育種学雑誌
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34 巻, 2 号
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  • 阿部 利徳, 蓬原 雄三
    1984 年 34 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    日本型,インド型,日印雑種および大粒種を含む60イネ品種の根断片を用いて,3mg/lの2,4-Dを含むMSの寒天培地に置床し,カルスの誘導を行なった。さらにそれらを2mg/lの2,4-Dを含むMS培地で1~2回継代培養を行ないカルスを増殖させ,ついで2,4-Dを0,02mg/lに減じ,新たに10mg/lのカイネチンを加えた同様のMS培地に移し,再分化を図った。その結果,再分化の頻度には著しい品種間差異が認められた。継代を異にするものからの再分化を総合して,日本型の品種はすべて再分化を示したのに対し,日本型以外の品種の中には,全く再分化を示さない品種もあった。また再分化の不良な品種のカルスは,再分化培地に置床すると,強い necrosis が生じて死滅するものが多かった。茎葉と,その原基と考えられる緑色を帯びた小突起の分化によって,再分化能力を持つカルス組織の割合をみると,日本型は16のうち11.インド型は16のうち3,大粒種は10のうち1品種が,それぞれ30%以上の再分化能力を示した。日印雑種では,30%以上の再分化能力を示したものは全くなかった。日本型品種の中には,藤5坂号とフジミノリ,ホウヨクとレイホウのように親子関係にあるものが共に高い再分化能力を示すものがあった。さらにインド型の台中在来1号と,その後代系統である日印雑種の再分化能力は共に低く,一般に強い necrosis が観察された。これらのことから,イネの再分化能力は後代に伝わり,一定の遺伝的支配を受けているのではないかと考えられる。さらにイネの根から形成されたカルスは,品種によって形態や再分化培地に置床した場合の反応性が異なることから,内性ホルモンの含量やバランスも品種や生態種によって異なることが考えられる。
  • 服部 一三
    1984 年 34 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    キクの授粉直後に観察される花柱短縮と約8週間後の種子稔性との関係を明らかにするために実験を行った。 1.授粉直後に観察される短縮花柱および非短縮花柱の間の形態的な差異は完熟種子形成期まで維持される。 2.授粉回数を変えた場合には,授粉回数が多いほど,短縮花柱をもつ管状花率(1頭状花序あたりの全管状花数に対する短縮花柱をもつ管状花数の百分率)および種子稔性(1頭状花序あたりの全管状花数に対する稔実種子数の百分率)が増加した。さらに,短縮花柱をもたない管状花では種子はまったく得られなかった。 3、開花全期間を通して授粉した場合には,自殖および他殖において,短縮花柱をもつ管状花率,種子稔性とも種々の値を示すものが観察された。これらの間には高い正の相関々係が存在した。このことから,授粉直後に花柱短縮の有無を調査することにより採種可能な交配組合せを早期に選別できることが示唆された。 4. 自然状態における花柱短縮の状況を明らかにするために放任授粉後の調査を行った。この場合にも短縮花柱をもつ管状花率と種子稔性との間には高い正の相関々係が存在した。すなわち,和合花粉を授粉した直後に観察される花柱の短縮はキクの管状花では一般的な現象であることが確認された。
  • 山元 皓二, 長戸 康郎
    1984 年 34 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ダイズの成立過程におけるDNA量の変化を明らかにする目的で,Glycine属数種のDNA量を測定した。測定は主に根端のFeulgen染色による顕微分光測光法によった。また数系統についてOgur-Rosen法によりDNAを抽出・定量し,顕微分光測光法による結果を確かめた。各種ともにDNA量の種内変異は大きく,染色体内のDNA量はある程度変化し得ることが明らかになった。またダイズの細胞当たりDNA量は平均4.29pgであり,野生祖先種とされるツルマメ(G.soja)の4.80pgより有意に少ない。従って,ダイズが成立する過程でDNA量が減少したと考えられる。この野生祖先種から栽培種への減少傾向はイネでも見られており,栽培化とDNA量の変化とは密接に関連しているであろう。ダイズとツルマメの間でDNA量の変異域は互いに重なり合っており,DNA量が減少した場合だけでなく,逆に増加した場合もあったであろう。しかし,基本的にはDNA量の減少を通じてダイズが成立してきたと考えられる。すなわち,DNAの減少により遺伝子の欠落・再配列等が生じ,新たな変異が生み出されてきたのではなかろうか。 つぎに,ツルマメと近縁野生種であるG.tabacina,G.tomentella,G.clandestina,G.canescensとの比較を行った。G.tabacinaとG.tomentellaには2倍体(2n=40)と4倍体(2n=80)が含まれているため,染色体当りDNA量で比較すると,ツルマメのDNA量が最も多かった。G.tabacinaを除く近縁野生種の供試系統数は少ないが,おそらくDNA量の多い野生種が作物へと進化し得たのではたかろうか。DNA量が多いことによって,その欠落・再配列に耐え,新たな変異を生み出したものと考えられる。
