日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
31 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 山末 英典
    2020 年 31 巻 3 号 p. 111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 森 麻子, 岡田 剛, 高村 真広, 高垣 耕企, 横山 仁史, 市川 奈穂, 吉野 敦雄, 岡本 泰昌
    2020 年 31 巻 3 号 p. 112-116
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    報酬を予期する能力は価値に基づき適応的な行動を選択する基盤で,うつ病や閾値下うつではその機能障害が示唆されている。また,近年の脳機能画像研究の進歩により,報酬予期の神経生物学的基盤が明らかになり,精神疾患の病態解明を目的とした研究にも応用されるようになっている。筆者らはうつの報酬予期機能に着目し,うつ病や閾値下うつを対象に金銭報酬遅延課題中の脳活動を検討した。その結果,うつ病患者では,健常者で見られる報酬額に応じた線条体の活動上昇がみられないこと,閾値下うつでは健常と比べて金銭報酬予期時に前頭・頭頂領域の機能変化を認めること,これらの脳機能変化は抗うつ薬や精神療法といった介入により回復することなどが明らかになった。また,これまで課題を用いて調べてきた報酬予期時の脳活動を,より簡便な安静時脳機能画像から予測する研究も行っており,その予備的な結果も紹介する。
  • 中村 元昭
    2020 年 31 巻 3 号 p. 117-122
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    2017年,わが国でもrTMS療法がうつ病治療として承認されたが,その効果には個人差が大きく,最適な刺激法は確立されていない。うつ病rTMSに関する脳指標が研究されており,rTMSの効果を予測する指標,rTMSをガイドする指標,rTMSの介入効果を測る指標などが区別される。安静時fMRIを用いた機能結合やバイオタイプ,そして脳波成分のパワーやカップリングは,神経回路のダイナミクスを推定するうえで有用であり,rTMS脳指標の有力候補である。特に前帯状回梁下野を含む神経回路は重要であり,背外側前頭皮質やデフォルトモードネットワークとの関係性がうつ病rTMSにとって重要な脳指標と認識されている。安静時脳波ではガンマパワーやシータガンマ・カップリングが刺激部位周辺で増強し,睡眠脳波では徐波の局在的なパワー増強が報告されている。rTMSは刺激部位のみならず,刺激部位を含む神経回路に影響することが重要であり,神経回路の脳指標はrTMSを最適化,個別化する可能性がある。
  • 平野 昭吾, Alexander Nakhnikian, 平野 羊嗣, 織部 直弥, 神庭 重信, 鬼塚 俊明, Margaret Levi ...
    2020 年 31 巻 3 号 p. 123-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    脳波の周波数は種々の脳機能を表現しており,脳波の異なる周波数間の相互作用は異なる脳機能の相互作用を表現していると考えられている。筆者らは18名の統合失調症患者(SZ)と18名の健常者群(HC)の脳波データの再解析を行い,聴覚野における位相振幅カップリング(PAC:Phase‐amplitude coupling)を検討した。PACは40 Hz聴性定常反応(ASSR)のベースライン時(ASSRベースライン時)と安静時において算出された。結果として,安静時よりもASSRベースライン時により強いβ/γ PACを認め,ASSRベースライン時よりも安静時により強いα/β PACを認めたが,有意な群間差は認めなかった。また,SZにおいてはHCより強いθ/α PACを認めた。HCにおいては右半球よりも左半球にてより強いθ/γ PACが認められたが,SZにおいては同様な半球間差を認めなかった。
  • 矢部 博興, 刑部 有佑, 落合 晴香, 和田 知紘, 森 湧平, 佐藤 彩, 錫谷 研, 羽金 裕也, 平山 緑香, 高橋 雄一, 菅野 ...
