日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
32 巻, 1 号
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  • 村井 俊哉
    2021 年32 巻1 号 p. 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 津田  誠
    2021 年32 巻1 号 p. 2-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    青斑核のノルアドレナリン(NA)神経は,恐怖や不安,覚醒,ストレスなどへの関連性が示されている。加えて,同神経は末梢からの痛覚刺激で興奮する。青斑核NA神経は上行性だけでなく,脊髄後角へ下行性に軸索を投射し,同部位で放出されたNAが末梢からの痛覚伝達を抑制すると考えられている。脊髄後角には,脳と同様に神経だけでなく,グリア細胞が豊富に存在する。最近筆者らは,脊髄後角の表層に限局したアストロサイトサブセットを発見し,同サブセットが皮膚への痛覚刺激によって細胞内カルシウム上昇を誘発することを明らかにした。このカルシウム応答は青斑核の下行性NA神経を介しており,軽度機械刺激に対する痛覚過敏行動を誘発した。本稿では,脳から脊髄後角への下行性痛覚制御システムにおいて,上記アストロサイトサブセットを介する新しい調節機構を概説する。
  • 小泉 修一, 木下 真直
    2021 年32 巻1 号 p. 6-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    SSRI型抗うつ薬フロキセチン(FLX)およびケタミンのグリア細胞,特にアストロサイトに対する薬理作用から,うつ病分子病態におけるアストロサイトの役割を検証した。アストロサイトからのATP放出能低下はうつ症状の原因となる。FLX慢性投与はセロトニン取り込み阻害以外に,アストロサイトATP放出を亢進させ,ATP受容体依存的にBDNF産生をさせることで抗うつ作用を呈した。一方ケタミンはNMDA拮抗型全身麻酔薬であるが,麻酔用量よりも低濃度で即時的かつ持続的な抗うつ作用を示す。ケタミン高感受性NMDA受容体はアストロサイト特異的に存在し,ケタミンは本受容体を介してアストロサイトの可塑性を即時的かつ持続的に変化させ抗うつ作用を呈した。まったく異なる抗うつ薬であるが,アストロサイトに作用することで神経‐グリア連関を正常化させる作用が認められ,一部のメカニズムは共通していた。以上アストロサイトがうつ病の治療標的として有望である可能性が示唆された。
  • 聶 翔, 古屋敷 智之
    2021 年32 巻1 号 p. 13-17
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    過酷な環境によるストレスは抑うつや不安など情動変容を誘導し,うつ病など精神疾患のリスクを高める。マウスの慢性ストレスは自然免疫受容体TLR2/4を介して内側前頭前皮質のミクログリアで炎症性サイトカインを誘導し,うつ様行動を促す。また神経細胞由来の2AGがミクログリアに発現するプロスタグランジン(PG)合成酵素COX1を介して代謝され,皮質下領域でのPGE2産生を増強し,EP1受容体を介してうつ様行動を誘導する。このPGE2産生はTLR2/4依存的である。慢性ストレスによる不安様行動にもTLR2/4やPGE2‐EP1経路が必須であるが,脳内のPGE2産生は関与しない。慢性ストレスが白血球の動員を介して情動変容を促すことが示唆されており,末梢でのPGE2産生の関与が推測される。これらの結果は,TLR2/4が慢性ストレスによる脳内外の多様な炎症反応を統御してうつ・不安様行動を促すことを示唆する。
  • 加藤 隆弘, 扇谷 昌宏, 瀬戸山 大樹, 久保 浩明, 渡部 幹, 康 東天, 神庭 重信
    2021 年32 巻1 号 p. 18-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,さまざまな精神疾患において脳内炎症,特に,脳内免疫細胞ミクログリア活性化がその病態生理に重要である可能性が示唆されている。筆者らは十年来ミクログリア活性化異常に着目した精神疾患の病態治療仮説を提唱してきた。ヒトでミクログリアの活動性を探る代表的な方法として死後脳の解析やPETを用いた生体イメージング技術が用いられている。しかしながら,こうした脳をみるというダイレクトな方法だけではミクログリアのダイナックで多様な分子細胞レベルの活動を十分に捉えることは困難である。筆者らは,採取しやすい患者の血液を用いて間接的にミクログリア活性化を分子細胞レベルで評価するためのリバース・トンラスレーショナル研究を推進してきた。例えば,ヒト血液単球から2週間でミクログリア様(iMG)細胞を作製する技術を開発し,幾つかの精神疾患患者由来のiMG細胞の解析を進めている。本学会誌では,すでにこうした研究による成果を幾度も報告しており,本稿では,筆者らが最近報告したうつ病患者のメタボローム解析の知見を後半に紹介する。
  • 橋岡 禎征
    2021 年32 巻1 号 p. 26-32
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年のPET研究によって大うつ病,統合失調症といった内因性精神疾患患者の生体脳において活性化グリアの存在が明らかとなり,主要な精神疾患におけるグリアの病態的関与が示唆されている。また大うつ病患者の死後脳において,アストロサイト終足による脳血管被覆率の低下,つまりグリア血管複合体の形成異常が報告されている。一方,薬物抵抗性の内因性精神疾患に対し有効性を示す電気けいれん療法(electroconvulsive treatment;ECT)は,いわば実臨床における「最後の砦」,現在の生物学的精神科治療の「ポジティブコントロール」とも呼べる治療法であるが,その効果発現メカニズムは不明である。筆者らはこれまで抗うつ薬,抗精神病薬ともin vitroで活性化ミクログリアを抑制することを明らかにしてきたが,近年,活性化グリアと内因性精神疾患の症状に類似した異常行動を呈するGunnラットを用いて,ECTは治療効果発現の際,活性化ミクログリアに加え,活性化アストロサイトも抑制することを見いだした。またGunnラットの脳では活性化アストロサイトの終足による脳血管被覆率が低下しているが,ECTはその低下した脳血管被覆率を増加させることを明らかにした。以上よりECTは,活性化グリアの抑制,およびグリア血管複合体の形成異常の是正を介して治療効果を発揮している可能性が示唆され,グリアは薬剤抵抗性・難治性精神疾患における有望な新規治療標的になると思われる。
