土木学会論文集
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1996 巻, 545 号
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  • 神田 学, 柳本 記一, 宇梶 正明
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 1-10
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    屋外における実用的な温熱感指標の導出を目的とし, 日射・風速・気温・湿度の4成分の気象要因を制御できる人工気象室を用いて, (1) 気象測定, (2) 人体生理反応測定, (3) 温熱感アンケート, の同時計測を行った. その結果, 1) 代謝量の時間変化は無視し得ること, 2) 発汗作用が人体熱収支および皮膚温変化に大きな影響を及ぼしていること, 3) 30分~1時間では発汗条件下にある人体の熱平衡が達成されていないこと, が明らかとなった. 実験結果を基に, 人体熱収支に基づいた新しい屋外用温熱感指標「仮想熱負荷量 (Virtual Themal Load)」を提案した. 本指標の最も重要な生理パラメーターである皮膚の湿り度 (β) は, 実験結果から仮想熱負荷量の一価関数として同定された. 仮想熱負荷量は温熱感ときわめて良い対応関係を示し, 本指標の有効性が確かめられた.
  • 早川 博, 藤田 睦博, 内島 邦秀
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 11-22
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    降雨-流出過程は, (a) 降雨量の時・空間変動, (b) 流出場の地形特性の空間変動, (c) 流出場の土壌湿潤度等の初期状態の時・空間変動, の影響を受けるため, 確率論的な取り扱いが有用である. 本研究は降雨-流出現象を確率微分方程式で記述し, 降雨と流域場の初期状態が定常状態で, 流域地形量が確率変動する場合の流出量の確率応答を調べ, 流量の平均値と分散を求める理論式を誘導した. また, 課題とされてきた分布型流出モデルの最適なサブ流域スケールを検討するため, 流出量の確率応答と流域の分割数, 或いはサブ流域のサイズとの関係について検討した.
  • 関根 正人, 小川田 大吉, 佐竹 宣憲
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 23-32
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    Bed material load の運動は, 従来より bed load と suspended load に分けて研究され, 各々独立した運動として取り扱われてきたが, 本研究では, このような人為的な分類を排して, Bed material load の運動を一括して解析し, その流送特性を系統的に検討した. その結果, 両者のいずれにも属さないタイプの運動が存在することや, 従来の分類でいう suspended load が卓越する流れ場における底面付近の土砂移動についても, bed load とは明らかに異なり, 乱れの影響を強く受けた運動となっていること, などが明らかになった. これは, 従来の考え方の枠組みを逸脱するものであり, 従来理論に限界があることを示した.
  • 橋本 晴行, 平野 宗夫
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 33-42
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    掃流砂と土石流との中間的な土砂輸送形態である掃流状集合流動を上部の水流層と下部の高濃度層の2層流としてモデル化した. まず, 高濃度層について流れ方向と垂直方向の力の釣り合い式より, 高濃度層内の流速分布と平均濃度を求めた. 高濃度層厚は実験式により評価した. 上部の水流層については流れ方向の力の釣り合い式より流速分布を求めた. 次に, 各層について流速分布を積分し, 流速係数と輸送濃度の評価式を得た. さらにその結果を基に, 流砂量式を導いた. この流砂量式は緩勾配の掃流砂領域から急勾配の土石流領域まで含めた広範囲な領域における流砂量式を示すことが分かった. 最後に, 掃流砂から掃流状集合流動までの領域に対して, 簡便な流砂量式を提案した.
  • 鬼束 幸樹, 浦 勝, 秋山 壽一郎, 坂本 真, 政徳 克志
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 43-54
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    流下方向に水路幅が緩やかに拡幅する開水路漸拡流の流速分布がX型 Hot-film 流速計によって測定された. その結果, 形状損失係数のオーダーは Diffuser のものに類似していること, 主流速の水平方向分布は内層では log 則によって, 外層では Goertler の平面噴流式によって表現できること, 主流速の鉛直方向分布は内層では log 則によって, 外層では log-wake 則によって表現できること, さらに, 3次元流況として, 水路幅の拡幅に伴い底面渦が水平方向に伸張して主流速分布を変形させていること, 乱れエネルギーが壁面より多少離れた領域で増加することなどが明らかにされた.
  • 〓川 登, 栗崎 夏代子, 富田 強, 大渕 真志
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 55-67
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    都市河川の治水対策の一環として計画, 施工されている地下放水路の管水路状態の非定常流について, 支配方程式を導き, その数値計算法を示し, 計算値と実験値を比較し, 数値計算法の妥当性を検証した. 支配方程式は立坑内の水の運動を無視する場合と考慮する場合について誘導し, 地下放水路の管水路状態の非定常流の計算結果におよぼす立坑内の水の運動の影響について検討した. また, 管水路状態の非定常流を開水路状態の非定常流として解析するスロットモデルを地下放水路の管水路状態の非定常流の数値計算に適用し, 計算値と実験値を比較し, スロットモデルの適用性について検討した.
