育種学雑誌
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9 巻, 2-3 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
  • 西山 市三
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 73-78
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 清水 正治
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 79-86
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.'56,'57両念土耕及び水耕により,N,P,Kの施容量及び組合せを変えて水稲幼植物を栽培し,肥料条件の相異が水稲のVegetative Shoot Apexの構造並に生理に及ぼす影響を細胞-組織学的に観察した。2.肥料条件によりVegetative Shoot Apexは外部形態のみならず,明らかに細胞-組織学的な変化をうけ,その様相は,N,P,Kの種類によって異なる。3.NはVegetative Shoot Apex の周辺部のAnticlinal d1visionを促進せしめ,Tunicaの層数せしめず,相対的にTunica的な性格の強いApexとする。4.PはVegetative Shoot Apexの周辺部のAnticlinal divisionを抑制し,不規則な多方向分裂を促進して,Tunica部の多層化をおさえると共に,Corpus部の割合を高め,相対的にCorpus的な性格の強いApexとする。5.KはTunica部及びCorpus部の組織分化を明瞭にし,結果的にはN及びPの一方的な作用を抑捌する如き作用を示す。6.Vegetative Shoot Apexの発育史的な観察結果と併せ考え,Tunica部の卓越したApexは生理的に栄養生長的な性格が多く,Corpus部の卓越したApexは生理的に栄養生長的な性格が弱いと考えられる。7.第一実験において、N多量区が最も出穂期がおそく,P多量区が最も早く,K多量区がこれによりややおくれて出穂を示したが,これら出穂期の早晩は上記の観察と関係があると考えられる。8.N区及びN多量区において細胞は正しい短形正しい短形細胞が多かつたが,P区及びP多量区に於ては,核の大きい比較的多角的細胞が多く,特に当社に於ては Corpusnitialsとしての巨大細胞がしばしば観察される。9.以上の諸点から,水稲の1 Vegetative Shoot Apexの構造は既に報告した通り,1 Plastochrone内および齢によつて変化するのみならず,栄養条件によっても変化を示すきわめてDynamicなのであることが明らかである。
  • 岡 克
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 87-92
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    タバコ黄色種の6品種とその正逆F1を用いて全薬数,草丈,開花日及び葉型の4量的形質の遺伝構成要素を二面交雑法によつて分析した。この方法によつてDとH1を求め,それによつて平均の優性程度を推定した。また優性と劣性の対立因子群数及び遺伝力などをその他の統計量も用いて計算した。これらの分析から,栽培品種間では上記の形質について一般に部分優性が認められ,特定組合せ能力が小さくまた2,3の因子差があり,これらの形質は一般に高い遺伝力をもつことが認められた。これらの結果を第7表に総括して示した。
  • 松尾 孝嶺, 長谷川 康一, 山田 哲也
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 93-96
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    我国の在来稲25品種について,その形態学的及び生態学的特性について改良品種,陸稲及び外国稲と比較した。籾型については改良品種と殆んど同じであるが,草型では陸稲,外国稲のA,B型と似た変異を示した。また籾のフエノ一ル反応,玄米のKOH崩壊度',幼苗のKCIO3抵抗性,日長に対する山穂反応及び印度稲に対する性的親和性等にも改良品種と異る形質を示す品種が認められた。
  • 富永 保人
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 97-100
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    (1)筆者はクラムヨモギの油腺及び分泌腺について特にその発生過程及びサントニン含有との関係について調査した。(2)油腺は茎、葉,頭状花等の表皮に生じ、1個の油腺母細胞の分裂の結果4個の油腺柄細胞と8個の油腺細胞とから構成され,その中に葉緑体を有する。(3)油腺の発達と共に生ずる油嚢には油脂を含み,サントニンは最下層の油腺細胞に生じ,次第に増加して遂に上層の油腺細胞及び油嚢にも含まれるにいたる。(4)分泌腺は茎,葉,頭状花等の内部組織に管束につて生じ,多数の細長い油腺細胞がそれらの細胞間隙を中心に外方に向い細胞の扁平化によって生ずる離生間隙とからなり管状である。油脂及びサントニンを含む。
  • 後藤 虎男
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 101-108