    2020 年 31 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒト脳は自動的な音声変化検出の神経機構を発達させてきた。この機構はミスマッチ陰性電位(MMN)に反映される。欠落音MMNのような多くの研究によって,MMNの記憶痕跡説の証拠が集積された。実際,欠落音MMNは160ms以上のSOA(刺激間隔)では誘発されないが,この所見は時間統合窓機能(TWI)の存在を示している。つまり,感覚記憶にコード化された神経痕跡の長さは160〜170msのTWIの長さに相当するのである。最近MMNは,統合失調症における有望な神経生理的バイオマーカーの一つとして期待されているが,興味深いことに早期の統合失調症患者のMMN減衰は,周波数変化MMN等と比較して持続長変化MMN(dMMN)で顕著である。この理由として,dMMNの異常は,TWIの機能不全によって引き起こされている可能性も考えられる。さらに重要なのは,精神病発症危険状態(ARMS)で記録されたdMMNの障害が,統合失調症発症を高率に予測するバイオマーカーとして期待されることである。MMNの主な発生源は,一次聴覚野近傍の上側頭回(STG)と同定されている。多くの神経画像研究が統合失調症におけるSTGの構造異常を明らかにしてきた。また,MMNはNMDA受容体拮抗薬によって著しく減衰,消失することも知られている。さらに,死後脳研究において,DARPP‐32とカルシニューリン(CaN)は,統合失調症においてドパミン−グルタミン酸神経系の異常を密接に反映するが,DARPP‐32とCaNの異常が以前に前頭前野に認められていたよりもSTGで強く認められた。また,統合失調症におけるMMN異常については,最新のメタアナリシスでも0.95という大きな効果量が報告されている。以上の所見をまとめると,STGにおけるdMMN異常が,統合失調症における有望なバイオマーカーであることがわかる。
  • 大塚 郁夫, 菱本 明豊
    2020 年 31 巻 3 号 p. 134-140
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    双生児研究などから,自殺には生来の遺伝負因が存在すると考えられている。自殺行動の致死性が高いほど遺伝負因も強くなることが示唆されており,自殺の生物学的機序の解明には自殺完遂者を対象とした研究が非常に重要である。しかしながらその試料は入手自体が困難なため,相応のサンプル数を要するゲノムワイド関連解析(genome‐wide association study:GWAS)などの報告は他の精神科領域に比して大きく遅れている。筆者らは遺族の深いご理解の下,世界最大規模の自殺完遂者DNA試料を保有し,日本人自殺完遂者を対象としたGWASを初めて遂行するなど,「日本人の自殺」に関する興味深い遺伝学的知見を得てきた。それらを中心に自殺の遺伝学的研究の現況を紹介する。
  • 木下 翔太郎, 岸本 泰士郎
    2020 年 31 巻 3 号 p. 141-146
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    自殺者の90%以上は精神疾患を有しているとされており,精神科医にとって自殺の予防は最重要課題の一つである。しかし,精神神経科領域は,診断や重症度評価の客観的指標となるバイオマーカーに乏しく,複合的な要因によって引き起こされる自殺もまた正確な予測が困難とされてきた。近年,自殺予防において,機械学習(machine learning)を用いた研究が数多く行われるようになってきており,画像データや,自然言語処理(natural language processing)を用いた個人の日記やSNSへの投稿に関する研究など,従来にはない試みも出てきている。本稿では,機械学習を用いた自殺予防に関する新しい知見について紹介しつつ,社会への実装に際し検討すべき倫理的・法的・社会的な課題(ethical legal and social implications:ELSI)についても触れる。
  • 門司 晃
    2020 年 31 巻 3 号 p. 147-150
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    約20年前から激増し,10数年間にわたり年間3万人を超えていた本邦の自殺者数は,ここ数年間の減少の結果として,約20年前の水準である年間2万人程度に戻っている。これ以上の自殺者数の減少を実現させるためには,精神医学的対策がまさに現時点で求められている。神経炎症仮説は幅広い精神疾患に当てはまると考えられているが,最近の総説では,各々の精神疾患の中にこの神経炎症が重要な役割を果たす亜系ないしは臨床ステージが存在する可能性が指摘されている。具体的には重症例,治療抵抗例に並んで自殺関連行動例が挙げられており,それらに対しての抗炎症療法の有効性が示唆されている。自殺関連行動に関する新たな診断や治療法の開発にブレークスルーをもたらすことを期待しつつ,神経炎症仮説からみた自殺関連行動のバイオロジーについて概説した。
  • 篠崎 元
    2020 年 31 巻 3 号 p. 151-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 佐々木 哲也, 鮑培 毅, 高田 拓弥, 武井 陽介
    2020 年 31 巻 3 号 p. 154-158
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    妊娠中のウイルス感染は,仔のASD発症リスクを上昇させる。ウイルス感染時にTh17細胞が産生するインターロイキン(IL)‐17AがASD病態生理の責任分子であることが示唆されている。私たちはIL‐17Aをマウス脳室内に直接投与し,ミクログリアへの影響を調査した。IL‐17Aに曝されたミクログリアは活性化し,帯状回皮質の脳室面に局在していた。本研究は,免疫分子IL‐17AがASDの原因となる大脳皮質構造異常を引き起こすメカニズム理解の手がかりを与える。
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