育種学雑誌
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45 巻, 3 号
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  • Ricardo Montaly, Akihiko Ando, Sergio Echeverrigaray
    1995 年 45 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ブラジル産イネ58品種を用いて,SDS-PAGEによる種子タンパク質の電気泳動像型の変異を調べた.得られたデータのクラスター分析と判別関数による解析から,イネ品種を地理的に偏りのある10群に分けることができた.以上の結果は,電気泳動による種子タンパク質の多型解析が,イネ品種の類縁関係や同様な遺伝的背景を持つイネ品種間の変異を研究するための有効な方法であることを示す.
  • Hiroshi Nemoto, Hashim Habibuddm, Yoke Hwa Chen, Khalid Hadzim
    1995 年 45 巻 3 号 p. 281-285
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    1989年から1991年にかけてマレー半島北部で普及前の育成系統に発生したツングロ病(RTD)抵抗性崩壊の過程とその原因を検討した.1989年Penang州Permatang Bendahari地区において,マレイシア農業開発研究所の育成系統を自然発病下で栽培したところ,MR114,MR118,MR119の3系統はRTD抵抗性と判定された(表1).しかし,翌年,BukitMerah地区において栽培されたMR118にRTD発病を認め,さらに1991年,Bum-bongLimaとKua1aMuda地区においてMR114とMR119はそれぞれ抵抗性と中程度抵抗性であったのに対して,MR118はこの地区で広く栽培されたRTD抵抗性品種IR42とともに感受性と判定した(表2,3).従って,MR118は普及以前の1990年から1991年にかけてPenang州北部からKedah州南部においてRTD抵抗性を失ったと考えられる(図1).MR118のRTD抵抗性機構を媒介虫であるタイワンツマグロヨコバイ (GLH)抵抗性検定とIR42に加害力をもつ選抜系GLHの接種試験によって推定すると,MR118のGLH抵抗性はIR42と似たGLH抵抗性である(表4,5).従って,MR118が普及前に抵抗性を失った原因はIR42を加害できるGLHが増加したことによって引き起こされたと推定した.
  • 清沢 茂久, Donna Purba, Md.Shamsher Ali, 沖中 泰, 清水 勉, 斉藤 明彦
    1995 年 45 巻 3 号 p. 287-293
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    農家圃場の病原菌のレースに関するデータから,病原性の獲得に伴う適応度の低下の程度を知る方法を探る目的で,種々の適応値を4病原性遺伝子に与え,宿主の遺伝子型頻度を変えたときの菌の病原性遺伝子型頻度の変化をシミュレーションで見た.その結果,4病原性遺伝子座からなる16の遺伝子型(レース)の頻度が変化しない状態(平衡状態)からある宿主遺伝子型を増やし,その分だけ他の遺伝子型を減らすことにより,病原性遺伝子間で機会的結合が起こったときの機会的結合からのずれが生ずる.これを非機会的結合としてこの非機会的結合に及ぼす4遺伝子からなる16の宿主の遺伝子型の頻度を変える(シミュレーションの中では頻度をある遺伝子型から他の遺伝子型に移す)と種々の非機会的結合を示す.この非機会的結合は二つに分けられる.一つは二つの非病原性遺伝子座からなる四つの遺伝子型(ab,a+,+b,++)の内,abと++が増える場合と,a+と+bの二つが増える場合とが生ずる.前者を非交差型(N),後者を交差型(C)と呼ぶと,二つの遺伝子型間で頻度の移動を行い,移動した頻度と機会的結合からの美との関係を図にすると,平衡点から右側で非機会的結合の程度が増える場合と,逆に左側で増える場合とがある.同じ遺伝子間で逆移動を行うと,一般には逆の型を示す.
