土木学会論文集
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1997 巻, 579 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 米田 稔, 酒向 健, 井上 頼輝, 森澤 眞輔
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 1-14
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地下水汚染機構の研究などのため, よく土壌カラムを用いた実験が行われる. このとき土壌カラム中の水分と物質の移動を実時間で追跡する方法として, インピーダンスを測定する方法の有効性を検討した. このため測定システム全体をコンピューター制御した土壌カラムのインピーダンス測定システムを構成し, 一定温度下において不飽和土壌カラム中の水分物質移動の測定実験を行った. その結果, サセプタンス/角周波数を測定することにより, 土壌粒径や濃度に関係なく含水率の測定が可能であることが, 加えてコンダクタンスを測定することにより, イオン濃度に比例する土壌溶液の導電率の測定が可能であることがわかった. また検量線の簡便な作製方法も提案した. 本研究で開発した方法は不飽和浸透現象の実時間追跡などにおいて極めて有効である.
  • 広城 吉成, 神野 健二, 籾井 和朗, 横山 拓史, 和田 信一郎
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 15-27
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地下環境中において多成分化学反応を考慮した物質輸送を予測する数値モデルを提案する. また, モデルの妥当性を検証するために, 不撹乱状態で採取した花崗岩風化土壌カラムに高濃度のKCl溶液を連続滴下させ, カラム土壌内部における陽でオン濃度の分布特性を明らかにした. 本数値モデルでは, 多成分化学反応項を含む移流分散方程式を数値的に解くために, 特性曲線法を適用し, さらに化学反応項の数値解を得るために Levenberg-Marquardt 法による非線型最小二乗推定を採用した. 実験結果と数値計算結果は概ね良好な一致を示し, 本モデルは地下水中における化学反応を考慮した物質輸送解析に適用可能であることが示された.
  • 谷岡 康, 福岡 捷二, 伊藤 繁之, 小山 幸也, 傅 雲飛
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 29-45
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    都市域中小河川流域の, 適正な治水計画や河川管理, 水防活動を行うためには, 狭域・短時間雨量の特性, つまり雨量の移動や消長等の変動傾向や時空間的な分布の特性を把握する必要がある. 本研究では, 東京都において得られた密な地上雨量観測所網のデータをもとに, 都市中小河川で浸水被害を引き起こしている, 局地的な集中度の高い雷雨と, 比較的広域的な, 継続時間の長い台風による豪雨について23km四方内の5分~30分程度の短時間雨量を対象に雨域の移動や消長, 面積的な広がりの特性を検討した. さらに, これらの特性から短時間雨量の予測の可能性と雨量観測方法について考察を加えた.
  • 齋藤 隆, 前田 邦男, 赤司 信義, 大成 博文
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 47-56
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    滑面では全体の平均流速分布を用いての摩擦速度の評価が行われているが, 粗面上の壁面倒域での流速分布は粗度の形状・配列によつて異なるため, 流速分布全体を対象とした摩擦速度の評価方法は見当たらない. 滑面と粗面での対数領域における流速分布は相対的に相似であり, 対数領域での速度の絶対値は壁面領域での流速分布に依存する. 混合距離モデルに従うと, 壁面領域での混合距離分布が抵抗則を規定すると云える. リブレツト粗面における仮想原点位置, 混合距離分布の定式化の方法を提案し, その結果を用いて評価された抵抗則は従来の実験ならびにDNSによる結果と良好な一致が得られた.
  • 渡辺 勝利, 大成 博文, 佐賀 孝徳, 斎藤 隆
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 57-66
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    染料流脈形象と粒子流跡を同時可視化する方法を用いて, 直線から蛇行に移行する水路乱流における側壁領域の組織構造と二次流れの構造を究明した. 水路の蛇行に伴って, その側壁領域には, 湾曲の影響を受けた第1種二次流れが, もともと直線水路乱流側壁領域で発達していた乱流二次流れ内に発達する. この発達に伴い, 流れ方向および横方向に大規模なスケールを有する組織構造が形成される. この構造は, 左岸と右岸でそれぞれ異なる大規模なせん断構造の形成に重要な役割を果たす.
