育種学雑誌
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28 巻, 1 号
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  • 松田 俊夫
    1978 年 28 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    収量の多い補充原料用タバコの育成は,専売公社の補充原料品種育成グループによりすすめられてきたが,その中で草型の異る数種の多収系統を固定することができた。それらの系統における草型および生育経過と収量との関係を調査するとともに,2,3の収量構成形質と収量との関係について,草型の異る系統群問で比較を行った。育成した多収系統は草型により次の4群に分類できた。すなわち,下位葉が大きく,ピラミッド様のうらこけした草型を示すPT1群,中位葉の伸長が大きいPT2群,上位葉の展開がよく,シリンダー様の草型を示すPT3群,および全葉位で標準品種を上まわり,草丈が高く,大型のシリンダー様の草型を示すPT4群である。PT1郡および2群は初期生育が旺盛で,前老はその後生育がにぶるが,後者は生育中期までそれを維持した。PT3郡および4群は初期生育が遅いが,中期に相対生長率のピークがあった。各系統群の収最は10アール当り,PT1群は367・4kg,PT3群は364・1kg,PT4群は390.1k9であり,標準品種の属するPT2群の312.8kgに対して16.4~24,7%上まわった。収量と葉面積および単位面積重との関係は,全系統ではそれぞれγ=0,789,γ=-0.093であったが,PT1群では葉面積が,PT2群では単位面積重が収量に大きく影響し,PT3郡およびPT4群は両形質が同程度に影響していた。50%多肥区における収量増加の割合は葉面積の小さいPT2群で最も著しく,節間の長い立葉のPT4群がそれに次いだが,葉面積展開の大きいPT1およびPT3群では比較的少く,少肥向の在来品種の増加割合と同程度であった。薬への乾物分配率は,育成系統の各群間には大差ないが,在来品種に比較して大きいことが認められた。以上の結果,各系統群間には,形態的な同化態勢の差があることが認められ,さらに,単葉の光合成能力や,光合成産物の転流のしかたなどにも差のあることが推定された。
  • 吉田 智彦
    1978 年 28 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    第I報では,オオムギ葉身気孔数と光合成速度に正の相関があり,気孔数を数えることにより光合成能力の高い個体を選抜できる可能性があることを報告した。本研究はこの光合成速度と気孔数との間の関係に理論的根拠を与えるために行なわれた。GAASTRA(1959)によれば,葉身の光合成速度(P)は,[numerical formula]と表わされる。ここで,(CO2)、:外囲空気のC02濃度,(C02)chl:葉緑体でのC02濃度・ra:C02拡散に対する空気抵抗,rs:気孔抵抗,rm:葉肉抵抗,である。(C02)chl=0と仮定され,ra,rsは蒸散速度から推定される。このGAASTRAの方法で求められたrs,rmの値は一般的にrmがrsよりかなり大きく,rsのみの変化は光合成速度に大きな影響を与えないものとされていた。しかしこの方法では呼吸を考慮しておらず,また(C02)chl=0と仮定しており,この両者共にrmを過大評価する。従ってここではFig.1のモデルによる葉身内での呼吸を考慮し,かつ(C02)chl=0の仮定をせずにrmを求める式を作り,その式に吉田ら(1975),吉田(1976)のデータをあてはめてrmの値を計算しなおした。
  • 鈴木 正一
    1978 年 28 巻 1 号 p. 21-32
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネの障害型冷害における繭および花粉異常の品種間差異を定量的に検討した。供試品種は日本型2品種(レイメイ;耐冷性強,全南風;耐冷性弱)および印度型1品種(Te-tep;耐冷性弱)である。低温処理は減数分裂期に4日間行った。(1)3品種とも裂開約数が減少し,それに伴い稔実歩合も低下した。とくに全南風およびTe-tepでその傾向カミ顕著であった。(2)締の移態異常として,発育不良蒲およびわん曲蒲が認められた。これらの異常繭の発生は全南風で最も多く,大締胞と小蒲胞との発育程度の異なる蒲が多数認められた。