育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
46 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 渡辺 満, 徳安 健, 佐藤 暁子
    1996 年 46 巻 2 号 p. 103-105
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    コムギ6品種を用い,従来完熟種子を用いて行われているSDS-PAGEによるグルテニンサブユニット組成の検定を,収穫期前の未熟種子を用いて行った.用いた品種の中では,Monopolが開花後15日・平均水分含量68.7%の時期から検定が可能であったが,その他の品種では開花後20日・平均水分含量57.3%(PaloDuro)~64.6%(ナンブコムギ)の時期から検定が町能であった.また半粒(胚を含む)を用いた発芽試験の結果,開花後20日以降であれば80%以上の確率で次世代の養成が可能であった.この結果から開花後20日以降,もしくは水分含量55%以下のコムギ粒を使用すれば,グルテニンサブユニット組成の検定が可能であると考えられた、収穫前にグルテニンサブユニット組成の検定が可能であることは,収穫から播種までの期間の短い東北地方においても,次世ftの嬬種までに製パン性に関する選抜を行うことができ,さらに半粒でも次世代の植物体の生育が一ト分可能であることから,育種の選抜効率の向1・1に有効であると考えられる
  • Donna Purba, 古谷 隆司, 清沢 茂久, Shigehisa Kiyosawa
    1996 年 46 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    インディカ型品種水原262号,北陸129号および四豊43号のいもち病抵抗性遺伝子の同定と単離をするために二つの方法を用いた.一つは韓国品種水原262号に用いた方法で,水原262号XレイメイのF3を2群に分け,1群にいもち病菌系統研54-20(O03.O)を,他の1群に青14-20(337.3)を接種して,両菌系に異なった反応を示した系統の遺伝子を同定・単離しようとするものである.両菌系に異なった反応を示す系統の存在は,これらの系統が両菌糸問で異なる非病原性遺伝子に対応する抵抗性遺伝子Pi-i,Pi-k,Pi-ta,Pi-b座の遺伝子のどれかを持つことを暗示している.他の一つは目的の品種の持つ全主働遺伝子を同定・単離をしようとするものである.農林29号×北陸129号,農林22号×四豊43号のF3を用いた.何れも抵抗性・罹病性が3:1に分離する系統の抵抗性個体を選抜し,以後その遺伝子の固定を計った.固定を完了したと考えられた頃,それらの系統を判別品種や他の選抜系統と交配してそのF2世代で対立性検定を行った.
  • 金子 幸雄, 夏秋 知英, 房 相佑, 松澤 康男
    1996 年 46 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    コンは激しい病徴を呈するが,カンラン類は抵抗性である.したがって,カンラン類はTuMvに対する抵抗性遺伝子(遺伝子群)を持つものと思われる.そこで,さきに聖誕院大根(2n=18)にカンラン類のひとつである紫葉牡丹(2n=18)を交雑して得た複二倍体Raphanobrassica((Rb-613系統)のF11植物(2n=36,37)に,聖.護院人根を連続戻交雑して育成した7種類のカンラン類・染色体添加型ダイコン系統(2n=19.a~g添加型)を用い,TuMVの人工接種による病微の発現程度からTuMV抵抗性を調査し,抵抗性遺伝子が席.乗する添加染色体の決定を試みた.その結果,f添加型は発病がほとんどみられなかったこと(発病評点O.1)から、TuMV抵抗性遺伝子(遺伝子群)は紫菓牡丹のf添加染色体に座乗していることが明らかになった.
  • 一井 眞比古, Masahiko Ichii
    1996 年 46 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    アイソザイム多型に基づいて分類したイネ(Oryza sutiva.L.)6品種群のなかから任意抽出した33品種を供試し,それら幼棚物葉身の硝酸還元酵素(NR)活性,亜硝酸運元酵'素(NiR)活性及び硝酸含有率を調べた.NADH-NR活性はいずれの品桶においてもNADPH-NR活性より大いに高かった.NADH-NR活性,NADPH-NR活性,NiR活惟及び硝酸含有率の6品種群閉0)羊はいずれも有意であった.NADH-NR,NADPH-NR及びNiR活性の品楠郡内における島種間差は'有意であったが,硝酸含有1率のそれは有意でなかった.NADH-NR及びNiR活性の品種間差は極めて・大きく,活性の高い昆種は低い品桶の3倍以11の活性を示した.供試品種はそのNADH-NR氾性によって高,中,低の品種群に分けられ,高NR活性品種群が優れた硝酸同化能力を持つことが示唆された.
