日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
8 巻, 1 号
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特別寄稿
総説
  • 穂苅 量太, 白壁 和彦, 渡辺 知佳子, 東山 正明, 高本 俊介
    2017 年8 巻1 号 p. 10-14
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    炎症性腸疾患は若年者に好発する慢性の炎症を消化管にきたす疾患で原因は不明であるが,免疫系の異常が想定されている。クローン病と潰瘍性大腸炎はその代表的な疾患であり,かつてはまれな疾患であったが近年急速に増加し両疾患を合計すると20万人近くに達する。この治療法の1つに白血球の除去をターゲットとしたアフェレーシス療法があり効果的である。しかし,無効例もあり適切な患者の選択は重要な課題である。その作用機序は攻撃因子である炎症細胞の除去のほか障害された粘膜の再生にも効果があると想定されている。しかし,臨床的な適応を決定するには機序解明は進んでいない。

  • 松尾 秀徳
    2017 年8 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    免疫性神経疾患におけるアフェレシス療法の適応としては,ランダム化比較試験によって有用性が確立されている疾患,および病因物質が特定されアフェレシス療法が理論的に妥当である疾患があげられる。日本では,重症筋無力症,Guillain-Barré症候群,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,多発性硬化症が保険適用であるが,視神経脊髄炎や自己免疫性脳炎・脳症などでも,多発性硬化症や中枢神経ループスなどに準じて施行されている。免疫性神経疾患では,単純血漿交換療法,二重濾過血漿分離交換法および免疫吸着療法が行われ,いずれの方法もほぼ同様の有効性が期待できるが,おのおのの疾患でいずれの方法を選択すべきかについてのエビデンスはない。免疫性神経疾患でアフェレシス療法を必要とする病態は,重篤で時機を逸すれば回復が困難となる場合が多く,鑑別診断を行いながら必要であれば速やかにアフェレシス療法を施行することが重要である。

  • 長谷川 みどり, 稲熊 大城, 湯澤 由紀夫
    2017 年8 巻1 号 p. 21-26
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    血漿交換療法(PE)が適応となる主な血管炎症候群は,ANCA関連血管炎(AAV),抗糸球体基底膜(GBM)病,IgA血管炎,クリオグロブリン血管炎である。このなかでわが国では抗GBM病による急速進行性糸球体腎炎のみが保険収載されている。AAVでは,高度腎機能障害あるいはびまん性肺胞出血に対してPEが推奨される。クレアチニン>5.66mg/dLを対象として行われたランダム化比較試験(RCT)で,12ヵ月の時点での腎生存率はPE群がmPSLパルス群に比して有意に高かったが,長期経過観察では両群間で差を認めなかった。GFR 50mL/分未満,および/または肺胞出血を伴うAAVを対象としてPEとglucocorticoid減量投与方法の有効性を検証する国際的要因RCTが現在行われている。IgA血管炎とクリオグロブリン血管炎は,ケースシリーズと症例報告により,難治性病態,重症例でのPEの有効性が報告されている。

  • 医師の立場から
    塚本 達雄
    2017 年8 巻1 号 p. 27-33
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化を必要とするような病態では多職種が集まって多様な医療行為が行われるが,最初に指示するのは医師の役割である。医師は複数の医療チームをまとめるリーダーとなる場面が多く,チームによって医師は「ベテラン」にもなれば「場の新人」にもなりうるが,円滑な情報共有が現場運営の鍵である。TeamSTEPPS®では,①リーダーシップ,②状況モニタリング,③相互支援,④コミュニケーションの4つの主要技能が重要視されている。一方,電子カルテにより情報共有度が飽和してかえってコミュニケーション・エラーを引き起こしている可能性も指摘されている。WHO患者安全カリキュラムガイドを参考にして,異職種間だけではなく同職種間でも患者を中心としたコミュニケーションを推進し,院内で標準化された手順書などを用いた院内教育を継続することが急性血液浄化療法を安全に施行管理し,ヒューマンエラーを減少させるために重要と思われる。

