高齢者のケアと行動科学
Online ISSN : 2434-0553
Print ISSN : 1880-3474
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 大庭 輝
    2024 年 29 巻 p. 1-
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
  • 看護師の立場から
    占部 美恵
    2024 年 29 巻 p. 2-6
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
    私が精神科病院に勤務した新人看護師の頃に認知症の人と初めて出会い,激しい行動・心理症状への対応やケアに, 毎日が戦いにも似た日々だった。認知症の患者様のケアの経験から,「認知症の人と言葉でなくても通じ合うことができる」,「看護師(介護士)の対応によって問題とされる行動を緩和・予防することができる」ことを学んできた。また,安全を保障し,基本的欲求を充足し,理解・受容する看護の原則に則ったケアは,認知症の患者様と関係性を築き,行動・心理症状を予防する対応でもあったと考えられる。私が大学の看護学科の教員になった2007年にBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia( BPSD)を知り,今まで臨床で実践していたケアは中核症状に配慮しながら心理的要因や環境的要因に介入していた,というように臨床で得てきた私の経験知にエビデンスが加わったのだ。そこから,私のBPSDの非薬物的介入に関する研究が始まった。
  • 事例からの学び
    堀川 恵
    2024 年 29 巻 p. 7-11
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
    地域における高齢者の意思決定支援に関し,実際の事例を通じて得た学びについて考察した。病院内での支援が比較的明確なプロトコールに基づき行われるのに対し,地域では高齢者の日常生活全般に関わる支援が求められ,柔軟かつ包括的な対応が必要とされる。また,信頼関係の構築は意思決定支援において不可欠であり,支援者の共感が関係構築の鍵となる。成年後見制度の適用など,適切な支援のタイミングの見極めが重要である。さらに,地域住民の理解と協力が不可欠であり,地域全体で高齢者を支える風土の構築が必要である。以上の点から,地域における高齢者の意思決定支援は,高齢者の意向を尊重しつつ,継続的に関わりを持ち,地域と連携して支援を進めることが重要であることを指摘した。
  • 渡辺 晋吾
    2024 年 29 巻 p. 12-19
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
    心理職としてのキャリア16年目の筆者は,刑務所などの矯正施設から始まり精神科のない総合病院,そして整形外科専門病院という全く異なる領域で臨床経験を積んできた。どの領域においても心理職として無力で心に突き刺さるような体験はあるが,振り返るとそうした事例を通して心理職として,そして個人として新たな気づきを得て学んできたことに気づく。今回はまず心理職の職域や役割について述べた後,筆者のキャリア形成に影響を及ぼしたと思われる事例を通して学びを整理した。最後にキャリアとともに形成されている職業的アイデンティティについても言及し,心理職のキャリア形成について考察した。
  • 山中 克夫
    2024 年 29 巻 p. 20-29
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
    対人援助職の事例を通じた学びや職業的成長について,高齢医療・福祉領域の異なる職種で検討した研究はみられない。第25回大会の企画シンポジウムでは,看護,ソーシャルワーク,臨床心理と専門が異なるパネリスト3名に事例から得た学びや成長について話題提供してもらった。主な話題や討論の内容は「経験知の獲得とそれを裏づける理論の発見」「支援のあり方や仕組みに関する課題の気づき」「キャリア形成との結びつき」「対人援助職を続けられる理由」に要約することができた。考察ではこれらの要約をもとに,「経験知と理論が結びつく意義」「本人の体験世界を理解するプロセス」「事例の改善から得られる喜び:対人援助職のやりがい」「精神的負担を軽減しながら職業的成長を促すための支え合い」について論じた。なお「本人の体験世界を理解するプロセス」では新たな俯瞰的視点モデルを示した。
  • 上倉 安代, 益子 洋人
    2024 年 29 巻 p. 30-43