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.芝罘白菜(AA)に対し,野崎夏蒔甘藍(CC)の花粉を配しゲノム構成ACCの2甚3倍体を得た。2.このACC植物の次代として自家授紛により2個体,自然放任により4個体を得てて,核学的及び形態的観察を行つた。3.ACC植物の花粉を黒葉サクセッション甘藍(CC)に交配しキヤベツのゲノム2組と芝罘白菜の染色体2箇を推定される2n=20の1個を得た。4,ACCに対しホワイトグローブ(AA)の花粉を掛けそれぞれ染色体数,外部形態の異なる3個体を得た。5.朝鮮白菜(B.pekinensis),ホワイトグローブ(B.rapa),聖護院大丸蕪(B.rapa)の3種類のAA植物に対しACCの花粉を交配し,それぞれ核学的に,形態的に,発育段階的に異なる第2世代植物計38個体を得た。
  • 山本 興三郎
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 109-112
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    60日令の白色レグホーン雛にestrogen投与の結果,雌雄共に血清Vitellin反応の出現する事は既に知られているが,その感受性の強弱により選抜して兄妹交配を行い感受性の強弱によるニ系統の分難を試みた。3世代迄に得られた結果は次の如くである。(1)各世代とも反応出現率に於て2群間に有意義が見られ,更に亦3世代合計した場合には有意性は一層高まつがた世代を追つて偏る傾向は見られなかった。(2)反応を示した雛の反応出現所要日数の分散では腹間に有意差が見られ,同腹の雛及び同腹の雌雄について有意な級内相関係数が得られ,雌雛のみの場合殊に高く雄雛の場合は有意ではなかつた。(3)反応出現率は雌の場合雄よりも高く亦反応出現所要日数に於ても雌雄間に有意差が見られ,雌は雌に比して遙かに感受性の高いことが明かになつた。終りに臨み終始懇切なる御指導を戴いた細田達雄博士並びに御校閲に際し種々御批判を賜つた内藤元男教及び本実験に種々御援助を頂いた農場長戸苅義次教授並びに農場主任川廷謹造助教に深甚の謝意を表する。
  • 松尾 孝嶺, 中島 哲夫, 蓬原 雄三
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 113-117
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    水稲の採種条件が次代に及ぼす影響について,問題点をより明確に把握する目的で,極端な条件(燐火栽培および窒素欠栽培)で採種をくりかえし,その後代について調査を行つた。得られた結果は次のようである。(1)燐火または窒素欠条件で採種をつづけると,世代が進むにつれて,生育の弱勢化が累積的に増大することが認められた。(2)このような弱勢化は種子の素質に影響し,完全肥料条件で比較しても,欠乏栽培の世代が長いもの程,生育が劣る傾向が認められた。しかし,一代完全肥料条件で栽培すれば,弱勢化は消去された。(3)採種条件の影響は累積的に増大するものと考えられた。(4)燐欠栽培を3代くりかえしたものに,出穂期の早生化が認められた。この現象は燐欠枇培を継続すれば継代されるが,1世代の完全肥料栽培で消去されてしまった。この現象が現れた原因については不明である。
  • 中川 元興, 曽我 義雄, 渡辺 進二, 牛腸 英夫, 西尾 小作
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 118-120
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Wheat yellow mosaic virus has been occurring at Tokai-Kinki Agricultural Experiment Station farm since 1957 as described in the report 1. Wheat varieties, Shinchunaga, Norin Nos. 20, 43, and 61, decided previously resistant to yellow mosaic virus ranged from severe to lighter degree of infection which could be dctectcd by the X-body as a weak symbol. The methods of testing the yellow mosaic inheritance remains same as clescribed in report l. Rcsults shown in the report are brieny summerized as follows : 1. Three genes controlling the occurrences of yellow mosaic virus behave in the same way as in case of green mosaic virus described in the. report 1. 2. Among these 3 genes, H and M are susceptiblc genes and these 2 genes affect thc occurrences of mosaic infection. Another one, A, is a modifying gene and it in hibits of H gene. It seems to be controlling the occurrence of yellow mosaic virus. 3. Judging from these genes interaction, the action of M gene seems to have close relationship, with the infection of the yellow mosaic virus.
