AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
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  • 杉崎 光一, 猪村 元, 蓑田 玲緒奈, 安川 義行, 川上 裕人, 東田 典雅, 末光 功治
    2025 年6 巻3 号 p. 509-520
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    土木構造物の維持管理において点検と措置を結び付ける診断が重要である.診断は,専門知識が必要な高度な業務であるが,経験と高度な知見を有する技術者の判断が基本となっており,専門知識が属人的になっている場合,その説明責任とあわせて技術者の確保が課題となっている.本研究では,鋼橋の鉄筋コンクリート床版を取り上げ,ルールベースのエキスパート AI システムを構築する.診断システムの開発では,保全業務フローの明確化とあわせて基準等でルール化できない,複雑な床版の診断プロセスをルールベース化することで,技術者が判断する箇所が明確化され,見通し良く統一的な診断ができること,また,業務で発生するデータを一元的に管理できる仕組みを検討し,業務に沿って診断の再現や検証が可能なシステムを開発した.

  • XIE Renjie, 野村 泰稔
    2025 年6 巻3 号 p. 521-528
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,深層学習技術と地中レーダ(GPR)画像データを活用し,コンクリート中空床版橋におけるかぶり厚不足領域を自動的に検出する手法を提案する.物体検出アルゴリズムである You Only Look Once(YOLO)と,Python による後処理スクリプトを組み合わせることで,データのフィルタリングおよび解析を行う非破壊検査システムを構築した.本システムは,GPR から得られた横断解析画像を解析することで,かぶり厚が不足している領域を高精度に特定することを試みる.従来の手作業による点検と比較して,検査効率の大幅な向上,コスト削減,および人的ミスの低減が実現される.複数のデータセットを用いた実験により,本システムの適応性および精度が確認されており,構造物の包括的な健全性評価における汎用性と実用性が示された.

  • 山村 啓一, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 髙山 純一
    2025 年6 巻3 号 p. 529-537
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国における環境,交通,健康増進等の課題への対応や,「コンパクト+ネットワーク」の考え方にもとづく公共交通優先のまちづくりにおいては「シェアサイクル」の役割が期待されており,大都市圏はもとより,地方都市においても徐々に実装されつつある.一方,地方都市においては都市機能の郊外化や自動車移動依存が進んでおり,かつシェアサイクルの実装を考える際には需要が十分なのか,また規模やポート配置をどのように行えばよいのかといったことに対する目安がないため,実装が進みづらい実態があると考えられる.本研究では,複数の地方都市におけるシェアサイクルの利用実績データと全国画一で入手可能なオープンデータを用いて精度の高い需要予測モデルを構築する手法を提案し,さらにこのモデルをシェアサイクルが未実装である全国の市町にあてはめることで,シェアサイクルの適切な規模や配置を提案するとともに潜在需要を明らかにする.これにより,シェアサイクルの普及促進にかかる意思決定や都市交通の改善に貢献することを目指す.

  • 西野 匠悟, Tita Elfrido Elias, 渡邊 学歩, 宮本 崇
    2025 年6 巻3 号 p. 538-548
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    老朽化橋梁の維持管理において,GNSS 変位モニタリングが注目される.RTK-GNSS はリアルタイム性 に優れるが,ノイズ影響が大きく,高精度な変形推定には適切な処理が不可欠である.本研究では,桁橋である新八幡川橋の RTK-GNSS 長期計測データに対し,データ同化手法であるアンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)と,機械学習手法であるランダムフォレスト(RF)を適用し,変位推定を行った.推定結果は,スタティック計測値および変位計測データと比較し,RMSE,MAE,誤差の最大値,相関係数 r で精度評価した.その結果,EnKF と RF は異なるアプローチながらいずれも高い精度で変位を再現し,RTK-GNSSデータの有効活用に資することが示された.本研究は,橋梁健全性評価の基盤データ提供に貢献する.

  • 吉田 純司, 石川 諒, 棚田 祐世, 今野 哲哉, 遠藤 慶三
    2025 年6 巻3 号 p. 549-558
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    高速道路では維持管理のための点検において,特殊な道路性状測定車両を用いて走行しながら様々な量を計測している.特に路面については,ラインカメラにより高精度かつ連続した画像を取得し,それを目視判定してひび割れに関する損傷度を評価している.本研究では,道路性状測定車両での路面画像のひび割れに関する損傷評価を行うための解析システムを提案する.具体的には,4つのニューラルネットワークを異なるスケールの路面画像に順次適用することで,高速道路でのひび割れの評価方法に沿った評価を実現する.これらのネットワークとその適用方法を構築した後,ひび割れ率を算出し,専門員の目視判定による値と比較することで,本手法の妥当性を検討する.

  • 栁沼 洋詞, 板倉 健太, 有賀 佳秀, 中島 由暉, OSAY Sarah Meh
    2025 年6 巻3 号 p. 559-572
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,様々な分野で 3 次元点群データの利活用が進み,地形解析用の Digital Terrain Model(DTM)取得手段となっている. 取得方法には Mobile Laser Scanner( MLS ), Unmanned Aerial Vehicle( UAV ), Terrestrial Laser Scanner(TLS),Airborne Laser Scanner(ALS)がある.本研究では,これらから得た点群データを用いて,地表面分類手法である Simple Morphological Filter(SMRF),Cloth Simulation Filtering (CSF),Improved Adaptive Triangulation(IAT)を比較・評価した.Precision, Recall,Accuracy,F1-Scoreを評価指標とし,二元配置分散分析とフリードマン検定で統計的有意性を検証した結果,複数の評価指標でデータセットの主効果が統計的に極めて有意であることが分かった.

