育種学雑誌
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33 巻, 3 号
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  • 高橋 成人, ハムザ.H.A. アルタルファ
    1983 年 33 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネ穎果のフェノール反応は,3日~5日間,フェノール溶液に穎果を浸し,その表面とフェノール溶液の色調を調べることにより,明瞭かつ定量的に観察することができる。この手法は,着色したイネの穎果についても有効である。 フニノール酸化反応は穎果のみに局在しており,'枝梗,花軸,葉,節,節間のいずれにも見出されない。 穎果から分離した籾と玄米は,フェノール反応性が異たる。フェノールで着色する野生イネと着色しない栽培イネの間の雑種種子は,フェノール反応について,籾と玄米の間で4つの組合せが見出された。すなわち籾と玄米のいずれも着色反応を示すもの,籾のみ着色するもの,玄米のみ着色するもの,およびいずれも着色反応を示さないものが確認された。したがってフェノール反応を調べるとき,籾と玄米とを分離して別個に検討すべきである。 フェノール反応で着色しないイネ品種は,フニノール核に水酸基を結合させる酵素(クレゾレース;フェノラーゼ)の欠損または,電子供与体の不足によるものと考えられる。
  • 一井 真比古, 羽田 勲誠
    1983 年 33 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    生育後期に稲体の地上部を勇除したときの再生能と耐倒伏性たらびにそれに関連する形質との関係を明らかにしようとした。水稲21品種を供試し,節間重,稈基重,挫折重および倒伏指数を出穂日より出穂後40日まで10日おきに計5回調査した。また倒伏に関連する形質を調査したそれらの日に,地際より5cmで地上部を剪除し,剪除後40日に再生茎率および再生草丈を調査した。再生茎率および再生草丈により再生能を評価した。 節間重,稈基重および挫折重はほぼ同様の推移を示した。それらは出穂後0日より10日にかけて増大し,その後20日または30日まで減少し40日には再び増大した。倒伏指数は出穂後0日から30日まで増大し,その後減少した。再生茎率は節間重,稈基重および挫折度とほぼ同様に推移し,再生草丈の推移も出穂後10日以降剪除では再生茎率の推移とほぼ同様であった。再生能と倒伏指数ならびにそれに関連する形質との相関関係を調べた結果,出穂後20日以降に地上部を剪除したときの再生茎率および再生草丈と出穂後20日以降の倒伏指数との間に有意な負の相関が認められたことから,耐倒伏性の間接的な検定に再生能を利用しうることが示唆された。たお再生能と挫折重との間には有意な相関がほとんど認められたかった。 再生能と密接に関連する倒伏指数の一構成要素である挫折重に対する葉鞘の寄与率を調べた結果,登熟後期における葉鞘の寄与率は15~40%であったが,品種ならびに生育時期により明らかに異なっていた。
  • 谷本 忠芳, 土屋 英男, 松本 豪
    1983 年 33 巻 3 号 p. 259-268
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    タイ,インドネシア,マレーシア,ネパール,中国および我国で採集された,栽培系統と野生(非栽培)32系統の合計34系統のサトイモについて,花序に関する形質を特性値として,主成分分析およびクラスター分析をおこなった。 主成分分析の結果,第2主成分までの累積寄与率は81.6%であり,第1主成分はshape factor,第2主成分はsize factorとそれぞれみなすことができた。両主成分平面における系統の散布図から,サトイモの花序の形態にはラ明瞭な地理的変異が認められ,供試した系統を,タイおよびインドネシアの全系統,マレーツアの1系統および我国の石垣島と西表島の系統を含む群,マレーシアの1系統からなる群,ネパールの系統の群,中国および我国の九州と本州の系統の群,それに沖縄本島,与論島および種子島の群の合計5群に分けることができた。 クラスター分析の結果は主成分分析のそれと同様であり,ネパールの3系統および九州の1系統を除く他の系統はだいたい地域ごとのクラスターを形成した。 染色体が観察できた系統のうち,ネパールの2系統,中国および我国の九州,本州の全系統が3倍体(2n=42),他の系統は2倍体(2n=28)であった。前者にはネパールおよび本州の栽培系統が各1系統含まれる。倍数性と花序の形態との相互関係については,2倍体は第1主成分スコアーの小さい系統から大きい系統まで認められたのに対し,3倍体は同スコアーの小さい系統が認められなかった。また倍数性と第2主成分(花序の大きさ)との間に特定の傾向は認められなかった。 サトイモの地理的分類には里少数の花序の形質に注目するよりも,より多くの形質について多変量解析法を応用することがより有効であると考えられた。
  • 藪谷 勤
    1983 年 33 巻 3 号 p. 269-274
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ハナショウブ(Iris ensata Thunb. var. ensata(Makino)Nakai, 2n=24)の種間交雑育種を進める上で,1つの障害は他種との開花期の不一致であり,これを克服するために花粉の貯蔵法を確立することは重要である。本報では,ハナショウブ花粉の寿命に対する有機溶媒および乾燥貯蔵の有効性について比較検討するとともに,貯蔵花粉の受粉による種子形成への影響についても明らかにした。 供試した8種類9通りの有機溶媒貯蔵(-20℃)の中で,貯蔵12ケ月後においてアセトンおよびアセトン前処理貯蔵が新鮮花粉と変らたい発芽能力を維持していた。次に,乾燥貯蔵下における花粉の発芽能力に対する温度の効果をみると,25℃区では3ケ月後に,また0℃区では6ケ月後に花粉はほとんど発芽能力を消失していた。しかしながら,-20℃区は新鮮花粉の発芽能力と比較して12ケ月後においてもほとんど低下を認めなかった。 低温下(-20℃)におけるアセトンおよび乾燥貯蔵12ケ月後の花粉の種子形成に対する影響をみると,正常種子の獲得数において両者とも新鮮花粉の場合とほとんど差がたかった。