  • 松林 実, 高橋 均
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 121-127
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    東北地方における陸稲について,栽培上あるいは育種上の品種選択の資料を得るために,陸稲27品種を用い,水稲27品種と対比しながら,幼苗期の低温抵抗性と,高温による出葉の促進程度とを調査した。1)幼苗の低温抵抗性は,陸稲は水稲に比べて著しく弱い。また.水稲に比べ,陸稲の品種間差異は著しいがその強弱と出穂期の早晩や栽培地域の緯度とは関係が認められない。2、供試された陸稲と水稲の感温性程度には,有意な差がない。そして,陸稲の品種間の差異は,水稲の場合よりも小さい。また、感温性と早晩性との相関を見ると,水稲では早生種程感温性が高く,明らかな相関が認められるのに対して,陸稲ではこの関係が認られない。3)稲の高温による出穂促進日数は,出葉促進日数(実際には出葉転換点までに累積された同位葉間の促進日数)と,節数減少(幼穂分化の早められた葉位数)による短縮日数とで決まるもののようであろ。
  • 山口 彦之
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 128-134
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネ品種「陛羽132号」の気乾種子にX線および熱中性子の処理をほどこしたとき,R2代の1穂別系統内に葉緑突然変異体がどのような分離比で出現するかを,F1-SHERのsib methodをもちいてもとめた。その結果,X線のばあいには,O.2305±O.0084が、中性子のばあいは,O.1774±0.0092がえられた。同様に、気乾種子に熱中性子処理をおこなつた「農林29号」については,0.1770±O.0111がもとまつた。このような推定値は,いずれも突然変異形質が単純劣性であると仮定したときの理論比O.25から有意にズレていたが、とくに熟中性子処理のばあいにおいて,いちじるしい劣性過少がみられた。このような差異は,放射線の種類のちがいに由来し,中性子はX線に比し葉緑素形成に関与する遺伝子の単独変化をおこすことがまれであり“linked mutation”または染色体の小部分の欠失を生じやすいものと推定された。上記の分離比にもとずき,R2代の1穂別系統あたり栽植すべき個体数を算出すると,X線照射で18個体,熱中性子処理では24個体となつた。さらに,R1代に生じた不念穂のとりあつかいについて若干の考察をおこなつた。
  • 胡 兆華
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 135-139
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.水稲農林8号の半数体の1株に生じた結実穂から二倍体植物を得て、その系統分離を行い,第3,4代系統を農林8号の原々種と比較した。第3代,第4代および原々種の各30系統を6回反復の乱魂法で試験し,稈長,穂長,穂数,一株収量などについて調査した。2.半数体からの二倍体と原々種とは全く同様な生育を示し各形質共有意差がなかつた。またそれぞれの集団内の系統間差異も,原々種からの系統が稈長について有意であつた他は,有意性をを示さなかつた。したがつて半数体からの二倍体は原々種以上に純系であるが正常に生育すると考えられる。3.各集団の系統内個体間変異の標準偏差を比較したところ,有意差が見出されなかつた。したがつて純系になると遺伝的平衡性が低下し環境変異が増加すると言う傾向もないように思はれる。これらの点から考えると,稲は高度に純系化しても自殖弱勢のような害を生じないであろう。4.半数体からの二倍体の第2,3代にそれぞれ1/40および1/80の頻度で三倍体が見出された。
  • 菊池 正仁
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 140-144
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1. The immature embryos of wheat and barley were excised and immediateiy transplanted into the growing young endosperms of foreign grains. After the operated grains ripened, the transplanted embryos were excised again to measure their size, (length, breadth and thickness). 2. The transplanted young embryo was abie to grow further in the foreign endosperms and reach about the same size as the embryo of intact seed (Table 1). And also, the transplanted embryo was proved to enlarge its size along with the further differentiation of its organs. 3. The increase in length, breadth and thickness of the transplanted embryo was nearly similar, except some embryos which showed surplus growth in breadth or in thicknessf(Table 2). About half of the total number of transplanted e.mbryus grew five times or nlore as large in size as young embryo at the time of excision ; about one-fourth, ten times or more. The earlicr the embryo was tranplanted the larger the growth ratio became (Table 3). 4. The number of embryos longer than 1. 5 mm, which is reported to be able to germinate easily, amounted to about 24 percent of the total number of embryos transplanted. This figure is close to the highest percentage of germinaition (26%), which was obtained in 1956 by the author. 5. These facts indlcate that thc transplanted embryo can take a large amount of nutrition from the host endosperm and continue its normal embryonic growth, so the younger the embryo is the more it depends upon the host endospcrm, and that the transplantcd embryo in the foreign endosperm can grow similarly to that of the embryo in the intact seed In spite of the drastic operation.
