日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
26 巻 , 4 号
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  • 上野 修一
    2015 年 26 巻 4 号 p. 173
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 谷垣 健二
    2015 年 26 巻 4 号 p. 175-179
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症では,大脳皮質における GABA ニューロンに関与する遺伝子の発現異常,GABA ニューロンによって生じると考えられている大脳皮質のγ- oscillation に異常が認められることから,GABAニューロンの異常と統合失調症の関与が示唆されている。我々はヒトで統合失調症を多発する 22q11欠損症候群のモデルマウスを用いて,GABA システムと統合失調症様行動異常の関与を検討してきた。このモデルマウスの統合失調症様行動異常は GABA A α2/3 受容体 agonist である SL651498 で正常化された。さらに,22q11 欠損領域に存在する Comt が前頭葉にて GABA ニューロンの活性と GABA 放出量に影響を与え,統合失調症様行動異常に影響を与えていることが明らかとなった。以上の知見により,Comt の欠損によって引き起こされる GABA ニューロンの機能異常が 22q11 欠損症候群でみられる統合失調症に関与する可能性が示唆された。
  • 鳥塚 通弘
    2015 年 26 巻 4 号 p. 181-185
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症の病態として,多くの死後脳研究から大脳皮質における GABA ニューロンの異常が報告されている。しかし,統合失調症の成因仮説として現在のところ発達障害仮説が最も有力な仮説として挙げられているが,死後脳研究で認められた GABA ニューロンの異常がそれ自体の発達期の問題なのか,皮質神経回路の形成・機能不全の結果生じた変化なのかを判別することは困難である。この問題を解決するため,統合失調症のモデルマウス,特に高率に統合失調症を発症することで知られている 22q11.2 欠失症候群のモデルマウスを用いた研究から,発達期における GABA ニューロンの大脳皮質への遊走に異常があることがわかった。遊走にかかわるシグナルとして,Neuregulin1-ErbB4シグナルおよび Cxcl12- Cxcr4 シグナルが同定されている。上記モデルマウスにおいては,Cxcl12- Cxcr4 シグナル,特に受容体である Cxcr4 の発現低下により遊走障害をきたすことがわかった。これらから,GABA ニューロンの発達期における異常が統合失調症の成因となる可能性が示唆された。
  • 田村 英紀
    2015 年 26 巻 4 号 p. 187-191
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    認知機能はニューロンが形成するネットワークの活動に基づくと考えられている。特に抑制性ニューロンは,興奮性ニューロンの活動を制御し,ガンマ波などの認知機能に重要な同期発火の生成や可塑性の調節に重要な役割を果たしているが,その分子機構には不明な点が多い。私はシナプス間隙に局在する細胞外セリンプロテアーゼ・ニューロプシンが,統合失調症脆弱因子 Neuregulin 1(NRG1)をプロセシングすることを見いだし,この機構が興奮性シナプスを介した GABA 作動性パルブアルブミン陽性(PV)細胞の活動制御に寄与していることを突き止めた。ニューロプシンが細胞外マトリックスに結合している NRG1 のヘパリン結合ドメインを切断除去することで,NRG1 からリガンド部位が遊離し,これが PV 細胞に局在する ErbB4 受容体の自己リン酸化を誘導した。ニューロプシン遺伝子欠損マウスでは NRG1-ErbB4 シグナルが破綻しており,またネットワークの興奮と抑制のバランス(E/I バランス)およびシナプス可塑性が障害していた。ニューロプシンによって切断された NRG1 断片ペプチドの投与はこれらの障害を回復させた。以上のことから,ニューロプシン-NRG1 シグナルは認知機能に重要であり,この破綻により統合失調症患者で認められる抑制性ニューロンの機能不全およびガンマ波の消失などの症状が引き起こされると考えられる。
  • 紀本 創兵
    2015 年 26 巻 4 号 p. 192-198
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症の認知機能障害には,背外側前頭前皮質(前頭前野)における GABA 合成酵素である 67- kDa isoform of glutamic acid decarboxylase(GAD67)の発現量低下,それに続く抑制性神経伝達の異常が関与していることが想定されている。GAD67 は神経活動依存性に発現が誘導されるが,この転写調節領域に同じく神経活動依存性に発現される Zif268 の結合部位があり,Zif268 の結合および発現量の変化に一致して GAD67 発現が変化することが知られている。今回は統合失調症患者の前頭前野で Zif268 の発現変化が GAD67 発現の変化に関与しているのかを,ピッツバーグ大学精神科の脳バンクに保存されている統合失調症患者と健常対照被験者をマッチさせた 62 ペアの死後脳を用い,GAD67 および Zif268 の mRNA の発現量を測定した。結果,統合失調症患者の前頭前野内において,GAD67 および Zif268 の mRNA 量は有意に低下しており,その発現量は正の相関を示した。またこれらの変化は,病気の経過,病歴などの交絡因子の影響は本質的に関与していなかった。これらの結果は,統合失調症における抑制性神経伝達の異常,および認知機能障害を引き起こす分子メカニズムの一つを明らかにする所見と考えている。
  • 平野 羊嗣
    2015 年 26 巻 4 号 p. 199-203