  • 長谷川 博, 井上 雅好
    1983 年 33 巻 3 号 p. 275-282
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネ(品種,日本晴)におけるプロリンアナログの一種,ヒドロキシ-L-プロリン(Hyp)の生育阻害効果を明らかにし,Hyp耐性突然変異体の獲得方法について検討した。 0~96時間吸水させた種子を,O~10-3MのHyp溶液中で発芽,生育させた結果,Hypの生育阻害効果は5×10-5M以上の濃度で認められること,また前浸漬時間が長くなるに従って大きくなることが明らかにたった。 一方,γ線照射およびアジ化ナトリウム,エチレンイミン(EI),エチルメタソスルフォネート処理を行った後代のM2種子を96時間吸水させた後,2×10-4MのHyp溶液中で14日間,さらに2×10-4MのHypを含む水掛液で14日間栽培した。その結果正常に生育をつづけた個体をHyp耐性変異体とした。約90,000のM2個体から計27の耐性変異体を選抜することができた。これらの変異体のうち,24個体がM3代における後代検定の結果から,Hyp耐性突然変異体として認められた。Hyp耐性突然変異の誘起に関してはEIがもっとも効果的であり,0.2および0.4%,2時間処理において,それぞれM2個体あたり2.5×10-4,1.6×10-3の突然変異率(葉緑突然変異率の約1/10に相当)であった。 オオムギにおけるHyp耐性突然変異体においては,プロリン含量の増加がみられ,耐早。耐・塩性をもつことが知られていることを考えれば,本実験の結果は高アミノ酸含量および耐早・耐塩性作物の生理・遺伝研究に寄与する点が大きいと考えられる。
  • 真田 松吉
    1983 年 33 巻 3 号 p. 283-295
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    麦芽品質の遺伝様式は農業特性や耐病性に比較すると,余り理解されておらず,品質改善の遅延の遠因でもあった。本実験では確立された少量サンプルの麦芽品質評価法を用いて,統計遺伝学的にビール大麦の麦芽品質に関与する遺伝成分の推定を試みた。 トップ交配検定法により2つの検定品種を別の12品種に交配し,得られた48(正逆交雑を含む)の後代F1・F2集団を研究材料とした。調査項目は整粒歩合,千粒重,全窒素,沈降時閉,グルコース含量,沈降時間指数,製表ロス,ろ過速度,冷水抽出エキス,熱水抽出ニギス,修正エキス,可溶性窒素,タンパク溶解度の13項目である。 F1の沈降時間指数を除く全項目で,正逆交雑間の差は見られたかったことから,交配に際しどちらを雌あるいは雄にするかは任意である,といえる。沈降時間と沈降時間指数の2項目は主に相加的遺伝効果に支配されている。また若干の上位性効果あるいは優性遺伝効果も関与していると考えられるが,それらは小さく,その発現は世代によって異なっていた。従って,遺伝子型対環境交互作用の存在カミ示唆された。 他の11項目では,その殆んどに両親間および後代間の有意差が認められたが,遺伝成分に関しては顕著な結果は得られなかった。 本給果に関する限り,麦芽品質の向上には克服シ難い遺伝的障壁は無い,と示唆された。
  • 渡部 信義
    1983 年 33 巻 3 号 p. 296-302
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    パンコムギの1品種CanthatchおよびCanthatchからの抽出四倍体(AABBゲノム)とAegilops squarrosa L.の2亜種3変種との交雑から得られた再合成コムギ5系統の間の穂長,節間長および稈長,並びにそれらの個体内変異について比較したところ,第1節間長と第2節間長を除いて系統間に有意性が認められ,個体内変異は下位前間について有意であった。Dゲノムの変異は一般に下位節間で認められた。Canthatchは,穂長を除いてVar.typica由来の再合成コムギより各器官が長い。一方Var.strangulata由来の再合成コムギはCanthatchと似ていた。Canthatchの個体内変異は供試系統の中間程度であった。 正準判別分析法による判別値によって,栽培種と変種間の変異を含む野生種の間の差異を引きおこしている要因が穂,稈および下位節間の長さの変異であることが明らかとなった。
  • 松岡 秀道, 日向 康吉
    1983 年 33 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Solanum melongena L.の一栽培品種「新交八重成」を用いて,胚軸由来カルスからの胚状体形成条件について検討した。カルスを高濃度NAAで一定期間培養すると緑一点(GS)を形成するので,これを指標とした。1. NAAは4~20mg/lの濃度範囲でGSを形成したが,7~9mg/lが最適であった。2. 高濃度NAA培地に置く期間によって,GS形成量は異なり,長期間培養するとGSを形成するカルスの割合は高くなるがGSの数は多くない。一方短期間培養ではGSを形成するカルスの割合は低いがGSを形成したカルス当りのGS数は増加した。3. NAA2mg/lの培地上では,カルスが埴殖を続けるので,19回(14ヵ月)植え継いで,その分化能の変化を誰べた。継代したカルスを高濃度NAAに移植すると胚状体のGSを形成し,低濃度NAAに移植すると不定芽を形成した。不定芽形成能は継代初期に急速に低下したが,胚状体形成能は比較的高く維持された。胚状体のGSから植物体を育てたところ,継代初期のカルスからの再生体には2倍体が多く、後期のものからの再生体には倍数体が多かった。4. GS形成数は外植体切片の大きさにも依存し,未伸長の短い胚軸から大きな切片をとると,得られるGS数が多かった。
  • 武田 和義
    1983 年 33 巻 3 号 p. 310-320