  • 渡邊 学歩, 木下 幸治
    2025 年6 巻3 号 p. 573-586
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,内閣府第 3 期 SIP で開発を進めている地方自治体における建設 DX 推進の中核となるデータアキュムレータ・アナリスト(DAA)養成講座の持続可能性とビジネスモデルを,大規模言語モデルである Gemini を活用したデータドリブンアプローチで評価する.具体的には,Gemini を活用して総務省公開の PDF 決算書から自治体財政データ(土木事業費等)を効率的に抽出し,DX 人材配置による DX 普及シミュレーションを行った.この結果,土木事業規模に応じた普遍的な DX ニーズと,多様な地域ごとのニーズが明らかになった.また,DAA 人材配置が DX 普及と費用対効果に繋がる観点から,講座の有料化の妥当性も示唆された.さらに,山口県を対象としたシミュレーション結果より,DAA 養成講座が山口県の 3 次元設計データの内製化戦略を含む建設 DX の社会実装を加速させる「触媒」として機能し,持続可能な社会基盤の実現に貢献することも示唆された.

  • 谷本 陽介, 野村 泰稔, 成瀬 寧, 三井 洋史
    2025 年6 巻3 号 p. 587-593
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,深層学習と画像処理技術を用いて,鋼橋の腐食を検出し,過年度からの腐食進行を可視化・ 定量化するシステムの開発を目的とする.具体的には,まず,点検車載カメラで撮影された桁の画像を画像アライメント技術を用いて過年度画像と画角調整し,物体検出アルゴリズムを用いて腐食箇所を特定する.次に,加色混合法を用いて過年度からの腐食の進展域を可視化し,その後,ヒストグラム平坦化や HSV 変換,二値化処理を通じてピクセル単位で腐食進展量を算出する.実際の点検画像を用いた実証実験の結果,本システムにより腐食進展領域の抽出と定量的評価が可能であることを確認した.本システムは,点検作業の省力化や判断の標準化に寄与し,構造物の維持管理の高度化に貢献しうる技術である.

  • 末吉 悠人, 塩見 康博, 神戸 信人
    2025 年6 巻3 号 p. 594-600
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    交通制御や公共交通運用の最適化や有効な安全対策を講じるためには,リアルタイムでの人流・交通流を把握することが重要である.しかしながら,これらのデータを収集できるカメラや感知器は特定の道路にしか設置されておらず,その空間的網羅性が低いのが現状である.それに対し,既往研究では車載カメラを活用することで補完する手法も開発されているが,消失点を活用して位置を把握するものが多く,精度を維持しつつ広範囲の位置情報を取得することは難しい.本研究では,物体検知と単眼深度推定を活用し,車載カメラから周辺歩行者・車両の位置と速度を 2 次元で推定するアルゴリズムを構築した.アルゴリズムの精度評価により,単眼深度推定の活用による 2 次元表現の有効性と,ミクロなエリアで歩行者・車両の位置や移動を把握できる可能性を示した.

  • 野津 秀太, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 新森 海我, 深谷 渉, 妹尾 学, 澤田 洋一
    2025 年6 巻3 号 p. 601-608
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,下水道管渠の老朽化が深刻な問題となっており,破損に起因する大規模な道路陥没事故が発生し,人命にも関わる被害が報告されている.このような事故の再発を防ぐためには,下水道管渠の状態を的確 に把握し,早期に補修が必要な箇所を特定することが不可欠である.しかし,下水道管渠の点検においては,多岐にわたる損傷項目を評価し,スパンごとに状態や緊急度を判断する必要がある.この作業には高度な専門知識を要し,作業者による評価のばらつきや人手不足による対応遅れが課題となっている.本研究では,下水道管渠の点検記録をもとに,Graph Neural Network によってスパンごとの損傷状態のランクと緊急度判定を予測する手法を構築した.その結果,ランク,緊急度判定ともに高い精度で予測できた.

  • 塚越 克実, 森崎 裕磨, 藤生 慎
    2025 年6 巻3 号 p. 609-615
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    過去の大規模地震災害では,災害時要配慮者に対する対応・支援に課題が残った.災害時要配慮者は,高齢者・乳幼児・観光客・傷病者等が該当する.中でも観光客は,自宅から自宅から離れた場所で被災 する特徴を持つため,利用可能な公共交通手段・スマートフォンの利用可否等,自身の状況によって地震発生後の行動が複雑に変化する.本研究では,地震発生時の観光客の行動傾向を明らかにすることを目的とし,観光客を対象に災害時の行動に関するアンケート調査を実施した.決定木分析の結果,地震発生後の観光客の行動傾向は,国籍,年齢,滞在日数,来訪回数といった属性により特徴づけされた. また,日本人観光客はホテルでの滞在を試みる傾向が高く,訪日外国人旅行者は避難所に行く傾向が高いことが明らかとなった.

  • 随 海通, 陳 瑜, 全 邦釘
    2025 年6 巻3 号 p. 616-623
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    多くの橋梁が維持管理段階に入り,点検や診断の重要性が高まる一方,数値解析に基づく予測では専門技術者の不足が課題となっている.そこで本研究では,MCP(Model Context Protocol)を用いた橋梁構造モデルの自動生成手法を提案する.橋種やスパンなどの幾何情報を自然言語で入力するだけで,モデリングからメッシュ生成,可視化まで自動実行が可能である.具体的には,LLM(大規模言語モデル)による意味解析と,Gmsh(構造モデル生成),Blender(形状生成),Cesium(可視化)などのツールを MCP で連携させることで,モデリングソフトの操作に不慣れな土木技術者でもモデル作成が可能な環境を構築した.ユーザー実行を通じて操作性と拡張性を確認し,橋梁デジタルツインの初期構築に有効性を示した.今後はプロンプトや中間処理の最適化,データ連携で統合管理の実現を目指す.