(3)1頴花当りの正常紡数は低温により減少し,全南風でその傾向が顕著であった。(4)蒲の形態異常の程度が増すに伴い,花粉稔性の低下が認められた。花粉稔性の低下はTe-tepで最も顕著であった。(5)発育不良菊胞,扁平胞およびタベート肥大胞の発生頻度と耐冷性との間に一定の関係が認められた。(6)不裂開紡では,裂開腔の未形成および形成不良が観察され,形態異常の繭では,大菊胞のみの裂開が観察された。以上の結果から,耐冷性の強弱とこれらの綿および花粉の異常との間に一致した品種間差異が明らかとなった。また,蒲の発育程度と花粉稔性との関係が明らかにされるとともに,蒲の不裂開における蒲組織の異常の意義が示唆された。
  • 近藤 勝彦, 頼川 道治, C R
    1978 年 28 巻 1 号 p. 33-48
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    栽培ツバキ属の各種,園芸品種およびそれらの雑種を用いて,栽培環境下での花粉母細胞の減数分裂を観察し,分裂異常の頻度と分布を調べた。その結果は表4にまとめて示した。栽培ツバキ属の減数分裂の異常は節間雑種に多くみられ,とくに異たる倍数種の間の雑種や,高次の倍数種の系統に多発することが明らかにされた。これらの異常は遺伝子の重複,不和合等によっておこるものと考えられるが,これが花粉形成を通じて,不稔性または部分的不稔性の一原因となると同時に栽培ツバキ属の進化の要因になっていることが指摘される。
  • 横尾 政雄, 菊池 文雄
    1978 年 28 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネの出穂期遺伝子座Lmが第I連鎖群でいもち病抵抗性遺伝子。Pi-ztと密接に連鎖していることを利用して,わが国の代表的な早生および晩生品種である「コシヒカリ」と「シラヌイ」の出穂期の遺伝分析を行った。コシヒカリおよびシラヌイと,早生の検定系統ER(工刎座に関する遺伝子型 Lme/Lme)および晩生の検定系統LR(Lmu/Lmu)との雑種F2集団における出穂期の変異を1〕{一戸に関する遺伝子型によって分割し,間接的に工刎座の効果を検討した。コシヒカリが早生であることは,主として工刎座の早生遺伝子工"によって決定されている。シラヌイの出穂期は晩生遺伝子Lmuよりもやや早生に働く対立遺伝子Lmsと,さらに晩生化に作用するLm座以外の遺伝子によって支配されている。Lm座は感光性を支配する遺伝子座であって,わが国の南北にわたる自然条件下の異なる日長に適応するように複対立遺伝子の分化を生じ,イネ品種の生態的分布に主動的役割を果してきたと推測された。
  • 辛 英範, 小川 紹文, 片山 平
    1978 年 28 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    近年,耐病虫性など野生種のもつ有用な遺伝子を栽培植物に導入することを目的とした新しい育種技術の確立が試みられ,すでに実用品種の育成に成功した例もある。野生イネのもつ有用遺伝子を栽培イネに導入する試みは,これからのイネ育種を進める1方法として,充分考慮されるべき問題の1つである。本報告は異種染色体添加型植物を作出するための基礎として,まず栽培イネの人為同質4倍体を育成し,これに近縁野生2倍程を交雑して,えられた異質3倍体sativa(AA)-puncta(B),sativa(AA)-intermediate(C)およびsativa(AA)-officinalis(C)について行った細胞遺伝学的・形態学的研究の結果をまとめたものである。体細胞で2n=36の染色体が数えられ,いずれの個体も明らかに人質3倍体であることを確認した。減数分裂は,PF126を除いて,各個体間で大体類似しており,MIでは大部分の細胞で12II+12Iを示す分裂像が,また,AIでは1価染色体による分裂異常が観察された。一方,PF126はMIで1II+34Iまたは36Iを示し,明らかに相同染色体間の不対合現象が観察され,以後の分裂に種々の異常が認められた。この染色体不対合がasynapsisであるかdesynapsisであるかは不明であるが,供試した同質4倍体の細胞質とO.officinalis(W1281)の核との何れか一方,または両者に不対合を誘起する遺伝的要因がある可能性が考えられ,その解明は今後の検討に期待したい。
  • 脇塚 巧, 中島 哲夫