  • 辻 孝之, 辻 尚子, 安田 日出夫, 加藤 明彦
    2017 年8 巻1 号 p. 34-39
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    Kidney Injury Molecule 1(KIM-1)は,通常,腎にはほとんど発現していないが,傷害を受けると近位尿細管細胞に増加し,その細胞外ドメインが切断され尿中に放出される。とくに心臓外科手術後のAcute kidney injury(AKI)の早期診断マーカーとして高い診断精度を有することが,システマティックレビューやメタ解析で証明されている。しかし,予後や重症度予測,敗血症などの複雑な病態での有用性についての検証は不十分である。一方,AKIからの腎修復にKIM-1が大きな役割を果たしていることが解明されてきており,新たなAKIの治療標的として注目されている。さらに近年では血中のKIM-1が腎のみならずそれ以外の臓器障害や生命予後を反映している可能性があり,KIM-1の由来や役割について今後の更なる検討が必要である。

  • 阿部 貴弥, 村井 美穂子, 佐藤 聡哉, 千葉 健太, 小原 航
    2017 年8 巻1 号 p. 40-42
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)は血清クレアチニン(Cr)値の上昇(増加率)と尿量減少により診断される。しかし血清Cr値は早期の糸球体濾過量の低下の感度が低いためAKIをより特異的,より早期に診断し,かつ重症度を反映するバイオマーカーが期待されている。Cystatin C(Cys-C)は全身の有核細胞より一定量産生される分子量13.3kDaの低分子タンパク質であり,Crに比べより早期の腎機能低下より上昇し始めるため,AKIのバイオマーカーとして期待されている。これまでの報告では,Cys-CはAKIの早期診断に有用である可能性が報告されているが,重症度予測には報告が少ないのが現状である。Cys-Cの1番の有用性は生化学自動分析装置が可能であり,より実臨床での使用が可能なことがあげられる。障害される腎臓の部位や障害後の時間的経過などAKIには複合的な因子が影響している。そのためCys-Cのみならずさまざまなバイオマーカーの組み合わせが必要であり,新しいバイオマーカーの確立が急務である。

原著
  • 千野 有紀子, 中ノ内 恒如, 岡﨑 哲也, 石井 里奈, 池田 貴之, 鈴木 惟司, 木林 卓弥, 新部 友子, 西端 純司, 石川 敦, ...
    2017 年8 巻1 号 p. 43-47
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    2014年7月より臨床使用が可能となったAN69ST膜ヘモフィルター(sepXiris100®,Baxter社製・膜面積1.0m2)のInterleukin-6(IL-6)吸着性能の経時的変化の検討を行った。【対象】sepXiris100®にてCRRTを施行した症例で,治療開始15分後のsepXiris100®入口側IL-6 ≧1,000pg/mLであった8例を対象とした。【方法】治療開始15分後,1時間後,24時間後,48時間後の4点でクリアランスの評価を行った。【結果】IL-6クリアランス(mL/min)の平均値は,開始15分後17.3±5.1,1時間後7.2±7.1,24時間後6.5±5.6,48時間後10.2±11.8であった。【結語】IL-6クリアランスは開始15分後から1時間後にかけて著しく低下した。1時間後以降は大きな低下は認めず,48時間後においても1時間後と同等のIL-6吸着性能を有する可能性が示唆された。

