日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
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23 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 本橋 伸高
    2012 年 23 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 山田 和男
    2012 年 23 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study :GWAS)によって新たな統合失調症脆弱性遺伝子が次々と報告されている。全染色体領域を網羅する10 万~ 100万個以上のSNP(single nucleotide polymorphism)を短時間で解析可能なDNAマイクロアレイ技術は遺伝子研究を一変させた。しかし,これまでにGWASで報告されてきた遺伝子はいずれも遺伝子効果が弱いものであり,単独では統合失調症にみられる多彩な症状を説明することは困難である。一方,GWASでは全染色体領域についてのデータが得られることから,特定の機能的関連を持つ遺伝子群に着目したシグナルパスウェイ解析が可能である。個々の遺伝子効果は弱くとも疾患への遺伝子リスクの集積がみられるシグナルパスウェイが検出されれば,シグナルパスウェイの観点から疾患脆弱性を解明できる可能性がある。本稿ではシグナルパスウェイに着目した統合失調症脆弱性遺伝子研究について紹介する。
  • 橋本 亮太, 大井 一高, 安田 由華, 福本 素由己, 山森 英長, 梅田 知美, 岡田 武也, 武田 雅俊
    2012 年 23 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝要因が強い統合失調症ではリスク遺伝子を発見するための研究が盛んになされているが,主観的な診断基準や遺伝的な多様性等があるため,それを見出すことは困難な状態にある。そこで,中間表現型という概念が統合失調症のリスク遺伝子を見出し,そのメカニズムを同定するための手法として注目されている。統合失調症の中間表現型は,①遺伝性がある,②量的に測定可能である,③ 精神障害の弧発例において精神障害や症状と関連する,④長期にわたって安定である,⑤精神障害の家系内で精神障害を持たないものにおいても発現が認められる,⑥精神障害の家系内では精神障害を持つものでは持たないものより関連が強いという定義を満たすものであり,認知機能,脳神経画像,神経生理所見などが用いられる。この中間表現型研究の発展は,新しい技術の進歩に支えられている。本稿においては,中間表現型の概念,最近の研究成果,そして今後の展望について概説する。
  • 橋本 龍一郎
    2012 年 23 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    FMR1(fragile X mental retardation 1)は,遺伝性の精神発達障害である脆弱X症候群(fragile X syndrome)の原因として知られているが,近年,同遺伝子の前変異(premutation)キャリアにおいて,FXTAS(fragile-X associated tremor and ataxia syndrome)とよばれる主に中年期以降に発症する運動障害・精神障害を中核とする神経変性疾患が報告された。本稿では,FXTAS 患者および未発症のFMR1前変異キャリアを対象に,構造MRI・拡散テンソル画像法・機能的MRIを用いた神経画像研究の最新の知見を紹介する。MRIを中心とした神経画像研究により,従来知られていた小脳や大脳辺縁系だけでなく,大脳皮質の異常を含むFXTASに特有の脳構造・機能異常のパターンが同定された。また,これらの異常は,FXTAS 発症前のFMR1前変異キャリアにおいても部分的に観察された。さらに,CGG繰り返し数や FMR1 mRNA発現レベルなど,FMR1に関連した遺伝子・分子変数と有意な相関を示す脳画像的指標が同定された。FMR1前変異に関するこれらの画像的知見は,精神機能障害に関わる遺伝子・分子的プロセスと神経システムの関係について,脳画像研究が大きな知見をもたらすことを示している。
  • 今村 明, 小野 慎治, 辻田 高弘, 橋田 あおい, 黒滝 直弘, 小澤 寛樹, 岡崎 祐士