  • 原田 聰, 中田 健吾, 田中 有司, 石黒 幸雄, 伊藤 徹, 高木 正道
    1996 年 46 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    トマトにおけるネコブセンチュウ抵抗性形質は,野生種Lycopersicon peruvianumにおいて最初に見出され,1940年代に異種間交雑により栽培、L. escltlentun に導入された.その後の研究で,この形賃は第(1染色体卜0)単一優性遺伝子により支配されていることが判明し,Miと命名された.さらにMiは,酸性ホスファターゼー1遺伝子(Aps-1)領域の近傍に座付していることが明らかとなった.酸性ホスファターゼー1にはそのタンパクの泳動度の違いから11型(L. peruvialum 型)と1+型(L.esctilentum型)に区別され,11型はM1と同時に仰生桶から栽培種に導入されたものであり,11型と1+型を区別することでネコブセンチュウ抵抗性育極が進められてきた.また,近年では我々を含め数種のグループによりAps-11遺伝子がクローニングされ,その塩基配列が決定されている.またSouthern解析で11型と11型でRFLPが検出されることも明らかとなっている.
  • 間野 吉郎, 高橋 秀和, 佐藤 和広, 武田 和義
    1996 年 46 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    オオムギ品種Steptoe×Morexの交雑からパルボッサム法で作出された倍加・半数体(DH)125系統のカルス生長量と不定芽再分化率を調査し,222のマー力ーに関するデータを用いてQTL解析を行った. DH系統のカルス生長量と不定芽再分化率はいずれも幅広い連続変異を示し,不定芽再分化率に関しては超越分離がみられた.interval mappingによってカルス生長量と不定芽再分化率に関連するQTLの位置と効果を推定したところ,これら2つの培養形質はそれぞれ複数の遺伝子に支配され,かつ,相互に異なる座位に存'存することが明らかとなった.木研究で見い出されたカルス生長量を高める2つのQTLはいずれもMorexに由来するものであり(Qcg1,Qcg2),また,'不定芽再分化率を高める4つのQTLのうち3つはSteptoeに由来し(Qsr1,Qsr2,Qsr3),1つはMorexに由来するものであった
  • 落合 雪野
    1996 年 46 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究ではアワ(Setaria italica P. Beauv.)の分けつ性について詳細な知見を得るため,ユーラシア各地の16系統について実生から成熟期に至るまでの全生育期間にわたって,分けつの発生様式を京都で観察した.その結果アワは分けつ性についてI型,II型,III型,IV型の4つの分けつ型に分けられることが明らかになった(Table1).I型は4タイプのうちで最も有効分げつ数が多く,主桿の多くの節から一次分げつが発中.し,また二次分げつや三次分げつも生じる(Figs.2,3).I型の分けつ様式は,アワの祖先野性種であるエノコログサ(S.Varidis P.Beauv.)の分けつ様式ときわめてよく似ている.II型は一次分げつが1本もしくは2本しか発生せず,二次分げつ以降の高次の分けつも見られないため,有効分げつ数は2または3となるタイプである(Figs.2,3).III型は主桿だけに穂をつけ,全く分けつを.生じない非分げつ型である(Figs.2,3).II型およびm型はI型とは明らかに巽・なる分けつ様式を示すが,これはまず高い分けつ能力を持つI型がエノコログサから栽培化され,次に強い頂芽優性を示すII型とIII型がI型から分化してできたものと考えられる.
