育種学雑誌
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45 巻, 1 号
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  • 阿部 和幸, 佐藤 義彦, 齋藤 寿広, 栗原 昭夫, 壽 和夫
    1995 年 45 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ16家系から成る交雑実生集団とその交配槻品種・系統を供試して果実重,果肉硬度,屈折計示度,果汁pHを測定し、各形質に関する親平均値と'家系平均値を求めるとともに各形質の遺伝率を推定した.果実重,果肉硬度,屈折計示度,果汁pHに関する交配槻品種系統間の平均値は354g,4.5lbs,12.4% 4.94であり、各形質における交配親間の変動係数はそれぞれO.35,0.09,0.05,O.05であった(Table2)
  • 村井 正之, 新橋 登, 佐藤 茂俊, 佐藤 和広, 荒木 肇, 江原 勝
    1995 年 45 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    砥脚鳥由来の失要性遺伝子d-47(t)(以下(t)を省略)の程長,節間長,穂数および穂穎花数に及ぼす作用,ならびにその肥料水準に対する反応を調べた. 供試系統は,しおかりならびに台中65号を反復親としたd-47の同質遺伝子系統であるd-47系統ならびにd-47(T65)系統,Calrose76(d-47と同一座の失要性遺伝子sd-1を有する,以下C76と略称)およびその親系統Calroseである.さらに,すべての矢要性同質遺伝子系統と現品種のF1,ならびに,しおかり×d-47系統とd-47(T65)系統×台中65号のF2を供試した. 実験を行った場所および栽培方法をTable1に記した.
  • 福田 善通
    1995 年 45 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    半矮性のインド型イネ品種南京11号より誘発された離脱粒性突然変異系統SR-1の離脱粒性遺伝子および南京!!号の有する半矢委性遺伝子を,第1染色体のRFLP連鎖地図上に位置づけた. SR-1およびジャワ型品種Dina1agaとのF2集団80個体について,脱粒性程度と秤長とを調査した結果,脱粒性程度と桿長との間に負の相関が認められた(r=-0.57**)、このことから,SR-1において離脱粒性突然変異遺伝子と南京!1号に由来する半矢委性遺伝子のsd-1とは連鎖していると考えた、また既にRFLPマーカーを用いた分析より,半矯性遺伝子sd-1が第1染色体上に座乗していることが明らかにされている(Ogiet al,1993)ことから,第1染色体のsd-1近傍のRFLPマー力-を用いた計量形質遺伝子座(QTL)解析を,SR-1の離脱粒性遺伝子およびsd-1の染色体地図上への位置づけに適用した.QTL解析にはコンピュータープログラム(MAPMAKER/QTLver.3.O)を用いた.遺伝子座が存在する確からしさを示す尺度としてlodスコアーが示され,マー力-間についてもintervalmappingによりlodスコアーを算出し,lodスコアーが3.O以上で最高値を示した点に各遺伝子座が存在すると推定した
  • 稲垣 正典, Natasha Bohorova
    1995 年 45 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    トウジシビエとの交雑を利用する六倍体コムギの半数体作出の頻度に及ぼす要因を明らかにするため,コムギ品種ChineseSp.i.gを母親にトウジシビエ系統NEC-7006を花粉親として交雑を実施した.コムギの開花一日前,開花時および開花一日後にトウジシビエ花粉を授粉した.授粉後18日目に得られたコムギ未熟胚を合成ホルモンの添加・無添加および異なる培地固形剤(Gelriteおよび寒天)を組合せた人工培地で培養した.一方,授粉後14日から26日まで異なる期間発育されたコムギ未熟胚を合成ホルモン無添加の寒天培地に置床し植物体再生を調べた.コムギの穂の発育程度と胚形成の頻度との関係では,コムギの開花一日前に授粉した場合の頻度は25.4%であり,開花時および開花一日後に授粉した場合よりも高かった.人工培地の組成と植物体再生の頻度との関係では,合成ホルモン添加とGelriteの組合せた培地では,植物体再生の頻度は最も低かった.また,合成ホルモンの添加は胚からの発根を著しく抑制する傾向にあった.胚の発育程度と植物体再生の頻度との関係では,授粉後14日目の0.7mm長の胚が54.4%の頻度で植物体に再生したが,授粉後18日目以降胚が大きく発育するにつれて植物体再生の頻度は急速に低下した.再生した植物体のうち染色体を調査した118個体すべては21本の染色体を有する正半数体であった.以上から,交雑時に供試するコムギの穂の発育程度および交雑後の人工培養に供試するコムギの胚の発育程度はともにトウジシビエとの交雑を利用するコムギ半数体作出の頻度に大きく影響することが明らかとなった.