  • 難波 宗功
    2025 年6 巻3 号 p. 624-631
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    建築分野において,各種業務の効率化や高度化を目的として,人工知能 AI の研究及び活用が推進されている.本論は,AI の適用範囲を木造建築に限定し,AI 活用の現状と課題,そして展望について論じるものである.まず,AI が意匠・構造設計支援,施工ロボットの制御,点群解析による維持管理,文化財の 3D 復元や材料分析に利用されている現状を述べた.次に,データ不足・ブラックボックス性・倫理・専門家との役割分担といった技術的・社会的課題を指摘し,解釈可能 AI や制度整備の必要性を考察した.最後に,今後はデータ共有,AI と人間の協働,国際的な標準化と倫理的枠組みの構築が求められると結論づけている.

  • 板倉 健太, 林 拓哉, 高田 祐一
    2025 年6 巻3 号 p. 632-642
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    従来,石垣の図化は 2 次元的な図面や写真に依存し,3 次元的な情報の欠落や作業の属人性,膨大な労力が課題であった.本研究では,文化財石垣の現況や構造を体系的に記録・管理する石垣カルテの作成作業を効率化することを目的とし,SfM-MVS により生成された高密度な 3 次元メッシュモデルから石垣の線画を作成する手法を提案した.3 次元モデルのテクスチャ画像を対象に,Segment Anything Model(SAM)を用いて石垣ごとの領域を自動的にセグメンテーションし,境界情報を抽出して DXF 形式で出力した.精度検証として,名古屋城の一部領域で手動による境界線との比較を行った結果,Precision 0.90,Recall 0.79を達成し,高い精度でそれぞれの石垣がセグメンテーションできていることが確認された.

  • 佐々木 拓海, 板倉 健太, 全 邦釘
    2025 年6 巻3 号 p. 643-651
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,老朽化する橋梁の維持管理業務の効率化を目的に,点群データと画像を統合解析し,ひび割れ検出と損傷情報の抽出を行う手法を提案した.DeepLabv3+を用いたセマンティックセグメンテーションにより,画像上のひび割れと橋梁部材を検出し,Segment Anything Model(SAM)を併用して精度向上を試みた.さらに,画像解析の結果を点群と対応付け,点群におけるスケール情報を活用することで画像から検出したひび割れの長さを推定した.

  • 酒井 佑樹
    2025 年6 巻3 号 p. 652-661
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    比較的大きな構造物の建設後の風環境の改善が必要となる場合,防風植栽を配置するなどの対策が求められる.数値流体計算(CFD)による樹木の防風効果の評価では,樹木の抗力を抗力係数と葉面積密度を設定したキャノピーモデルで与えるが,抗力係数と葉面積密度の決め方に課題がある.流れ場の情報からパラメータを逆推定するために Physics-informed Neural Networks(PINNs)は有効だが,空間に対して推定対象パラメータの影響が小さい場合には PINNs の構成の検討が必要である.本研究では,抗力係数と葉面積密度を設定した CFD の植生キャノピーモデルまわりの流れ場の情報を用いて抗力を逆推定する PINNsを構築する.構築した PINNs は推定値が初期値依存であり,収束性には改善の余地がある.

  • 坂井 拍斗, 前田 健児, 越野 亮
    2025 年6 巻3 号 p. 662-670
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    鋼橋などインフラ老朽化対策において,普通鋼材の腐食評価は重要な課題である.画像から腐食度合い を迅速に判定できる技術は,維持管理の効率化やコスト削減に貢献できる.本研究では,鋼材腐食画像から平均腐食深さを分類するため,複数の代表的な CNN モデル(VGG19, ResNet50, InceptionV3, EfficientNetB3)を用いた転移学習を適用し,その有効性を比較検証する.実橋で曝露した鋼材のデータセットを用いた結果,特に InceptionV3 が良好な性能を示し,腐食度合いを 4 段階に分類するタスクで Accuracy 86.67 %を達成した.モデル間で性能差が見られ,初期腐食の識別には課題が残るものの,進行した腐食は高精度で分類可能であることが示された.本成果は,画像解析による自動腐食度評価システムの実現に向けた基礎データとなる.

  • 石井 育規, 小塚 和紀, 山下 隆義
    2025 年6 巻3 号 p. 671-680
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,企業戦略と直結したトップ AI 人材育成のためのフレームワークを提案する.提案フレームワークは,企業戦略に基づき AI 研究テーマの構想・立案,研究推進,技術翻訳の 3 軸で実践的スキルを育成する.具体的には,論文調査,仮説検証,論文作成,プレゼンテーションの 4 フェーズにおいて,SECIモデルや経験学習モデルのアクティビティを適用し,戦略的思考力,実装力,発信力を強化する.事例に基づく検証により,個人の能力向上と企業プレゼンス強化への貢献を確認した成果を示す.

  • 中村 亮太, 郷右近 英臣
    2025 年6 巻3 号 p. 681-691
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,2018 年の北海道胆振東部地震を対象に,被災前後の光学衛星画像を用いたマルチスケール空間分析による土砂災害の崩壊分類手法を提案する.具体的には,異なる解像度のメッシュサイズ(0.5 km, 1 km,2 km)を組み合わせたマルチスケール空間解析フレームワークに基づき,SPOT6/7 衛星画像から得られる赤・緑・青・近赤外の各バンドの画素データや,正規化植生指数(NDVI)などの植生指標を説明変数,崩壊の発生有無を目的変数とするモデルを構築した.提案手法の検証では,単一スケールおよびマルチスケールの特徴量を用いた分析を通じて分類性能を比較した結果,マルチスケールによって誤分類(偽陽性および偽陰性)の削減が確認され,分類精度の向上が示された.これらの成果は,複数の空間スケールの文脈を考慮した特徴量設計が,光学衛星画像による崩壊有無の分類において,精度向上に寄与する可能性を示している.