  • 菅 洋
    1984 年 34 巻 2 号 p. 171-180
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Brassica campestrisの3変種に属する7栽培品種を用いて,その開花における春化と日長の役割をジベレリンとの関連においてファイトトロンを用いて研究した。 供試7品種中5種の日本品種(野沢菜,卯月小松菜,新山東菜,晩生真菜,四月しろ菜)は20日間種子春化しても,8時間日長下では花芽分化しなかった。GA3はこれらの植物に茎伸長をひきおこすが花芽分化させなかった。これらの品種では,GAは抽苔には直接関与しているが,花芽分化には直接的には関与していないものと結論される。 また,これらの結果より,プラシカ属野菜の開花における日長の役割を過少評価していた従来の説は訂正を必要とするものと判断される。 2種の中国品種は,その開花反応が特異である。葉心は春化要求の小さい中日性品種で,種子春化の有無にかかわらず24時間日長下8時間日長下ともに開花した。他方,紅葉苔は,春化要求は小さいが,典型的な長日植物であった。しかしながら,春化処理は長日要求に代替し,種子春化すると8時間日長下でも開花した。8時間日長下の非春化植物にGA3をやると開花をひきおこした。一方,種子春化した植物をGA生合成阻害剤のAncymidolで処理すると開花を阻害した。紅葉苔ではGAは,茎伸長だけでなく開花それ自体にもなにか役割を演じていると推定される。
  • 山田 利昭
    1984 年 34 巻 2 号 p. 181-190
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    国際稲研究所(IRRI)で育成されたIR28は,日本産白菜枯病菌II、IIIおよびIV群菌系に対して強い量的抵抗性を示す品種である。IR28を共通の低抗性親とする二つの交配組合せについて,それぞれ両親品種,F1,F2,B1およびB2の6集団を供試し,各集団とII,III,IV各群の菌糸を組合せて量的低抗性の遺伝解析を行った。まず尺度検定を行い,相加・優性効果のモデルによる解析には平方根尺度が適当であることを認めた。そこでこの尺度を用いて量的抵抗性に関する平均値の構成要素を推定した結果,相加的遺伝子効果,優性効果ともに統計的に有意であるが,前老の方が著しく大きいことが明らかとたった。 一部に,相加・優性効果のモデルによる解析に適当な尺度を見出すことのできない組があったが,これらの場合には,相加的遺伝子効果および優性効果のほかにエピスタシス効果をも考慮する必要があることが推測された。
  • 稲垣 正典, 増田 澄夫
    1984 年 34 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    本研究ではオオムギの凍霜害発生と密接な関係にある節間伸長開始期について,温度および日長に対する反応の品種間差異を明らかにしようとした。節間伸長開始期が早いほど,概して出穂期も早い傾向にあったが,種類および来歴によっては出穂期が早い割合に節間伸長開始期の比較的遅い品種や系統も認められた。一部の品種について温度および日長に対する反応をみると,長日条件下においては節間伸長開始期の品種間差は温度の高低にかかわらずほとんどみられず,いずれの品種も低温によって一様に節間の伸長が遅延した。しかし短日条件下では低温および高温のいずれの区においても節間伸長開始期に品種間差がみられた。とくに高温条件ではその差が拡大し,短日に対する反応の著しい品種ほど節間の伸長は抑制された。以上から短日条件に対する節間伸長開始期の遅延反応によって,暖冬年の早春における節間伸長の開始を抑制し幼穂凍死を回避するような早生品種育成上の試みについて論議した。
  • 斎藤 健一, 武田 和義
    1984 年 34 巻 2 号 p. 197-209
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    リンゴ斑点落葉病低抗性品種育成の効率を高めるために必要な情報を得る目的で,抵抗性を異にする8品種間の交雑27組合せ5,733個体(実験1),抵抗性遺伝子型未知の34品種と実験1で遺伝子型の明らかにされた2つの検定品種との交雑68組合せ7,725個体(実験2)ならびに芽条突然変異体と検定品種との交雑8組合せ1,284個体および自家和合性品種の自殖後代199個体(実験3)を供試して低抗性の遺伝分析を行った。いずれの実験においても抵抗性には一対の主働遺伝子が関与すると見られ,その遺伝子をAltで示すと抵抗性品種の遺伝子型はalt alt,罹病性品種の遺伝子型はAli altであった。Altの遺伝子頻度は0.107と推定され,供試品種の中にAlt Altの遺伝子型は見出されなかった。
  • 馬上 武彦
    1984 年 34 巻 2 号 p. 210-218
