日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
5 巻, 2 号
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解説
  • 宮崎 真理子, 村田 弥栄子, 山本 多恵, 大場 郁子, 菅原 克幸, 佐々木 俊一, 小松 亜紀, 久志本 成樹, 山内 聡, 森 建文 ...
    2014 年 5 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    われわれは,東日本大震災によって最多の人的被害を受けた宮城県で,沿岸の災害拠点病院の後方医療拠点として災害対応を行った。最前線と後方の災害拠点病院双方の災害対策本部の方針を早期に明確化することで連携は円滑に進んだ。直後の外傷由来の急性血液浄化のニーズはなく,慢性透析の患者支援に資源が確保され地域の透析医療拠点と連携した。急性血液浄化は,津波関連肺炎などの重症な内科的疾患や多臓器不全に対して1週間後から実施例が増加した。復旧期には延期していた手術の再開や,被災地の患者を受け入れたことなど,血液浄化療法の件数は中期的に増加した。さらに広域支援透析のコーディネートなど,対応は幅広くかつ長期間にわたった。拠点医療機関の血液浄化療法部門の災害対策は,災害フェーズにより変化する重症病態への急性血液浄化と慢性透析患者支援の双方のニーズに応じるため,医療資源の配分や施設間連携を最適化することが重要である。

原著
  • 塚本 功, 土屋 陽平, 渡辺 裕輔, 鈴木 洋通
    2014 年 5 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    持続的腎機能代替療法(CRRT)施行時にポリスルホン(PS)系膜hemofilterを使用した際の凝固イベント発生と,重症度および生命予後への関連性を後方視的に検討した。2008年3月から2012年9月にPS系膜でCRRTを導入した急性腎傷害(AKI)171症例を対象に,CRRT施行期間中にhemofilter life-timeが一度でも24時間未満の凝固イベントがあった群(凝固群:80症例)となかった群(安定群:91症例)で比較した。その結果,CRRT導入時の施行条件および患者背景に差を認めなかったが,SOFA scoreは安定群10.8±2.8に対して凝固群12.2±2.7で有意に高値(p<0.05),入院期間中の死亡は安定群8例に対して凝固群20例で有意に多かった(p<0.05)。以上より,PS系膜使用時に凝固イベントを有する場合,予後不良の一因子として有用であることが示唆された。

  • 千原 伸也, 今泉 均, 升田 好樹, 山田 奨人, 中野 皓太, 橋本 修一, 橋本 佳苗, 室橋 高男, 後藤 京子, 巽 博臣, 山蔭 ...
    2014 年 5 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    【目的】敗血症性ショックに対する大量置換液を用いたCHDFの離脱方法として血液浄化量を緩徐に漸減するCHDF(Tapering volume CHDF:TV-CHDF)を考案しその効果について検討した。【対象と方法】敗血症性ショックに対し,2,000mL/hr以上の置換液を透析液または置換液として用い,カテコラミン投与量,乳酸値や尿量を指標として血液浄化量を減量させるTV-CHDFのプロトコールに準じて連続72時間以上CHDFを施行した8症例を対象とした。検討項目はSOFA score,カテコラミンインデックス,および乳酸値とした。【結果】SOFA score,カテコラミンインデックス,乳酸値は経時的に減少し,ショックからも離脱した。【結語】TV-CHDFでは時間経過とともに溶質除去効率が低下するが,本検討では病態の改善と安全施行が可能であった。敗血症性ショックに対する大量置換液によるCHDFでは血液浄化量を病期・病態に応じて漸減することにより不必要に有用物質の除去を防ぎ,敗血症治療に対する血液浄化療法の1つとして有用となる可能性がある。

  • 山香 修, 今井 徹朗, 嘉松 翔, 上原 舞美, 木嶋 涼二, 杉原 学, 福田 理史, 森田 敏夫, 中村 篤雄, 高須 修, 山下 典 ...
    2014 年 5 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    重炭酸血液濾過用補充液を使用して,持続血液浄化療法を施行すると回路内に二酸化炭素の気泡が生じる。旭化成メディカル社製ACH-Σ®(Σ)では,それに伴い静脈チャンバーの液面が低下することが報告されている。そこで,血液浄化装置の構造の違いが気泡発生量に与える影響について検討した。【方法】Σの標準回路(N回路)を変更し,補液ポンプ入口側の加温器をバイパスした回路(KB回路)と補液ポンプの重量計をバイパスした回路(JB回路)を作成した。補液流量を1L/hrとし,N,KB,JB回路でCHFを2時間施行後,回路内の気泡をトラップチャンバーに集め容量を測定した。また各回路の補液ポンプ入口圧を測定した。【結果】JB回路はN,KB回路と比較して気泡発生量が有意に少なかった。また補液ポンプ入口圧は,JB回路がN,KB回路と比較し,有意な高値を示した。【結語】今回の検討から,補液ポンプ入口圧の低下が気泡発生容量の増加に関与する可能性が示された。

