児童青年精神医学とその近接領域
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58 巻 , 3 号
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特集 限局性学習症(学習障害)(Ⅱ)
  • 上野 一彦
    2017 年 58 巻 3 号 p. 343-350
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    LD概念は,医学,教育,心理学,福祉,労働など,各領域間での学際的な概念である。その概念の国際的な成立動向を述べるとともに,わが国における教育概念としての急速な普及の歴史を明らかにする。障害カテゴリーとしてのこの概念の国際比較を通して,今後のこの概念の展開についての重要なポイントについても提起する。

  • 宇野 彰
    2017 年 58 巻 3 号 p. 351-358
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    本稿では,DSM-5の限局性学習障害(症)に関して,定義に基づくアセスメントの条件,下位分類,手法別アセスメントについて概説し,次に全般的知能,読み書きの習得度検査,文字習得の背景となる認知能力である音韻能力,自動化能力,視覚認知能力,語彙力,最後に指導に必要な支援につながる検査について,主に「読み書き」に関して解説した。限局性学習症のアセスメントは,自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症とは異なり,より客観的な尺度を用いた検査を用いることにより診断評価が可能であること,診断評価のためには学習(読み書き,計算など)の到達度検査や,環境要因を除外するための認知検査が必要であることを述べた。科学的根拠に基づいた効果のある指導を行うために必要な検査法についても言及した。

  • 吉川 徹
    2017 年 58 巻 3 号 p. 359-369
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    我が国では2006年の国連で採択された障害者の権利に関する条約を念頭に,障害児者に対する合理的配慮に基づく支援についての検討や国内法の整備が進められ,2014年に同条約の批准に至った。本稿では我が国の合理的配慮をめぐる状況を概観するとともに,限局性学習症をもつ人に対する合理的配慮の内容について,検討を行った。また限局性学習症を持つ人が合理的配慮を得るために,医療機関が果たすべき役割について,診断の際の留意事項,疾患教育や環境整備のための提言などについて,検討を行った。

  • 河野 俊寛
    2017 年 58 巻 3 号 p. 370-378
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」結果(文部科学省,2012)には,学習障害が疑われる子ども達は小学校に約4%から約7%存在しているが,支援を受けている割合は約半数でしかないことが示されている。学習障害の評価は,標準化された学習障害検査を実施し支援を行うプロセスが一般的である。しかし,現在の日本には標準化された検査は少なく,支援から始めるRTIモデルが学校現場で使えるが,子どもの行動を観察し,的確な支援を始める教員の力量を育てる研修が必要であろう。現在の特別支援教育制度においては,学習障害のある子どもは通常学級で学習することになっている。通常学級以外では,通級による指導と特別支援教育支援員を使うことができる。通級による指導を受けている子どもの数も,特別支援教育支援員の配置数も増加傾向にある。支援の方針としては,読み書き算数の困難を改善するアプローチと,読み書き算数の困難に対して補助代替ツールを合理的配慮として提供するアプローチがある。それぞれのアプローチの具体的な方法を紹介した。また,読み書き障害の架空事例によって,小学生から高校生にかけて可能な合理的配慮の具体例を示した。最後に,学習障害のある子ども達が通常学級で適切な支援を受けるためには,多様性が認められた教室である必要性を強調した。

  • 福本 理恵, 平林 ルミ, 中邑 賢龍
    2017 年 58 巻 3 号 p. 379-388
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    ICT機器の普及はLD児の障害機能の代替を可能にしている。それと同時に法律と社会インフラの整備により,教科書など子どもたちが使用する紙の印刷物をアクセシブルな形でLD児に提供可能になった。これによりLD児の読み書きの負担は低減してきている。しかし,こういった技術発展と制度整備があるにも関わらず,特別支援教育やリハビリテーションは,治療訓練するアプローチが中心でICTを活用した代替に移行できないでいる。治療訓練は子どもによっては大きく効果を上げる場合もあるが全ての子どもに有効な訳ではない。効果のない訓練が学習の遅れをさらに拡大し,それが子どものモチベーションを低下させ,自己効力感を消失させることになる。一方,ICTを早期から導入することでLD児が高等教育に進学する事例が出てきている。ただし,ICT活用にも限界はある。それは,学習に大きな遅れが生じ,学習へのモチベーションを失っている場合は,ICTを導入したところで問題が解決するわけではない。こういった子ども達を学習に戻す事は容易ではなく,別のアプローチが必要となる。本稿では彼らのモチベーションを高め,現状の能力で学べる教材と場所を提供する取り組みを紹介し,今後のLD児への教育に求められる視点を展望した。

