土木学会論文集
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1997 巻, 567 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 高橋 和雄, 藤井 真
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 1-17
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    長期化・大規模化した雲仙普賢岳の火山災害における道路および鉄道の被害, 代替交通, 復旧対策および交通途絶の影響を明らかにした. 島原半島は地形的に道路が不足しており, 従来から大きな課題であったが, 災害時にその脆さのために孤立状態となり, 地域に大きなダメージを与えた. 本報告では, 道路・鉄道における応急・緊急対策, 恒久対策への取組みを詳しく報告する.
  • 高橋 和雄, 藤井 真
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 19-32
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    雲仙普賢岳の噴火活動は, 噴火当初, 短期に終息するとの見込みのもとに防災施設や都市施設の整備が検討された. しかし, 火山活動の長期化・大規模化に伴って, 火山活動が継続するなかで防災施設を建設したり, 都市機能を維持したり, 市民の快適な生活を守ることが必要となった. 前例のない事態に対して, 様々な技術の導入および対策が行われた. 本報告では, 雲仙普賢岳の火山災害対策で導入された防災施設および都市基盤整備についての調査結果を述べる.
  • 高橋 和雄, 藤井 真
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 33-52
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    雲仙普賢岳の火山災害では, 当初198年前の寛政の噴火当時に生じた眉山の崩壊を警戒した避難計画が策定された. 今回の災害では土石流および火砕流が頻発したため, これらの発生に備えた避難対策や博報伝達体制が導入された. しかし, 火山噴火災害の事例が少ないこともあって, 避難対策および博報伝達体制に数多くの課題が生じた. 本報告では, 雲仙普賢岳の火山災害における情報伝達体制および住民の避難対策を詳細に調査した結果をまとめる.
  • 高橋 和雄, 藤井 真
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 53-67
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地震, 風水害などの一過性の災害と異なって, 火山災害は長期化する特性をもつ. 火砕流に対して人命を守るために, 市街地で初めて警戒区域が設定された. わが国の災害対策は主として一過性の災害応急対策および被災者対策を対象としているために雲仙普賢岳の火山災害では被災者対策, 住宅対策, 生活再建計画などに多くの教訓と課題が生じた. 行政は, 現行法の拡大解釈および弾力的運用による21分野100項目の自立支援対策, (財) 雲仙岳災害対策基金および市町の義援金基金等によるきめ細かい被災者対策を行った. しかし, 災害対策システムの見直しなどの根本的な課題の解決はまだこれからである, 本報告では, 雲仙普賢岳の火山災害における被災者対策をまとめている.
  • 新井 洋一, 鈴木 喜三雄, 平沢 甲一, 小林 彰
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 69-79
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本稿では, 共同溝内配管工事の支援システムとして, 3次元コンピュータグラフィックスを活用した事例について述べる. 当システムでは, ウォークスルーとPERT (Program Evaluation and Review Technique) を連結させる機構を開発して, データの共有や操作の連携などを図り, 工程データ作成の効率化や図面の視覚化による構造の理解促進を実現し, 溝内配管工事を総合的に支援できる環境を構築した. 当システムの活用により, 予定の工期内に工事を完了させることができた. 今後, 同種のシステムが工事施工や工程管理の面に利用可能であることを示している.
  • 野間 達也, 土屋 敏郎, 波田 光敬
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 81-90
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    市街地近郊, あるいは重要構造物近傍において硬岩トンネルを掘削する場合には, 発破工法の採用が制限される傾向にあり, 機械掘削となる場合が多い. ここで, 掘削対象地山を構成する岩石の圧縮強度が100MPaを超過すると, 自由断面掘削機やブレーカなどの単一機械による施工は困難となる場合が多く, 自由面を形成した後に切羽を破砕する割岩工法が主体となる. 本報では, 硬岩トンネルにおける無発破機械掘削において, 連続孔穿孔による急速自由面形成工法と, ゴムチューブ式割岩機を用いた岩盤破砕による新しい硬岩トンネル掘削工法の開発について述べる.
  • 清宮 理, 小林 亨, 滝本 孝哉
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 91-102
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    沈埋トンネルの柔継手のゴムガスケットは, 断面力を伝達する構造部材と継手部の止水材としての役割を担っている. 今回, 従来より水深が深くかっ地震力も大きい地点に建設される沈埋トンネルでは, 耐荷力と変形性能に優れたゴムガスケットが必要である. 今回選定した3種類の新形式ゴムガスケットを対象に止水試験を実施した結果、漏水に至る過程および周囲の静水圧によるゴムガスケットの横倒れ現象を把握した. 本試験結果を基に横倒れの防止策とゴムガスケットの止水に対する安全性の評価法を提案した. この評価法を用いることで, ゴムガスケットの止水に対する安全性の評価をより多くの観点から合理的にできる.