    2012 年 23 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,遺伝情報の不一致によって,一卵性双生児の表現型の不一致が生じたと考えられる症例が多数報告されており,精神疾患でもその可能性を示唆する報告がみられる。また一方で,個人の神経系・代謝系・免疫系などの体質の多様性や,様々な疾患の発症感受性・薬剤感受性などに影響する因子として,コピー数変異(copy number variation :CNV)が注目され,精神疾患では特に統合失調症と自閉症スペクトラム障害について多数の報告がなされている。本稿では,精神疾患のコピー数変異と一卵性双生児を対象としたコピー数解析について概観し,当研究グループで行った一卵性双生児統合失調症不一致ペアについてのコピー数解析の概要を示し,今後の精神疾患のCNV研究の有用性について検討した。
  • 文東 美紀, 笠井 清登, 加藤 忠史, 岩本 和也
    2012 年 23 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    精神疾患は遺伝要因,環境要因の双方の複雑な関与により発症すると考えられている。これまで行われてきたDNA多型を精査するゲノム研究では,発症に大きく関わるゲノム変異は同定されていない。近年,脳神経ゲノムには他の組織由来のゲノムにはない,質的,量的な体細胞変異が生じていることが明らかにされている。質的変化としてはシトシン塩基におけるメチル化や,ハイドロキシメチルシトシン化,量的な変化としてはコピー数多型,染色体異数性やレトロトランスポゾンのコピ ー数変動などが挙げられる。本稿では,近年の脳ゲノム研究について概説し,これらの変異と精神疾患の関連について考察した。
  • 芳原 輝之, 内田 周作, 山形 弘隆, 大朏 孝治, 渡邉 義文
    2012 年 23 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    エピジェネティックな遺伝子発現調節は,様々な精神疾患の病態に関与していることが示唆されており,特に気分障害についてはストレス脆弱性,慢性ストレスや抗うつ薬に対する行動変化,神経可塑性異常への関与が想定されている。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤は動物実験で,抗うつ効果を示すことが確認されているが,その詳細な分子メカニズムは未解明な部分が大きい。そのため我々は in vivo,in vitro の両面からHDAC阻害剤の分子メカニズムの検討を行った。我々が独自に妥当性を確認したうつ病モデルマウス,BALB/cマウスにおいてHDAC阻害剤のSAHAは,イミプラミンやフルオキセチンのような従来の抗うつ薬ではみられない,速効性の抗うつ効果発現を示すことが確認された。さらに,SAHA投与マウスの海馬においてCaMKIIß mRNA発現が増加していた。培養細胞では,SAHAは神経突起伸展作用を示し,同時にCaMKIIß mRNA発現を促進させた。さらには,CaMKIIßの阻害剤,またCaMKIIßの発現を抑制したsiRNAを用いた実験系ではSAHAによる神経突起伸展作用の阻害が確認された。以上から,HDAC阻害剤による CaMKIIß発現誘導が,抗うつ効果に関与している可能性が示唆された。
  • 滝沢 龍, 笠井 清登, 福田 正人
    2012 年 23 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    現在の臨床精神医学の克服すべき点の1つに,診断と治療に役立つ生物学的指標を探索・確立することがある。今回は,発達(個体発生)や進化(系統発生)の視点から,生物学的精神医学において必要な脳研究の方向性に示唆が得られないか探ることをテーマとした。人間の脳の発達・成熟のスピードは部位によって異なり,より高次の機能を担う部位では遅く始まると想定されている。思春期には,前頭前野のダイナミックな再構成が起こり,この時期の発達変化の異常が統合失調症などの精神疾患の発症と関連している可能性も指摘されている。進化の視点からは,前頭前野の中でも前頭極や言語機能に関連する脳部位が人間独特の精神機能と関連するとして注目が集まってきている。進化論により注目される脳部位と,それに関連する最も高次な認知機能への理解が進むことは,人間独特の精神機能や,その障害としての精神疾患への鍵となる見識をもたらすことが期待される。
  • 花澤 寿
    2012 年 23 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    進化心理学では,心の構造は進化の産物であるという前提に立ち,行動や心理的傾向の適応的意味や機能的意味を明らかにしようとする。精神障害の理解に進化心理学を適用することにより,その症状・特徴がなぜ生じてきたのかという究極要因の検討が可能になる。本稿では,現在までに提出されている摂食障害の進化論的仮説を概観し,進化心理学・進化精神医学による摂食障害の理解と治療の可能性について検討した。主要な仮説として,①生殖抑制説,②同性間競争説,③飢餓環境からの移動のための適応説をとりあげた。いずれの仮説も,現時点では実証困難であるが,摂食障害の不可解な特徴(長期の拒食,女性に極端に偏る性比,過活動,やせの否認と身体像の歪みなど)をある程度説明することに成功しており,停滞状態にある摂食障害の病態理解と治療法に新たな展開をもたらす可能性が示唆された。
