育種学雑誌
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31 巻, 3 号
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  • 米澤 勝衛, 山縣 弘忠
    1981 年 31 巻 3 号 p. 215-225
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    育種の実際場面では通常,個カの分離集団の遺伝的変異の大きさや性質を推定するための時間的労力的余裕がないため,交配組合せ間の選抜は,育種目標にそうと思われる有望表現型個体の有無によって行わざるを得ない。本報では,このような基準によるF2集団間選抜の可否を理論的な立場から検討した。2つの選抜モデル,すなわち,ある選抜対象形質について有望と思われる表現型個体が認められない組合せはF2の時点で完全に棄却する(有望表現型個体を含む組合せについては,その個体を選抜する)方法と,F3まで維持する(有望個体を含む組合せについては上記と同様)方法を想定し,供試組合せ全体としての育種コストあるいは個体数が同一の条件下で,育種目標に関与する全形質について有望な遺伝子型がF3集団に保有される確率を比較した。
  • 森 宏一, 高橋 萬右衛門
    1981 年 31 巻 3 号 p. 226-238
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    インド型イネ品種“Karalath",“Chamock"および“Dalashaita"を日本型イネの検定用系統およびインド型イネの“Surjamukhi"と交雑し,花青素の基本着色遺伝子に関する遺伝分析を行った。これまでのC一A一P遺伝子体系をそのまま適用した限りでは,上記の交雑F2集団において,両親の着色型から期待される正常分離を示す場合の外に期待外の着色型あるいは分離比を示す場合があった。そこで遺伝機構を説蔓月するために,CおよびP座に新しい対立遺伝子を仮定した。すなわち“Karalath"からはC脱,PKを,“Charnock"からはCBc,Pcを,そして“Da1ashaita"からはCBKおよびPKたる対立遺伝子を想定した。これらの対立遺伝子と従来の対立遺伝子との優劣関係は次のとおりである。[numerical formula]なお,分布遺伝子PKはPよりも〓先への分布能カが劣り,PCはPKよりも更に分布能力が低い。上述の遺候子仮説に基づくなら,本実験で供試したほとんどの組合せについて,そのF2分離を統一的に説明できる。またF3検定を行った5交雑組合せの内では3組合せでこの遺伝子仮説が支持された。残りの2組合せではF3系統比に関し適合度が必ずしも高くはなかったが,F3系統内での分離そのものは期待される分離であった。
  • 綱井 徳夫
    1981 年 31 巻 3 号 p. 239-250
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    日本稲の主要70品種の感温性,感光性,基本栄養生長性の近似値を人工光環境調節装置を用いて調査し,各地域品種の特徴を検討した。供試品種を早生・中生・晩生品種群に.3分し,5月1日から15日間隔で3回播種日を変えて栽培し,品種の出穂日数を求めた。これらの品種群の出穂性を制御する要因について重回帰分析から以下の結果を得た。北海道地方に分布する品種及び東北と北陸地方の早生種は,感温陛と感光性が弱く,基本栄養生長性は短い。これらは日本稲の早生品種群を構成した。早生品種群の普通栽培下の出穂性の制御に最も強く関与するのは感光性であるが,栽培期問の日長が短い晩期栽培では基本栄養生長性の作用比率は感光性にまさる。しかし感温性は出穂性に関与しなかった。東北地方に分布する品種及び北陸と関東・東山地方の一部の品種は,基本栄養生長性が長く,感温性はやや強く,感光性は中位であり,日本稲の中生品種群を構成した。中生品種群の出穂性に及ぼす感光性の作用比率は,早生品種群より著しく増加し,晩期栽培下においても基本栄養生長性より大きかった。この品種群の感温性もその出穂性に関与しない。西南暖地に分布する帰種及び関東・東山と北陸地方の晩生種は感温性と感光性が強く,基本栄養生長性は短い。これらは晩生品種群を構成した。晩生品種群の出穂性の主要な制御要因は感光性であり,感温性と基本栄養生長性の関与は認められなかった。これより日本稲の出穂性の制御要因は感光性と基本栄養生長性であり,出穂性に及ぼす感光性の作用比率はきわめて大きい。基本栄養生長性の出穂性に及ぼす作用比率は感光性の弱い早生品種群(高緯度品種)ほど大きくかつ栽培期問の日長が短い条件(晩期栽培,低緯度地への移動)ではさらに増加した。また感光性の弱い品種ほど感光性と基本栄養生長性の出穂性に及ぼす作用比率の栽培期の日長変化に伴なう変動は著しい。
  • A.K. JAIN, R.K.S. RATHORE, 木下 俊郎, Toshiro KINOSITA
