育種学雑誌
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31 巻, 4 号
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  • 喜多村 啓介, 海妻 矩彦
    1981 年 31 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ダイズ約1,700品種・系統をSDSポリアクリルアミトゲル電気泳動を用いて分析した結果,主要蛋白成分の一つであり,含硫アミノ酸量の低い7Sグロブリンのサブユニット量カミ大幅に低下Lたダイズ2系統(秣食豆(公503),毛根)が見出された。秣食豆(公503)は7Sの主要サブユニット(α,α',β)のうちαとβサブユニットが普通品種の1/2~1/3量に低下し,毛根はα'サブユニットが完全に欠失していることが示された。ディスクゲル電気泳動法によって,もう一つの主要蛋白成分11Sグロブリン(含硫アミノ酸含量が比較的高い)と7Sグロブリン(含硫アミノ酸含最が非常に低い)の含量比を分析した結果,秣食豆(公503)および毛根の含量比は2.59および1.61であった。これは同時に分析した他の4品種(坂上2号,農林2号,ライデン,Amsoy)の含量比平均値(1・12)よりかたり大きな値を示した。一方,変異2系統の蛋白質含量は普通品種の含量と同程度であることが示された。このことは,ダイズ種子の蛋白質含量を低下させることなく,11S/7S含量比を大幅に増大し得ることを示唆しており,ダイズ蛋白質の質的改良をめざす育種計画にとって有利なことと考えられる。変異2系統の含硫アミノ酸(メチオニン十ツスチソ)含量は同時に比較として分析した上記4品種の平均値よりも約1・2倍高い値を示した。
  • 米澤 勝衛, 山縣 弘忠
    1981 年 31 巻 4 号 p. 360-366
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    優良因子が強く相反連鎖しているいくつかの場合について,育種コストが]定の下で有望遺伝子型がF。以降の各分離世代に保有される確率を求め,早~中期分離世代における世代促進の効果を検討Lた結果,このような相反連鎖が関与する場合においても,遺伝力が比較的大きい形質に関して初期世代から選抜を行たう育種方式の方が,F。あるいはそれ以降まで無選抜で世代を進める遅延選抜育種方式よりもいっぱんに効率的であると結論された。
  • 清沢 茂久, 池橋 宏, 加藤 肇, 凌 忠専
    1981 年 31 巻 4 号 p. 367-376
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    いもち病菌レースに対する清沢の判別品種と池橋がIRRIの品種のいもち病抵抗性型を代表するものとして選んだ品種のフィリピンのいもち菌菌株を判別する能力について検討した。清沢の判別品種は日本のいもち病菌菌株を判別するのに適当と考えられるが,フィリピン菌株の判別には適当とは考えられたかった。しかし,それらの品種は単一の抵抗性遺伝子をもつため,まだ判別品種が作られていたい国においては暫定的な判別品種としては利用しうるであろう。試験の中に加えられた品種統一のフィリピン菌株に対する反応はこの品種がPi-a,Pi-b,とPi-tをもつという仮説を支持している。
  • 藪谷 勤, 山縣 弘忠
    1981 年 31 巻 4 号 p. 377-382
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    アヤメ属(Iris)では,高い交雑不和合性のため種問交雑が概して極めて困難であり,胚培養の導入が望まれているが,本属植物の胚培養に関する知見はまだほとんどない。本報は,アヤメ属の胚培養に関する基礎的知見を得るために,ハナショウブ(I.ensata Thunb.var.ensata,2n=24)の一品種五月晴を用いて,胚の生長に及ぼす種々の培養条件の効果を調べたものである。ハナショウブの自家受粉後約60日目の種子より胚を取り出してこれを連続照明,約20℃の室内で60日間種々の培養条件下(Tab1e 1)で培養L,発芽率,乾物重,草丈および根長について調査した。その結果,ハナショウブ胚の発芽並びに生長にはpH4~5,蕉糖2%および寒天0.4~0.6%に調整したNitschの無機培地が最も良好であった。また,30ppmのペプトン添加は胚の生長に,また5ppmのジベレリン添加は胚の発芽にそれぞれ著しい効果を示した。しかし,これらの添加物がハナツヨウブの胚培養にとって不可欠のものとは認められなかった。