  • 倉貫 幸一, 吉田 静夫
    1996 年 46 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    多くの草本植物は。orthodox種子で,通常乾燥することにより液体窒素中での超低温中で容易に保存できる.しかし,チャのような亜熱帯性の木本植物はrecalcitrant種子が多く,'高水分と乾熾に敏感であるために超低温保存には適さない.チャ種子の場合,50吸以下の水分含量で生存率が著しく低下する. そこで,チャ種子recalcitrantな機構を明らかにするために、栽培品種.やぶきたの種子を用い,乾燥とその後の超低温処理に対する胚軸と子葉の感受性を試験した.'種子から摘出した胚袖は乾燥に対して高い抵抗性を示した.一方,子葉は乾燥に対して著しく感受性で,水分含量を55%に減少すると重大な障害を受け止年率が低下した.このことはチャ種子が乾燥に対し著しく感受性である大きな理由であると考えられた.水分含量を15~30%まで乾燥した摘出胚軸は液体窒素の超低温処理で生存した.超低温処理と加温後0)胚軸は回復培地上で生育し,通常の植物に生長した.この結理から,チャ種子はrecalcitrantである.その原因は予'簾にあることから,胚軸を摘出・乾燥すれば液体窒素中での超低温保存が可能であることが明らかになった.
  • Shaikh Mizanur Rahman, 高木 胖, 熊丸 俊博
    1996 年 46 巻 2 号 p. 155-158
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/07/27
    ジャーナル フリー
    ダイズ [Glycine max (L.) Merr.] のリノレン酸含量は, ダイズ油の酸化による不快な匂いの原因となり, 脂肪酸の酸化安定性の改良と深く関係している. この研究で使用した突然変異体のM-5とIL-8リノレン酸含量はそれぞれ4.63%と4.50%で, Bayの8.02%に比較して約半分の含量, そして, C1640は4.58%と低含量であった. この研究は, 低リノレン酸含量となるM-5, IL-8, C1640の3系統とBayのリノレン酸含量の遺伝的関係, M-5, IL-8, C1640の相互間の遺伝的関係を明らかにすることを目的とした. 低リノレン酸含量となるM-5, IL8, C1640と高リノレン酸含量となるBayの正逆交雑では, M-5×Bay, IL8×Bay, C1640×BayのF3種子の分析から, F2世代ではM-5, IL-8, C1640の低リノレン酸含量は1遺伝子0女1配であることを明らかにした. さらに, M-5×IL-8, M-5×C1640, C1640×IL8の交雑では, リノレン酸含量についてF2世代で明瞭な分離が認められず, M-5, IL-8, C1640は同座に属する複対立遺伝子の支配が推定され, 3系統の低リノレン酸含量は, いずれも同座性のfun遺伝子の支配によることを明らかにした.
  • 金田 忠吉, 海川 正人, M Rohinikumar Smgh, 中村 千春, 森 直樹
    1996 年 46 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    マニプール州はアッサム州の南東に位置し,アジア栽培稲の.多様性中心地の一角を占めている.ここで収集された在来稲鼎種は約270のMRC (Manlpur Rice Collection)として整理され,農業特性が調査されているが,その一部の譲渡を哩けて2,3の生埋的・形態的特性と葉緑体および全DNAの解析を行い,各品種ごとの遺伝的特性とその栽培地域との関係から牛.態種の分化の様相を明らかにした 供試材料はマニプール州の'在来品種.51と改良型10品種.で,対照としてJaponica5(日本品種3といわゆるJavanica2)品種及びIndica2品種を用いた(Tab1e1).まず内外穎のフェノール反応,2~3葉期の苗の1.5%塩素酸カリ溶液に対する抵抗性,および穎毛の長さを用いた判別関数Z他による48在来品種0)分類では,32品種がIndica,5品種がJaponica,11品種が中間型となった.
  • 万 建民, 池橋 宏
    1996 年 46 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    栽培イネの遠縁交雑における雌性配偶子不稔遺伝子座として,既にS-5,S-7,S-8,S-9,S-15,S-16が報告されている.□木型とインド型イネの雑種不稔性はS-5によることも明らかになった.本報では,突然変異によって育成された日本型品種みゆきもちと広親和性品種02428の日印交雑における雑種.不稔性を支配する新しい対立遺伝子の分化について報告する. みゆきもちは1司し日本型品種トヨニシキからガンマ線照射で育成されたもち性突然変異品種である.しかし,トヨニシキとインド型品種IR36との雑種不稔性はS-5のみによるのに対して,みゆきもちとIR36の雑種不稔性はS-5とS-7によるものであった.従って,みゆきもちでは,突然変異により,S-7iからS-7へと新しい対立遺伝子が生じたことが証明された、一方,中国でよく使われている広親和性品種02428は,PangxieguとJibangdaoをガンマ線照射後交雑して得たF1から'育成された. しかし,両親のPangxieguとJibang(laoはIR36などインド型品種と半稔性を示す日本型品種であるので,02428のS-5nは突然変異によりS-5iから分化した二とが判明した.