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    放射線による突然変異育種方法の改善の一つとして,突然変異率を高めるため発育中の胚に高線量のγ線を照射した後,その胚を培養によって可能な限り生存発育させようと試みた。供試材料として金盃と改良富士を用い,5kRの4日間および20kRの1日間照射を行なった。照射の時期は受粉後9~22日目の球形胚期および早期のハート形胚期であった。胚培養は受粉後28~52日目に行ない,結果を培養後40~80日目に調査した。さらに照射当代の種子稔性および発芽率も調べた。発芽率は両照射区とも0%で致死線量であることが確認された。これと同じ線量で照射された胚の培養を試みると,胚の茎葉形成率,胚の根形成率および培撞後のポットヘの移植時の生存率は,低線量率照射(5kR/日)の方が高線量率照射(20kR/日)より若干高かった。培養に一よる効果は,金盃と改良富士の品種間で大きな差は認められたかった。照射時期の違いによる培養後の胚の茎葉形成率,胚の根形成率および培養後の移植時の生存率は,受粉後9~13日目の若い時期の照射の方が,受粉後18~22日目の発育の進んだ時期の照射よりも高かった。結論として胚培養により高線量照射された胚を生きつづげさせ,生存率を向上させることができた。
  • 横尾 政雄
    1984 年 34 巻 2 号 p. 219-227
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    日本のイネ品種`藤坂5号'を母とし,インドネシア品種`Tjina'を父とする雑種F1に藤坂5号を4回戻し交雑した後代系統の中から,遺伝様式の単純な雌性不稔が見出された。雑種系統における種子稔性の分離に2遺伝子が関与し,この二重劣性ホモで雌性不稔が生ずると推定された。雌性不稔個体では,正常な花粉が生ずるが,胚のうが形成されなかった。しかし,1穂に2ないし3粒の頴花が結実し,この種子によって雌性不稔は次代に伝達された。
  • 武田 和義
    1984 年 34 巻 2 号 p. 228-236
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    子房の本来の長さが頴よりも長すぎるとくびれ米が発生し,穎と子房の長さのアンバランス(Tl/Cl)とくびれ米歩合の間にはr=0.7程度の相関がある(武田1982,1983)。一方,粒形によってくびれ米の発生に難易があるように思われたので雑種集団を供試してTl/Clと粒形指数(Cl/Cb)がくびれ米歩合に及ぼす影響を解析した。Tl/ClおよびCl/Cbとくびれ米歩合の偏相関係数はいずれも高い水準で有意であり,Tl/Clは高ければ高いほどくびれ米歩合が高いが,Cl/Cbには最適値があり,1.3~1.4の場合に最もくびれ米歩合が高かった。くびれ米歩合の表現型分散のうち,Tl/ClおよびCl/Cbによって説明される部分は,d-1およびd-7の小粒性(矮性)遺伝子に支配される小粒個体群では54%,小粒性主働遺伝子が関与しない正常個体群では35%であった。
  • 岡崎 桂一, 日向 康吉
    1984 年 34 巻 2 号 p. 237-245
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    アブラナ科自家不和合性植物のS遺伝子同定にS糖タンパク質分析を適用する際の問題点を検討するため,日本のダイコン一代雑種品種29品種について,S遺伝子とS糖タンパク質を分析した。29品種それぞれから任意に1個体をとり自殖し,その後代の自家不和合性の分離を調べたところ,20品種については明瞭た分離が認められ,胞子体的に働く1対のS遺伝子をそれぞれ仮定して説明できた。残りの9品種のうち,7品種は分離を示さず,2品種は複雑な分離を示した。分析できた20品種から33のS遺伝子ホモ系統をつくり,二面交配によってS遺伝子間の異同を調べた。本報告で取り扱った33のS遺伝子は20の異ったS遺伝子に分類された。すなわち19のS遺伝子は6つのS遺伝子に帰すことができ,残りの14のS遺伝子はそれぞれが異っていた。分析できた20品種,40遺伝子のうち,11についてS糖タンパク質が見いだされた。11のS遺伝子はS糖タンパク質の等電点によって5つのグループに分けられた。それは,二面交配から推定したS遺伝子の異同性と例外なく一致した。なお,アクリルアミド薄層ゲル等電点焦点法を用い,pIマーカーを同時に泳動することによって,それぞれのS糖タンパク質の等電点を再現性よく記載できることがわかった。S遺伝子をS糖タンパク質分析によって調査する方法は,S糖タンパク質が検出されたS遺伝子については有効であったが,ダイコンではS糖タンパク質の見いだされないS遺伝子も多く,S糖タンパク質の検出方法などについて更に検討を重ねる必要があると思われた。
  • [記載なし]
    1984 年 34 巻 2 号 p. 246-249
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 吉田 智彦
    1984 年 34 巻 2 号 p. 250-251
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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