  • 道奥 康治, Erich Plate, Rolf Kaiser, Matthias Rau
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 67-82
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    任意の風速・温度分布の成層流を再現できる新型風洞によって対流境界層を再現し, 流れの乱流計測と条件付き解析を行った. 温度時系列を検出信号としてVITA法により秩序構造を条件抽出し, プルームによる熱・運動量輸送特性を検討した. 1) 接地表層では対流プルームによる強い高温上昇流 (warm updraft) と壁面乱流が卓越し, 低温下降流 (cold downdraft) はゆるやかで, そのスケールは小さい, (2) 混合層では, 急速な高温上昇流 (warm updraft) によって大部分の熱・運動量が輸送され, 低温下降流 (cold downdraft) の輸送量は小さい, (3) 連行領域では, 上層へのプルームの貫入 (penetrative convection), すなわち低温上昇流 (cold updraft) が主に貢献している, などの特徴が明らかにされた.
  • 福岡 捷二, 大串 弘哉, 加村 大輔, 平生 昭二
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 83-92
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    河川は, 種々の曲率で蛇行しており, またその横断面形状は, 低水路と高水敷から成る複断面形を有していることが多い. このような複断面蛇行流路では, 高水敷と低水路の間で流れの交換が生じるために単断面蛇行流れと異なる水理現象が現れる.
    本研究は, 平坦固定床の大型実験水路を用いて複断面蛇行流れ場を詳細に測定することにより, 平面流況, 低水路流量, 二次流分布とそれらの発達・減衰過程等複断面蛇行流れ特有の水理現象を明らかにし, これらの構造について検討している.
  • 日比野 忠史, 福岡 捷二, 池内 幸司
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 93-103
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    日本海に隣接する閉鎖性汽水湖における気候, 気象, 天文現象に伴って年~日の時間スケールで起こる水位変化と風が原因となって起こる塩分濃度, 水温の鉛直分布の変化特性, 湖内部の密度界面の挙動とその発生機構について検討し, 以下の事項を明らかにした. (1)中海湖底の塩分濃度は年周期の水位変化に良く対応しており, 湖底での濃度変化の振動は数カ月遅れて上層に伝わっている. (2)日スケールの湖内部での流れ場は気圧配置の変化に伴う水位変化および風に強く影響されている. (3)日々の天気と天文の湖流への影響の強さで密度躍層の運動 (内部波) 形態は変化する.
  • 長尾 正之, 石川 忠晴, 長島 伸介
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 105-114
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    自然界に発生する大規模な傾斜プルームは, 環境中の熱輸送や物質輸送に貢献しており極めて重要である, しかし, これまでその研究は, スケールやレイノルズ数の範囲に制限を受ける室内実験の結果に基づいて主に行われており, その結果をそのまま現地スケールの現象に適応できるかどうかは不明であった. 本研究では, 小川原湖で大規模な塩水による傾斜プルームの現地観測を行い, 希釈率を直接測定することにより連行係数を求めた. その結果, 連行係数は室内実験に基づいた既存の連行則による値よりも1オーダー小さく, またリチャードソン数が1に近づくにつれ急激に現象することがわかった. また, 観測値と既存の室内実験値より経験的に定めた傾斜プルームの連行式が, 力学的にも矛盾がないことを示した.
  • 禰津 家久, 門田 章宏, 新橋 秀樹, 倉田 昌明
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 115-124
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 流れの非定常性と河床形状が生み出す空間的な流れの非一様性が, 河床波背後の乱流特性に与える影響について実験的考察を行う. 河床波上に非定常流れを発生させ, 点計測実験を行うことで, 水面形, 底面せん断応力, 再付着点距離および基本的乱流統計量の分布特性に関する考察を, 従来のステップ流や河床波上の定常流で得られた実験結果との比較とともに行った. この結果, 乱流特性に及ぼす河床形状の空間的加速・減速効果と, 水深の増加・減少といった非定常性あるいはレイノルズ数の増減の効果との相互比較によって, 河床波上の非定常平均流構造のいくつかの現象が説明可能であることが分かった.
  • 禰津 家久, 門田 章宏, 新橋 秀樹, 倉田 昌明
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 125-136
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 流れの非定常性と河床形状が生み出す空間的な流れの非一様性といった観点から, 河床波背後に発生する組織渦構造に与える影響について時空間相関解析に基づいた実験的考察を行った. 非定常流れの下で河床波背後に発生する剥離渦, コルク・ボイル渦を対象とし, 空間的に離れた二地点にそれぞれ流速計を設置して同時計測実験を行い, 得られたデータを従来型あるいは条件付き時空間相関解析に適用することによって組織渦の移流過程を議論した. ここでは, 増水期・減水期間の相違, すなわち各位相における組織渦の発生形態, 移流特性を見るために「固定時間」の定義, 条件付き時空間相関解析における判別関数およびしきい値の決定方法についての説明を行い, 鉛直断面内および三次元空間内の組織渦の発生形態をモデル化する.