  • 吉岡 藤治, 菅 洋
    1996 年 46 巻 2 号 p. 173-178
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    葉耳間長-4から+8cmまでの穂の発育段階の異なったものを日温15℃夜温10℃の冷温で10日間処理し,その種子稔性に及ぼす影響を調べるとともに,穂の内生ジベレリン含量を調査した.冷温に遭遇させる時期が早いほど種子稔性は低下したが,品種間でその程度に差異が認められ,ササニシキの方が稔性低下が著しかった.冷温処理しないものに比較すると,冷温処理によって穂の内生ジベレリン含量は両品種ともに著しく低下したが,冷温処理下でのジベレリンの減少程度はササニシキでむしろ少なく,冷温処理しないものとの比較ではササニシキの方がジベレリンの残存する比率は大きかった.ササニシキにジベレリン生合成阻害剤のS-327Dを処理してから冷温処理を5日間処理したものでは,薬剤処理によって内生ジベレリン含量が低下すると同時に,特に葉耳間長がO~4cmの発育段階での冷温処理に対して,ジベレリン生合成阻害剤処理による種子稔性の向上が認められた.これらのことから,減数分裂期の冷温処理による種子稔性の低下には内生ジベレリンのレベルが関与している可能性が示唆される.
  • 小川 泰一, 福岡 浩之, 大川 安信
    1996 年 46 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    細胞培養が困難な品種「コシヒカリ」「農林1号」を用いて,培地組成の改変がカルスの増殖に与える影響を調べた.コシヒカリ,農林1号を含む3品種の完熟胚から誘郵したカルスを隅々の組成の液体培地に移しカルス増殖率について比較した.還元型窒素源を含む培地ではコシヒカリや農林1号のカルス増殖率は,3%のショ糖を含む培地よりもO.375%のショ糖を含む培地において高くなる傾向を示した0)に対し,他の3品種のカルスの増殖は培地中0)ショ糖濃度に対してその逆の反応を示した.その結果,5品種のカルス増殖率においてみられた品種間差は0.1→75%のショ糖濃度下では狭まった(Fig.ユ.2).還元型窒素源も,また,カルス増殖率の品種間差異に影響を及ぼしており,さらに品種間差を解消するためには,硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)をアラニンに置換し,硝酸カリウム(KN03)とともに添加することが必要であった.すなわち,01375%のショ糖を含む条件下において,窒素源として20mM KN03のみ,20mM KN03と2.5mM(NH4)2SO4及び20mMKNO3と5mMグルタミンを含む培地中では,コシヒカリや農林1号のカルスの増殖率は他の3品種に劣っていたが,窒素源として20mM KN03と5mMアラニンを含む培地では他の3品種と同等の増殖を示した(Fig.2).次に,O.375%のショ糖を含む条件でのカルスの増殖に伴う培地中のpHの変動を調べ,日本晴とコシヒカリのカルスで比較した
  • 星野 次汪, 伊藤 誠治, 八田 浩一, 中村 俊樹, 山守 誠
    1996 年 46 巻 2 号 p. 185-188
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    コムギにはA,B,Dゲノム由来の3種類のWx-A1,-B1,-D1遺伝子があり,A,Bゲノム出来のWx-A1,Wx-B1タンパク質を欠く関'束107号とDゲノム由来のWx-D1タンパク質を欠く自火(Ba1Huo)が知られている.そこで,これらの品種を交配し,そのF1個体にトウモロコシ(B14/CI(540)Fl)花粉を交配する'件数体育種法を用いて,モチ性コムギの早期の品種、開発及びモチ性の分離比を調査した.その結・果,交配数4,811小花で,最終的に半数体倍加系統が19個体得られた.I2-KIの呈色反応から,2個体がモチ性個体であると判定された(Tab1e1,Fig.1).さらに,オートアナライザーでのアミロース含量測定でも橘米並のアミロースゼロを確認した(Fig.2).また、電気泳動によりWxタンパク質が無いことを確認した(Fig.3).DH3種子についても1同様にモチ性を調査し,モチ性が次世代に遺伝することを確認した.モチ性が次世代に遺伝すること明らかにした.
feedback
Top