  • 板倉 健太, 有賀 佳秀, 全 邦釘
    2025 年6 巻3 号 p. 692-702
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,LiDAR (Light Detection And Ranging)の技術により,広範かつ高密度な 3 次元点群データの取得が可能となり,土木構造物や建設現場における活用が進んでいる.点群の膨大なデータを有効に扱うためには,対象物ごとの自動分類が重要である.近年は深層学習による手法が発展し,特に Transformer を利用したモデルは複雑な形状にも有効であり,画像解析での成功例が点群にも応用されつつある.また,分類精度には損失関数の工夫も重要で,クラス不均衡に対応するために様々な損失関数が利用されている.本研究では都市部の点群を対象に,Transformer ベースの手法と複数の損失関数の組み合わせによる分類性能を比較する.

  • VIRAKPANHA IN, 福井 智大, 鈴木 大地, 黒田 一郎
    2025 年6 巻3 号 p. 703-714
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,機械学習の一種である局所外れ値因子法(LOF)に基づいた打音を用いた RC 構造部材の損傷判定において,教師データの入手が困難な状況下での性能向上を目的として転移学習の導入を試みるものである.特定の RC 部材の教師データ群に対して,異なる部材のテストデータ群から LOF の出力に基づいて選択されたデータを取り込み,新たな教師データ群を構成することで,異なる部材の損傷判定を向上させる手法を提案している.せん断載荷を受ける RC 梁供試体を対象とした実験によって提案手法の有用性を確認し,新たに構成する教師データの構成割合が判定結果に与える影響を検討した.

  • 仁田 佳宏, 福富 佑, 阿部 雅史, 鈴木 芳隆, 中島 正愛, 西谷 章
    2025 年6 巻3 号 p. 715-723
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,天井板の崩落や欠落などの中規模な天井の損傷を迅速に検出することを目的として,天井の画像撮影を Unmanned Ground Vehicle (UGV)により行い,AI を用いて天井の中規模な損傷を検知する手法を提案する.天井の損傷検知には,健全時を主とする学習から異常検知が行える PatchCore を用いる.また,効率的に天井の損傷検知を行うためには,UGV の走行アルゴリズムも重要となる.そこで,建築構造物の屋内は壁面で構成されていることから,LiDAR により壁面を検出し,壁面に沿って自動走行するナビゲーションアルゴリズムも提案する.提案手法の有用性は,実建築構造物の天井を対象とし,開いた点検口を模擬損傷とする実験により実証している.また PatchCore のヒートマップ上の Anomaly Score の総和を算出することで,天井の損傷の大きさも評価できることも確認している.

  • 北岡 貴文
    2025 年6 巻3 号 p. 724-733
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    2025 年は「AI エージェント元年」と呼ばれ,AI エージェントは自律的にタスクを遂行できる点で注目されている.しかし,AI モデルは推論過程の不透明性や説明可能性の不足などブラックボックス化の課題を抱える.本研究では,GPT-4o で生成した知識をベクトルデータベース化し,LangChain と LangGraph を組み合わせたエージェント型 RAG を構築した.さらに GPT-5 による LLM as Judge を導入し,知識源と応答の対応関係を評価した.15 事例の検証結果から,エージェント型 RAG はLLM 単体よりも応答品質が向上し,ブラックボックス性緩和と実務応用への有効性が示唆された.特に,地盤工学分野における知識継承や現場支援に資する可能性が確認された.

  • 濱野 勇臣, 内堀 大輔
    2025 年6 巻3 号 p. 734-741
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    インフラ施設の点検業務の効率化において画像認識を用いた方法は有効である.本稿では,画像から通 信施設である鋼製の橋梁添架管路と添架部材の腐食面積を推定する手法を提案する.提案手法は深層学習手法のインスタンスセグメンテーションを用いて画像中の橋梁添架管路と添架部材の領域を個別に検出し,セマンティックセグメンテーションにより構造物に発生した腐食の領域を検出する.そして,これらの結果から構造物毎における腐食面積の割合を算出する.検証の結果,実際の腐食面積率と提案手法の推定値の相関係数は 0.976 であり,構造物における腐食の進行状態を把握するために十分な精度であった.

  • 安藤 佑咲, 中島 未椰, 斎藤 隆泰, 加藤 毅
    2025 年6 巻3 号 p. 742-751
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    非破壊検査は老朽化が進む社会インフラの維持管理において需要が高まっている.特にレーザー超音波可視化検査 (LUVT) は,超音波の伝播を可視化でき,比較的容易に欠陥検出が可能である.こうした需要の高まりに対し,検査員の不足などを背景に,人工知能を用いた自動検査が求められている.従来の自動検査法では,欠陥データの収集や欠陥検出性能に課題があり,アプローチの見直しが迫られていた.そこで,本研究では自己教師あり学習による異常検知法を提案する.正常データと疑似異常データによる 2 クラス分類の事前学習で得られた特徴抽出器を用いて,異常検知を行う.複数の異常検知法との比較を行い,提案法の有効性を検証する.