  • 武田 弘隆, 坂口 勉, 内田 義男, 曽我部 篤史, 福元 まゆみ, 吉嶺 陽仁, 猪俣 美穂, 吉永 拓真, 野﨑 剛
    2014 年 5 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    近年,施行時間を延長したエンドトキシン吸着除去療法(PMX-DHP)の有効性が報告されている。当院集中治療室では,2012年10月よりPMX-DHPとPMMA membraneを用いた持続的血液濾過透析(PMMA-CHDF)を直列に接続し,併用施行する方法(長時間併用法)を導入した。今回,長時間併用法の臨床的有効性を後ろ向きに検討した。対象は,2010年10月~2014年3月までの期間に当院集中治療室において重症敗血症/敗血症性ショックと診断され,長時間併用法および通常法(PMX-DHP(2時間)終了後,PMMA-CHDF)を施行した44症例。評価項目として,収縮期血圧,Catecholamine Index(CAI),血中乳酸値,PaO2/FiO2比(P/F ratio),また,血小板数の推移をそれぞれ長時間併用群,通常群に分け比較検討した。長時間併用群においてCatecholamine Indexの経時的な低下傾向,治療開始から6時間後にかけて血中乳酸値の有意な改善を示したものの,両群間に有意差は認められなかった。長時間併用法の有効性を証明するには今後,さらなる検討が必要である。

症例報告
  • 加藤 徳介, 大沼 聖子, 萩原 祥弘, 大森 里紗, 久野 芳裕, 本田 浩一, 三宅 康史, 吉田 仁, 柴田 孝則
    2014 年 5 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    われわれは,集学的治療を要した4例の劇症型溶血性連鎖球菌感染症を経験した。臨床的特徴として,すべての症例が慢性腎臓病や肝硬変などの基礎疾患を有する中高年男性で,血液からG群溶血性連鎖球菌が検出されていた。主訴は発熱・意識障害・体動困難であり,感染源は1例で不明であったが,その他の症例は閉鎖性化膿性疾患であった。3例でCRRTを中心とした急性期血液浄化を施行し,そのなかでも重症度が高く,白血球と血小板の低値を認めた2例は不幸な転帰をたどった。これらの特徴は過去の報告に合致するものであった。近年,劇症型G群溶血性連鎖球菌感染症の報告数は増加傾向にあり,発症早期の致命率が高い重篤な疾患であることが認識されている。基礎疾患を有する中高年患者が,発熱・意識障害・体動困難といった主訴で外来を受診した際には,劇症型G群溶血性連鎖球菌感染症を念頭に置き,早期診断・治療にあたることが重要と考えられた。

  • 村田 真紀, 瀬田 公一, 北村 憲子, 小泉 三輝, 菊地 祐子, 八幡 兼成
    2014 年 5 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    80歳代女性。歴25年の2型糖尿病で6年前から血液透析中。4日前から食欲不振,来院当日に嘔吐と意識混濁で救急搬送された。血液ガス所見でpH 6.724,Lactate 30mmol/Lと著明な乳酸アシドーシスを認めた。アシドーシス補正目的でsustained low-efficiency dialysisを開始した。5日前から近医でブホルミンを投与されていたことが判明したため,ブホルミン除去目的でカテコラミンを使用しながら透析効率を上げて合計12時間の透析(HD)を施行した。第2,3病日もHDを施行し,意識レベルとアシドーシスは改善した。ブホルミン血中濃度は来院時3,790ng/mL,第2病日で940ng/mL(Cmax 260~410ng/mL)であった。ビグアナイドによる乳酸アシドーシスは予後不良で死亡例も報告されている。本症例は速やかな診断と高流量血液透析により良好な予後を得た。