  • 高畑 義人, 角田 重三郎
    1981 年 31 巻 4 号 p. 383-394
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    生育立地を異にするアブラナ属および近縁属植物12種をARNONの水掛液を基礎培養液として砂耕L,NaC1無添加区の外,0.05M,0.1MのNaClを添加した区を設け,NaC1添加による葉光合成速度の低下の程度を指標にして,これらの植物の耐塩性を比較した。さらに葉の蒸散速度,クロロフィル含量,水分含量,NaおよびK含量を測定し,光合成速度との関係を調査した。光合成速度はNaCl添加によりすべての種で低下したが,低下の程度には種問差異が認められた。海岸に生育立地をもつ種は低下の程度が軽く,内陸に生育立地をもつ種は大幅に低下した。光合成速度の低下と蒸散速度の低下との問には密接た関係が認められ(O.05M,0.1M両区とも1%水準で有意た正相関),NaCl添加により大幅に光合成速度を低下した種は同時に蒸散速度も大幅に低下した。また,NaCl O・1M区で光合成速度の大幅に低下した種は水分合最を増加した(5%水準で有意な負相関)。クロロフィル含量の変化と光合成速度の低下との間には有意な関係は認められなかったが,Brassica属のFruticulosaサイトデームの種やSinapis属の種においては,両者間に正の関係がある傾向が認められた。NaC1添加により葉Na含量は著しく増加し,逆にKは減少した。光合成速度の低下とそれぞれ個々のNa含最またはK含最の変化との間には有意た相関は認められなかった。しかし,NaCl O.1M区でNa+K含量の増加程度の著しい種ほど光合成速度を低下していた(1%水準で有意な負相関)。NaCl添加により葉肉のNa+K含最が著しく増加した場合には,それに伴う浸透圧の増加が葉水分含量の増加をもたらす。しかし,高圧状態がたお解消できず,葉の生理的乾燥状態がつづいているために,葉のガス拡散抵抗を高めて蒸散速度を低下させ,それに伴って光合成速度をも低下させたものと推察される。
  • 松田 俊夫, 佐藤 経子
    1981 年 31 巻 4 号 p. 395-401
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    タバコの黄色品種および日本の在来品種合計130品種を用いて,わき芽発生特性の品種問差異を調査した。調査形質はground sucker(生育初期から中期までに下位節に発生するわき芽)の数と乾重,upstalk sucker(摘心後上位節に発生するわき芽)の数と乾重の4形質である。groundgsuckerの数は,個体あたり0.3から8.5本,乾重では0.10から8.42g,upstalk suckerの数は個体あたり2.1から10.7本,乾重では0.62から23.47gのそれぞれ変異がみられた。ground suckerの発生量の多いのは松川種内の各品種,Perevi,MCなど30品種,少ないのはBY 103,Virginia 115,白遠州他28品種であった。spstalk suckerの数および乾重とも多いのはCash,Consolation 402,Perevi他3品種,少ないのは大だるまVirginia 115,BY 101他8品種であった。調査4形質問の品種間相関はいずれも有意であった。分散分析表から求めた遺伝率はground suckerの数で0.784,乾重で0.873,upstalk suckerの数で0.732,乾重で0,676であった。
  • 森島 啓子, 岡 彦一
    1981 年 31 巻 4 号 p. 402-413
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    アジア各地から収集された多数の在来稲品種の中からランダムに選んだ89品種の11形質の品種問変異を主成分分析法によって分析した。その結果は,インド型・日本型の分化は複数の形質の組合せ様式に基いて認められるものであり,2型をはっきり分類するのに役立つ単独形質はたい,という岡(1953.1958)の主張が正しいことを示した。単独の形質を用いてインド型・日本型を分ける際の分類を誤る確率は形質によって異なるが,10個の量的形質の申では塩素酸カリ低抗性が最も低くて約3%,種子の長幅比が最も高くて約40%であった。3ないし4形質を組合せた判別函数を用いると分類を誤る確率はかたり低くなるが,なお少数の品種が中問型となる。雑種不稔性はインド型・日本型の分類には余り役にたたたかった。この研究の分析に用いた全形質変異の約半分がインド型・日本型の分化に関与していた。さらに,従来の研究から明らかにされた12座位28対立遺伝子の頻度のデータに基いて遺伝的近縁度(genetic identity)を推定Lたところ0.62であった。インド型・日本型の分化には多数の遺伝子が関与していると思われる。