  • 桑野 響, 川崎 佑磨, 井上 和真, 後藤 源太, 工藤 慎之輔, 金子 真澄
    2025 年6 巻3 号 p. 752-762
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿は,構造物のひずみ計測を目的とした安価で簡潔な IoT センサを用いて,維持管理における劣化・損傷のモニタリングへの適用に関する取り組みを報告するものである.床版や橋脚など様々な構造物への導入を想定し,単純な RC 床版を模擬した供試体に実験で一般的に使用される I 型ひずみゲージを貼付して疲労試験を行った.IoT センサには,低価格で入手可能な Raspberry Pi を使用した.本稿では,疲労試験により生じたひずみを IoT センサおよび既往の計測方法であるデータロガーによって取得し,両者のデータを比較・評価した.その結果,IoT センサによるひずみ値および挙動はデータロガーとほぼ同程度であり,維持管理における動的変形に対しても IoT センサによるひずみ値が既往計測方法と整合がとれることが示された.

  • 笹井 晃太郎, 安藤 翠, 寇 主銘, 貝戸 清之
    2025 年6 巻3 号 p. 763-778
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    道路インフラの維持管理においては,分野横断的なデータ連携が進みにくい一方で,個別の業務に関する多様な記録・データが蓄積されつつある.本研究では,特に点検負担の大きい床版下面に着目し,複数の点検データを連携させて損傷状態を予測する手法を提案する.データ連携の過程では,欠損値の存在,クラスの不均衡などといった課題が生じるが,それらに対処するために深層学習モデル TabNet を活用し,高い予測精度と特徴量の解釈性の両立を図る.阪神高速道路における実データを用いた分析を通じて提案手法の有効性を実証する.本研究により,従来分断されていた点検データを横断的に活用することで,効率的かつ戦略的な点検計画の立案が可能であることを示した.

  • 藤原 麟太郎, 鍬田 泰子, 坂井 勝哉, 後藤 浩之, 宮澤 理稔
    2025 年6 巻3 号 p. 779-789
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,従来の交通量調査手法に加え,道路に敷設された既存の光ファイバケーブルを利用した条件に左右されない交通量計測手法を提案した.分散型音響計測(DAS)では,光ファイバの全延長上の任意の地点のひずみ速度を観測することができる.国道側道に敷設された光ファイバケーブルの DAS データより,車両がケーブルの近くの車線を通過した後のみ,ひずみ速度データに 2 Hz 以下の周波数の成分が卓越することがわかった. この特性を用いて,ローパスフィルタのみ適用したひずみ速度データから容易に交通量を計測する方法をした.センサス交通量との比較検証により,本手法は高い精度で交通量を算定できることを確認した.さらに,渋滞発生時に生じる計測誤差に対して補正を加えることで,精度が一層向上することも確認された.

  • 片山 遥平, 笠間 清伸
    2025 年6 巻3 号 p. 790-802
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    圧密沈下量の高精度な予測には地盤の圧縮指数が必要となる.圧縮指数は圧密試験によって得られるが,長時間を要する試験であるため,実務では液性限界や間隙比から推定されることがある.様々な経験式が 提案されているが,その多くは地域ごとの地盤特性を考慮しない統一的なものであり,安易に適用すると大きな推定誤差が生じる恐れがある.そこで本研究では,地域ごとの地盤特性を考慮した圧縮指数の推定 方法を構築することを目的として検討を実施した.まずWeb 上で公開されているボーリング資料などをもとに,テーブルデータ形式の地盤定数データベースを構築した.このデータを国内の主要な港湾ごとに分割し,重回帰分析および機械学習によって推定モデルを構築し,圧縮指数を推定した.

  • 片山 遥平, 笠間 清伸
    2025 年6 巻3 号 p. 803-815
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    深層混合処理工法などの地盤改良工法を港湾構造物の基礎地盤や背後地盤に適用する場合,本体工の要 求性能に応じてFEM 解析によるレベル 2 地震動に対する変形量の照査が必要となる.レベル 1 信頼性設計法では改良地盤が有する空間的ばらつきを直接的に考慮できないため,改良体強度に係数を乗じて大きく低減することで安全性を確保している.一方,レベル 3 信頼性設計法ではこの空間的ばらつきを直接的に考慮することができ,構造物の安定性と経済性の両面から合理的な設計が可能となる.しかし本設計法ではモンテカルロ・シミュレーションが必須で,FEM 解析に適用する場合は解析コストが非常に大きくなる.本研究では解析コストを低減することを目的として,機械学習を用いて地震後の岸壁の残留水平変位を推定するサロゲートモデルの構築について検討した.

  • 小林 瑚伯, 込山 晃市, 井林 康
    2025 年6 巻3 号 p. 816-822
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    平面画像から損傷を検出する研究では高い精度が報告されているが,撮影の網羅性や効率性には課題があった.本研究ではこの課題に対し,360 度画像の活用し,鉄筋露出を対象としたディテクション及びセグメンテーションモデルを構築し,その検出精度の評価を行った.まず,平面画像に対して検出精度の評価を行い,セグメンテーションモデルは平均 IoU 0.746 と安定した性能を示し,ディテクションモデルは平均 Recall 0.858 と安定した性能を示したが,平均 Precision が 0.765 に留まった.さらに,360 度画像に対して Cubemap 変換による歪み補正を適用し推論を試みたが,Recall は 0.326 に留まり,検出精度に課題が残ることが明らかになった.今後は,360 度画像の教師データを拡張するとともに,推論を行う GUI アプリの開発を進め,画像認識による点検従事者への視覚的支援の実用化に向けた検討を行っていく.