  • 山坂 昌成
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 69-78
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年の河川の横断形状は, 高親水性や多自然型の配慮から, 低水護岸や堤防の緩傾斜化がはかられることが多い. このような断面形を設計するにあたっては, 流速分布やせん断応力分布を見積もることも重要となるが, これを解析的に扱った手法は現在のところ見あたらない. 本研究では, 緩傾斜側岸の河道横断面形状を台形断面で代表させ, 側壁領域の渦動粘性係数をその地点の局所水深と関連づけて, 渦動粘性係数の横断的な変化まで考慮した流速分布と壁面せん断応力分布の推定式を解析的に得た. これにより, 任意の側斜面角に対して, せん断応力分布の変化を容易に知ることが可能となった. また, 従来のせん断応力分布の推定法の利点, 欠点についても明らかにした.
  • 規則的な直角入射波による実験
    高橋 敏彦, 沼田 淳, 首藤 伸夫
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 79-88
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    侵食型, 堆積型の波を交互に作用させ, 緩傾斜堤の有無による海底地形変化を比較した実験, 侵食型の波のみを長時間作用させて, 緩傾斜堤設置位置の影響を調べた実験の2種類を行った. 緩傾斜堤上に砂が残存する間は, 緩傾斜堤の存在が汀線後退に対し有利に働くが, 緩傾斜堤の位置によっては, 自然海浜にくらべ, 海浜の砂が少なくなり, かえって不利となる状況が生じた. 堤前面の最大洗掘深, 基礎工の被災を, 堤設置位置及び波作用時間の関数とする実験的関係を得た.
  • 馬場 和彦, 茅 洪新, 岩島 清
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 89-99
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    都市近郊 (多摩地区) の湧水路9カ所において底生動物を調査し, 43種類 (水生昆虫類は35種類) を確認した. 底生動物の群集構造と水路構造や周辺緑地との関係を解析し, 湧水路底生動物群集の実態と水路環境の都市化に伴う底生動物の群集構造の変化特性を明らかにした. これらの結果を基に, 底生動物群集の都市近郊型化の評価点, 群集の多様性の評価点, 河川構造および周辺環境の自然性の評価点の4つのパラメーターから構成した河川環境の自然性を総合的に評価する方法を検討した.
  • 李 寅鉄, 浮田 正夫, 関根 雅彦, 中西 弘
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 101-112
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海を対象として, 水・底質の間の溶存酸素と栄養塩の授受による水質の季節変化モデルを作成し, 灘ごとの流入負荷と水質の応答特性, 負荷削減の影響解析とともに負荷-水質-水産資源の3者の相互関連性から水質管理について検討した. 1957年から1987年までの負荷による水質の経年変化を調べ, 灘ごとに, 負荷量-水質の応答に違いがあることがわかった. また, 備讃瀬戸から大阪湾にかけて水質改善努力が必要なことがわかった. 負荷削減後の水質予測に対する概算式を提案した. 負荷削減効果の影響解析より, リンのみならず窒素の負荷削減の影響が大きいことを示した. 負荷と水産資源の関連性を検討より, 負荷の増加は一次生産の増加につながるが, 2次生産以降のエネルギ-の伝達には限度があることを示した.
  • 朱 春黙, 浮田 正夫, 中西 弘, 今井 剛
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 113-123
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    トリハロメタン生成能はトリハロメタン (THM) 発生の原因となる前駆物質量の大小を総括的に表示しうる実用的な指標である. 本研究ではTHM生成能をCOD, BOD, TPのように一種の水質指標とみなし, その前駆物質の汚染源からの発生, 排出および公共水域への流達過程を原単位法により定量化する方法を検討した. また, 厚東川流域のTHM生成能の汚染負荷解析の実例研究を行い, この水域に流達するTHM前駆物質汚染負荷の約50%が自然由来であることを明らかにした. さらに本研究では原単位法がTHM前駆物質の流域水質管理においても有効であることを示した.
  • 荻原 国宏, 田中 修三, 福井 吉孝, NADJADJI Anwar
    1996 年 1996 巻 545 号 p. 125-129
    発行日: 1996/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    スラバヤのラモン川に結合している養殖池の現地調査を重ねた結果, 養殖池の多くは堰, あるいはゲートで結合していることが分かってきた. ラモン川とそれに結合している養殖池の塩分濃度, 水質の変化を知るためには, そのような場合に対応した潮汐運動による養殖池の水位応答を解析しておく必要がでてきた. この報告は, 河川と養殖池が堰やゲートで結合している場合の, 潮汐による養殖池の水位の応答についての理論式と実験結果をまとめたものである.
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