接がれた場合も,他の品種より早く開花Lた。 (3)穂木の開花日についての分散分析によれば,穂木品種と台木品種の効果の間には交交作用がなく,これら2つの要因が相加的に穂木の開花日に影響を与えていることが示唆された。 (4) 十勝長葉,シソメジロ,白大豆,アキセソゴクの4品種を台木とし,シンメジロ,アキセソゴクの2品種を穂木とした8組合わせの接木を行ない,植物を12時間,14時間,16時間の日長で15回処理し,穂木の開花日を調べた。一般に,穂木の開花日は台木の対照植物の開花日と並行関係にあった。穂木に用いた品種による開花日の差は有意ではあったが,台木品種,日長による差にくらべると小さかった。分散分析の結果によれば,日長,台木品種,穂木品種の間には有意な交互作用が見られ,自然日長下での花成反応とのちがいが示唆された。 (5)要約すると,本実験に用いたダイズ品種の間の開花日の差は,主として葉における花成刺激形成の差によってもたらされ,花成刺激に対する生長点の反応の品種間差は,開花日の品種間差を決定する程大きくはないことが明らかにされた。
  • A イスラム, M ハック, M デワン
    1975 年 25 巻 6 号 p. 349-354
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ジュートアサ(黄麻Corchorus olitorius)は短日植物であるため,ベンガル地方で4月中旬以前に播種すると60日以内に開花し,草丈は正常なものの50%以下に止まり,繊維の収量も品質も悪くなる。不感光性のジュートアサ品種を育成するために,近縁種で感光性のないC.depressusと交雑を行ない,後代を観察した。 可染花粉の割合,果実当りの種子数,種子発芽率は世代とともに改善された。不感光性個体の草丈はF4で平均405cmmとなり,対照のC.depressusの平均425cmに接近した。分枝も世代とともに少くなった。しかし,繊維の長さは対照に及ばず,直径は対照より大きく,品質についてはさらに改善する必要が認められた。ただ,F3と4倍体のC.olitoriusとの交雑次代の植物には繊維長が対照をこえるものがあった。 F3,F4で選抜された不感光性の個体は,C.oliitoriusとC.depressusのゲノムをあわせ持つ複2倍体であった。F4の不感光性個体の花粉母細胞を観察したところ,2倍性と4倍性のモザイクが見られ,減数分裂AIで染色分体橋を示すものがあった。 不感光性個体は各世代とも4月中旬以前に播種した集団の中から開花期の遅いものを選抜した。F3では約20%が不感光性であり,これら不感光性個体から選抜されたF4,F5の後代では,いずれも開花期に分離が見られた。 不感光性個体が複2倍体であり,それらの個体の花粉母細胞に染色体数のモザイクが見られ,減数分裂AIに染色分体橋が見られることから,C.depressusにはC.olitoriusの感光性遺伝子に対して上位の不感光性遺伝子があり,細胞分裂の過程での不感光性遺伝子の機会的消失のために,後代においても不感光性が遺伝的に固定しないことが推定された。
  • 斎藤 清
    1975 年 25 巻 6 号 p. 355-362
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    (1)南アフリカ原産の小型球根Rhodohypoxis属.は今世紀はじめに園芸化された新しいもので,近時ようやく十余の栽培品種の分化をみせているが,わが国に導入されている市販材料は花の色彩や大きさによって便宜的に区別されている程度である。本実験では1972年以.来それらの主なものを入手し,第1表のように9点に区別し,それらの性状とくに細胞学的特性さらに繁殖に関する不ねんの実態を明らかにしようとしたものである。 (2)本種の染色体数はすでに2n=12と報告されており,供試材料の小輪咲品種4点はやはりそれと同じであったが,俗にテトラとよばれている大輪咲品種5点はいずれも2n=18の三倍体であることが確かめられた。しかし地中にある若いつぼみの採取が困難であったため,それらの減数分裂像は観察されていない。 (3)三倍体品種の葉の孔辺細胞の長さおよび巾が二倍体のそれに比べて明らかに大きく,また一対の孔辺細胞の中にある葉緑体数も二倍体のそれに比べて約2倍ほど多くなっていた(第2表)。 (4)酢酸カーミン液染色によって判断される健全花粉粒率は,わずかに二倍体品種Beamuth Redの高率を除げば,二倍体・三倍体とも一様に低率であった(第3表)。その原因についてはそれら品種群に内在している遺伝的な雄性生殖細胞致死のはたらきと考えられたが,さらに三倍体についてはそのゲノム構成の異常から生ずる不対合染色体による致死の存在も推定された。また,温和な温室区に比べて戸外晩咲のものが一層低率であることは,環境的不良条件が花粉の死滅を助長しているものと思われた。つぎに健全粒の大きさについては,三倍体のものは二倍体に比べてやや大きくあらわれているが,変異のばらつきはかなり大きくなっていた。 (5)前項と対照的に雌性生殖細胞の生死を推定するために,開花当日および開花5日後の子房内の胚珠を切断して卵装置の健否を観察した(第4表)。その結果,二倍体2品種では開花日に39.5~46.5%,5日後に36.0~36.8%の健全卵装置が存在しており,三倍体2品種では前者よりやや劣って開花日24.4~40.2%,5日後14.8~37.9%となっていた。 (6)本種は雌・雄ずいが花筒内に深く座しているため自然開花放任でほとんど種子をつけることなく,人手による自殖強制でも1花当たり二倍体で0.02~0.45粒,三倍体で0.13~2.33粒を結ぶにすぎず(第5表),多分に強い自家不和合性の存在を示している。つぎに,品種間交雑で他殖させると,二倍体×二倍体で1花当たり8.60粒をつけるぼかりでなく,三倍体と二倍体との交雑でも5.03~6.70粒の種子がえられた(第6表)。このように,三倍体が多少の程度で交雑種子を生産しうることは,今後の育種的展開に有効に利用されうる点であると思われる。
  • 岩田 伸夫, 大村 武
    1975 年 25 巻 6 号 p. 363-368
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    著者ら(1970)が形態的特徴によって分類した12型(A~L)の三染色体植物のうちの8型(A~H)と,12連鎖群の標識遺伝子とのF2における分離から,三染色体植物と連鎖群との関係を調査した。さらに,8遺伝子,すなわち,がま穂遺伝子Bp,扁平粒遺伝子rk,横斑葉遺伝子z,退色緑葉遺伝子A,淡緑葉遺伝子pgl,生理的病斑葉遺伝子spl1,盆栽稲型矮性遺伝子dBおよび細葉遺伝子nal2・nal3を新たに記載するとともに,それらの連鎖分析を行った。結果の概要はつぎのとおりである。 1. B型は,第I連鎖群に所属するwx,dp1,wsおよびClについて三染色体的分離を示した。よって,B型は第I連鎖群に対応する。 2. E型は,第II連鎖群に所属するlgの三染色体的分離によって同連鎖群と対応する。rkも同様にこの連鎖群に所属する。 3. F型では,第IV連鎖群に所属するd6,gおよびRcが三染色体的分離を示し,同連鎖群に対応する。 4. G型は,標識遺伝子la,spの三染色体的分離から第VIII連鎖群に対応する。zも三染色体的分離を示し,第VIII連鎖群に所属する。 5. H型と第VII連鎖群との対応は,Dn,dp2の三染色体的分離からえられた。Bpも同連鎖群に所属する。また,従来第V連鎖群に所属するとされていたI-BfもH型と三染色体的分離を示し,第VII連鎖群に包含される。 6. fi,pglは,C型とのF2で三染色体的分離を示し,一つの連鎖群を構成する。 7. slp1,dBおよびnal2は,ともにA型とのF2で三染色体的分離を示し,一つの連鎖群を構成する。また,従来第III連鎖群に属するとされていたrlも,同様に,この連鎖群に所属する。しかし,第III連鎖群に所属するlax,egは,A型とのF2で二染色体的分離を示した。 8.以上のように,7型の三染色体植物について,連鎖群との対応が明らかにされた。 9. D型では,上記の7連鎖群は勿論,eg(III),d1(VI),nl(IX),bl1(X),dl(XI)およびgl(XII)のいずれの遺伝子とも二染色体的分離を示し,対応する連鎖群が同定されなかった。
  • 高橋 隆平
    1975 年 25 巻 6 号 p. 369-372
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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