  • 小林 敬汰, 清水 悠太, 岩村 尚人, 渡辺 憲吾, 横田 敏広
    2025 年6 巻3 号 p. 823-828
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    巡視・点検などの河川維持管理業務の多くは目視により行われているが,河道内樹木や砂州・河岸等の広範囲にわたる維持管理対象を,現場目視主体で定量的・網羅的に把握することには人員・時間の確保等の観点で課題がある.本研究では河岸侵食の検出を対象とし,河岸全体を網羅的に把握可能な,衛星画像による河岸侵食検出フローを提案した.具体的には、衛星画像を用いた河岸判読の可能性を高解像度衛星画像(WorldView シリーズ)および中解像度衛星(Sentinel-2)を用いて確認し,侵食傾向の判読が可能であることを確認した.さらに,衛星画像と画像解析を用いた河岸侵食の自動検出フローを提案し,天竜川の侵食発生箇所に適用することで,その有効性を確認した.

  • 中川 明紀, 伊藤 陽
    2025 年6 巻3 号 p. 829-838
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    豪雨による土砂災害は,近年増加傾向であるとともに平成 30 年 7 月豪雨のように広範囲に甚大な被害をもたらすことがある.土砂崩壊箇所を予測する研究は多く行われているが,予測に用いられている地形情報は現場調査等が必要なものもあり,予測に時間を要する.そこで本研究では,現場調査を行う必要がなく全国どこでも入手可能な公開データのみを使用し,機械学習の一手法である勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree)を用いて豪雨に対する土砂崩壊箇所の予測モデルを構築した.また実際の運用時に重要だと考えられる他地域への適用性がある汎用的な予測モデルを目指して,最適な説明変数を選定するとともに予測モデルの解釈性について考察した.

  • 増田 和輝, 田中 陽二, 金澤 剛
    2025 年6 巻3 号 p. 839-852
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    洋上施工計画の安全性向上に向け,深層学習を用いて高精度かつ低コストの確率的気象・波浪予報の実現が課題である.本研究では,条件付き拡散モデルに基づき次時刻の気象・波浪場を予測するモデルを構築した.さらに,クラスタリングを用いたアンサンブル枝刈り手法を導入してモデルを自己回帰的に適用し,計算コストを抑制した短期アンサンブル予報の枠組みを提案した.結果として,適切な変数選択が予測精度向上に寄与し,台風事例では多様な進路パターンを生成して,単一予報では捉えきれない予測の広がりを示した.また,低リソースかつ高速な計算性能も確認し,本手法が計算資源の限られた環境でも実用可能であることを示した.

  • 小林 巧, 武田 龍國, 藤澤 志織, 大住 道生
    2025 年6 巻3 号 p. 853-865
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    道路橋の震災復旧の判断に生成 AI を用いることを想定し,西洋由来の生成 AI に内在された西洋的価値観がその判断に及ぼす影響について調査を実施した.手順として,道路橋の震災復旧における日米マニュアルにおける価値観の相違を示したうえで,実際の震災復旧で想定される倫理的に困難な状況を LLM に提示し,その回答を分析し,どのような局面で西洋的な価値観が表出するかを例示した.結果,震災復旧時の安全管理,点検優先順位,交通開放判断,復旧仕様の選定,震前の耐震補強等に関する判断を下す局面で,多くの生成 AI が米国のマニュアルに基づいた場合に近い判断を下すことが確認された.

  • 小林 巧, 大住 道生, 羽鳥 剛史, 森 伸一郎, 中畑 和之
    2025 年6 巻3 号 p. 866-881
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    本研究では,従来の経験則に依拠する維持管理を補強する手段として数理的手法を導入し,維持管理のデジタル化を加速するための検討を行った.検討では,点検手段の選択問題等において,その前提となる論理的に堅固な数理モデルを示し,抽象的な位相空間論を活用することで,特定の技術等に依存しない手段選択の枠組みを提示した.さらに,抽象的な数理と具体的な実務を接続するために,実際の点検手段の選択問題を想定し多目的最適化を用いてデータ駆動的に最適解を導出する手順の例を示した.併せて,不連続写像の実務的な解決策として二値判定によるステップ関数を組み込むアルゴリズムを提示し,実際の地震後の点検事例と比較することでアルゴリズムの検証等を行った.

  • 鈴木 大地, 黒田 一郎
    2025 年6 巻3 号 p. 882-890
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    人工欠陥を有する表面を塗装されたRC供試体を対象に,打音を用いた内部欠陥判定手法の高度化を目的に,局所外れ値因子法(LOF)にアンサンブル学習の一種であるバギングを導入した手法を検討した.各弱学習器に対してブートストラップ標本を用いるとともに,入力とする打音スペクトルの周波数帯域およびk/N比を一定の範囲内で無作為に変動させることで,弱学習器間の多様性を高めた.その結果,教師データ数の大小及び塗装の有無に関わらず,判定性能が改善することを明らかにした.

  • 宮川 璃空, 工藤 颯太, 高 天齊, 斎藤 嘉人
    2025 年6 巻3 号 p. 891-898
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    こんにゃく製品の品質管理において,厚生労働省基準により pH 11.0 以上が要求されているが,現行の 破壊的検査法では全数検査が困難であることと食品ロスが課題である.本研究では,励起蛍光マトリクス (EEM)を用いたこんにゃくの pH の非破壊的予測手法の開発を目的とした.異なるpH 条件で調製した 54 個のこんにゃくサンプルに対して EEM 測定を行い,部分的最小二乗回帰,転移学習,畳み込みニューラルネットワークによる予測モデルを構築した.EEM 測定により,Ex. 280-300 nm / Em. 340-360 nm(ピーク A)と Ex. 320-330 nm / Em. 400-360 nm(ピーク B)の 2 つ蛍光ピークが観測され,pH 上昇に伴いピーク A 強度が顕著に減少した.予測モデルの構築では,最も精度の高いモデルで, R2=0.893, RMSE=0.252 であった.以上の結果より,蛍光分光法を用いた非破壊的なこんにゃくの pH 評価の可能性が示された.