  • 奥村 健治, 高井 智之, 神戸 三智雄, 我有 満
    1995 年 45 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    アルファルファの交雑品種育成には種子親に用いる雄性不稔系統を大量にクローン増殖できる組織培養技術の利用が有効であるが,培養中に起きる変異が問題となる.本研究では,雄性不稔系統を組織培養によってクローン増殖し,これらの再分化植物の花粉粒数,結実率および雑種種子の発芽率を再分化を経ていない元のクローンと比較した.供試系統には雄性不稔遺伝子型P-14-1O×P-6(2)を種子親とし,これと高い組み合わせ能力を示し,かつ後代の雄性不稔個体の出現頻度の高いC77を花粉親として得た雑種後代の申から選抜した不定胚形成能に優れた1遺伝子型(MS×C77-1)を用いた.再分化クローンは,無菌発芽させた幼苗の胚軸を外植体として2,4-ジクロロフェノキシ酢酸とベンジルアミノプリンを添加したSH培地でカルスを誘導・増殖し,植物ホルモンを含まない再分化培地で発育させた不定胚から得た.元のクローンは幼苗の茎頂部を4℃で保存し,再分化クローンの生長に合わせて2ポCで再生長させた.再分化クローンと元のクローン両植物体は体上げ後,温室内で生長,開花させた.
  • 青木 千佳, 和田 富吉, 西村 隆雄, 服部 一三
    1995 年 45 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    Petunia hybridaの`Violet'×`White'F1より,斑入り葉の自然突然変異体が得られた.この変異体は,葉の周縁部に不規則な幅の自または黄色の斑が入るもので(Fig.1),正常なF1より1枝だけ生じたものを,挿し木により維持してきている.この変異体は,葉色以外の,草型,花型,花色等の形質は正常である.そこで,本研究では,この変異体の特徴を把握するため,葉の表面構造,プラスチドの形態,チラコイド膜タンパク質を正常な植物体のものと比較し,さらに,この変異体の遺伝様式を調査した.
  • Jeffrey Adelberg, Perry Nugent, Bill Rhodes, Xmgpmg Zhang, Halma Skoru ...
    1995 年 45 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    4倍体メロンと2倍体メロンの間に交雑によって3倍体メロンを得,それらの果実の特性および捻性について調査した. 4倍体メロン5系統と2倍体メロン7系統の間の交雑によって,13系統の3倍体メロンを得た.それらを圃場において隣接して植えた2倍体花粉親によって放任受粉させたところ,8系統が不捻もしくはほぼ不捻であった(1%以下の種子形成率).5系統の3倍体は部分的に可捻であった(6-36%の種子形成率).部分可捻であった3倍体雑種では捻性のある花粉が見られた.また,2倍体と交雑したこの後代植物は2倍体,3倍体および4倍体であり,異数体はほとんど見られなかった.このことは,部分可捻の3倍体では染色体の分離がランダムではなく五倍数性の配偶子を形成する傾向があることを示す.4倍体`Miilop'と2倍体系統との間の3倍体雑種は,栄養成長性および果実の特徴において,両親の中間の系統に示した、特に,`Miniloup'の小葉性,小球性および低糖性が2倍体の親系統によって変更されていた.ほとんどの3倍体雑種は球形の果実をつけた.数系統の3倍体雑種はその2倍体親と同レベルの高い糖含量を示した.
