本研究は, 高齢化する社会で歩行者等の移動上の安全性, 快適性を論ずる前提として, 徒歩に着目し, 歩行空間の設定上避け得ない勾配のうち, 縦断勾配の上限値と勾配区間の限界長について示すものである.
本研究では, 道路構造により通行上の障害を最も大きく受けると考えられる車いすを用い, これの走行挙動を評価指標とした. また, これまで直線的な登坂走行のみで実験されていたものに加え, より現実の歩行空間に近い条件とするため, 走行路上に障害物を設定し, これを回避しつつ登坂するだけでなく, 降坂走行も実験に加えた. この結果, 車いす利用者が容易に走行可能な縦断勾配の上限値は5%であり, 安定した走行が可能な縦断勾配区間の長さ (限界勾配長) は, 5%勾配区間で25mであることを明らかとした.
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