第27回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
  • 栗本 恭好, 原 嘉孝, 川治 崇泰, 早川 聖子, 中村 智之, 幸村 英文, 山下 千鶴, 柴田 純平, 西田 修
    2017 年8 巻1 号 p. 48-53
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    【はじめに】AN69ST膜ヘモフィルターを用いた持続血液濾過(AN-CHF)では,しばしば静脈チャンバーで凝血することが報告されている。nafamostat mesilate(NM)の吸着の可能性があるとの私見もあるが,証明されていない。当ICUでは,フィルター前からのみNM投与を行っていたが,フィルター前後に分配して投与する方法を導入した。【方法】AN-CHFを施行した敗血症症例を抽出し,フィルター前のみ(A法:30mg/hr)と前後に分配した(AV法:前25mg/hr,後5mg/hr)投与法について後向きに比較・検討した。1本のフィルターで22時間以上CHFを行った場合を「目標達成」と定義した。【結果】ライフタイム(A法23.5時間 vs AV法23.2時間,p=0.60),目標達成率(85.1% vs 78.9%,p=0.34)において有意差を認めなかった。目標達成に寄与する因子としてsequential organ failure assessmentスコア(オッズ比:0.997,p=0.0002),AV法(オッズ比:0.216,p=0.011)があげられた。【結語】AN-CHFにおいてフィルター前25mg/hr,後5mg/hrにNM投与を分配する抗凝固療法は,有効でない可能性が示された。

原著
  • 小廹 知樹, 富沢 成美, 岩島 重人, 神保 陽一, 山下 明泰
    2017 年8 巻1 号 p. 54-57
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    膜面積,膜素材および膜の透過性が同じで,形状が異なる試作モジュールを用いて,アルブミンの透過量を比較した。試作モジュールは透過性が同一のPEPA膜を使用した膜面積0.81m2のモデルである。中空糸有効長(L)とモジュール内径(D)の比L/Dを,9.3(Long and Slim:LS),5.1(Normal:N),2.9(Short and Thick:ST)の3段階に,中空糸内径(d)を170,210,245μmの3段階に変更した合計3×3=9種類の浄化器を試作した。37℃一定のもと,血流量100mL/min,限外濾過流量10mL/minで,水系の限外濾過実験を12時間行い,アルブミン透過量を測定した。測定12時間後におけるアルブミン透過量の最小値は1.2g(d=170μmのLSモジュール),最大値は4.3g(d=245μmのSTモジュール)となった。アルブミン透過量は,血液側流体の平均壁ずり速度の増大に対して,指数関数的に低下することがわかった。したがって,アルブミン透過量はdやその他の設計因子を変化させることで制御できる可能性がある。

  • 釜江 直也, 植田 浩司, 井上 和久
    2017 年8 巻1 号 p. 58-62
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    透析患者の生命予後は非透析患者と比較して不良である。また不整脈が原因による突然死や急変は非透析患者と比べて多いとされている。今回,2011年4月から2016年5月までの5年間で当院入院中の透析患者が心肺蘇生を必要とした症例について後方視的に記述研究を行った。透析患者の心肺停止発生率は非透析患者に比して100倍以上高くなっており,透析患者死亡退院117例のうち17例(15.3%)が急変によるものであった。なお,心肺蘇生を施した透析患者の全例が死亡退院した。透析患者が心肺停止した場合,社会復帰する可能性は極めて低い。入院疾患はさまざまではあるが,急変時には循環器系合併症が多いこと,心疾患の既往がある割合が高いことから,透析中や透析後に循環器モニタリングと電解質の管理がとくに重要である。前述の特徴を持つ透析患者は,必要に応じて透析後の心電図モニターを病棟へ依頼するなどして予防や早期発見に努めることが重要であることが示唆された。

  • 錦織 伸司, 井関 慧, 永田 光葉, 藤原 哲造, 渡部 尚人, 安達 恭子, 杉原 克彦, 福間 優太, 福島 成文, 宮里 恵美, 山 ...
    2017 年8 巻1 号 p. 63-67
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    当院では持続的腎代替療法の回路交換は48時間毎に行っているが,その間に回路閉塞をきたす症例を散見する。そこでわれわれが使用している膜素材と膜面積の異なる2種類のhemofilter(Polysulfone(PS)膜と,大膜面積Polymethyl methacrylate(PMMA)膜)のlife-time,48時間達成率,回路内動静脈圧差圧,回路交換理由を比較検討した。結果,48時間達成率はPS膜36.7%,PMMA膜68.7%(p=0.00064)でPMMA膜が有意に高かった。また回路交換理由の半数はhemofilterの凝固ではなく,血液回路内のチャンバー内血栓であった。このことからhemofilter性能だけでなく膜素材の生体適合性が血液回路の凝固に影響を与えていることが示唆された。そして,大膜面積PMMA膜は敗血症症例だけでなく持続的腎代替療法全般に使用できる優れたhemofilterであった。