    1981 年 31 巻 3 号 p. 251-260
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    パンコムギの近縁種Triticum timopheeviの細胞質を置換して作成した雄性不稔系統`Nadadores'(米国コロラド州カーギル研究農場産)を細胞質提供親として,インドの在来鼎種6種とそれぞれ交配し,さらに各在来品種を連続戻し交配して6種の雄性不稔系統を育成Lた。これらと原品種`Nadadores'とを用いて,花粉退化に至るまでの葯の発育異常について比較観察を行った。まず,原品種'Nadadores'における葯の発育異常では,(1)時々減数分裂期以前に,タベート細胞の肥大を生じ,花粉母細胞の退化を起こすことがある。(2)大部分の小花で起こる現象として,開花に至るまでタベート組織が崩壊せずに残存する。そのため,小胞子の外皮の発達が抑制され,不完全花粉を生ずる。(3)時には,小胞子形成初期にタベート細胞が放射状に肥大し,小胞子を圧迫して退化せしめる。一方,インド在来品種の核より成る6種の雄性不稔系統でも上記のようなタベート異常を生じたが,その外に,下記の如き異常を生じた。(1)減数分裂期初期にタペート組織の崩壊に伴い,花粉母細胞や花粉四分子が崩壊する。(2)減数分裂期以前または以後の時期に,タペート組織が周辺偽変形体(Pseudo-periplasmoditm)を形成し,小胞子の異常を起こす。
  • 工藤 政明, 古賀 義昭
    1981 年 31 巻 3 号 p. 261-272
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    パイナップルは自家不和合性植物であり,増殖は果実頂部に発生する冠芽(1本),果実首部に発生する裔芽(2~3本),主茎上に発生する吸芽(1~2本)および塊茎芽(0~2本)を利用しているが,増殖率が低く栽培,育種上問題である。本報ではパイナップルの急速増殖を目的として,花芽のモルファクチン処理による栄養芽誇発効果を検討した。供試品種は裔芽発生の少ないタイ国系優良系統であり,モルフアクチンは植物の形態形成に強い調節的作用で知られている。処理はまず材料が花芽分化の直前の状態に達した時期に,エスレル500ppm水溶液を個体あたり20ccずつ2日連続して茎頂部に冠注し,花芽の同調分化を強制したのち,4時期の花芽発達段階に80および100ppmのモルファクチン水溶液を茎頂部に冠注処理した。その結果,処理した花芽から発達した果実上に,自然には発生しない栄養芽が多数発生した。この栄養芽は,1個の小果上に2次的に数個の異常小果が形成され,これが集合して小形の果実様体となり,その頂部に発生した。ここではこの栄養芽を便宜上果実芽(buds-from-fruit)とよぶ。いずれのモルフアクチン濃度区においても,エスレル前処理後6~12日目の発達段階の花芽に対するモルファクチン処理が高い果実芽誘導効果を示し,処理個体の80%以上が果実芽を着生した。1果あたり平均果実芽数は6.5~15.7で最高教は32であった。モルフアクチン処理によって果実芽を誘発した小果の果実上の位置は処理時の花芽分化段階と平行して移動し,モルファクチンが作用する花芽の適発達段階の存在を示唆した。この適発達段階は解剖顕微鏡下で認められる花芽原基分化期以前にあると推定された。モルフアクチンは,果実芽誘導効果の他に,裔芽および吸芽の増発効果,花芽の抽出遅延および巻葉化作用も示した。以上,モルフアクチンによりパイナップルの果実上に栄養芽を誘発することを明らかにしたが,増殖技術の実用化のためにはなお検討すべき点が残されている。
  • 一井 真比古, 桑田 晃
    1981 年 31 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    水稲における再生の育種的利用を検討するため,水稲30品種を供試し,出穂後10,20,30および40日に地際より5cmで地上部を剪除し,剪除後40日に再生重,再生草丈および再生茎率を調査した。再生重,再生草丈および再生茎率のいずれもは、剪除時期が出穂後10日から20日へ移動するに伴い,顕著に減少したが,その後はおおむね増大するようであった。分散分析の結果,再生重,再生草丈および再生茎率が品種固有の遺伝的特性であることを示唆した。また出穂後10および20日に剪除したときの再生重,再生草丈および再生茎率は豊熟歩合と有意な正の表現型相関を示した。遺伝力(広義)も再生重,再生草丈,再生茎率の順に高くなり,とくに再生茎率の遺伝力は稈長,穂長または1穂頴化数のそれに匹敵するほどであった。以上の結果から,水稲の再生,たとえば出穂後10日に地上部を剪除したときにみられる再生茎率を調べることにより豊熟歩合を容易に検定できることが示唆された。
  • 池田 良一, 金田 忠吉
    1981 年 31 巻 3 号 p. 279-285