  • 喜多村 啓介, Keisuke Kitamura
    1995 年 45 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    豆乳や豆乳を素材とする大豆食品(豆乳ヨーグルト,豆乳アイスクリームなどのデザート類),及び植物性たんぱく製品にとって,リポキシゲテーゼによる青臭みの不快臭味に加えイソフラボン類やサポニン類などの大豆配糖体成分による苦みや収鮫性の不快味が問題となる.サポニン類による不快昧は,その大部分が胚軸に存在することから脱皮・脱肛軸による低減が可能である.イソフラボン類の大部分は子葉に存在し,抽出・加工時に蛋白質成分等と結合する傾向をもつため加工処理による不快味の低減が困難であり,育種的に低くすることが望まれる.一方,ゲニスチンなどのイソフラボン成分には抗腫瘍性など重要な薬理作用や耐虫性・抗菌性などのフィトアレキシン作用を示すことが認められており,逆に本成分を増大する育種も考えられる.これまで,大豆のイソフラボン含量には品種間差があること,また,種子の登熱が高温に経過すると種子中のイソフラボン含量が著しく低下することを認めている. 本研究では,早晩性の異なるブラジルの大豆22品種を2年間(1990年および1991年)栽培・収穫し,逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより種子のイソフラボン含量を定量分析した.イソフラボン(ダイジン,ゲニスチン)含量には大きな品種間差,及び年次間差を認めた(Table1).1990年は1991年に比べ気温,降雨量とも低く経緯し,収穫期も1O日程度遅かった.この気象差が両年のイソフラボン含量の有意な差異を生み出した(Table1)ものと考えられる.イソフラボン含量の品種間差は同一熟期に分類される品種の間にもはっきりと認められた(Table1,Fig2).大豆22品種のイソフラボン含量と豊熟期の平均温度,及び登無期間の間に有意な相関は認められなかったが,晩生品種にイソフラボン含量がやや高い傾向を認めた(Figs.2,3).“BR-36"は2年聞とも最も低いイソフラボン含量を示し,一方,耐虫性品種“IAC-100"は両年とも最も高いイソフラボン含量を示した.
  • 小川 泰一, 福岡 浩之, 大川 安信
    1995 年 45 巻 3 号 p. 301-307
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    インド型イネの単離未熟花粉から緑色植物体を再生させる直接花粉培養法を確立した.本方法の場合,従来行われてきた花粉単離前の菊培養を必要としない.材料は主としてインド型品種IR24を用いた.未熟単離花粉の細胞分裂を誘導するには,花粉単離前に穂を10℃暗黒下で保存する「低温処理」か単離直後糖飢餓条件で短期間培養する「糖飢餓処理」のいずれかの処理を施すことが必須であった.2つの処理を比較すると低温処理の効果の方が大きかった(Table1).さらに,この2つの処理を組み合わせた場合,分裂に必要とされる糖飢餓処理の期間は,低温処理の期間が長くなるほど短くなり,両者の分裂誘導に対する効果の間には相補的な関係があることが明らかになった.21日間の低温処理と1日間の糖飢餓処理の組合せか28日間の低温処理のみの条件が,単離未熟花粉の細胞分裂誘導には最適であった(Table1).オーキシン2,4-Dの添加は細胞分裂の誘導には必須ではなかったが,コロニーの生育には必須であり,結果として,2,4-Dの存在下で得られたカルスからのみ植物体が再生した(Table4).さらに,分裂誘導培地中の窒素源組成の影響を検討したところ,添加する還元型窒素源がコロニー形成や植物体再生の頻度に大きな影響を及ぼすことがわかった(Table2,3).還元型窒素源をグルタミンにしたとき,コロニー形成頻度は0.2%と最も高くなり,従来の硫酸アンモニウムを還元型窒素源とした場合の2.0倍に達した.一方,植物体再生の頻度は,アラニンを還元型窒素源として含む分裂誘導培地で得られたカルスにおいて最も高かった.加えて,分裂誘導条件が21日間の低温処理のみの時,アラニンを含む培地で得られたカルスでは,再生個体中の緑色個体の割合が明らかに高かった.