  • 武田 元吉, 関口 忠男, 倉井 耕一, 瀬古 秀文
    1981 年 31 巻 4 号 p. 414-422
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1967年に栃木県農試で開発した育種試験用麦芽製造装置に,さらに改良を加えて1978年に新型を作製した。この装置の特徴は;1)浸麦工程と発芽工程を1種類の機器で実施すること,2)試料を静置し,かくはんは手操作に頼ること,3)試料を静置するため,試料容器棚の変更が容易なので,250g製麦(40点同時に製麦),40g製麦(126点)および15g製麦(308点)などの各製麦タイプを1種類の機器で実施できること,4)試料容器を円筒にしたこと,5)各試料の浸麦度をほぼ一定にするため,試料をいくつかのグループに分けて浸麦開始時刻を自動的にずらすことができることなどである(Fig.1)。このうち,4)と5)は1978年に改良した事項である。各製麦タイプに適した浸麦度を明らかにするために,浸麦度を約42%から45%ないし46%まで増加した結果,浸麦度の相違により,250gおよび40g製麦の麦芽エキスには有意差が認められなかった。しかし,その他の麦芽品質は明らかな影響を受け,測定値の総合的な結果から40gおよび15g製麦では,250g製麦よりも低い浸麦度に抑えることが適切であると推定された(Fig.2,Table 1)。また,育種試験の系統適応性検定材料を供試し,250g,40gおよび15g製麦間で品質分析結果の相関関係を調査したところ,麦芽の歩留りを示す麦芽収量率以外の麦芽品質ではかなり高い正の相関関係が認められた(Table2)。さらに,新品種候補系統と比較品種について,250g製麦と民間会社では小量パイロット製麦(1kg)との品質分析結果を比較したところ,両者の間には正の相関関係が認められた(Fig.3)。以上のことから,本報の小量麦芽製造装置を育種試験に利用する際の問題点について考察を行なった
  • 山田 利昭, 堀野 修
    1981 年 31 巻 4 号 p. 423-431
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    国際稲研究所(IRRI)で育成されたIR28,IR29およびIR30は,日本産白菜枯病菌IおよびV群菌に対して,幼苗期から高度の質的抵抗性を示すことが知られている。これらIR品種の抵抗性の遺伝子分析を行った結果,IおよびV群菌に対する抵抗性は各々1個の優性主働遺伝子に支配されること,および両遺伝子は組換価2.1%で密接に連鎖していることが明らかとなった。これら抵抗性遺伝子と,IおよびV群菌に対する既知の抵抗性遺伝子Xa-1およびXa-kgとの関係を調べた結果,供試IR品種のI群菌に対する抵抗性三の遺伝子はXa-1遺伝子座上の遺伝子であり,V群菌に対する抵抗性の遺伝子はxa-kg遺伝子座上の遺伝子であることが明らかとなった。しかしながらXa-1およびXa-kg遺伝子はそれぞれIおよびV群菌に対して,幼苗期には感受性ないし感受性に近い反応を示すことが知られている。したがって,IおよびV群菌に対して幼苗期にも抵抗性反応を示す供試IR品種の抵抗性遺伝子は,それぞれXs-1およびXa-kg遺伝子とは異たる遺伝子であり,複対立遺伝子として区別して扱われる必要がある。そこでIR28,IR29およびIR30のI群菌に対する抵抗性の遺伝子をXa-1h,V群菌に対する抵抗性の遺伝子をXa-kgh と命名した。
  • 東 正昭
    1981 年 31 巻 4 号 p. 432-437
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 川口 数美, 吉田 智彦
    1981 年 31 巻 4 号 p. 437-439
    発行日: 1981/12/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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