  • 佐藤 茂俊, 新城 最有
    1995 年 45 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    筆者ら(1983)は,第10染色体を含む5相互転座系統,台中65号(T65)の同質雄性不稔および稔性回復系統を用いた三系交雑Fユ植物における出穂期分離が25~39日に亘り1頂曲線分布を示すこと,供試相互転座系統はいずれも第10染色体の早生遺伝子を持つことを報告した.その後,それら相互転座系統の内の1つならびにその母品種より2つの早生遺伝子(Ef-1,Ef-x)が同定された(Sato et al1988,Sato et al 1992).しかし,この三系交雑F1植物での出穂期分離をそれら2遺伝子のみで説明できるものではなく,相互転座系統は更にいくつかの早生遺伝子を有していることが考えられた.そこで,この早生遺伝子を同定するために,前実験で用いた5相互転座系統を含む17系統並びに1つの標識遺伝子系統を早生遺伝子の供与親とし,T65を反復親とする10回の戻し交雑により18種のT65の同質早生遺伝子系統を育成した
  • 中村 和弘, 服部 一三
    1995 年 45 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    カルスを経由せずに生体組織から直接的に冬芽体を形成させることは,遺伝的に安定な大量のクローン菌を迅速に作出する手法のひとつとして,これまで有用形質をもつ一代雑種品種などの大量増殖系へその応用が試みられてきた.しかし近年の遺伝子導入技術の発展は,直接植物組織(細胞壁をもつ細胞)への遺伝子導入をも可能とし,この冬芽体培養系がクローン菌の増殖ばかりでなく,遺伝子の導入にも適用されるものとして期待されつつある. イネにおいては坂(1990)が高濃度サイトカイニン培地で比較的容易に冬芽体が形成されることを報告しているが,その形成部位については「鞘葉節あるいはその上位節から発生,分化する」とし,詳細な調査はなされていない.そこで,この培養系の遺伝子導入への適用を検討する目的で,組織学的観察によりその形成部位の特定をこころみた.
  • 野崎 忠規, 安司 美根子, 高橋 尚, 池橋 宏
    1995 年 45 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    最近,Brassia campestrisについても分子遺伝学的標識による染色体地図の作製が行われているが,アイソザイムの標識は比較的容易に利用できる利点があり,なお育種上の利用が期待される.各種のアイソザイムについてゲル泳動像の遺伝的基礎を明かにしておくことは,アイソザイムの利用上有意義である.ここでは前報告(Furuya and Ikehashi 1991)で高い多型性を示したチンゲンサイとスグキナの品種集団から得られた自殖後代と,ハクサイとミズナの自殖系統の交雑によるF2集団の両者から,合計19のアイソザイム遺伝子座を同定した結果を報告した(Table2).これらのうち,酸性フォスファターゼ(ACP),エステラーゼ(EST),フォスフォグルコムターゼ(PGM).グルタミン酸・オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT),ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)は,ポリアクリルアミトゲル電気泳動により,フォスフォグルコイソメラーゼ(PGI),パーオキシターゼ(POX)は,デンプンゲル電気泳動により検出した(Table1).
  • 廣瀬 玉紀, 氏原 曄男, 北林 広己, 南 峰夫
    1995 年 45 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    典型的な異型花型自家不和合性を示す普通ソバ(Fagopyrum esculentum)において,近縁な自家和合種との交雑が可能になれば,強固な自家不和合性を克服できると考えられるが,これまで自家和合種との交雑の成功は報告されていない.本研究は,ソバ属の10種について相互交配を実施し,花粉管の伸長を観察することにより,自家不和合性の受精前段階における交雑親和性に与える影響を明らかにし,総合的な議論を試みたものである.