  • 本村 敏明, 日高 哲志, 森口 卓哉, 秋濱 友也, 大村 三男
    1995 年 45 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    カンキツ品種`セミノールCitrus reticulata Blanco×C.paradisi Macf.).の胚カルス起源のプロトプラストとアクランディア属のインディアンァタランティァ(Atalantia monophylla.)およびセベリニア属のチャイニーズボックスオレンジ(Severiniabuxifolia(Poir.)Tenore)の葉肉から得たプロトプラストの電気融合を行い,属間雑種の作出を試みた.カンキツとアクランディア属,カンキツとセベリニア属の間の融合でそれぞれ16個体と46個体の植物体を得た(Fig1). 形成された融合植物体の一部,並びに融合親として用いたカルスおよび葉からDNAを抽出し,イネのrDNAをプローブとしてゲノミックサザンハイブリダイゼーションを行ったところ,得られた個体は体細胞雑種であることが明らかになった(Figs.2,4). さらに,融合植物体の細胞質DNAの解析を行った.クロロプラスト遺伝子pTB7,pTB19そしてpTB28をプローブとすると,カンキツとアクランディア属の融合個体ではアクランディア属に特異的なバンドが,セベリニア属との融合ではセベリニア属に特異的なバンドが認められ,体細胞雑種のクロロプラストには葉肉由来のプロトプラストが移行していることが明らかとなった.一方,ミトコンドリアDNAのプローブとしてα批,舳26そしてω尤Iを用いて解析したところ,カンキツとアクランディア属の融合個体は,α妙Aをプローブとした場合,カンキツに特異的なバンドの一部欠損とアクランディア属のバンドの移行が認められた(Fig.3).また,カンキツとセベリニア属の融合個体についても,舳26をプローブとした場合,カンキツ由来のバンドと一部セベリニア属のバンドの移行が認められた(Fig.5).
  • 古田 尚也, 二宮 正士, 高橋 信夫, 大森 宏, 鵜飼 保雄
    1995 年 45 巻 3 号 p. 315-320
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    を輪郭の楕円フーリエ記述子に基づく主成分スコアで定量的に評価した.供試品種・系統の完全展開複葉の中央小葉をビデオ撮影した後,画像処理で小葉の2値画像を得た.さらに,2値画像から小葉の輪郭を抽出し,チェインコード化した.ダイズ葉形は調和数20までの楕円フーリエ記述子で十分記述できた.そこで,チェインコード化した小葉輪郭について調和数20までの77の楕円フーリエ係数を求めた.それらの楕円フーリエ係数は,輪郭のサイズ,回転,移動,チェインコード開始点について不変となるよう,第1調和楕円に基づく標準化を行った.標準化した楕円フーリエ係数に関する主成分分析の結果,第5主成分までの累積寄与率は96%であった.さらに,各主成分スコアが変動した場合の楕円フーリエ係数を逆推定し,推定値で輪郭を再描画した結果,各主成分が葉形に寄与する効果が明らかになった.これらの結果から,標準化楕円フーリエ係数喬己迷子に基づく主成分スコアがダイズ葉形を定量的に評価するための強力な方法であることが分かった.供試した品種・系統間の分散分析や同時比較から第1主成分,第2主成分,第5主成分における遺伝子型間の差が大きかった.また,これまでいわれている単純な主働遺伝子以外の微働遺伝子がサイズ要因を除去した葉形そのものに関与していることが示唆された.
  • Kwon Kyoo Kang, Toshiaki Kameya
    1995 年 45 巻 3 号 p. 321-325
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    高等植物のトリプトファン合成は,アソスラニルシンセターゼのトリプトファンによるフィードバック阻害によってコントロールされているが,5一メチルトリプトファン(5MT)耐性の培養細胞では,この酵素はトリプトファンによる阻害が受けにくいことが知られている.しかしながら,これらの細胞から再生個体を得ることが困難であること,また,耐性の突然変異個体が育成されなかったこともあり,トリプトファン合成酵素について,5MT耐性個体を用いた研究はない.本研究では,受精時にエチルメタンサルフォネイト(EMS)を処理することによって得られたトウモロコシの5MT耐性株MR1(Kang and Kameya 1993)のホモ系統の植物個体を用いて,トリプトファン合成経路の酵素であるアソスラニルシンセターゼ(AS)とトリプトファンシンターゼ(TS)の特性を調査した. まず,ASの活性MR1と対照植物について調査した.5MTを含まない培地では育成した場合には,両者間では差異はなかったが,5MT(25ppm)培地で育成した場合にはMR1の酵素活性は対照植物のものより,2倍程高かった.また,ASのトリプトファンによる阻害効果を見ると,AS活性が50%阻害するトリプトファンの濃度は対照植物では5ppm,MR1では20ppmを必要とした.これらの結果から,MR1は5MT及びトリプトファンによるASの活性阻害に対して耐性であることがわかった