  • 正木 秀尚, 山下 明泰
    2017 年8 巻1 号 p. 68-71
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    血液浄化器のファウリング機構の解明を目的として,水系限外濾過実験を行った。使用した血液浄化器は,AEF-10(ポリスルホン膜,AEF),CH-1.3W(ポリメチルメタクリレート膜,CHW)およびFLX-10GW(ポリエステル系ポリマーアロイ膜,FLX)である。試験水溶液のアルブミン濃度は0.4g/dLおよび4.0g/dL,試験液流量QB=100mL/min,総濾液流量QFt=50mL/min(一定)とした。篩係数は,AEFではいずれの濃度でも実験開始直後に高値を示し,その後経時的に低下したが,CHWおよびFLXでは,試験液濃度0.4g/dLでは経時的に上昇し,4.0g/dLでは経時的に低下した。また,物質収支式より試験液入口近傍濾液流量QFiおよび出口近傍濾液流量QFoを推定したが,AEFではQFiQFoは,試験液濃度に関係なくほぼ同値を示した。CHWでは試験液濃度0.4g/dLでQFiQFoよりも高値を示し,4.0g/dLではその差が増大した。FLXでは試験液濃度0.4g/dLでQFiQFoが同等であったが,4.0g/dLではQFiの方が高値を示した。これらのことより,使用した血液浄化器の物理化学的特性ごとに濾過の進行に伴いファウリングが進行する部位が異なるものと思われる。

症例報告
  • 松村 大輔, 佐藤 英一, 魯 紅梅, 野村 まゆみ, 天羽 繭子, 上田 善彦, 中村 司
    2017 年8 巻1 号 p. 72-75
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    Klebsiella pneumoniae感染に起因して多発性肝膿瘍から全身感染症をきたした侵襲性Klebsiella pneumoniae感染症症例を報告する。症例:52歳女性,2型糖尿病患者。発熱,意識障害を主訴に当院へ搬送された。多発性肝膿瘍,敗血症性肺塞栓症,髄膜炎,腎盂腎炎,多臓器不全を呈し入院となった。血液培養,尿培養にてKlebsiella pneumoniaeが検出,抗菌薬投与,エンドトキシン吸着療法(PMX-DHP),持続的血液濾過透析(CHDF)の集中治療を施行した。病状改善も肺空洞病変の増大に起因する呼吸不全を呈し侵襲的人工呼吸管理を要したが,陽圧換気からの離脱を機に呼吸状態の改善を呈し,リハビリテーション病院に転院した。予後不良とされるKlebsiella pneumoniae感染による多臓器不全に対して発症早期からの急性血液浄化が奏効した症例と考えられた。

  • 辻 一宗, 三木 隆弘, 江口 友英, 山中 光昭
    2017 年8 巻1 号 p. 76-79
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    18歳女性。腹痛,下痢,発熱により前医へ入院していたが,病態の悪化を認め当院へ搬送された。下血,血尿,溶血性貧血,血小板減少,腸管出血性大腸菌O157感染を認め,溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)と診断し支持療法中心の治療を開始した。第4病日,急性腎傷害を呈し持続的血液浄化療法を導入。第7病日,幻視,幻聴が出現したため,ステロイドセミパルス療法および血漿交換療法を2日続けて施行した。以降幻覚の消失,速やかな全身状態の改善を認め,第12病日に持続的血液浄化療法を離脱,第25病日に腎および神経学的後遺症なく退院となった。HUSの脳症合併には志賀毒素と炎症性サイトカインが大きく関与しており,ステロイドセミパルス療法と血液浄化療法によるサイトカインの抑制,除去という機序が特異的な効果をもたらしたと考えられた。成人におけるHUSの脳症合併症例は報告が少なく予後不良であるため,今後の治療法確立のため本症例を報告する。