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    最近の,脳波や脳磁図,光遺伝学といった電気生理学的研究の進歩や,死後脳研究の知見により,皮質の周期的神経活動(neural oscillation)の異常が,精神疾患の病態生理に深くかかわっていることがわかってきた。神経活動の中でも主にγ帯域の周期的皮質活動(γ band oscillation)が,認知や知覚,または意識に関連していることが知られているが,認知機能や知覚処理の障害,自我意識障害を有する統合失調症患者では,特にこのγ band oscillation が障害されていることが明らかになってきた。γ band oscillation の障害は,神経回路内のリズムメーカーとしての機能を担う GABA 作動性の抑制性介在ニューロンの機能低下と,興奮性ニューロンの障害(NMDA 受容体の機能低下)ならびに,この両者のバランス(E/I バランス)が破綻することにより生じるとされている。さらに,これらの現象は種を問わず認められ,統合失調症のモデル動物でも同様の結果が得られるため,統合失調症の新たな病態モデル,治療ターゲットとして注目されている。
  • 古郡 規雄, 土嶺 章子
    2015 年 26 巻 4 号 p. 205-211
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    大人や老年期のうつ病患者では,血清中の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)や葉酸などの栄養指標や脳由来神経栄養因子(BDNF)の濃度が低いという報告がある。しかし,子どものうつ病ではこれらの指標についてはエビデンスが乏しい。本研究では,子どものうつ病患者における血清中の不飽和脂肪酸と葉酸に加え,BDNF の濃度を測定し健常群と比較検討した。対象は弘前大学医学部附属病院精神科を受診し,うつ病と診断された女児(n = 24,11 ~ 19 歳)と年齢・性別をマッチさせたコントロール群(n = 26)であった。うつ評価尺度にはベックうつ病尺度Ⅱ(Beck Depression Inventory- II:BDI- II)と自己記入式抑うつ尺度(Depression Self Rating Scale for Children:DSRSC)を用いた。血清中の PUFAs,葉酸,BDNF 濃度はそれぞれ ELISA 法,ガスクロマトグラフィー,CLEIA 法により測定した。なお,本研究は弘前大学医学部倫理委員会の承認後試行され,保護者から書面で同意を得ている。多価不飽和脂肪酸に関して,子どものうつ病ではアラキドン酸,ドコサヘキサエン酸(DHA)および葉酸濃度が有意に低値を示した。他の多価不飽和脂肪酸濃度に差はなかった。BDNF 濃度は健常児に比較し差はなかった。これまでの研究同様,子どものうつ病においても健常者と比較して多価不飽和脂肪酸と葉酸の値は低下していた。しかし,子どものうつ病では大人でみられていたようなBDNF の低下は認めなかった。血清中 BDNF 濃度の低下はうつ病のバイオマーカーとして考えられてきた。しかし,子どものうつ病においては栄養指標の低下は認められたものの,BDNF 濃度は健常者と変わらなかったことから,大人と子どものうつ病では病態が異なる可能性が考えられた。
  • 池田 匡志
    2015 年 26 巻 4 号 p. 212-214
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    全ゲノム関連解析(GWAS)は,精神疾患を含むさまざまな複雑疾患の感受性遺伝子同定に大きく貢献している。本稿では,気分障害の GWAS の結果をまとめ,最新の知見を概説する。また,特に大うつ病障害では,感受性遺伝子同定がなされていない。その理由として考えられる要因,すなわち表現型の問題や遺伝環境相互作用について考察する。
  • 𠮷村 玲児
    2015 年 26 巻 4 号 p. 215-217
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    大うつ病性障害では血中(血清・血漿)脳由来神経栄養因子(BDNF)濃度が健常者と比較して有意に低下している。さらに,血中 BDNF 濃度は抑うつ症状の重症度とも関係している可能性もある。本稿では,大うつ病性障害寛解患者を前向きに 1 年間追跡した。その結果,寛解時の BDNF 濃度には寛解維持群と再発群との間に差はなかった。また,大うつ病障害の症状の再発群では 6 ヵ月後,血中BDNF 濃度が低下していた。
  • 堀 輝, 吉村 玲児, 香月 あすか, 阿竹 聖和, 中村 純
    2015 年 26 巻 4 号 p. 218-222
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,うつ病における認知機能障害が注目されている。うつ病における認知機能障害は治療反応性や再発・再燃の予測因子となる可能性,寛解後の社会復帰に影響を与える重要な因子の一つである可能性など臨床的な分野での関心も高まりつつある。うつ病における認知機能障害は,病相期によって機能レベルは大きく変化するものの,寛解状態であっても認知機能障害が残存することが繰り返し報告されている。また認知機能障害のパターンが抗うつ薬などの治療反応予測に使える可能性についても複数の報告がある。さらに治療薬である抗うつ薬の一部には薬剤誘発性の認知機能障害をきたす可能性があるため注意が必要である。近年は勤労者うつ病の社会復帰や就労継続予測因子としての認知機能障害が注目されている。しかしながら,まだまだ良質な研究が少なく今後の研究結果が待たれる状況である。
  • 植村 富彦, 楯林 義孝, 持田 政彦
    2015 年 26 巻 4 号 p. 223-234
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症の病態仮説として,神経細胞を中心としたドーパミン仮説,グルタミン酸仮説などが従来提唱されてきたが,その本質はまだよくわかっていない。本総説ではトリプトファン代謝経路上の分岐点に位置するキヌレニン(KYN)を水酸化する反応律速酵素,キヌレニン 3-モノオキシゲナーゼ(KMO)のミクログリアにおける活性低下およびアストロサイトにおけるキヌレン酸(KYNA)産生増加による認知機能低下の可能性,すなわち,「統合失調症の KYNA 仮説」を中心に紹介する。統合失調症における慢性炎症,さらにはアストロサイトも含む神経-グリア関連にも言及し,今後の創薬の可能性について議論したい。
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