  • 王 子軒, 出田 収, 吉村 淳, 岩田 伸夫
    1995 年 45 巻 3 号 p. 327-330
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    三染色体植物(2n=25)の霜培養によって得られた4種類のイネの異数性半数体(2n=13)および5種類の四染色体植物(2n=26)について,その過剰染色体の種類,遺伝的安定性およびイネゲノム解析への利用性を調べるために,サザンハイブリダイゼーションで解析を行った.それぞれ9つの連鎖群に属する21個のRFLPマーカーを用いてインタナルマー力一法でサザンハイブリダイゼーションを行った.すなわち,異なる連鎖群にあるマーカーを混ぜてラベリングしたあと,異数性半数体および四染色体植物から由来したゲノミックDNAとサザンハイブリダイゼーションを行い,過剰染色体の量的効果をプローブのバイブリダイゼーションのシグナルの強さで判断した.その結果,供試した異数性半数体および四染色体植物の過剰染色体の種類はそれらの親の三染色体植物のそれと同一であることが判った.また,供試した異数性半数体と四染色体植物は,染色体5を過剰にもつ三染色体植物より由来した異数性半数体においてDNAレベルの変異が認められた外は,遺伝的安定したものであった.さらに,供試した異数性半数体と四染色体植物を用いて,過剰染色体の量的効果によるDNA断片の所属染色体の同定を試みた結果,異数性半数体および四染色体植物がDNA断片の所属染色体の同定などのゲノム解析に有用な材料であることを明らかにした.
  • 神山 康夫, Yasuo Kowyama
    1995 年 45 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    外来遺伝子の導入によるサツマイモの形質転換体の作出には,効率的な植物体再生系の確立が不可欠であり,この分野では緊急な研究課題のひとつとなっている.サツマイモ栽培種は同質六倍体であることから,導入遺伝子の後代における遺伝解析等は必ずしも容易ではない.そこで本研究では,サツマイモ栽培種と交雑可能な近縁野生二倍体種l.trifidaを実験材料として,効率的な植物体再生系を確立することを目的として,胚誘導性カルスの誘導と植物体再生におよぼす培地や培養条件について検討した.
  • 斎藤 浩二, 三浦 清之, 永野 邦明, 早野(斎藤) 由里子, 斎藤 彰, 荒木 均, 加藤 明
    1995 年 45 巻 3 号 p. 337-340
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    インドネシア原産のジャワ型稲品種Silewahは高度障害型耐冷性を持っている.北海道農業試験場ではこの耐冷性遺伝子を連続戻し交配によって北海241号に取り込み,水稲中間母本農8号を育成してきた.我々はこの水稲中間母本農8号についてRFLPマーカーを用いたグラフィカルジェノタイプ分析を行い,染色体上のどの部分がSilewahに由来しているかを調べた.その結果,第1(2ヶ所),第3,第4,第7,第8染色体上の合計6領域がSilewahより中間母本農8号に導入されていることがわかった.そこでこれらの領域上のRFLPマーカーを用いて穂ばらみ期耐冷性のQTL解析を試みた.実験材料としてきらら397/中間母本農8号//きらら397のBユF5系統を使用した.その結果,第3,第4染色体上のマー力一の近傍に耐冷性に関して作用力を有する領域が検出された.第7染色体上のマー力一でも同様の結果が得られたが,このマーカーは第4染色体上のマーカーと似た分離パターンを示したことから,その座乗位置に関しては再検討を行う必要がある.第8染色体上のマーカーには耐冷性との関連は認められなかった.また,第1染色体上のマー力一では親品種間での多型が検出できなかったためにQTL解析を行うことができなかった.以上の結果から,中間母本農8号の耐冷性遺伝子は少なくとも第3染色体と第在染色体の2ヵ所に存在することがわかった.
  • 渡辺 和男, M. Orrillol, S. Vegal, 岩永 勝, R. Ortiz, R Freyre, G Yerk, S. J. ...
