育種学雑誌
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33 巻, 1 号
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  • 梶浦 一郎, 中島 政順, 酒井 雄作, 大垣 智昭
    1983 年 33 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ニホソナシ栽培品種の起源と地理的分化を明らかにするため,ナシ属の種,東アジア産の栽培品種,日本の野生系統等の葉中に含まれる種特異的たフラボノイドをぺーパークロマトグラフィーにより調査した。中国大陸東北地方と朝鮮半島中北部に産する秋子梨(P.ussuriensis)と日本の東北地方産のイワナヤマナシ(P.aromatica)の野生種及び同種に属する栽培品種に,UV光下で鮮黄色の蛍光を発するフラボノイドが存在した。ところが,このフラボノイドは他の東アジア産ナシ属種,ヨーロッバ,地中海沿岸地方原産種とその栽培品種中には検出されなかった。発色やRf値等より,本フラボノイドはフラボノール・アグリコン(F-Ar)と推定され,前記2種に種特異的なフラボノイドと見なされ,ナシ属化学分類の有効な一指標になると思われた。 本フラボノイドが検出された日本の在来品種の起源は東北地方に,同じく野生系統の起源は関東,中部地方,並びに岩手県にそれぞれ局在Lた。関東,北陸,九州地方の在来品種には本フラボノイドはほとんど検出されず,本フラボノイドの日本における分布はイワナヤマナシの原産地とかなり良く一致した。更に,江戸時代末期から大正時代にかけて発見されたほとんどの品種からは本フラボノイドは検出されず,二十世紀を含む5品種に限って見い出された。
  • 故雫田 直紀, 山元 階二, 中島 哲夫
    1983 年 33 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    遠縁交雑により有用遺伝子を栽培種へ導入する場合に,まず雑種を得ることの困難性が問題となる。また,たとえ雑種が得られても,交雑により同時に持ち込まれた好ましくない遺伝子の除去が必要である。これらの問題を同時に解決する一つの方法として,放射線を照射して染色体の断片化をはかった花粉を授粉し,花粉親のゲノムの一部だけを導入した「部分雑種」を,胚珠培養法を利用して作出することが考えられる。本実験では,通・.常の交配では雑種を得ることが困難である Nicotiana rustica × N.tabacum の組合せについて、上述の方法による「部分雑種」作出の可能性を検討した。 N.tabacum の花粉を137Csガンマー線で照射し(5~40kR,2.5kR/min),あらかじめ除雄した N.rustica に授粉した。授粉後6~7日目に.胚珠を剔曲して胚珠培養を行ない,雑種値物を育成した。 照射花粉の人口培地における発芽実験から,発芽ならびに花粉管の伸長には放射線の影響が見られなかった。一方,花粉管内の核の観察から,精核の一染色体の断片化が起っていることが示唆された(Table1)。
  • 原田 久也, 豊川 泰文, 喜多村 啓介
    1983 年 33 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ダイズ11Sグロブリンの最も等電点の低い酸性サブユニットであるA5サブユニットの遺伝様式を4つの組合せのF1,F2種子を使って解析した。各種子ごとに粗11Sグロブリン画分を調製して電気泳動的に分析をおこなった。同時にこれらの種子の一部を使ってA5サブユニットと塩基性サブユニット,11Sグロブリン組成,11S/7S比,種子タンパク質含量との遺伝的関連性を分析した。A5サブユニットの存在量は一対の対立遺伝子(Gl1,gl1)によって支配されていて,Gl1Gl1で最も多く,Gl1gl1ではGl1Gl1の約半量,gl1gl1では零であることがわかった。A5サブユニットと特定の2つの塩基性サブユニットの有無は常に平行していたので,これらのサブユニットの構造遺伝子はきわめて強く連鎖していてGl1を構成しているかまたはこれらのサブユニットの合成がGl1とgl1によって同時に調節されていることが示唆された・これらのサブユニットが存在すると等電点の最も低い11Sグロブリン分子種が存在し,サブユニットが欠失しているとこの分子種は存在しなかった。11S/7S比はGl1の遺伝子量と強く関係していて,Gl1Gl1・で最大・gl1gl1で最小となり,Gl1gl1ではこれらの中間であった。これらのことからGl1は11Sグロブリン分子種の多様性を増加させ,11S/7S比を高かめることがわかった。Gl1Gl1,Gl1gl1,gl1gl1の間で種子タンパク質含量に有意な差がなく,11S/7S比と種子タンパク質含量の相関も有意でなかった。従ってこれらの遺伝子は種子タンパク質含量に影響を及ぼさず,11S/7S比を増加してもタンパク質含量が減少しないものと考えられる。