  • 樅山 好幸, 稲垣 太浩, 江口 洋一, 鏡原 宏志, 小柳 沿
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 103-115
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    橋梁・床版の老朽化や車両大型化に伴う補強方法として, 樹脂系接着材を用いた鋼板接着工法が用いられてきた. しかし, より良い施工性・経済性を望んだ場合, セメント系充填材の採用が考えられる. 本研究では, セメント系充填材の材料特性 (特に付着力) や施工性に着目し検討・評価を加えた. この結果, 実用性に富んだ材料を選定するとともに, セメント系充填材に必要とされる要求性能を明らかにすることができた.
  • 中牟 田直昭
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 117-126
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    今日, 土木分野でも河川改修・調整池・法面に対し生態系に配慮した環境デザインが強く求められている. それには, その敷地固有の自然の営み自体が生み出す新しいタイプの美しさ (生態学的な美しさ) を再評価する作業をデザインプロセスの中に反映していくことが重要である. 本論文では, 自然と人間文化との関係から風景が持っている意味を考察し, 生態学的な美しさを伴う風景を創り出すための設計者の感性や創造力の有用性を明らかにした. さらに, 感性や創造力を高めるデザインプロセスを提案し, 土木分野での展開の可能性を示した.
  • 中田 雅博, 鈴木 昌次, 古川 浩平, 中川 浩二
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 127-140
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    日本道路公団では, NATMの合理的な設計・施工に資するためにトンネル施工時の各種記録をデータベースとして蓄積してきた. 本研究は, A計測データに着目し, トンネル掘削後の変位挙動の一般的傾向を調べ, 岩種ごとの特徴を明らかにした. また, 掘削後早期の計測値を用いた回帰モデルによる最終変位量の予測モデルに関して, 予測の精度面からの検証を行った. さらに, 施工時に変状を生じた切羽での計測結果から変位計測結果による変状予測の可能性について検討を加えた.
  • 鈴木 真次, 石川 信隆, 石川 芳治, 水山 高久, 古川 浩平
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 141-160
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 主鉄筋のみで補強したコンクリート製砂防ダム袖部の耐衝撃設計に資するため, まず複鉄筋および単鉄筋の鉄筋量を変化させて主鉄筋で補強したコンクリート製砂防ダム袖部模型の静的および高速載荷実験を行い, 主鉄筋量が耐力および変形性能に与える影響や破壊モードに与える影響について調べた. その結果, 主鉄筋量の少ない供試体では曲げ破壊が生じ, 静的載荷に比べ高速載荷では終局変位が大きく減少した. また, 主鉄筋量の多い場合はせん断ひび割れ破壊が生じた. 次に, 実験結果をシミュレートするため, RC用の個別要素法 (DEM) を開発し, 解析による破壊過程を高速ビデオによる実験結果と比較し, 極めて良く一致していることを確かめた.
  • 口田 登
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 161-170
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    異形状で不等径な捨石 (砕石) の破砕が進行し, 密につまって行く三軸圧縮試験前後の状態をシミュレーションモデルで再現し, 情報理論に基づく統計確率的手法により解析した結果を, つまり方を表す新しい指標として提案したクラスター係数で整理すれば, (1) 間げき比および拘束圧との非線形な相互依存の関係を数量化できること, (2) せん断強度 (最大内部摩擦角) の拘束圧依存性についてもクラスター係数との関係から考察できること, (3) 花崗岩および硬質砂岩のせん断強度を, 間げき比および拘束圧から構成された関数型として設定できることを示した.
  • 遠藤 武夫
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 171-188
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 本州四国連絡橋の一つである多々羅大橋 (当初計画; 吊橋) の橋梁計画再検討にあたって, 比較対象とした支間1000m級の長支間斜張橋について, その実用性を追求したものである. 再検討開始当時 (1988年) の支間500m級までの技術的経験をもとに, 支間長大化に伴なう課題を抽出し, 試設計, 構造解析および実験など実証的な手法によって, 構造特性と経済性の両面から吊橋との比較を行うとともに長支間斜張橋の構造形式の選定について検討を加え, 全橋耐荷力, 耐風性, 耐震性などについて検証し, 1000m級の長支間斜張橋の実用性を示した. この研劣成果は現多々羅大橋 (中央支間890mの斜張橋) の計画, 設計に反映され, 現在工事が進められている.
  • 右城 猛, 八木 則男, 矢田部 龍一, 筒井 秀樹
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 189-198
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    擁壁のかかと版長や背後の盛土形状の影響を考慮することが可能な実用的土圧評価式である改良試行くさび法を提案し, 豊浦標準砂を用いた模型実験及び試計算により提案式の妥当性を検証した.