    1995 年 45 巻 3 号 p. 341-347
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    二倍性バレイショ塊茎形成種遺伝資源を利用して,短日条件下および小集団での育種選抜効率を,二倍性半数体と野生種由来の15の二倍性F1雑種群で検討した.二倍性F1集団育成に使用された親系統のうち,二倍性半数体は長日条件下で,二倍性野生種は短日条件下でそれぞれ塊茎形成を行う.これら二倍性F1の実生517個体を使って,標高3,200mの高地耕作地(Huancayo,Peru)で短日条件での塊茎形成の初期選抜が行われた.続いて,四倍体との交雑を可能にする全数生花粉についての選抜を,アセトカーミングリセリン染色によって行った.これは,Huancayo(高地),San Ramon(亜熱帯),およびLima(灌漸砂漠)の異なる環境条件下ですくなくとも一度は行われた.その結果,60系統が環境に安定して,全数性花粉を形成することが認められた.これら系統の全数性花粉は,減数分裂第一次分裂還元型全数性花粉(FDR2nponen)であることがわかった.これら60系統について,さらにジャガイモ蛾,根瘤線虫,青枯病,あるいはジャガイモウイルスY(PVY)に対する抵抗性に関して選抜を行った.そのうち,15系統が少なくとも上記のうち一つの病虫害についての抵抗性を示した.これらの二倍性抵抗性系統について,四倍体系統への量的遺伝子によるジャガイモ蛾あるいは根瘤線虫抵抗性の伝搬が全数性花粉の機能によって可能であることが認められた.二倍性バレイショ塊茎形成種遺伝資源を使っての塊茎形成,全数性花粉,抵抗性の総合的選抜は,小集団でも十分可能であることが示唆された.また,短日条件に適応していない親系統を使っての後代選抜は,塊茎形成については十分効果があることが認められた.
  • 武田 和義, 呉 基日, 部田 英雄
    1995 年 45 巻 3 号 p. 349-356
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ムギ類赤かび病菌(Fusarium spp..)104菌株をコムギ2品種とオオムギ2品種の各々に接種した実験,ならびに12菌株をコムギ10品種とオオムギ10品種に接種した実験によってムギ類赤かび病菌にレースの分化があるかどうかを検討した.その結果,供試菌株とオオムギ品種,ならびに供試菌株とコムギ品種の間の交互作用は非常に小さかったが,個々の菌株のオオムギとコムギに対する反応の違いによる交互作用には統計的に有意性が認められ,相対的にオオムギを強く犯す菌株とコムギを強く犯す菌株が見出された.しかし,オオムギとコムギに対する寄主特異性による分散は一般的(平均的)な病原カの差異による分散の1/22~1/15にすぎないので,オオムギおよびコムギの属間においても寄主・病原関係の交互作用は小さいとみられた.ムギの非かび病についてはMesterhazy(1987.1988)がF.culmorium4菌株,Snijde.s and Eeuwijk(1991)がF.culmorium2菌株とF.graminearium2菌株,武田ら(1992)が非かび病菌3菌株を用いて接種試験を行い,いずれも菌株とコムギ品種の交互作用が統計的に有意ではあるが,菌株と品種の組合せによって抵抗性反応が逆転するようなレース分化は無いと報告している.しかし,同じFusarim属菌の申でもトマト萎凋病菌(F.oxysporumf.lycopersici)のようにレース分化が報告されている事例もある(Alexander and Tucker1945)ので,本研究では由来の異なる多数の菌株を供試して,ムギ類赤かび病菌に寄生性の分化があるかどうか,特にオオムギとコムギという寄主の属のレベルにおいて寄主と病原体の間に交互作用が認められるかどうかを検討した.