  • 南方 大和, 山野 由紀子, 是枝 大輔
    2017 年8 巻1 号 p. 80-83
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    Severe fever with thrombocytopenia syndrome(SFTS)は,2006年に中国で新たに発見されたSFTSウイルスによるダニ媒介性の新興感染症であり,2013年より日本においても症例報告が増加している。早期にサイトカイン除去を目的としたAN69ST-CHDFを含む集学的治療が奏効し意識障害が改善した血球貪食症候群を合併したSFTSの2例を経験したので報告する。症例1と症例2はともに意識障害が出現しICUに入室しAN69ST-CHDFを含む集学的治療にて意識障害は改善した。早期にAN69ST-CHDFを含む集学的治療を行うことで病態制御が可能であったと考えられた。

  • 小野 裕明, 斎藤 秀敏, 吉野 将, 原 正高, 勝冶 真理恵, 高橋 秀暢, 廣橋 伸之
    2017 年8 巻1 号 p. 84-87
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    【症例】63歳の女性。8日前より39℃の発熱と下痢症状があり,近医に感染性腸炎として検査入院した。血小板数減少と骨髄血球貪食像を認め,細菌感染からの続発性血球貪食症候群(HPS)疑いと,敗血症とDICの加療目的に当院へ搬送された。HPSに対するステロイドパルス療法施行中に敗血症性ショックとなったため,サイトカインなどのメディエーター除去目的にPMMA-CHDFと,エンドトキシンなどの他のメディエーターの除去・制御目的にPMX-DHPを直列回路で施行したところ,開始時,24時間後,48時間後の収縮期血圧(mmHg)は75,110,130と上昇し,CAIは11.6,6.1,3.9と減少,時間尿量(mL/h)は70,98,120と増加した。循環動態は速やかに改善し,HPSの病態自体も鎮静化の方向へ向かった。【結論】HPSは高サイトカイン血症が背景病態と考えられており,細菌感染による続発性HPS発症時のサイトカインなどのメディエーター除去や制御目的にPMMA膜を用いたCHDFとPMX-DHPが有効であった。

  • 是枝 大輔, 山野 由紀子, 南方 大和
    2017 年8 巻1 号 p. 88-91
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    【背景】成人still病の病因は,感染などが契機となり,単球,マクロファージの活性化が制御されずに炎症性サイトカインの過剰な産生が持続することがその本態と考えられている。【症例】70歳代女性。遷延する発熱・皮疹のため当院入院。診断的治療目的にてプレドニゾロン内服を開始した。第7病日成人still病の診断となりステロイドパルス療法を実施し,直後には解熱を認めたが,数日で発熱が再燃していた。免疫抑制剤などを追加しても,解熱を認めず。同時期に尿量低下も認め,サイトカイン除去および腎代替療法実施目的にて,第25病日よりCRRTを実施し,速やかな解熱を認めた。トシリズマブ使用下に内服薬を調整し,発熱再燃は認めず,第58病日に独歩で退院となった。【結論】CRRT併用後著明な病勢制御が可能であった成人still病の1例を経験した。この効果については,今後も検討が必要と考えられる。

  • 金本 匡史, 日尾 早香, 神山 彩, 神山 治郎, 松岡 宏晃, 柳澤 晃広, 中林 洋介, 戸部 賢, 高澤 知規, 日野原 宏, 齋藤 ...
    2017 年8 巻1 号 p. 92-95
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    敗血症によって心筋障害が誘発される敗血症性心筋症は以前から報告されており,敗血症治療により回復はするが数日を要するとされる可逆的心筋障害である。われわれは,閉塞性尿路感染症による敗血症から重篤な敗血症性心筋症をきたした症例を経験した。経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)導入を考慮しながらも,ポリミキシンBカラム血液吸着(polymyxin B column-direct hemoperfusion:PMX-DHP),ポリメチルメタクリレート膜持続血液濾過透析(polymethyl methacrylate membrane combined with continuous hemodiafiltration:PMMA-CHDF)により循環動態が急速に改善,PCPSを回避し,救命することができた。敗血症性心筋症が疑われる場合に,早期の心機能改善目的にPMX-DHPやPMMA-CHDFによるエンドトキシン・サイトカイン除去が有用である可能性が考えられた。