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    トビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph1, bph2, Bph3 およびbph4の相互関係を明らかにするため,各遺伝子を代表する抵抗性品種Mudgo,ASD7,Rathu HeenatiおよびBabawee問で相互交配を行なった。バイオタイプIのウンカ(上記4品種のいずれも抵抗性を示す)を用いて,F1,F2およびB1F1世代における抵抗性の分離を調べたところ,(1)Bph1とbph2ならびにBph3とbph4は密接に連鎖しているか複対立遺伝子のいずれかであり,(2)Bph1とBph3,Bph1とbph4,bph2とBph3ならびにbph2とbph4は互いに独立であると推定された。このことから,互いに独立な2遺伝子ずつの集積は比較的容易であるが,密接に連鎖しているか複対立の関係にある2遺伝子の集積は困難であると結論された。また,未同定の抵抗性3品種の遺伝子分析を行なった。まずAndaragahawewaがBph1,PTB34がbph2をそれぞれ持つと推定された。次にPTB21はBph1とbph4かbph2とBph3のいずれか2遺伝子を持つと考えられたので,PTB21由来のF3系統をバイオタイプ別に検定したところ,バイオタイプIとII(Bph1をもつ品種を加害)には抵抗性(分離)を示す反面,III(bph2をもつ品種を加害)には抵抗性を示す系統がなかった。したがってPTB21はbph2とBph3をもつと結論された。一方,Bph3およびbph4の座乗染色体を明らかにするため,トリソミック分析を行なった。九州大学から導入された9種類のトリソミック系統にRathu HeenatiまたはBabaweeを交配し,F2世代における抵抗性の分離をみた。Bph3およびbph4はいずれもトリソミックC型系統とのF2において,3:1または1:3の比とは有意に異なる分離を示し,C型系統の過剰染色体である第7染色体に座乗すると推定された。
  • 奥野 員敏, グローバー デイビッドブ.
    1981 年 31 巻 3 号 p. 286-292
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    スウィートコーンの質的改良に関する基礎的知見を得るため,トウモロコシの胚乳形質に関与する遺伝子sugary-1(su1),brittle-1(bt1)およびそれらの2重劣性型舳su1bt1の炭水化物合成に及ぼす作用を明らかにする。su1をもつスウィートコーンの自殖系WI453,WI5125にbt1をもつデントコーンの自殖系Oh43を交雑し,6回の連続戻し交雑後に選抜されたスウィートコーンの遺伝的背景をもつ同質遺伝子系統を供試した。同質遺伝子系統間のF1雑種の自殖F2種子を受粉後16目目より2日おきに採取し,生体重,乾物重,還元糖,ショ糖,水溶性多糖類(WSP),澱粉の豊熟に伴なう消長を調べた。生体重は受粉後25日までいずれの遺伝子型でも増加し続けるが,それ以後のbt1,su1bt1での生体重の減少は著しく,顕著なしわ粒となった。su1では受粉後34目まで正常型よりも高い生体重を示した。su1の乾物重は正常型と同様に成熟期まで増加したが,37日以後の両者の差は明瞭となった。bt1,su1bt1の乾物重の増加は豊熟初期に停止した。su1,bt1,su1bt1の最終乾物重は正常型の78,40,29%であった。豊熟初期におけるbt1,su1bt1の還元糖およびショ糖含量はきわめて高く,受粉後22日ではsu1の約5倍のショ糖含量を示した。スゥィートコーンのtextureに関連する重要な成分であるWSPの含量はsu1で特異的に高く,豊熟初期のsu1ではショ糖が主にWSPに変換されることを示唆する。軌のWSP含量は正常型と同様にきわめて低かった。su1bt1のWSP含量は受粉後19日および22日の平均値で1粒当たり4.0mgであり,su1の約16%であった。su1bt1のWSP含量はbt1の約2倍であった。su1,bt1,su1bt1では澱粉合成が抑制され,最終的な澱粉含量は正常型の53,20,6%であり,正常型よりも著しく減少した。2重劣性型su1bt1結果は炭水化物の生成に関して,bt1,はsu1に対して上位であることを示す。これまで,スウィートコーンの育種は澱粉合成を抑制し,胚乳内に多量の糖を蓄積する効果をもつsu1,sh2などの遺伝子を利用して行なわれてきた。sh2はsu1に比較して,ショ糖含量を増大させることには有効であったが、su1に特徴的た成分であり,スウィートコーンのtextureに関連するWSPをほとんど含まない欠点がある。本研究において得られた結果から,糖含最を増大さ竜,かつWSPをある程度保持する新しいスウィートコーソを育成するための素材のひとつとして,2重劣性型su1vt1が有効であると結論した。
  • 池橋 宏, 清沢 茂久
    1981 年 31 巻 3 号 p. 293-301
