日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
23 巻, 4 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 岩田 仲生
    2012 年 23 巻 4 号 p. 237
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 山縣 然太朗
    2012 年 23 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    健康には遺伝要因,出生後の環境要因とともに,胎内環境が影響を及ぼすことが知られている。いわゆる Barker説である。これを明らかにしようとする疫学手法が出生コホート研究であり,エピジェネティクスの観察研究となる。 出生コホート研究にはいくつかの課題がある。まず,対象が発達過程の子どもであることから,臨界期,感受期などの概念を考慮してどのような解析モデルとするかが課題である。次に,脳科学に関連するアウトカムとなる健康事象について,身体測定のように縦断的に繰り返し測定できる方法の開発が課題であり,さらに,倫理的問題を含む研究ガバナンスは最も重要な課題である。 脳科学領域のコホート研究の戦略は,これまでの脳科学研究の知見から仮説検証すること,様々なモデルを構築してこれまでの知見との整合性を評価すること,逆に,コホート研究で得られた知見の機序を解明する基礎研究を行うことを通じて相互に補完しながら研究を展開することである。
  • 多賀 厳太郎
    2012 年 23 巻 4 号 p. 245-248
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    社会性の神経基盤を理解する上できわめて重要なのは,母親,他者,環境との相互作用を可能にする脳と行動の発達機構を明らかにすることである。その必要条件として,胎児期から乳児期初期にかけて,脳と身体の自発活動が重要な役割を果たすと考えられる。
  • 高橋 英彦
    2012 年 23 巻 4 号 p. 249-254
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    情動,意思決定,意識といったこれまで心理学,経済学,哲学などの人文社会の学問で扱ってきた領域が,fMRIを中心とした非侵襲的脳イメージングや認知・心理パラダイムの進歩により,脳神経科学の重要なテーマになり,社会的行動の神経基盤を理解しようとする社会脳研究,social neu-roscienceとして急速に興隆してきている。精神・神経疾患を対象とした社会脳研究も精力的に行われてきている。精神・神経疾患の意思決定障害の分子神経基盤の理解に向け,我々が分子イメージング(positron emission tomography)を用いて心理学,経済学などの研究者と学際的に研究を進めてきた成果の一例を紹介する。線条体のD1受容体の密度が低い人ほど,低確率を過大評価し,高確率を過小評価する認知バイアスが強かった。また視床のノルアドレナリントランスポーターの密度が低い人ほど,損失を忌避する傾向が強く慎重な意思決定をする傾向があることを見出した。この分野が発展し,精神・神経疾患の意思決定障害の客観的評価や新規薬物療法の開発に繋がることを期待する。
  • 小坂 浩隆, 田邊 宏樹, 守田 知代, 岡本 悠子, 齋藤 大輔, 石飛 信, 棟居 俊夫, 和田 有司, 定藤 規弘
    2012 年 23 巻 4 号 p. 255-261
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状である社会性障害の脳基盤を解明するために,青年期の高機能ASD群に対して,共同研究機関とともに行ってきたfMRI研究を一部紹介する。自己顔認知課題においては,ASD群は自己顔認知処理がなされる後部帯状回の機能低下と情動処理に関わる右島の賦活異常を認め,認知と情動的評価に解離がみられた。相互模倣課題においては,自己動作実行と他者動作観察の同一性効果を求め,ASD群は左側の extrastriate body area の賦活が不十分で,症状重症度と逆相関を認めた。アイコンタクト・共同注視課題における2 台 MR同時測定(Dual-fMRI)においては,ASD群は視覚野の賦活低下を認めたほか,定型発達者ペアで認められた意図の共有を示す右下前頭葉活動の同調性が認められなかった。これらの脳領域が,ASD の social brain markerになる可能性があると考えられた。
  • 定藤 規弘
    2012 年 23 巻 4 号 p. 263-266
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    社会性の神経基盤を明らかにすることは人間の社会的行動の解明に必須である。脳機能画像法は心理モデルの構成と検証に寄与することで脳科学研究と人文諸科学の接点を形成する。社会性発現の脳神経基盤について,原因遺伝子についてヒトと共通性を有するモデル動物を用い,脳活動領域,神経回路からシナプスおよび分子まで,各階層における社会性の中間表現型を見出し,ヒトとの対比によって社会性発現ならびに破綻の脳神経基盤を解明する研究戦略が不可欠である。階層間を繋ぐ強力な手段としてイメージングサイエンスの展開が期待される。脳科学の知見を社会に適用するためには,コホート研究を用いたヒトでの検証を要する。脳科学が総合的人間科学へと展開するために,様々な知見を実社会で実証しつつその結果を基礎研究にフィードバックする連携研究を推進する枠組みを整備することが急務であり,脳科学を基盤とした発達コホート研究がその枠組を与えうる。
  • 仲西 萌絵, 内匠 透
    2012 年 23 巻 4 号 p. 267-271