    1978 年 28 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    胚珠培養法を育種に利用する場合,重要な課題は胚珠中の卵あるいは接合子あるいは前歴を正常に生育させることにある。従来の胚珠培養においては,いわば経験的な培養条件による成功例をわずかにみるに過ぎたい。そこで胚珠培養法を普遍的なものにするためには,自然状態の胚珠発育を観察する必要があると考えた。すなわち,自然において胚発育をとりまく珠皮を,環境として把握することにより,胚珠培養のための参考知見が得られると考えた。Petunia hybrida Vilm.の開花前日から7日後までの胚珠について,組織化学的手法によりでんぷんを観察した。すなわち過ヨウ素酸シッフ反応およびアニリンブルーによる二重染色,ヨードヨウ化カリウム溶液によるヨードでんぷん反応,あるいはデラフイールドのヘマトキシリンによる染色を行い,胚珠の発育過程とでんぷん蓄積について顕微鏡観察した。その結果,受精前の胚珠の珠皮にはでんぷんが全く認められなかったが,受精直後珠皮にでんぷんが出現した(Fig.1)。その後大量に蓄積したが,組織化した胚乳および初期球状胚が認められる頃,でんぷんは消失した。また'参考のためタバコについても観察した。やはり受精直後,珠皮にでんぷんが蓄積する現象が認められた(Fig.2)。一方,受粉後3日目または4日目に切りとり,それぞれ4日間または3日間培養した胚珠についても,同様に観察した。正常な初期球状胚ならびに正常な胚乳組織をもっている胚珠では,珠皮に多量のでんぷんが蓄積していたが,胚発育が認められない胚珠の珠皮のでんぷんは比較的少なかった(Fig.3)。このような発育していない胚珠においては,珠皮タベートの細胞が異常に肥大していた(Fig.4)。これは,正常な発育をしているこの時期の胚珠のタベートが,アニリンブルーでよく染色される薄い細胞から成るのに対し,著しく異なった。これらの観察結果は,胚のうへの養分供給の経路を示唆するものと考えられる。以上得られた結果と,胚珠培養において接合子の発育が培地の浸透値の影響を受ける(WAKIZUKA andNAKAJIMA1975)という事実とを考えあわせると,珠皮におけるでんぷん蓄積は,胚珠中の浸透価に関係していると考えられる。本研究は,胚珠培養において,胚や胚乳をとりまいている珠皮にも注目すべきで,珠皮を自然と同様に発育させる培養条件を検討する必要があることを示した。
  • 西山 市三, 藪野 友三郎
    1978 年 28 巻 1 号 p. 71-80
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    エンバク属10種(2x,4x,6x)を使用した種問正逆交雑74組合せからえた種子は,発育程度によってRd-,Rd+,D+,E-の4型に大別された。ごく少数の交雑組合せでは上記4型の中問型を示すものもあった。発芽力のある(+),なし(-)を基準にして前者を和合性,後者を不和合性の2群に大別することもできる。この交雑結果は下記の極核活性化説によって殆ど完全に解説することができる。一般に被子植物の有性生殖では雄核の活性化作用に対し,それに同調する雌核の反応作用によって,受精核は正常の活性状態に入る。自殖の場合には,活性化力:反応力の比は,極核では1/2=0.5(または50%)となり,これを活性化指数(正常指数)と呼ぶ。上記10種に相対的な活性化力として0.4から3までの格差を与えると,種間正逆雑種の活性化指数は7~375%と大きく変異してくる。概数で述べると,指数が20~80%であれば交雑和合性(Rd+,D+)となり,それを左右にのり越えると不和合性(Rd-,E-)となる。不和合の主因は胚乳の発育不良(Rd-)と異常発育・崩壊(E-)であって,胚子の死亡は胚乳の壊滅によっておきた2次的現象である。すなわち両親の活性化力の相異-極核の3核受精-極核(胚乳核)の異常活性-胚乳の発育異常・壊滅-種子の死亡という経過をたどるものであって,極核の3核融合に大きな比重がおかれている。以上の考察からNAVASHlN(1898)らの重複受精の発見以来80年間謎につつまれていた被子植物の極核の3核融合の意義とは,種間交雑を防御する生殖隔離作用としての自衛手段であることが判明した。
  • 後藤 虎男
    1978 年 28 巻 1 号 p. 81-82
    発行日: 1978/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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