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    穎と子房の長さがアンバランスでくびれ米を多発する実験系統L-45を共通親としていくつかの交雑を行い,くびれ米歩合および無処理玄米の長さ(Cl)と切穎玄米の長さ(Tl)のアンバランスに選抜を加えてそれぞれの選抜反応と相関反応を解析した。雑種集団においてTl/Clは1,05~1.38,くびれ米歩合は0~100%まで変異した。選抜反応から推定したくびれ米歩合の遺伝力はF2→F3で0.63~0.69,F3→F4でO.77,Tl/Clの遺伝力はF2→F3で0・57~0・61であった。相関反応から推定した両者の遺伝相関係数は0.4~0.6,分散,共分散から算出した遺伝相関係数は0.5~0.8であった。また,くびれ米の上位に選抜を続けたF5系統では,下位に選抜を続けた系統に比べてTl/Clが明らかに増大しており,穎と子房の長さの遺伝的なアンバランスによってくびれ米が発生するとみられた。
  • 松澤 康男
    1983 年 33 巻 3 号 p. 321-330
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    アブラナ属のモノゲノム種間の交雑成功率を高め,より多くの雑種F1植物を得るために,B.oleracea(n=9群)×B.campestris(n=10群)の交雑親和仙1を調査した。B.oleraceaの雌蕊でのB・campestrisの花粉の発芽状況は,花粉芽指数(P.G.I.)でO.7~3.8となり,31組合わせの平均が2,4であった。これは,逆交雑に比べて低く,本交雑における交雑不親和性の1つの要因が,花粉発芽および花粉管伸長過程の異常にあると思われる。雑種胚形成率は,莢当たり0~9.5個でその範囲が広く,平均1.2個であった。雑種胚長は0.4mm前後のものが多く,逆交雑に比べて大型のものが得られた。花粉発芽指数および雑種胚形成率は,交配母本間に差異がみられたが,花粉親閲ではそれが少なく,交雑不親和性は,主に母本の遺伝的特性によるものと考えられる。15℃区では雑種胚形成率が低かったが,20℃区ではそれが高められ,胚の生長も促進された。また,25℃区ではさらに大型の雑種胚が得られた。従って,雑種胚の発育期は,比較的高温下で経過させるのが望ましいと思われる。交配母本の雑種胚形成率と花粉発芽指数および自殖種子稔実率との間には正の相関関係がみられ,交雑親和性の高い母本の選定にあたって,1つの規準になると考えられる。得られた雑種胚を培養することによって,多くの雑種植物が得られ,特に,25℃区で交雑成功率が高かった。これらの雑種植物の後代系統は種・属間交雑による育種の素材として有望であると思われる。
  • 生井 兵治
    1983 年 33 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 小野 松治
    1983 年 33 巻 3 号 p. 337-340
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 横尾 政雄
    1983 年 33 巻 3 号 p. 341-345
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Near isogenic lines of rice, Oryza sativa L., with or wrthout a gene Pi-zt for resistance to Pyricularia oryzae CAV., have been developed through backcrossings and selfings. The heterozygosity with respect to Pi-zt has been maintained during 15 generations from F1 through BC4F10 in a cross between the Malaysian cultivar Morak Sepilai and the Japanese cultivar Fujisaka 5 in which Fujisaka 5 was used as the recurrent parent through successive four backcrosses. During these generations plants were tested for resistance to a Ken 53-33 strain of the blast fungus with a wide spectrum for virulence to Japanese cultivars, and heterozygotes were selected to transmit a Pi-zt gene from Morak Sepilai to the genetic background of Fujisaka 5 (Table l). Homozygous resistant (Pi-zt/Pi-zt) plants and homozygous susceptible (+/+) plants were obtained in the BC4F11 and their progenies showed the similar agronomic characteristics under the favorable conditions free from blast disease (Table 3). They had a Pi-i gene for resistance in common that was transmitted from Fujisaka 5 (Table 4).
  • [記載なし]
    1983 年 33 巻 3 号 p. 346-350
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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