  • 清沢 茂久, 照井 義宣, 凌 忠専, 許 文会
    1983 年 33 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    IRRIのイネ品種IR1905-81-3-1を共通の低抗性親とする3つの交配組合せについて、F3世代でいもち病菌の2つのフィリピン菌系と1つの日本菌系を用いて抵抗性の分離を観察した。第1の組合せ,IR1905-81-3-1×IR32はフィリピン菌糸Ph80-50に対してはIR1905-81-3-1の中に1つの主働遺伝子と1つの徴働遺伝子を,IR32の中に1つの徴働遺伝子の存在を仮定することにより説明された。 第2の組合せIR1905-81-3-1×IR2071-586-5-6-3では同じくPh80-50に対してIR1905-81-3-1中の2つの微働遺伝子,IR2071-586-5-6-3中の1つの徴働遺伝子によって説明された。 また第3の組合せIR1905-81-3-1×IR36のPh80-50に対する分離についてはIR36中にIR1905-81-3-1中の抵抗性遺伝子を抑制する抑制遺伝子も考えたい限り説明できたかった。むしろ親として用いたIR36が交配に用いたものと違うものと考えられた。 第1の組合せは第2のフィリピン菌糸Ph80-64に対して第1の菌糸の場合とは全然異なる分離を示し,3つの補足遺伝子の存在を暗示した。これらの結果から,IR1905-81-3-1は3つ以上の抵抗性遺伝子により.支配され,それらの遺伝子作用の発現は主働遺伝子的な効果から補足的に働らく微働遺伝子的な効果まで使用菌系,環境条件により大きく変るものと考えられた。何れの組合せも日本菌糸研53-33に対しては分離を示さずこれらの品種中にこの菌糸に対して働く共通の遺伝子をもつものと考えられる。
  • 池田 良一, 金田 忠吉
    1983 年 33 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネのトビイロウンカ抵抗遺伝子Bph1の所属連鎖群を同定するために,九州大学から譲り受けたトリソミック系統にBph1をもつ中間母本系統関東PL1または関東PL4を交配した。得られたF1株の花粉母細胞減数分裂の第一分裂中期における分裂像を検鏡してトリソミックと確認後,袋かけして異花粉の混入を防ぎ、各F1株ごとに採種した。F2集団の各個体については,検鏡観察によるダインミックとトリソミックの2群に分けることなく一括してトビイロウンカ抵抗性検定に供試した。抵抗性の検定は,バイオタイプI(野生型)のウンカを用い,集団幼苗検定法によった。 Bph1 は,岩田・大村(1975,76)によるトリソミックA,C,GおよびH型の4系統との交配組合せの F2ではいずれも3:1の比に適合し,ダインミックの分離を示したが,E型系統との交配組合せでは3:1の比に適合せずトリソミックの分離を示した。したがって,Bph1はE型系統の過剰染色体である第11染色体に座乗するものと推定された。第11染色体に対応するのは第II連鎖群である。 筆者らは,1973年以来標識遺f公子利用によるBph1またはbph2の連鎖分析を実施してきたが、11の、連鎖群(第IX連鎖群は未検定)に所属する25の標識遺伝子とはいずれも独立の関係にあった。第II連鎖群に関してもlgおよびd-11とBph1とは独立と推定されている.しかし,ここでトリソミック分析の結果を踏まえて再度bph2(Bph1と密接連鎖か複対立の関係)と第II連鎖群所属の3遺伝子との連鎖について分析したところ,bph2はlgやPl-1とは独立と推定されたもののかd-2とは組換価39.4%で連鎖していると推定された。
  • 中島 皐介, 望月 昇
    1983 年 33 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    単為生殖(無胞子生殖で偽受精)種の暖地型牧草ギニアグラスで後代検定法により探索された有性生殖個体とその後代個体について,SAVIDAN(1975)の方法により胚珠に一含まれる胚嚢の数・形態を調査し,有性生殖の程度を求めた。開花直後の小花(各個体20小花以上)を採取,固定し,乳酸・砲水クロラール・フェノーノレ・オイゲノール。キシレン混合液(重量比2:2:2:2:1)に24時間浸漬した後,小花から雌蕊を摘出,カバーグラスで封じて内部の胚珠の状態を検鏡した。 有性生殖の胚嚢は8核性,無胞子生殖の胚嚢は4核生で,両者は,反足細胞の有無,極核の数,形成される.位置などから容易に類別された。多胚嚢を持つ胚珠が数多く観察された。ギニアグラスでは,双子植物はほとんど見出されないため,複数の胚嚢のうち強勢たものが胚または幼植物になると考え,その胚嚢の形態から胚珠の生殖様式を決定した。また胚嚢が全く形成されない胚珠や未熟の胚嚢をもつ不稔の胚珠が観察された。 胚嚢の形態による有性生殖の程度は,不稔胚珠を除いた観察胚珠中で,有性生殖を示す胚珠の占める割合として表わした。