  • 高杉 喜一, 二ツ寺 勉
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 145-153
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1)1949年来レンゲ Astragalus sinicus L. (2n=16)の人為四倍体(2n=32)を育成し,実用化に関する実験を行つて,飼肥料作物的価値が著しく改良されている事を明らかにした。2)4x-植物は巨大性を良く発揮し、生草は30%余の増収となり,しかも全窒素、粗蛋白,P2O5などの含有率が高く比較的栽培し易い。3)採種上に問題となる2xと4x間の正逆交雑は不和合性を示す事が,人為交配実験によって明らかとなつた。4)しかしながら,稔性低下・成熟期の遅延・硬実の増加の事実は大きい欠点である。5)系統の選抜試験によって14-2-1,8-2-1,1103の3系統を選抜し現在増殖が行われている。
  • 永井 次郎
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 154-160
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    20日令マウスに総量12.5I.U.の卵胞ホルモンを2日おきに5回皮下注射してえられる乳腺発育反応(M)は,泌乳量に関係がある形質と考えられる。兄妹交配を行いつつその乳腺発育反応に対してこれまで選抜を試みてきた結果,選抜の効果が認められた。しかし乳腺発育反応値をえるのにはかなりの時間とと労力を要する。そこで乳腺発育反応と遺伝的に関係がある35日令体重(W)を毎代選抜することによつて間接的に乳腺発育反応を選抜する場合と,これまで行つてきた2代おきに乳腺発育反応を直接に選抜する場合の選抜効率を比較してみた。選抜強度が同じときは前者の後者に対する比Rは R=TM/TW・rGW<P>_W/rGM<P>_M・rGMW で示される。ここにTは selection intercal, rG<P> は家系表型平均値と家系の一個体の遺伝子型との相関, rGMWは乳腺発育反応と35日令体重との遺伝相関を示す。hを heritability の正の平方根, n,t,r を夫々,家系(内)の構成員数,表型相関,遺伝相関とすると rGW<P>_W=hW・√(1/n(1+(n-1)tW)[1+(n-1)r], rGM,P)_M=hM・√1/n[1+(n-1)tM]・r・nで示された。分散分析法によつて627匹のカスカベ♀マウスの成績から一腹内相関係数,母内相関関数, heritability を求めると,乳腺発育反応においては夫々0.37,O.12,O.51であり,35日令体重においては夫同じ0.65,O.28,O.55あつた。両形質の間の遺伝相関を0.3~O.7とし,乳腺発育反応に対する間接選抜と直接選抜を比較した結果,間接選抜の正確度は家系構成員の平均体重値を用いるよりも家系内の一固体の体重値を用いる方が勝り,一固体の体重による間接選抜の場合には,一固体の乳腺発育反応値による直接選抜より,1,875~4,376倍効率が高かつた。
  • 角田 重三郎
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 161-168
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    稲6,廿藷1O,大豆12品種その他を材料として,葉面積展開能力についての品種間差異と品種の多収性との関係を研究した。(1)少肥条件下で多収をあげる品種は葉面積増大の方向に強く選抜されて来ているが,多肥条件下,特に多肥密植の下で多収をあげる品種の葉面積展開力はそれ程大でない。(2)葉面積展開力の強い品種が多肥条件下,特に相当程度の密植を伴う多肥条件下で必ずしも多収をあげ得ない原因は,一つにはこの様な条件下では葉面積が増大しても葉と葉との重なり合いが強化されるばかりで必ずしも全乾物収量が増えないことである。第二の原因は葉面積展開力が大であることが“移転率”の低いことと密接に結びついているためである。(3)葉面積植物体重比率(略称一葉面積比率)を決定している遺伝的要因が強く葉面積展開力の品種間差異を支配している。