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉症は,社会的相互関係やコミュニケーションの障害,限定的な興味や常同行動を主徴とする発達障害である。発症には遺伝的要因が深く関与するが,近年染色体の欠失や重複等遺伝子コピー数の異常も重要なリスクファクターとして報告されている。なかでも,ヒト染色体15q11-13 領域の重複は最も頻繁に見られる染色体異常として知られ,自閉症発症の候補となる遺伝的変異である。この事実をもとに,われわれは染色体工学の手法を用いて,ヒト染色体15q11-13領域の相同領域である,マウス7番染色体上の領域を重複させたトランスジェニックマウスを作製し,その解析を行った。行動解析の結果,重複染色体を父マウスから受け継いだpatDp/+マウスは,社会性の異常,鳴き声を介したコミュニケーションの異常,低い行動柔軟性など,様々な自閉症様の行動を示した。したが って,このマウスは遺伝学的・行動学的にヒト型自閉症モデルとなりうると考えられた。また, patDp/+マウス脳の解析から,発達期および成体のいずれにもセロトニンシグナリングの異常を示唆する知見が得られ,自閉症の病態生理解明の一助となると考えられた。
  • 櫻井 武
    2012 年 23 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    社会性行動は我々の社会生活において必須の行動であり,その異常は様々な精神疾患にみられる表現型である。染色体領域 7q11.23 の欠損は過剰な社会性行動を示す Williams-Beuren 症候群(WBS)を,またその重複は社会性行動に異常を示す自閉症スペクトラムを引き起こすことが知られている。したがって,この領域には社会性行動の獲得に必要な脳回路の形成や機能に関わる遺伝子が存在すると考えられる。非定型欠損をもつWBSの患者の表現型─遺伝子型の相関解析から社会性行動の異常に関わる遺伝子が絞られてきており,転写調節因子 Gtf2i はその有力な候補である。我々はGtf2i ヘテロ接合マウスがWBSで見られる様な社会性行動の増加を示すことを見出している。今後, Gtf2iヘテロ接合マウスやGtf2i 遺伝子を1コピー余分にもつBACトランスジェニックの行動解析や分子レベルでの解析を行うことによって,社会性行動に関わる脳の神経回路の形成と機能のメカニズムおよびその異常のメカニズムの理解を深めたい。
  • Deeba Noreen Baig, 柳川 徹, 田渕 克彦
    2012 年 23 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    Neuroligin(NLGN)は,シナプス後終末に局在する1回膜貫通型細胞接着因子で,シナプス前終末に局在するNeurexin(NRXN)と結合することにより,シナプスの成熟を誘導すると考えられている。近年,NLGN およびNRXNの遺伝子異常が自閉症患者のスクリーニングから頻繁に発見されるようになったことから,これらの分子によって維持される正常なシナプス機能の破綻が,少なくとも一部の自閉症の原因と関係しているのではないかと考えられるようになってきた。我々は,ヒトの自閉症患者から最初に発見されたNLGNの単一アミノ酸変異である,NLGN 3タンパク質の451 番目のアルギニンがシステインに置換された変異を有するマウスを作成し,解析を行った。このマウスは正常に発生,成長し,目立った外見的異常は見られなかったが,行動解析により,自閉症特有の社会的相互作用の異常を再現することが証明された。また,Morris水迷路試験により,この変異マウスでは空間学習記憶能力が顕著に亢進することも見出した。このマウスの大脳皮質のシナプス機能を電気生理学的に解析したところ,抑制性シナプス機能の増強が認められ,GABA受容体遮断薬投与によってこのマウスの社会的相互作用の異常が改善されたことから,このマウスでは大脳皮質の抑制性シナプス機能の増強が,社会的相互作用の異常を引き起こしていることが示唆された。このマウスの海馬のシナプス機能を調べたところ,このマウスではシナプスの可塑性の亢進が認められ,NMDA受容体のうち,幼若型シナプスで特徴的な,NR2Bサブユニットの比率が優位になっていることを見出した。NR2Bの過剰発現マウスでは学習記憶能力が亢進する過去の知見と一致する。以上のことより,NLGN 3 R451C変異は,シナプスの成熟異常を起こし,大脳皮質機能を介した社会的相互作用の異常と,海馬機能を介した学習記憶能力の亢進という,ある種の自閉症の症状のパターンを生み出す原因になっていると考えられる。
  • 西島 維知子
    2012 年 23 巻 4 号 p. 287-291
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉症は,遺伝素因や環境要因により神経細胞や神経回路網の発達障害が引き起こされ,発症に至ると考えられている。遺伝学解析の発展により自閉症に関わる様々なゲノム変異が同定されてきたが,環境要因に関する根本的な分子機序は明らかにされていない。様々な環境要因の関与を探るためには,自閉症になりやすい遺伝素因をもつモデル動物が必要である。本稿では,比較的マイルドなリスク因子であるセクレチンとセクレチンレセプターの自閉症と類似した神経発達障害の症状について紹介する。そして,本変異マウスを用いた環境要因の同定について解説する。
  • 前田 潔
    2012 年 23 巻 4 号 p. 293
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 林 拓二
    2012 年 23 巻 4 号 p. 295
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 加藤 隆弘
    2012 年 23 巻 4 号 p. 297
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
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