  • 間 竜太郎, 柴田 道夫
    1995 年 45 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    アグロバクテリウム法を用いて,ゴマノハグサ科花きのトレニア(Torenia fourinieriに外来遺伝子を導入し,形質転換植物体を作出した.品種`クラウンミックス'を用い,無菌植物を育成し材料とした.発芽後1か月から2か月の無菌植物から葉を採取し,3mmから5mm角に切り外植片とした.アグロバクテリウムは,neomydn phosphotransferaseII遺伝子,イントロンを含むβ-glucuronidase(GUS)遺伝子,およびhygromycinphospho-transferase遺伝子を持つプラスミドpIG121-Hm(Fig.1)を組み込んだしBA4404を用いた.約500の外植片をアグロバクテリウム液に5分間浸し感染させた後,Murashige and Skoog(MS)培地にベンジルアデニン(BA)1mg/lとアセトシリンコン 20μMを添加した培地で7日聞共存培養した.その後,外植庁はMS培地にBAlmg/l,カルベニシリン100mg/lそしてカナマイシン300mg/lを添加した選抜培地に移し,2週間ごとに同組成の培地に移しながら培養した.感染から2週間後,淡い緑色の不定芽が形成されたが,これらの不定芽はしだいに脱色し枯死した.
  • 北林 広己, 原 曄男, 廣瀬 玉紀, 南 峰夫
    1995 年 45 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ルチンは,フラボノイドの一種で,毛細血管の脆弱性を抑制し,血圧を下げるなどの薬理作用を有するといわれている、普通ソバ(Fagopyrum esculentum Moench)の植物体には多くのルチンが含まれることが明らかとなっており,これまでに,主として栽培環境,生育時期あるいは器官別のルチン含量に関する研究がおこなわれてきた.近年,HPLCによる正確で簡便な測定法が確立して以来,ソバ種子に含まれるルチン含量に関心が持たれている.しかしながら,普通ソバにおける種子および葉のルチン含量の品種間差の解析や遺伝率の推定は今までほとんど行われていない.そこで本研究は,世界の主要な栽培国から導入された普通ソバの種子および葉のルチン含量に関する品種・系統間差および遺伝率を明らかにすることを目的として実施したものである.供試材料としては4倍体を含む日本産品種,中国,ネパール産系統およびヨーロッパ産品種の計27品種・系統を用い,1992.1993年の2ヶ年に各2反復の乱塊法で信州大学実験圃場において栽培をおこなった.両年とも,葉および種子を採取し,ルチン含量をHPLCにより測定した.
  • 吉村 智美, 吉村 淳, Rebecca J Nelson, 苗 東華, 岩田 伸夫
    1995 年 45 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    イネ自棄枯病抵抗性遺伝子×a-1は日本産自葉枯病菌I群菌にのみ特異的に抵抗性を示す遺伝子である.本研究ではRAPDマー力一による同遺伝子のタキングを試みた. 10塩基の任意な塩基配列をもつDNA断片をプライマーとして,Xa一1に関する近似同質遺伝子系統IR-BB1と,その反復親であるIR24から抽出したDNAを鋳型にPCRを行った.なお,予備実験としてIR24と,IR-BB1へのXa-1の供与親である黄玉とを比較したところ,20種のプライマーで約40の多型が検出され,1本のバンドを1遺伝子座と仮定すると,この組合せにおいては各プライマーあたり2遺伝子座をスクリーニングできると考えられた.
  • 長嶋 等, 石川 直幸
    1995 年 45 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    オオムギの種子貯蔵タンパク質であるホルデインは,電気泳動的に判別可能なオオムギのタンパク質の中では最も多型性が高いので,その対立遺伝子の多型による品種の識別は,他の多型性を持つタンパク質の分析に比べ有効であると考えられる.これまで欧米のオオムギ品種のホルデインの対立遺伝子については報告があるが,日本のオオムギ品種についての報告はほとんどない.本研究では,日本のオオムギ品種のホルデインの対立遺伝子の同定を行った結果,これまでに報告のないHor1の対立遺伝子が3タイプ(Ch,Ta、Ka),Hor2の対立遺伝子が2タイプ(Sa,Ta)見つかった.そのほかに,裸麦と渦性の六条皮表はほとんどがヨーロッパの品種には見られないホルデインの対立遺伝子のタイプであったのに対して,二条大麦と血性の六条氏麦はヨーロッパで見られるタイプが多かったこと.裸麦はHor1,Hor2ともに対立遺伝子が同じものが多く,ホルデインの対立遺伝子による裸麦の品種の識別は効果的ではないことがわかった.