  • 大島 泰斗, 須藤 泰代, 小松 秀平, 小島 糾, 坂川 裕規, 梅田 太一朗, 杉原 英司, 畑谷 重人, 山田 宗治, 吉川 憲子, ...
    2017 年8 巻1 号 p. 96-99
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2022/02/11
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代女性。入院7ヵ月前より持続性咳嗽を主訴に近医受診し,間質性肺炎と診断された。全身倦怠感と食思不振を主訴に近医入院。Cr 4.2mg/dLと急性腎障害を認め転院となった。入院時,炎症反応高値(CRP 12.3mg/dL),腎障害(Cr 4.34mg/dL),myeloperoxidase (MPO)-anti-neutrophil cytoplasmic antibody (ANCA)≥300U/mL,proteinase3(PR3)-ANCA 9.7U/mLを認め,ANCA陽性急速進行性糸球体腎炎と診断し,第3病日よりステロイドパルス療法を開始。第4病日より喀血を伴う肺胞出血を認め,人工呼吸器管理となった。第5病日より6回の血漿交換療法を施行し,第18病日に人工呼吸器を離脱した。第26病日と第57病日に静注cyclophosphamideを追加し,MPO-ANCAの低下,腎機能の改善を認め,第85病日に退院となった。本症例はANCA関連血管炎による重症の肺腎症候群を呈したが,治療が奏効し救命と腎死の回避に成功した。

  • 倉沢 史門, 中前 健二, 伊藤 岳司, 青木 孝文, 大石 恵梨, 加藤 由貴, 中村 嘉宏, 伊藤 亮太, 堀 貴洋, 倉田 久嗣
    2017 年8 巻1 号 p. 100-103
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    症例は43歳の男性。2週間前からの腹部膨満感を主訴に受診。発熱,CRP高値,血小板減少,胸腹水,多発リンパ節腫脹を認め入院。腋窩リンパ節生検ではCastleman病の所見だったが,他の臨床的特徴から第10病日にTAFRO症候群と診断しステロイド,トシリズマブで治療を開始。しかし腹水が減少せず腹部膨満の苦痛が強い上,腎前性急性腎不全となり,連日のアルブミン製剤使用でも循環管理できず,第11病日より腹水濾過濃縮再静注法(CART),第19病日よりHDFを開始。週2回HDFと週1回腹水濾過還元血液濾過透析(AFR-HDF)により腹水コントロールが可能となり,アルブミン製剤の使用量も減少。種々の免疫抑制療法により徐々に寛解傾向となり第75病日にHDF離脱,その後CARTも不要となり第152病日に退院。TAFRO症候群の治療法はまだ確立されていない。難治性腹水と急性腎不全を合併する場合に,AFR-HDFは全身管理の手段として有効な選択肢と考えられる。

短報
技術・工夫
  • 芝田 正道, 小川 哲也, 小林 利道, 今泉 力也, 松本 健一, 森谷 紘旭, 岡本 遼, 廣瀬 沙優里, 豊見山 真智子, 桧垣 洋平 ...
    2017 年8 巻1 号 p. 106-110
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2024/04/11
    ジャーナル フリー

    AN69ST膜が敗血症患者に対し保険収載され効果が期待されている。一方で膜によるナファモスタットメシル酸塩の吸着によりlifetime(膜や血液回路の寿命)の短縮が懸念されている。lifetimeの短縮は治療効率の低下や回路交換に伴う労力増大,経済的負担など問題が少なくない。今回,AN69ST膜のlifetime延長効果を目的としたナファモスタットメシル酸塩によるプライミング法と従来より実施されている送血側からの抗凝固薬追加注入法(A/V分注法)を比較検討した。lifetimeの延長はA/V法において有意に認められた。

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