    この結果, 提案式で求められるすべり面は模型実験とほぼ一致すること, かかと版付き擁壁の安定性が極めて合理的に評価されることが確認された.
  • 小島 尚人, 大林 成行, 櫻井 純子
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 199-211
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 筆者らが開発した土地被覆時系列分析モデルの分析機能を拡張 (道路網フラクタル次元の導入) するとともに, マイクロ波映像レーダデータ (SARデータ) を併用してモデルの分析精度を向上させたものである. 観測年月の異なる光学センサデータとSARデータから土地被覆分類図を作成した上で, 市街地へ変化した領域のフラクタル次元を計算し, 道路網のフラクタル次元との相関を分析した. これら2種類のフラクタル次元の間には高い相関が認められ,「単焦点状型, 放射環状型, 多心型, 複眼型」といった市街地形成パターンを今まで以上に高い精度で類型化できることを示した. さらに, SARデータを併用した場合には市街地形成パターンの分離性が向上することを示し, 市街地の形成・成長形態の分析精度を高めるとともに, SARデータそのものの有効性を立証している.
  • 後藤 政昭
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 213-223
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    軟弱地盤上の盛土補強工法の設計法を補足検証するために, 模型盛土の下部にアンカーを配置した実験結果 (アンカーは盛土横断方向に連続した場合と, 盛土中央部で切れて不連続になった場合の2ケース) の検証をおこなった. 検証方法としては, 模型盛土の立ち上がりまでの安定性, アンカー軸力, 周辺地盤変位を予測するのに, バイリニア非線形弾性有限要素法解析を適用し, 発生応力を読み取った安定解析を実施した. その結果, 連続アンカー (安定に80cm盛り立て完了) と不連続アンカー (70cm盛り立て時に崩壊) の安定性の差を適切に表現できた. なお, 従来から行われている円弧すべりの計算についても, 連続アンカーの場合はアンカーによる引張力を考慮した場合は, 実現象に近い安全率が得られることが明らかとなった.
  • 大林 成行, 小島 尚人, 村上 達也
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 225-236
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 筆者らが開発した斜面安定性評価モデル (SSEモデル) を「侵食崩壊を伴うシラス自然斜面の危険箇所評価」に適用する新しい方法を提案し, その実用性を示したものである. SSEモデルでは, 衛星データと各種地理情報を融合利用し, 崩壊発生箇所をトレーニングデータとして広域にわたる危険箇所を推定する. 本研究では, 崩壊履歴のある箇所を「現状型トレーニングデータ」とし, 今後崩壊の危険性が高いと判断される侵食斜面や滑落崖の冠頂部周辺を「規範型トレーニングデータ」として設定する方法を提案した. さらに, 現状型と規範型の評価図の違いを抽出した差画像を視覚表示するとともに, その解釈の方法を示した. この差画像と解釈の内容は, 侵食崩壊を伴う潜在危険斜面を見い出す上で今までにない有用な支援情報を内包していることを示している.
  • 松尾 稔, 木村 稔, 西尾 良治, 安藤 裕
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 237-248
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    建設発生土を地盤改良材 (サンドコンパクションパイルなどの中詰め材) として再利用できれば、環境問題解決の有効策として期待できる. 本研究では, 建設発生土を用いた地盤改良杭を実際に施工し, 杭間粘土において施工時に発生する過剰間隙水圧の消散, 地表面沈下などの圧密現象と, その後の強度増加が盛土載荷によらず実際に起こりうることを実証した. また, 施工後の杭の強度の評価方法, および施工方法についての検討を行い, 建設発生土を杭の中詰め材料として用いる際の必要条件を明示した.
  • 犬飼 晴雄, 福手 勤, 三浦 尚
    1997 年 1997 巻 567 号 p. 249-264
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    連続ケーブル舗装は, 連続鉄筋コンクリート舗装における異形鉄筋の代わりに高強度な連続ケーブルを引張補強材とするコンクリート舗装であり, 微細ひび割れを計画的に誘発させることにより収縮目地を無くすことができ, また施工上も鉄筋における継ぎ手を大幅に減らすことができるなどの長所を持っている.
    本論文は, 連続ケーブル舗装の開発に関し, 連続ケーブルとしてPC鋼より線を使用した場合を対象に, 引抜き試験, 両引き試験及び固定域試験を行い, PC鋼より線の滑り量と付着応力度の関係を明らかにし, この関係を用いることにより連続ケーブル舗装の最大ひび割れ間隔と収縮ひび割れ発生後の挙動を解析できることを明らかにしたものである.
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