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    一般に圃場抵抗性はレースや菌糸による変動が少ないとされ,いもち病抵抗性育種の主要た対象とされている。しかし圃場低抗性がレースについて特異的であるとする報告もある。ここでは外国から得た菌糸と日本の菌糸を用いて,日本の品種の圃場低抗性を調べた結果を報告する。1980年4月にフィリピンにある国際稲研究所(IRRI)の葉いもち検定圃場から罹病葉を収集し,輸入した。これらの罹病葉から単胞子分離により,約80の菌株が分離された。これらの菌株は,清沢(1979)の判別品種と,IRRIで低抗性の型が異なるとして選定された系統およびその他の計20品種に対する接種試験に供試された。その結果から,ここではpi-aを侵す3菌糸を,IRRIの系統の抵抗性に判別力のあるものとして選定した。比較のため,日本のレースとして,P-2bおよび愛73-134-z+を供試した。供試品種は,農林6号と同8号に関係のある品種群,愛知県の稲橋で育成された品種および陸稲などである。このうち藤坂5号では,愛73-134-z+以外の菌糸には真性抵抗性が働いていた。供試種子は農技研種子貯蔵管理室より得たものである。
  • 上島 脩志
    1981 年 31 巻 3 号 p. 302-315
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    互いに異なる節間構成の型を示す5つの優性系統,すなわちM342,三系10号,短銀坊主,小丈玉錦および小粒神力と,これらに遺伝的関係の深い4つの正常稲,すなわち農林8号,綾錦,玉錦および神力11号を用い,上から5つの節間内の大維管東に沿って縦に並ぶ1層の柔細胞層(A層)と,これから空隙側へ数えて3列目の柔細胞層(B層)の細胞長と細胞数を測定して,種々の優性遺伝子がこれらに及ぼす影響を明らかにしようとした。嬢性系統のうち,M342は第3以下の下位節間が,三系10号と短銀坊主は第1節間が,小粒神力は第2以下の節間が著しく短縮し,小文玉錦は全節間が一様に短縮する型であった。いずれの品種も,長さが4cm以上の節間では,両細胞層とも節間中央部たいしそれよりやや基部側の細胞が,節付近の細胞に比べて著しく伸長しており,その程度はB層で大きかった。このようによく伸長した節間の節間全域にわたる平均細胞長は,両細胞層とも節間によって異なるが,A層では45~70μm,B層では65~95μmの範囲にあった。これに対して,M342,小文玉錦および小粒神力にみられた2.5cm以下の節間の平均細胞長は,A,B両層とも25~45μmと非常に短かった。また小丈玉錦,三系10号および短銀坊主の第1節間の細胞長も,他の系統のそれより有意に短くなっていた。しかし,これらの節間を除外すると,いずれの節間でも正常稲と優性稲問で細胞長に有意差がなく,各節間長と細胞長との間にも有意な相関が認められなかった。一方,品種あるいは節間が異なることによる細胞数の違いは,各節間長の違いを非常によく反映していた。特に,優性稲の各節間が正常稲の対応する節間に比べて短いのに応じて,それぞれの節間の細胞数も優性稲の方が少なくなっていた。そして,節間長と細胞数との問には高い正の相関関係があった。以上のことから,ここで用いた品種に関与する優性遺伝子は,節間によっては細胞の伸長を抑制する場合もあるが,一般に,節間伸長の過程で細胞の重層分裂を抑制し,その結果として節間の短縮をもたらすものと考えられた。
  • 佐藤 光, 大村 武
    1981 年 31 巻 3 号 p. 316-326
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネの胚乳成分に関する突然変異はもち以外ほとんど知られていない。そこで,イネの胚乳戌分に関する育種素材の開発を目的とし,3種の化学突然変異誘起剤,エチルメタソスルフォネート(EMS),エチレンイミン(EI)およびメチルニトロソウレア(MNU)を用いて,種子浸漬処理および受精卵処理を行ない,もち,曇り胚乳(dull),粉質,心白,凹み胚芽し,死水様および巨大胚など,胚乳や胚の形質に関する多様な変異体を得ることができた。種子浸漬処理では,EMSが最も効果が高かった(表1)。MNUは種子浸漬処理ではそれほど効果的でないが,受精卵処理では高い効果を示した(表2)。受精卵処理法は,M1でほとんどキメラを生じないので,M2での変異体の分離比はメンデルの理論比によく適合し,M2で容易に変異体を選抜することができる。したがって,本拠迎法は胚や胚乳成分に関する突然変異を得るには最も有効な方法であると考えられる。なお,誘起した胚乳突然変異は,2対の劣性同義遺伝子によって支配されると考えられる粉質突然変異CM2055を除き,すべて単劣性、遺伝子によって支配されていると考えられる(表3)。
  • 秋浜 友也
    1981 年 31 巻 3 号 p. 327-331
    発行日: 1981/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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