  • 澤田 健
    2021 年32 巻1 号 p. 33-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ミクログリアは,貪食やT細胞への抗原提示を行い,神経免疫に寄与している。また,神経発達時に余剰のニューロンやシナプスの除去に関与し,脳組織の恒常性を保つと考えられている。成熟してからも認知機能に関与する。アルツハイマー病においては,プラークや異常タウタンパクを除去すると同時に正常ニューロンやシナプスに傷害を及ぼすことにより,認知機能低下を導いている可能性が示唆されており,特に前シナプス部位の異常が報告されている。いくつかの前シナプスタンパクは認知症患者において,減少がみられる。抑制性神経に分布するcomplexin‐1の減少は,初期の認知症の認知機能低下と関連し,興奮性神経に分布するcomplexin‐2の減少は認知症の進行時の認知機能と相関することが示されている。現在,筆者らは認知症の海馬組織を用いてミクログリアとcomplexinやその他の前シナプスタンパクの評価を行っている。
  • 溝口 義人
    2021 年32 巻1 号 p. 38-43
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    うつ病およびアルツハイマー型認知症(AD)に共通する病態仮説として,神経炎症仮説,BDNF仮説が注目されているが,病態には糖尿病,肥満などの生活習慣病も関与しており,薬物療法以外にも食事,運動,睡眠など日ごろの生活習慣を見直すことが,発症予防や治療において大変重要であると考えられる。また,うつ病およびADの病態にミクログリアの活性化が関与していると示唆されるが,加齢によるミクログリアの老化(microglial senescence)にも着目することが大変重要であり,加齢により低下したミクログリアのアミロイドβ(Amyloid‐β:Aβ)貪食能を高めるなど,残存するミクログリアの機能を保護し,高めることが新規治療標的として重要だと考えられる。
  • 竹林 実
    2021 年32 巻1 号 p. 44-50
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    精神疾患死後脳のグリア関連遺伝子発現の異常およびアストロサイトの細胞数の減少などが報告され,ニューロンとグリアの相互作用に着目した視点が病態解明や治療法開発に重要である。筆者らは,アストロサイトに貯蔵されている複数の神経栄養因子の中でグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)に着目し,気分障害患者への関与や,特に古典的な三環系抗うつ薬が直接的にアストロサイトに作用し,モノアミンやアセチルコリンとは異なった機序で発現を誘導することを見いだした。さらに,その抗うつ薬ターゲット分子は,リゾリン脂質のG蛋白結合型受容体の一つであるリゾフォスファチジン酸(LPA)1受容体であることを見いだした。三環系抗うつ薬は,1950年代に偶然見つかった抗うつ薬のプロトタイプであり,未だに重症例や難治例患者にSSRIやSNRIを凌ぐ臨床効果を示す場合や,躁転のリスクも高いことから,その薬理作用は強力な抗うつ作用と関連する可能性がある。マウス脳内では,LPA1受容体は部位によって発現が異なり,アストロサイト,オリゴデンドロサイトなどの細胞腫に限局していた。また,LPA1受容体の内因性リガンドLPAの合成酵素であるオートタキシン(ATX)濃度は,うつ病患者の血液および脳脊髄液中では,いずれも有意に低下しており,抑うつ症状スコアおよび治療経過と有意な相関を認めた。LPAは神経・血管新生や炎症に関連し,またLPA1受容体ノックアウトマウスは抑うつ症状様の行動を呈することから,ATX/LPA/LPA1受容体を介したリゾリン脂質カスケードは気分障害の病態解明・治療薬開発の新しい分子基盤となる可能性がある。
  • 紀本 創兵
    2021 年32 巻1 号 p. 51-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症を中心とする多くの精神疾患で,作業記憶,学習,知覚情報処理などの認知機能障害が存在し,予後および日常生活に大きな影響を与えている。難治性である故に,そのメカニズムの解明とそれに基づく効果的な治療法の開発が急務となっている。これまでの研究から認知機能の中心的な役割を担う前頭前野において興奮性と抑制性神経活動のバランスの変化が,精神疾患の認知機能障害の神経基盤の一翼を担っていることがわかってきた。筆者らは前頭前野を中心とする神経ネットワークにおいて,興奮性と抑制性ニューロンで起きている機能変化を引き起こす上流の因子やシグナル変化を同定することが,疾患の病理病態の本質的な理解と治療法の開発につながると考えており,本稿ではその解明に向けて推進している主に死後脳組織を用いた研究を紹介する。
  • 庄司 絵理
    2021 年32 巻1 号 p. 57-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/25
    ジャーナル オープンアクセス
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