  • 小畑 悠, 村井 匠, 板倉 健太, 永野 博彦, 長谷川 英夫, 斎藤 嘉人
    2025 年6 巻3 号 p. 899-911
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    地球温暖化対策には土壌からの温室効果ガス量およびその発生要因成分の推定技術が必須である.本研究では,土壌水抽出液の励起蛍光マトリクス(EEM)を入力とした,土壌の全炭素(TC),全窒素(TN),水溶性全有機体炭素(WS-TOC),水溶性全窒素(WS-TN),および発生 CO2量の推定モデル構築を目的とした.モデルの評価指標として,テストデータにおける二乗平均平方根誤差(RMSECV),決定係数(R2CV)および予測偏差比(RPDCV)を用いた.畳み込みニューラルネットワーク(CNN)と部分的最小二乗回帰(PLSR)を比較した結果,CNN が優位性を示し,TC(R2CV=0.95),TN(R2CV=0.93),WS-TOC(R2CV=0.86),WS-TN(R2CV=0.91)で高精度な推定が可能であった.以上の結果から,蛍光分光法と深層学習による土壌中の炭素・窒素関連成分の推定の可能性が示唆された.

  • 足立 真夢, 高 天齊, 下保 敏和, 大竹 憲邦, 斎藤 嘉人
    2025 年6 巻3 号 p. 912-924
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    エダマメは収穫適期が短いとされ,収穫適期判断には熟度関連品質の評価が重要と考えられる.本研究では,莢表面の蛍光特性に基づくエダマメの熟度関連品質の推定を目的とした.収穫日の異なるエダマメにおいて,励起蛍光マトリクス(EEM)の測定,カラー画像および 365 nm 励起の蛍光画像の撮影を行った.熟度関連品質として水分率および糖含量を測定した.そして,カラー画像および蛍光画像の色特徴量およびテクスチャ特徴量を使用し,部分最小二乗回帰(PLSR)による推定を行った.色特徴量での推定では,蛍光画像の特徴量を加えると精度が向上し,さらにテクスチャ特徴量を加えると,水分率で R2CV=0.526, RMSECV=2.23%,フルクトース含量で R2CV=0.532,RMSECV=0.221 g/100 g DW となり,精度が向上した.以上より,エダマメの熟度関連品質の推定では蛍光特性およびテクスチャ特徴量の有用性が示された.

  • 中村 健二, 坂本 一磨, 川窪 隆馬, 今井 龍一
    2025 年6 巻3 号 p. 925-938
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    地域防災計画は,国の防災基本計画に準じて毎年改定されているが,その作業は多大な労力を要する.近年,自然言語処理技術を用いて,記述の不備や検討不足の箇所等を抽出する手法が提案されているものの,それらの自動抽出は十分な精度で実現されていない.本研究では,与えられた文書情報に基づいて回答を生成するRetrieval-Augmented Generation(RAG)に着目し,地域防災計画の記述内容に則した回答の生成を目指した.そのために,計画の構造に則したチャンキング手法を新たに設計し,RAGモデルを構築した.実験の結果,考案手法は既存のチャンキングと比較して,検索精度および回答生成精度の双方において優れた性能を示し,地域防災計画の改定作業に有効であることが示唆された.

  • 内藤 昌平, 土屋 美恵, 友澤 弘充
    2025 年6 巻3 号 p. 939-948
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    兵庫県南部地震,東北地方太平洋沖地震,熊本地震,北海道胆振東部地震,能登半島地震の各直後に撮影された災害調査画像を使用し,セマンテックセグメンテーションにより建物部位や被害種別を推定するモデルを開発した.建物部位推定モデルでは再現率,適合率ともに 6~7 割以上となり,比較的高い推定精度を確認した.被害種別推定モデルでは被覆箇所は再現率約 8 割,適合率約 7 割,倒壊箇所は再現率約5 割,適合率約 8 割と比較的高い精度になった.損傷箇所や地盤災害はやや精度が低下した.また,可搬型コンピュータ上で動作する災害調査支援システムを試作し,建物部位および被害種別のリアルタイム表示が実現可能なことを確認した.

  • 相原 航, 荻野 俊寛, 藤井 登, 栗山 大助, 荻田 茂
    2025 年6 巻3 号 p. 949-956
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では積雪寒冷地における地すべり地の水理挙動を解析するため,菅原による融雪モデルと地下水タンクモデルを統合し,状態空間モデルとして定式化した.秋田県阿仁合小渕地区を対象地とし,2018 年 6 月から 2022 年 5 月までの地すべり地の動態観測データおよび阿仁合アメダスの気象データを解析に用いた.統合モデルにより降雪と融雪を考慮した日融雪換算降雨量を推定し,これを地下水タンクモデルに入力することで,流出量および地下水貯留量を時系列的に解析した.モデルパラメータはマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC 法)によりベイズ推定した.

    推定値の整合性を検証した結果,降雪および融雪期の積雪深,流出量の変動がおおむね再現され,積雪寒冷地の水理過程のモデル化に成功した. 観測値と推定値(中央値)の間の二乗平均平方根誤差は積雪深で 10.4 cm,流出量で 203 m3/sであった.

