20日令マウスに総量12.5I.U.の卵胞ホルモンを2日おきに5回皮下注射してえられる乳腺発育反応(M)は,泌乳量に関係がある形質と考えられる。兄妹交配を行いつつその乳腺発育反応に対してこれまで選抜を試みてきた結果,選抜の効果が認められた。しかし乳腺発育反応値をえるのにはかなりの時間とと労力を要する。そこで乳腺発育反応と遺伝的に関係がある35日令体重(W)を毎代選抜することによつて間接的に乳腺発育反応を選抜する場合と,これまで行つてきた2代おきに乳腺発育反応を直接に選抜する場合の選抜効率を比較してみた。選抜強度が同じときは前者の後者に対する比Rは R=T
M/T
W・rG
W<P>
_W/rG
M<P>
_M・rG
MW で示される。ここにTは selection intercal, rG<P>
は家系表型平均値と家系の一個体の遺伝子型との相関, rG
MWは乳腺発育反応と35日令体重との遺伝相関を示す。hを heritability の正の平方根, n,t,r を夫々,家系(内)の構成員数,表型相関,遺伝相関とすると rG
W<P>
_W=h
W・√(1/n(1+(n-1)t
W)[1+(n-1)r], rG
M,P)
_M=h
M・√1/n[1+(n-1)t
M]・r・nで示された。分散分析法によつて627匹のカスカベ♀マウスの成績から一腹内相関係数,母内相関関数, heritability を求めると,乳腺発育反応においては夫々0.37,O.12,O.51であり,35日令体重においては夫同じ0.65,O.28,O.55あつた。両形質の間の遺伝相関を0.3~O.7とし,乳腺発育反応に対する間接選抜と直接選抜を比較した結果,間接選抜の正確度は家系構成員の平均体重値を用いるよりも家系内の一固体の体重値を用いる方が勝り,一固体の体重による間接選抜の場合には,一固体の乳腺発育反応値による直接選抜より,1,875~4,376倍効率が高かつた。
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