  • 石田 正彦, 奥山 善直, 高畑 義人, 海妻 矩彦
    1995 年 45 巻 3 号 p. 357-364
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    日本産のナタネ(Brassia napus L.)品種の種子に含まれるグルコシノレート含量の変異性を明らかにする目的で,パラジウム比色法と高遠液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によりグルコシノレートの総含量および組成の品種間差異を調べた.総グルコシノレート含量には変異がみられ,60.5~161.4μmol/gの範囲に分布した.グルコシノレート含量の最も低い品種は農林18号で60.5μmol/gであり,ついで農林16号が65-4μmol/gであった.一方,最も高い品種として農林12号(161.4μmol/g)とイスズナタネ(150-9μmol/g)があった.これらの品種はいづれもBrassia napus × Brassica campestriesの種間交雑により育成された品種であり,種間交雑品種においてグルコシノレート含量の変異が大きい傾向にあった.HPLC分析では1Oの主要なピークがみられ,このうち9つのピークについては高遠液体クロマトグラフ質量分析計による分析結果により,それぞれのグルコシノレートを同定した.総グルコシノレート含量の低かった農林18号および農林16号では,Aliphatic系グルコシノレートのProgoitrin,Gluconapin含量が減少していた.一方,lndolyl系のグルコシノレート含量は変化しておらず,低下系統は見いだせなかった.グルコシノレート組成に基づく日本品種の変異性を解析するため,1O種のグルコシノレート含量による主成分分析を行い,総合的なグルコシノレートスコアの大きさに関する第1主成分とグルコシノレートの2つの生合成系の違いを反映する因子と推察される第3主成分について76品種をプロットし,変異の傾向の検討を行った.その結果,日本のナタネ品種に地理的変異性が存在することが示唆された.すなわち,北海道~東北地域に適応する品種は各グルコシノレートスコアが比較的小さく,特に北海道・北東北の品種はその変異性に乏しいことが明らかとなった.一方,他の品種は一般的にグルコシノレートスコアが大きく,加えて生合成系路の異なるAliphatic系およびlndolyl系のグルコシノレートの相対的な含量について変異性が大きいことが判明した.この原因として,日本のナタネ品種の遺伝的背景やグルコシノレートに関する環境要因が関係しているものと推察された.
  • 松村 英生, 高野 哲夫, 吉田 薫, 武田 元吉
    1995 年 45 巻 3 号 p. 365-367
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    多くの主要な作物は冠水条件すなわち嫌気条件により生育が阻害されるが,イネはこのような条件に耐性を持つ.嫌気条件での植物の生育に大きな影響を与える要因の1つは発酵によるエネルギーの獲得である.この発酵に関与するアルコール脱水素酵素(ADH)と嫌気条件への耐性との関連を明らかにするため,イネにおけるADH欠失突然変異体を選抜した. 水稲品種金南風のN-methyl-N-nitrosourea(MNU)処理により得られたM2系統から発芽と電気泳動によるスクリーニングの結果,ADHの欠失した個体を選抜した.この系統(92K-2S-40)のM2,M3世代におけるADH活性についての分離から,この突然変異は単因子劣性の遺伝子により交配されると推測された(Table1).この突然変異体を好気条件で生育させた幼植物体は,野生型と同様な生育を示すが,3つの全てのADHアイソザイムを欠失していた(Fig.2).この突然変異体を冠水条件で発芽させたところ,野生型で見られる子葉鞘の伸長はほとんど観察されず,明かに生育が不良であった.しかし5日間の冠水条件の後,好気条件に移すと再び生長を続けることから致死はしていないことが明かとなった(Fig.1).以上の結果からイネ種子の冠水条件での発芽においてADHが重要な役割を果たしていることが明らかとなった.
  • 平林 秀介, 小川 紹文
    1995 年 45 巻 3 号 p. 369-371
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    イネのトビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph-1の座乗染色体と連鎖地図上の座位を決定するためにRFLP分析を行った.Bph-1遺伝子は,染色体12土のRFLPマーカーのうち最短でXNpb248と10.7%の組換麦価で連鎖していることから,染色体4土に座乗するのではなく,染色体12に座乗していることが明らかになった.また,染色体12上でBph-1-XNpb248-XNpb336の連鎖地図を作成することができた.イネの命名されているトビイロウンカ抵抗性遺伝子の詳細なマッピングは本研究が初の報告である.
  • 長村 吉晃, 井上 高一, Baltazar A. Antonio, 島野 公利, 梶矢 弘美, 正村 純彦, 林 少揚, 久保木 芳秀, ...