  • 加藤 敏
    2012 年 23 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    1964年進化生物学者のHuxleyらが初めて,統合失調症発症にかかわる遺伝子には「遺伝的モルフィスム」(genetic morphism)が含まれ,統合失調症は進化異常(evolutionary anomaly)であるという見解を出した。この考え方を発展する形で,Crowは,ヒトの種に成功をもたらした言語ゆえに,ヒトは統合失調症発症という代償を強いられたと考える。Crespiらは,統合失調症の重要な感受性遺伝子がヒトの進化に関わる遺伝子であることを明らかにした。この種の研究は,人間の進化に関する遺伝子解析を考慮のうちに入れる形で,統合失調症の生物学的解明を行うことを試みるもので,生物学的精神医学における今後の統合失調症の病態解明に重要な展望を拓くといえる。統合失調症の有病率が地域,民族で必ずしも均一ではないという最近の疫学知見は,遺伝子レベルでは統合失調症感受性遺伝子の集積性に種々の変異があることを示唆する一方,統合失調症の顕在発症を考える上では,社会・文化環境の要因も重要であることの傍証となる。
  • 小池 進介, 滝沢 龍, 西村 幸香, 高野 洋輔, 岩白 訓周, 里村 嘉弘, 管 心, 荒木 剛, 笠井 清登
    2012 年 23 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症の発症早期に支援することで予後が改善しうるが,症状を客観的に評価できる指標は乏しい。本研究は精神病発症超危険群(UHR)22名,初回エピソード精神病(FEP)27名,慢性期統合失調症(ChSZ)38名,および健常対照者(Control)30名について,文字版語流暢性課題(LFT)中の血流変化を近赤外線スペクトロスコピィ機器(NIRS)で計測し,臨床病期に注目した前頭葉機能障害を検討した。両側腹外側前頭前野(VLPFC),両側前部側頭皮質(ATC),および前頭極前頭前野(FpC)領域では,臨床病期早期から後期まで同程度に活動が低下し,両側背外側前頭前野(DLPFC)および右 VLPFC領域では,臨床病期の進行に沿って活動が低下していた。NIRS によ って精神病発症前後の症状を客観的に計測し,臨床応用可能性を見出した。今後は縦断研究を進め, NIRSを用いた客観的指標の臨床応用を進めていく必要がある。
  • 久保田 学
    2012 年 23 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症における皮質の菲薄化は,死後脳研究が示唆する神経細胞網の密度減少など,病理的変化を反映すると考えられている 7)。一方で,皮質の形態学的異常が年齢に伴い進行性の病理的プロセスを示すのか否かについてはいまだに結論に至っておらず,長らく争点になっている 1,3,8,12,16 ~ 18)。本稿では,統合失調症において年齢による変化が皮質に及ぼす影響について総括するとともに,surface-based analysis の手法を用いて皮質の厚みに着目した研究知見 10)について述べる。患者群では全脳において,また前頭前野や側頭葉を中心とする局所においても,皮質の菲薄化がみられた。年齢による変化と皮質厚との相関については,全脳・局所いずれにおいても両群で同様のパターンを示した。これらの結果から,統合失調症における皮質の菲薄化は,罹病期間全体というよりもむしろ発症前後の比較的限られた時期の病理的プロセスを反映している可能性が考えられる。
  • 山下 格
    2012 年 23 巻 1 号 p. 77
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 稲永 和豊
    2012 年 23 巻 1 号 p. 78
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 沼田 周助
    2012 年 23 巻 1 号 p. 79
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
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