  • 二瓶 泰雄, 灘岡 和夫
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 137-149
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    著者らが最近提案している新たな混相乱流モデル, GAL-LESモデルをさらに発展させるために, GALモデルの移流シミュレーションへの適用性について詳細な検討を行った. その際に, GALモデルの“濃度の再配分操作”の計算精度において重要な格子内の粒子存在確率分布設定法を改良することによりGALモデルを高精度化することを試みた. このモデルの有効性を検討するために, ガウス型と矩形型濃度分布の一次元及び二次元移流問題に関するモデル計算を行い, 従来まで提案されている移流項に関する差分スキームの計算結果との比較を行った. その結果, GALモデルは従来の差分スキームと異なり, クーラン数に依存せずに高精度で安定な移流計算を行うことができることが示された.
  • 佐藤 愼司
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 151-161
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    台風9617号が来襲した前後に駿河湾内の水深約20mの数地点で観測された波や流れのデータを解析した. 湾内の波浪については, 台風が最接近する3~4日前から周期15秒程度のうねりの来襲がみられたが, 台風の通過時には強い北北東の風が卓越したため, 湾奥では波高が低下し, 湾口に近い西側の海岸ではうねりに加えて湾内で発達した周期の短い波浪が捉えられた. 台風の通過に伴い, 湾奥部では急激な水温の変化と強い流れの発達がみられ, これらの変動は徐々に湾の西側へと伝播した. 三次元モデルによる数値計算の結果これは, 強い北寄りの風が作用した結果湾奥部に生じた湧昇水塊が, 内部ケルビン波として伝播したことが明らかになった. また, これらの傾圧的な運動をひき起こす外力としては, 気圧変動より風の連吹が重要であることを明かにした.
  • 塩崎 功, 村上 晃生, 谷口 博幸, 川上 康博, 今井 久, 稲葉 秀雄
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 163-176
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    川浦ダム・川浦鞍部ダム周辺地山の透水性を評価するために, 初期湛水時にダム周辺地下水の水質・同位体調査を行った. イオン濃度の調査結果から, 川浦ダム監査廊内ボーリング孔, 川浦鞍部ダム左岸ボーリング孔の一部で調整池水の到達が確認された. イオン濃度の時間変化から求められた監査廊内への調整池水の流下時間は7~20ケ月と長く, ダム基礎岩盤の透水性は基礎処理によって十分改良されていることが示された.
    トリチウム, 酸素-18, 重水素の同位体データを用いた多変量解析結果より, イオン濃度からは判定できない仮排水路トンネル湧水への調整池水の到達が示された. 本調査の結果, 調整池水の到達を知るための指標として, 現場測定可能な電気伝導度および硝酸イオンが有効であった.
  • 塩崎 功, 村上 晃生, 谷口 博幸, 川上 康博, 今井 久
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 177-189
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    上大須ダム基礎岩盤の透水性を評価するために, 初期湛水時に漏水の水質・水温調査を実施した. イオン濃度の時間変化から推定される漏水観測堰や監査廊内湧水への調整池水の流下時間は2~20ケ月となった. イオン濃度の時間変化, および水温の実測データと熱の移流拡散解析から求めた河床漏水への調整池水の流下時間は, いずれも4~9ケ月であり, 設計値を入力データとした非定常浸透流解析により計算された河床漏水への流下時間2~10ケ月にほぼ一致した. 本調査の結果, 地下水の温度変化から流動速度を推定する方法は, 計測が簡便であり, 漏水の評価手法のひとつとして活用できることが示された.
  • 〓川 登, 谷澤 克矢, 新井 和敏
    1997 年 1997 巻 579 号 p. 191-196
    発行日: 1997/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地下放水路の流れでは, トンネル内に被圧された空気が閉じ込められることが考えられる. 本研究では, そのような流れをスロットモデルで解析するさいに必要となる被圧された空気が閉じ込められている管路の流れにおける圧力波の伝播速度を算定するための式を導いた. その結果によると, 空気がトンネル内に閉じ込められると, 空気の圧縮性により圧力波の水中伝播速度が著しく小さくなることが示された.
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