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
    「フレイル(虚弱)」とは,健康と要介護の境界線を意味する。フレイルには,身体的,認知的,精神的,社会的側面が含まれるため,高齢者の支援には,身体面と心理面を融合した心身融和的な視点が重要である。本研究では,前期高齢者における心身の融和感と心理社会的要因に着目し,フレイルと心理的諸側面との関連を検討した。前期高齢者にインターネット調査を行い,回答が500名(男女各250名)となった時点で調査を終了した。その結果,心理社会的要因よりも,主観的健康感と心身の融和感がフレイルと心理的諸側面と強く関連していた。すなわち,主観的健康感と心身の融和感が高いほど,フレイルの度合いが低いという関連が示され,心身の融和感が高いほど,ネガティブ感情の度合いが低く,生きがい意識と内的統制傾向が高いという関連が示された。よって,心身の融和感は,前期高齢者のフレイルと心理的諸側面において,鍵となる概念と考えられる。
  • 中島 民恵子, 杉山 京
    2024 年 29 巻 p. 44-52
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
    独居認知症高齢者の在宅継続に向けた支援に有用な資料を得るために,在宅生活の中断までに利用した社会資源を類型化し,その特徴を明らかにすることを目的とする。近畿・中国地方の政令指定都市(大阪市を除く)の1,799の居宅介護支援事業所の介護支援専門員を対象に郵送質問紙調査を実施した。在宅生活を中断した独居認知症高齢者の事例を1 つ想定し,事例の属性や利用した社会資源等について尋ねた。回収された584の調査票のうち当該項目に欠損値のない520の資料を用い,クラスター分析を行った。独居認知症高齢者は社会資源により5つのクラスターに類型化され,性別,支援期間においてクラスター間に有意差が確認された。独居認知症高齢者の約15%は,限定的な社会資源の利用であり支援期間が最も短かった。今後,独居認知症高齢者が十分な社会資源を利用できない要因を明らかにする必要がある。
  • 座光寺 佑樹, 征矢野 あや子, 餅田 敬司, 工藤 寛樹, 松本 賢哉, 東野 輝夫
    2024 年 29 巻 p. 53-64
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,コロナ禍前後で活動性が低下したと自覚している高齢者を対象に日中の活動状況をモニタリングすることで,スマートウォッチの装着が高齢者の行動変容に与える影響について調査することである。研究対象者に半年間,スマートウォッチを装着してもらい,2週間ごとの立ち上がり動作の回数及び歩数をグラフ化し,探索的にデータ解釈を行った。その結果,9名の対象者のうち,同じ公園にいた3名の対象者に行動変容がみられ,活動性が上昇していた。また,1名の対象者に日々の活動について取り繕う様子が伺えていた。本研究では,活動性が低下し,日々の歩数が目標値を下回っている高齢者が,スマートウォッチを用いたセルフモニタリングに加えて他者との交流を深めることで,活動レベルが向上できることが示唆された。また本研究のような取り組みは,要介護予備軍を見つけるためのきっかけづくりになると考えられた。
  • 大学生を対象としたパイロットスタディ
    守屋 真有, 大庭 輝, 植田 裕吾, 山中 克夫
    2024 年 29 巻 p. 65-80
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/02/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,認知症サポーター養成講座と複数の介護サービスのオンライン見学を通じた実際の認知症の人々の様子の観察や認知症の人々との交流を組み合わせた認知症理解促進のための短期プログラムを考案し,実感・印象,態度,知識の変容の点からパイロットスタディを行った。対象は認知症に関する専門授業を未受講の大学生6名であった。結果では,実施前後で複数の認知症に関する実感・印象に有意な改善が認められ,認知症の人に対する態度も改善傾向がみられた。自由回答の記述やグループインタビューへの発言も実施前は認知症の脅威や症状に関するものが多かったが,実施後では認知症や認知症の人の状態像が多様で柔軟なものへと変化した。しかし,実施前後で認知症の知識に有意な改善は認められなかった。よって本プログラムは認知症の人の印象や態度への肯定的な変化に寄与することが示唆された。今後は統制群を設定し標本数を拡大した検証が求められる。
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