  • 岡崎 治彦, 坪井 眞三, 竹谷 晃一, 北原 武嗣
    2025 年6 巻3 号 p. 957-965
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    維持管理において橋梁のたわみ計測は重要であるが,長期のたわみモニタリングは一般的に困難であり,加速度計測からたわみを求める手法が用いられることが多い.しかし,計測ノイズや数値積分誤差などの 影響で十分な精度を確保することは難しい.そこで.加速度から数値積分した速度応答に対し波形処理を行った後,たわみを算出する方法を検討した.ノイズ低減は,加速度応答に対しハミング窓,速度応答に対し連続ウェーブレット変換による基線補正,ローパスフィルタを適用した.基線補正においては,多目的最適化によるパレート解を機械学習することで回帰モデルにより決定した.さらに,速度波形の対称性評価指標を導入し,変位誤差の除外を計った.その結果,加速度応答から算出したたわみは,多くの場合変位計で計測した変位を精度よく求めることができ,誤差が大きい場合でも 0.05mm 以内の差に収まった.

  • 渡部 航史, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2025 年6 巻3 号 p. 966-975
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    道路附属物は道路標識や照明に代表される道路に設置される設備の総称であり,その設置数と設置範囲の 広大さから点検の効率化が望まれている.これまで,道路附属物を対象として,損傷の種類を分類するための AI モデルの研究が行われていた一方,社会実装を実現するためには説明性のある枠組みの構築と損傷の程度を推定する必要がある.そこで,本研究では Vision Transformer による損傷種類の分類と大規模視覚言語モデルの In-context learning に基づく損傷程度推定を組み合わせた枠組みを構築する.ViT による損傷種類の分類により説明性のある枠組みを実現し,大規模視覚言語モデルの In-context learning による程度推定器の学習により,Vision Transformer による学習が難しい損傷程度の推定を実現する.本稿の最後では,実際の道路附属物の画像を用いた実験により提案手法の有効性を検証する.

  • 佐藤 雅也, 前田 圭介 , 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2025 年6 巻3 号 p. 976-989
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,橋梁点検業務の効率化を目的として,橋梁点検に関する専門的知識を組み込んだマルチモーダル大規模言語モデルを提案する.既存研究では,タスクごとに個別のモデルが必要であったが,本研究ではタスク指示文とそれに対応する応答例を与え,具体的なタスク遂行に特化させる学習手法である instruction-tuning により,損傷判定や所見生成など複数タスクに一貫して対応可能なモデルを構築する. 学習には国土交通省の橋梁定期点検調書を用い,さらにモデルの汎化性能とロバスト性を高めるため,質問の多様性と表現の多義性に基づく 2 種類のデータ補強手法を導入した.実験では,各タスクにおける精度を評価し,提案モデルの有効性および実運用への適用可能性を検証した.検証の結果,提案モデルは非常に小規模なパラメータ規模でありながら,画像分類モデルやGPT ベースの生成モデルと同等の精度を複数タスクで達成し,実運用を見据えた軽量かつ高精度な点検支援モデルとして有望であることを確認した.

  • 2025 年6 巻3 号 p. 991-1005
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 佐藤 雅也, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2025 年6 巻3 号 p. 991X-999
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル オープンアクセス

    令和6年度に改定された橋梁定期点検要領では,所見作成の単位が部材からシステムへと変更され,複数の損傷画像を統合的に評価した上で所見を作成することが求められるようになった.本研究では,この 新要件に対応する自動所見生成手法を提案する.本手法は,(i) 点検情報に基づく関連調書の抽出,(ii) 損傷画像群間の類似度に基づく代表調書の選定,(iii) マルチモーダル大規模言語モデルを用いた所見生成の 三段階で構成される.令和6年度の北海道内の橋梁定期点検データを用いた実験の結果,提案手法は全て の所見項目において比較手法を上回る性能を示し,高精度な生成が可能であることが確認された.さらに,生成された所見をもとにした代表損傷画像の選定に関する検証についても実施し,実運用に向けた提案手法の応用可能性と今後の検討課題を明確にした.

  • 新井 悠介, 原田 隆郎
    2025 年6 巻3 号 p. 1006-1014
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    高度経済成長期に建設された橋梁を効率的に維持管理するために定期点検が行われ,橋梁の健全度が 4 段階で評価されている.この点検結果等の各種データは「全国道路施設点検データベース」にて一般公開されており,これらのデータを活用して AI による橋梁の維持管理が行われている.本検討では,代表的な画像認識 AI である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて橋梁部材の損傷種類の分類と健全度の判定を橋梁定期点検画像から行うモデルを構築し,その分類精度や判定精度を確認するとともに, CNN モデルの学習画像が,より損傷部位にクローズアップされた画像に修正された場合の精度検証を行い,定期点検画像の CNN モデルにおける利用可能性について検討した.

  • 中津川 誠
    2025 年6 巻3 号 p. 1015-1026
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    ダム運用高度化の施策展開は,気候変動で激甚化する豪雨災害への適応と,水力発電の促進という目標 を両立させるハイブリッドダムの推進を軸に進んでいる.その実現の鍵を握るのが流入量予測技術であり,とくに AI の活用が期待されており,本稿では国内外の研究動向を紹介する.AI による流入量予測研究は国内外で活発に進められており,深層学習を中心に様々なモデルが提案され,よい結果が得られていることが示されており,低頻度,未経験事例への対応,深層強化学習,不確実性,モデルの一般化,融雪期の予測といった多角的なアプローチが試みられている.一方で、未経験洪水の対応強化,予測の不確実性評価,深層学習のようなブラックボックスモデルの因果関係の解釈が課題として挙げられている.

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