    1995 年 45 巻 3 号 p. 373-376
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    In the process of constructing a detailed genetic map of rice using two cultivars, Nipponbare and Kasalath, 79 DNA probes (approximately 6.1 o/o of total DNA markers) showed two or more RFLP bands in Southern hybridization and were mapped at duplicate or triplicate loci over the 12 chromosomes. Thirty-three DNA probes were mapped in the distal regions of rice chromosomes 11 and 12. Thirteen among 33 DNA probes were detected at duplicate loci. Linkage alignment of these 13 markers on both chromosomes agreed perfectly within a distance of ca. 12 CM from the distal ends of chrounosomes 11 and 12. However, the other 20 DNA probes were mapped only on either chromosome 11 or chromosome 12, because the other bands were monomorphic between Nipponbare and Kasalath. These results indicate that the regions on rice chromosomes 11 an 12 are highly conserved as a duplicated chromosomal segment. Such highly conserved segments were not found anywhere else in the other chromosomes in our map.
  • Makoto Yamamori, Toshiki Nakamura, Tsukasa Nagamine
    1995 年 45 巻 3 号 p. 377-379
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    胚乳澱粉のアミロース合成に関わる酵素であるwaxy(Wx)タンパク質を削除した普通系コムギにおいて精性形質が後代へ遺伝するかを検討した.コムギにある三種のWxタンパク質のうちWx-A1とWx-B1タンパク質を同時に欠いた関東107号および西海173号とWx-D1タンパク質のみを欠いた中国品種の自火を交配し,Wxタンパク質を含まないF2種子を得た.この個体に由来したF3およびF4世代の種子胚乳および花粉はヨード・ヨードカリ液で染色すると赤褐色に染まり,嬬性を示した.また,Wxタンパク質は電気泳動法で検出されず,その欠失を確認した.オートアナライザーによってアミロース含量を分析したところ,O.6%(F3種子),O.7%(F4種子)であった(Table1).さらに,糊化した澱粉をヨード・ヨードカリ液で呈色させた時の吸収スペクトルは梗コムギである農林61号とまったく異なった.すなわち,λmax(最大吸収波長)と青価(blue value)は農林61号に比べて大きく減少しており(Table1),アミロース含量の激減が明らかとなった.以上のことから,Wxタンパク質を削除したコムギにおいて嬬性すなわち胚乳澱粉中におけるアミロースの欠如は後代へ安定して遺伝することが判明した.作出された橋コムギはコムギ紛澱粉組成の遺伝的改変へ向けた新たな一歩となると期待できる.
  • 胡 兆華
    1995 年 45 巻 3 号 p. 389-395
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    イネ(Oryza sativa L.)は栽培作物の中でも遺伝変異の最も豊かな作物種の1つであり,栽培化されてから少なくとも7,O00年以上になると見なされている(漉1979).人の移住にともなって,原始栽培型のイネは各地の風土に適応した栽培品種群となり,2つの大きな品種群(榎と杣,日本型とインド型)へと分化し,それらの中間型品種群もある(Morishima1984,Oka1988).これらの中間型品種群には日本型あるいはインド型との交雑F1で半不稔性を示さない品種があり,日本型とインド型品種群とに分かれて存在する有用遺伝子を集結する手段として利用されてきた(IkehashiandAraki1986).
  • Lu Yuan Dall, Jran Hua Xrong, Guo Song Wen, Yong Chen, Chang Rong Ye, ...
    1995 年 45 巻 3 号 p. 397-399
    発行日: 1995/09/01
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    Yunnan province in China is located in the center of genetic diversity of cultivated rice, an area which in-cludes East Nepal, Bhutan, Assam in India. Myanmar, Laos and Northern Thailand (Chang, 1976; Nakagahra and Hayashi, 1977). Several studies on genetic variation and differentiation of the Yunnan rice varieties based on isozyme analyses (Hu et al., 1981; Nakagahra, 1984; Zhu et al., 1984; Xiong et al., 1987; Nagamine et al., 1992) have been conducted, indicating that allelic varia-tions at the isozyme loci increase from north to south in the province and that genetic diversity is the highest in the varieties from the southern and/or southwestern re-gions of the province. Geographically, this region is bordered by Myanmar. Laos and Vietnam and is located in the northeastern part of the center of genetic di-versity for cultivated rice. However, the sampling sites of the varieties used in previous reports were apparent-ly rather limited; the materials from the northern region of the province were particularly scarce. To reconfirm that the rice varieties from the southern or southwest-ern region in the province show the highest genetic di-versity, a larger number of indigenous varieties, collected from almost all counties in the province, were analyzed for isozyme variation at the county level.
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