  • 松浦 誠司, 藤田 幸雄
    1995 年 45 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    日本各地に分布していた地方在来品種や,近代以降いくつかの育種機関において育成された系統等,合計81を用いてRFLPを調査し,これらの形態並びに生理形質との関係を調べた.キュウリのゲノミッククローン4,cDNAクローン1を用いたところ,このうち4クローンは品種間において高い遺伝子多様性を示し,またこれらRFLPにおいて純系になっていない品種もみられた(Table1).これらのことは,これら4クローンがマー力一遺伝子として育種の様々な面において利用できることを示している.また,従来日本のキュウリ品種は形態並びに生理形質をもとにいくつかの品種群に類別されてきた.RFLPマーカーの一つである0・143座の対立遺伝子の変異は,これら品種群との間に明瞭な関係が見られた(Table2).特に,春型雑種群には,C-143座の対立遺伝子bをホモに有する品種が他の品種群より多く見られた.また供試した在来晶種における形態,生理形質をRFLP遺伝子型間において比較した結果,主枝並びに側枝の節間の伸長性が0-143座において有意に異なった(Table3).これらの結果は,0・143座の遺伝的変異が春型雑種群成立を理解する上で重要であることを示している
  • 藤田 雅也, 谷口 義則, 氏原 和人, 佐々木 昭博
    1995 年 45 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    幼穂分化が遅く凍霜害を回避できると考えられる秋播型早生コムギ品種の育成の可能性を検討するため,春播型極早生品種のアサカゼコムギと西海157号(後のアブタマワセ)の秋播型準同質遺伝子系統を育成し,幼穂分化,節間伸長,出穂期等の特性を春播型である反復親と比較した.その結果,秋播型準同質遺伝子系統は反復親に比べて幼穂分化および節間伸長開始が遅く,凍霜害に遭遇しにくいことが明らかとなった.この差異は冬期の平均気温が高いほど顕著であった.出穂期は暖冬年には秋播型準同質遺伝子系統が反復親に比べ6~2日遅くなるが,平年並の気温では反復親との差は2~0日と小さかった.また,秋播型準同質遺伝子系統は節間伸長開始から出穂期までの期間が短くなるが,1穂小穂数の減少はおこらず,収量性も反復親と大きな差はみられなかった.以上から,秋播型にすることは凍霜害回避の点から有効であり,アサカゼコムギ並みの出穂期を示す秋播型早生品種の育成は可能であると結論できる.
  • 山下 浩, 佐藤 光, 大村武 , 滝田 正, 西山 壽
    1995 年 45 巻 1 号 p. 105-106
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    水稲葉身の気孔密度は気孔開度と同様に品種改良で簡便に扱うことのできる形質である.本研究では,突然変異系統を用い,気孔密度に関する遺伝変異と遺伝様式を明らかにする目的で実験を行った. まず,水稲品種「全南風」から誘発した突然変異2557系統を供試し,止葉葉身の中央部裏側のフリントをマニュキュアで作り,気孔密度を調査したところ,原品種「全南風」の気孔密度は538/mm2であり,突然変異系統では285-784/mm2に分布し,明らかに系統間差異が認められた(Fig.1)、さらに,気孔密度が700/mm2を越える系統から,原品種と外観上大きな差異がない突然変異系統(CM1290)を見いだした.
  • 高島 賢, 長谷川 博, 中村 明夫
    1995 年 45 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    菊培養を行う前のタバコの箱にO.1~O.4%のコルヒチン溶液を浸漬処理して,菊反応率(幼植物が分化した菊数の培養した約数に対する百分率),得られた植物体の倍数性ならびにコルヒチン処理後の蒲の小胞子の発育について検討した. コルヒチン処理により菊反応率は低下したが,得られた植物体のなかで2倍体個体が高い頻度で含まれていた.2倍体の出現頻度は処理時間により異なり,8~12時問処理において最も効果的で,O.1,0.4%処理により,それぞれ菊培養由来植物体あたり28.6~35.7%,53.8~66.7%であった.また,得られた2倍体植物には倍数化を示す形態以外の顕著な変化は認められなかった.コルヒチン処理後の箱においてはP-grainと呼ばれる胚横体から植物体へ発育する小胞子が処理後ただちに増加するが処理3日後より減少すること,胚横体の出現頻度は低い(2.5%以下)ことが認められた.