菓面積比率が大であると相対生長率が大となり,ひいて生育期間中の植物体重が増大する傾向である。葉面積比率そのものと植物体重との積であるところの葉面積はこの場合当然大となるわけである。(4)“移転率”の問題も含めて,品種の葉面積展開力と品種の多収性との関係を完全に解くための鍵の一つは葉面積植物体重比率を更にその構成諸要素に分解して行くことにより得られるであろう。(5)この場合,次の諸点に注意しなくてはならない。(a)多肥密植栽培の生育後期に於ては葉面積比率の増大が相対生長率の増大とならない。(b)稲では葉面積比率と植物体重との間に顕著な逆相関が見られる。而して“その植物体重の割に葉面積比率の大なる品種”が高い相対生長率を示すのである。(c)少くとも甘藷と稲の半矮性種では葉面積比率以外の要因が相当強く相対生長率,ひいて葉面積展開力に関係している。
  • 山口 彦之, 安藤 晃彦
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 169-172
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    二倍体および倍数体を使用して放射線に対する感受性の比較をおこなうと後者の方が抵抗性であることが報告されている。これらの実験で主としてもちいられている倍数体はエンバクやコムギの自然異質倍数体であり,同質倍数体ともとの二倍体とのあいだで相斜線感受性の比較をおこなつた例はほとんどみあたらない。われわれは,日本陸稲品種およびそれからコルヒチン処理により作出された四倍体の乾燥種子にコパルト60からのガンマー線を10,OOOr,20,OOOr,30,O00rの線量で照射し,両者間で感受性の比較をおこなつた。予期のとおり,処理当代における幼植物の生長阻害個体あたりの穂数の減少・1穂あたりの籾数の減少および穂別の稔実率の低下は二倍体に顕著であつた。なお,次代(X2)にあらわれた葉緑突然変異率は,二倍体では期待されるように突然変異体を全然見つけることが出来なかつた。四倍体の放射線抵抗性は主として染色体数の増加に原因するものとおもわれる。
  • 後藤 寛治, 長内 俊一
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 173-178
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    この実験は、先に報告した“裁植密度と選抜の効率”の場合と同様の意図の下に行われた。供試材料は,秋播小麦Minturki×東北103号の雑種後代である。選抜試験の経緯,収量比較試験の方法は,第1図に示したとおりであるが,F2,F3代を少(標準の半量),中(標準),多(標準の保量)肥の育成環境で栽培し,多収系統を選抜した上,各環境下で選出した上位系統群につき,少,中,多肥の栽培条件で収量を比較したものである。その結果,少肥で育成選抜してきた系統群で,多収親に比し多収な超越系統の頻度が最も高かつた。又これらの系統群では,少,中,多肥の栽培条件間の収量の相関が,他の育成環境に由来した系統群の場合に比して高く,少肥条件下で選抜された系統が、各種の施肥条件により広く適応する可能性を示した。F2個体に対するF3系統,F3系統に対するF4系統群の回帰による収量の遺伝力を各育成環境毎に算出したところ,少肥の育成環境で最も高かつた。これらの実験結果を中心として,育成環境と選出される遺伝子型の問題,環境条件と選抜効率の関係を解析し2,3の考察を加えた。
  • 佐俣 淑彦
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 179-186