原著
  • Koji TANOUE, Tatsuya MINAMI, Noriko SYOU, Junichi FUJITA, Koji TOYOHAR ...
    2017 年 58 巻 3 号 p. 389-397
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    Background: Food selectivity is commonly reported in children with autism spectrum disorders (ASD). Objective: This study aimed to investigate the food repertoires of children in Japan with ASD in relation to nutrient inadequacy. Method: Three-day food records completed by the parents of children with ASD were compiled into food repertoires defined in this study as the number of unique foods consumed over three days, for assessment of nutritional adequacy of these children's diets. Nutritional parameters included energy, protein, vitamins A, B1, B2, B6, B12, and C, niacin, folate, calcium, magnesium, iron, zinc, copper, iodine and selenium. Results: Twenty-four participants were enrolled in this study. Significant inverse correlation was observed between the number of different foods consumed and nutrient inadequacy (r=-0.56; P<0.01). Nutrient inadequacy was common for vitamin A, calcium, magnesium, and zinc. Five participants with severely limited food repertoires did not meet the estimated average requirements for specific nutrients. Their food repertoires consisted of primarily rice (n=5), snack foods (n=4), tea, fried potatoes, bread, milk, fried chicken and eggs (n=3). Conclusions: A limited food repertoire is associated with nutrient inadequacies. Unlike studies conducted in Western nations, rice was among the foods most favored by children with ASD in Japan. Rice lacks in vitamins A and D, and physicians and dietitians caring for children with ASD need to be aware of such nutritional deficiencies arising from food selectivity.

研究資料
  • 木下 弘基, 奥山 玲子, 河合 健彦, 鎌田 隼輔
    2017 年 58 巻 3 号 p. 398-408
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究では,児童思春期デイケアの不登校症例の実態および,学校復帰率,GAF,中学卒業後の進路を指標とした予後について調査・検討し,児童思春期デイケアの役割について考察することを目的とした。

    【方法】不登校を主訴に児童精神科外来児童思春期デイケアを利用した9~15歳の症例32例(男子22例,女子10例。小学生7例,中学生25例)を対象に後方視的な診療録調査を行った。

    【結果と考察】全32例中,発達障害圏に診断される症例が21例(65.6%)と最も多かった。デイケア開始時年齢は,平均は13歳2カ月であり,中1ギャップとの関連がうかがわれた。治療経過(デイケア利用経過)より分類された4群の比較から,デイケアの利用を継続できた群は学校復帰率,GAF,高校進学率が高く,予後が良好であると考えられた。対して,デイケアを中断した群は予後が悪く,青年期のひきこもりにつながる可能性も示唆された。本研究から児童思春期デイケアの役割として,①危機状態に陥った際の一時避難所,②安心できる居場所,③外界へ挑戦する際の安全基地の3点が考えられた。デイケアを利用することによって,子どもたちは危機状態から一時避難所を利用し,安心できる居場所を得,仲間と交流し活力を取り戻していき,再登校など外界へのチャレンジをしたり,進路と向き合ったりするようになると考えられた。不登校児への支援の場として児童思春期デイケアは有効と考えられるが,中断例への支援が課題として考えられた。

  • 緒川 和代, 松本 真理子
    2017 年 58 巻 3 号 p. 409-423
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル フリー

    昨今の社会情勢や自然災害の影響から子どもがトラウマを経験する可能性は高くなっており,子どもに対する効果的なトラウマ治療の研究が期待されている。しかしながらトラウマに対する治療としてWHOなどから推奨された治療法は「認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy,以下CBT)」と「眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Re-processing,以下EMDR)」(NICE, 2005;WHO, 2013)のみであり,子どもを対象とした治療法は決して多くないのが現状である。そのうちEMDRはFrancine Shapiroが1989年に発表した精神療法でありトラウマ治療の効果は認められているが,子どもを対象とした研究は多くはない。本論では子どもに対するEMDRの取り組みに関する文献展望を通して,海外での研究の現状と課題を把握するとともに,わが国における子どもへのEMDR適用に向けた課題について考察することを目的とした。

    結果として,子どもへのEMDRに関する海外文献56編,国内文献32編を収集し,それらを効果研究,レビュー研究,事例研究,報告文献の4種類に分類したところ,海外文献においては効果研究が20編,レビュー研究が12編,事例研究が18編,報告文献が6編みられた。これらから,海外では子どもへのEMDR適用の効果が広く認められ,今後はより詳細に目的設定した研究の増加が課題であると考えられた。一方,国内文献では効果研究とレビュー研究が見当たらず,事例研究が9編,報告文献が23編であった。今後はわが国における子どものトラウマ治療としての信頼性を高めるために基礎研究および臨床研究の蓄積がともに重要であると考えられた。

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