  • 新関 宏夫, 福井 希一
    1983 年 33 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    アミノ酸の類似物質であるパラフルオロフェニルアラニン(PFP)が体細胞で一染色体数を減少させることはコウジカビ,酵母などでは知られているが高等植物ではわずかにスグリ,トールフェスクとイタリアンライグラスの雑種などで知られていたにすぎない。著者らはイチゴの組織培養にPFP処理を加味してPFPがカルス形成および体細胞染色体の減数に及ぼす効果について検討した。その結果,葯由来の8倍性カルスではPFPの濃度の上昇に伴う著しい阻害効果がカルスの誘導率,生長率の両方に認められ,55mg/1の濃度でカルス誘導率は0になった。カルス誘導率を50%にする濃度,RD50は30mg/lと算定された。葯,葉柄,茎頂などの器官より誘導したカルスから57の再分化植物体を得た。PFP処理区に由来する再分化個体には染色体数が7本減少した個体が多く含まれていることが明らかとなり,PFPがイチゴ体細胞における染色体減数に効果があると結論された。
  • 東 正昭, 堀末 登, 斎藤 滋, 渡辺 進二
    1983 年 33 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    穂いもち圃場抵抗性の遺伝様式を解明するため,2組の二面交雑セットのF2およびはつかおり/越南102号のF3・F4系統の検定と結果の解析を行った。まず4品種・系統間の二面交雑F2集団の穂いもち発病程度を調べたところ,集団平均値は両親のほぼ中間で,正逆交雑の間に差はみられなかった。つぎに7品種。系統間の正逆交雑を含まない二面交雑のF2ダイアレル分析の結果,穂いもち圃場抵抗性に関与する遺侯子の相加効果が大きく,優性効果は重要でなく,エピスタシスは認められなかった。そして広義および狭義の遺伝率の推定値はそれぞれ0,752,O.666と比較的高かった。さらに穂いもち抵抗性に強いはつかおりと,弱い越南102号の交雑から得られたF3系統は,穂いもち発病程度に関し,両親の中間を頂点とする正規分布型の分離を示した。そしてF3-F4親子相関はγ=O.675**,広義の遺伝率の推定値はO.628~0,797といずれも比較的高く,F4における分離系統群の割合から推定した有効因子数は2~4であった。またこれらと同時に供試した22品種・系統の分散分析から推定した狭義の遺伝率は0,921~0,944ときわめて高かった。以上の結果から,穂いもち圃場低抗性は相加効果を主とするポリジーンまたは複数遺伝子,あるいはその両者により支配されており,細胞質の効果はなく,遺伝率は高いと推定された。
  • 高木 津子, 生井 兵治, 村上 寛一
    1983 年 33 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ヘマトキシリン染色法を用いて日本のコムギ登録品種125(農林1号~125号),およびそれらの親系統として用いられた80品種,計205品種のアルミニウム耐性を調べた。その結果,登録品種・親系統のいずれにも耐性極強(Score1)のものは認められなかった。耐性強(Score3)の品種は登録品種中13品種(10.4%)で,ほとんどが北海道・東北・北陸の黒ボク土を試験圃場にもつ試験地で選抜されたものであり,その耐性は導入種のTurkey Red IIと在来種の白三尺に由来することがわかった。さらに,わが国の畑作地帯にはアルミナ性土壌が多く分布しているのに,耐性中(Score5)~弱(Score7)の登録品種が多数育成・利用されていることについて考察を加えた。
  • 平野 久
    1983 年 33 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 生井 兵治
    1983 年 33 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 1983/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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