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    遺伝子型の判明している15系統を用いて,花型遺伝子の発現に対する温度の影響を見た。温度は東大構内のバイオトロン内で30℃,20℃,10℃及び戸外の自然温度下で比較した。各温度区には挿木により繁殖した同一栄養系を供試した。開花期に同一栄養系内で花型の表現を比較した。結果は次の通りになつた。(1)一般に高温は花弁の発達を阻害し,低温は促進する傾向が見られた。(2)一重型,無弁型,優良八重型では著しい花型変化は見られなかつた(第3図,第4図)。(3)舌状花奇形型では,高温では舌状花の発達が著しく抑制されて,無弁型に移行し,低温では舌状花は戸外に於けるより遙かに大きく伸長した。然し舌状花の奇形性は除去されなかつた(第5図)。(4)不完全八重型では筒状花の発達は温度により著しく影響をうけ,高温では筒状花の発達は殆んど完全に抑えられて,一重型に殆んど近い表現を示したのに,低温では極めて優良な八重型となつた。又低温では全く花粉を出さないものが,高温では一重同様多量の花粉を出した(第6図,第7図)。以上の結果について次のような考察を試みた。温度の影響で著しい表現型転換が見られたのは,花弁発現に作用すると考えられる生長物質が,異なった温度条件下でその発言力を変更された遺伝子のために,その生成,分配等に差を来たした事に基因すると考えられ,環境の影響をうけ易い変更遺伝子の関与する範囲内で影響が現れたものと思われる。
  • 盛永 俊太郎, 栗山 英雄
    1959 年 9 巻 2-3 号 p. 187-193
    発行日: 1959/09/30
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.1943年と1948年とに著者等は稲のtriploidを作る目的でdiploidとtetraploidとの間に相反交配を試みた。両年を通じて427個のtetraploidの花と,672個のdiploidの花とに行った交配から全くtriploidが得られなかった。2.1949年には常にこdiploidを母方にとり,交配方法を多少ずつ変えて,更に大規模の実験を試みた。実験につかった総花数は22,639に及んだ。その結果,28仙のtriploidを得た。交配の仕方とtriploidの出来た率との関係は次のようである。本文実験III.温湯除雄後開花したものに直ちに授粉した場易合………・…………・・……………………0.05%本文実験IV-a.温湯除雄によって一度開花した花を2~6時問後に切頴法によって授粉した場合・・…・0.03%本文実験IV-b.温湯除雄によって一度閉花した花を10~12時問後に切頴法によって授粉した場合…0.25%本文案験V-b.温湯除雄によって開花しなかった花を一日後に切頴法によって授粉した場合…………1.09%3.上述の如く,2x×4xによって極めて低率ながら3xの作出に成功した。そのの場合の実験成績に照して,開花1日前位の花を温湯処理して処理の1日後に授粉する方が最も効果的のようである。その場合でも成功率は約1%であった。4.農家の圃場一に偶然発見されるtriploidの成因については,これを栽培のdiploid稲と,その圃場に別の事情からすでに混在するtetraploidとの交配結果と見ることは出来ないようである。5.稲に於いても他の植物と同様に双子が生じることがある。一・般に,双子の片方がhaploidかtriploid又はtetraploidとなる場合のあることが知られている。それらの中,最も起り易いのはtriploidで最も起り難いのはtetraploidである。農家の水田では,最も遭偶し易いのはtriploid,次はhaploidとtetraploidのようである。これらのtriploidとhaploidは,少くともその大部分は双子の片方として生じたもの,tetraploidの大部分は或種類の高度不稔個体の子孫として生じたものと考えられる。6.1949年の交配実験を通じて約O.3%,69個体,の母本に似た次代植物が得られた。これらは母体が,純糯性の場合には純糯性を,純粳性の場合に純粳性を示した。母本がそれらの性質について雑種性の場合には純粳性のもの,雑種性のもの,純糯性のものの三種類を生じた。7.1949年の実験では特に花粉の混淆のないように注意したつもりであったが,上記の母本に似た固体(少なくともその大部分)は,染色体の倍加を伴ったパーセノゼネシスの結果ではなく,矢張り、思わざる白花校粉の結果であったと見ざるを得ない。8.この実験に於てはtriploid以外のhaploid或はその他の異常染色体数の個体は発見されなかった。
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