  • 塚本 真貴, 土井 研人, 山下 徹志, 中村 元信, 矢作 直樹, 南学 正臣, 野入 英世
    2014 年 5 巻 2 号 p. 153-155
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    尿素(UN),クレアチニン(Cre),尿酸(UA)は腎不全で血中濃度が上昇するため,腎不全の程度や血液浄化療法の治療効率測定に用いられる。しかし内因性の産生速度,体内分布容積が異なるため,血中濃度の減少率は異なる可能性があると考え,それを明らかにすることを本研究の目的とした。2013年1月から8月に東大病院ICUでCHDFを48時間以上施行された21症例を対象とし,CHDF開始時,24時間後,48時間後に測定されたUN,Cre,UAの血中濃度を用いて,開始時の血中濃度からの減少率を算出した。各分子の減少率はUN 23.2±24.2%(24h),36.2±35.4%(48h),Cre 25.8±23.9%(24h),40.2±29.3%(48h),UA 39.9±17.7%(24h),58.1±19.8%(48h)であり,24時間後および48時間後においてUA減少率はUNの減少率と比較して有意に高かった。このことから従来のUN, CreだけでなくUAの減少率もCHDF施行時の除去効率の指標として有用である可能性が示唆された。

  • 河内 充, 澤田 真理子, 臼井 幹, 田村 真奈美, 岡田 和宜, 山下 毅, 高見 奈美, 齋藤 真澄, 渡部 晋一
    2014 年 5 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    体重2kg以下の敗血症患者の直接血液灌流法によるエンドトキシン吸着療法(PMX)を3症例経験した。新生児の急性血液浄化療法は回路充填液による膠質浸透圧の低下や血圧低下を防ぐため,カリウム濃度,カルシウム濃度および重炭酸濃度を補正した血液製剤で回路充填することが,体外循環による新生児血液浄化療法ガイドラインで推奨されている。当院では,エンドトキシン吸着器と血液濾過器を直列に接続することにより,回路充填血液の補正,PMXおよびPMXと血液透析濾過の直列施行(PMX+HDF)を血液浄化装置1台で施行した。補正時はPMX側を鉗子で遮断し,血液濾過器のみに充填血液を灌流し,血液透析による補正を行った。補正後に鉗子で遮断する位置を変更することで,PMX回路またはPMX+HDF回路を確立した。この方法は回路構成が同じだが,2種類の血液浄化法が選択可能であり,かつ合併症なく安全に施行可能であった。

  • 是枝 大輔, 根木 茂雄, 重松 隆, 木田 真紀, 加藤 正哉
    2014 年 5 巻 2 号 p. 160-163
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    当院では新生児および小児に対する持続的腎機能代替療法(CRRT)施行の経験は少なく,成人症例との相違点が多いため,開始時期や浄化法の選択や各種条件設定に関して統一した基準が確立されていない。今回,高アンモニア血症に対して持続的腎代替療法を施行した小児の2例を経験した。いずれも血中アンモニア値の低下を認めたが,症例1は不慮の転帰となった。症例2は感染を契機に高アンモニア血症が再発したためCRRTを再施行となったが無事退院し,生体肝移植を受けることができた。小児の代謝障害における急性血液浄化療法では,通常のCRRT施行時に比べ高い血液流量と透析液流量を必要とすることが多い。今後も安全で効果的な血液浄化療法を施行できるよう検討する必要がある。

技術・工夫
  • 臨床工学技士による一括管理
    水盛 邦彦, 阿部 雅紀, 中川 富美子, 松井 孝拓, 岡田 一義, 相馬 正義
    2014 年 5 巻 2 号 p. 164-168
    発行日: 2014/12/01
    公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化療法は救急・集中治療領域において必要不可欠な治療法となっている。持続的腎機能代替療法(CRRT)をはじめとする急性血液浄化療法は比較的容易に導入可能なため施行件数も増加傾向にあるが,適応病態は多岐に渡り,施行時間は長期間に及ぶことが多く,施行中における安全管理が重要となってくる。当院では導入,返血,アラーム・トラブル対応など装置の操作におけるすべての業務について臨床工学技士(CE)が昼夜問わず一括管理しており,医師および看護師は個々の業務に専念することができている。また,診療初期の段階からチームに介入し,CEの専門性を生かすことによって,患者の医療安全の確保および質の高い治療の提供が可能になると考えている。各種急性血液浄化療法に精通したCEが常に一括管理することにより,迅速かつ正確で安全な治療を実施することが可能であり,急性血液浄化療法におけるリスクマネージメントとして有用であると考える。

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