  • 山田 利昭, Toshiaki Yamada
    1995 年 45 巻 1 号 p. 121-123
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    農林水産省農業生物資源研究所ジーンバンクに保存されているマカロニ小麦(τ7伽舳伽γ舳DEsF.)58品種およびチュニジアで広く栽培されている5品種の合計63品種についてチュニジアのケフ農業大学試験圃場で収量試験を行い,収量,1穂粒数および千粒重を調査した
  • 山口 誠之, 萎 伯欽, 東 正昭
    1995 年 45 巻 1 号 p. 125-127
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    切除茎授粉法とは,開花直前の穂を有する茎を切断してガラス室または室内で水耕の上,除雄ならびに授粉することにより雑種種子を得る交配方法である(赤藤1958).既にいくつかの作物で切除茎授粉による交配が報告されており,イネではこの方法でNoguchi(1936)が種子を得ることに成功している. 一方,現在の我国のイネの交配方法はポットに株上げまたはポット栽培した母本(種子規)を用いて温湯除雄(Jodon1938,近藤1939)するのが一般的であるが,母本の準備や管理に多くの労力と場所を必要とする. 本報告ではこれらの手間を省くために,Noguchi(ユ936)の方法をさらに簡易化した切除茎授粉法を試みて交配種子が得られることを明らかにした.そして,圃場よりポットに株上げした母本を用いる常法(以後,`ポット栽培授粉法'と呼ぶ.)と交配成功率の比較を行い,実用性のあることを確かめた.
  • 大塚 薙雄
    1995 年 45 巻 1 号 p. 135-138
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    作物品種の諸特性のなかで,温度や日長などの環境要因に対する反応特性,すなわち生態的特性を明かにすることは,例えば栽培環境に適合した品種を選択するなどの場合に極めて重要である.そのために,しばしば環境条件の水準を何段階かに設定して栽培試験を行い,品種の環境要因に対する反応特性を把握しようとする.このような試験は,一般に試験規模が大きくなりしかも長期間を費やすことになるので,試験結果から目的とする情報を適切に抽出できる統計的手法が望まれている. このような問題に対処するため,筆者らは独立変数が!つの場合の回帰モデルとして「折れ線モデル」をその適用手法とともに提案した(大塚・吉原 1975).今回,この折れ線回帰モデルを適用するためのパーソナルコンピュータ用プログラムを作成したのでその概要を報告するとともに,品種の生態的特性の把握とそれに基づく品種の分類など,育種分野で折れ線回帰モデルを有効に適用した研究事例をまとめて紹介する.
  • 鵜飼 保雄, 大澤 良, 斉藤 彰, 林 武司
    1995 年 45 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    核DNAの制限酵素断片長多型(RFLP)やランダム増幅多型DNA(RAPD)などのDNA多型を利用して,多くの作物で連鎖地図の作成が進められている.またDNA多型連鎖地図を利用して量的形質遺伝子座(QTL)の解析をおこなう方法がいくつか開発されている (Lander and Green1987,Lander and Botstein1989). 連鎖地図作成はDNA多型でも通常の形質の場合(Bai1ey1959)でも原理的には同じである.しかし,前者では利用できるマーカー数が著しく多いうえに,それらの同時分離データが得られるので,それらの情報を総合的に活用してきわめて詳細な連鎖地図を作成することが可能となっている.しかしマーカー数が多いので単にマーカー間で組換価を求めるだけでも莫大な計算量が必要となる.またマー力一の連鎖群内順序の決定などでは大行列の逆行列や固有値の計算が含まれる.さらにQTL解析には,収束した推定値を得るまでに大量の反復計算が要求される.このようなことからDNA多型利用による連鎖地図作成とその育種的利用にはコンピュータ支援が不可欠である.
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