目的:Achenbach System of Empirically Based Assessment(ASEBA)の原本に従い,Child Behavior Checklist for Ages 1½-5(CBCL/1½-5)およびCaregiver-Teacher Report Form(C-TRF)の日本語版の標準値作成を試みた。
方法:CBCL/1½-5では1,422人(男児699人:女児723人)の素点をもとに,「情緒反応」,「不安/抑うつ」,「引きこもり」,「身体愁訴」,「睡眠の問題」,「注意の問題」,「攻撃的行動」の症状群尺度で,C-TRFは337人(男児150人:女児187人)の素点をもとに,「睡眠の問題」以外の症状群尺度で,それぞれの内向尺度,外向尺度および全問題尺度でT得点を算出した。信頼性と妥当性は,Cronbachのα係数と各尺度間の相関および確認的因子分析で適合度を検討した。CBCL/1½-5では,性と年齢の影響を見るため重回帰分析を行った。
結果および考察:CBCL/1½-5はα係数の全体平均は.73で,C-TRFは.72となり,どちらも内的整合性は良好で,尺度間の相互相関は全て正で有意で,確認的因子分析では,C-TRFの外向尺度以外は,適合度指標に問題は見られなかった。重回帰分析では,男児の方が「情緒反応」,「引きこもり」,「注意の問題」,「攻撃的行動」に有意な影響を与え,年齢群では,低年齢群が「睡眠の問題」,「注意の問題」,「攻撃的行動」に,高年齢群が「不安/抑うつ」と「引きこもり」に有意な影響を与えていた。
結語:ASEBAは国際的な実績を持ち,様々な歴史的文化的背景の国々と比較することが可能である。日本の標準値を作成することで,国際比較を通し,我が国の就学前児の行動評価に貢献すると考えられた。
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