土木学会論文集
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2000 巻, 642 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 仲江川 敏之, 沖 大幹, 虫明 功臣
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 1-18
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は水移動に関わる土壌パラメータが分布している場合の領域平均浸透量を算定するに際に, 分布量が集約して扱えるかを明らかにすることが目的である. まず, 水移動に関係する5つの土壌パラメータそれぞれに対するパラメータ平均法の集約化規範を Philip 式に基づいて導いた. この集約化規範は, 土壌パラメータの平均値で表される浸透量集約化指標という新たに提案した指標に対する不等式として, 5つのパラメータ全てについて統一的に表すことができた. この集約化規範を用いて, 同一サイト内で観測された土壌パラメータの分布統計量を用いて, 分布が浸透量算定に与える影響を検討したところ, 飽和透水係数と初期飽和度の集約化は土壌毎に定まる集約化指標と許容誤差, パラメータの変動係数等の集約化条件の両方に大きく依存するが, それ以外のパラメータの変動は小さくあまり影響を与えないことを明らかにした.
  • 二瓶 泰雄, 灘岡 和夫
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 19-30
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    大規模混相乱流計算に適した粒子モデルであるGALモデルをベースとした移動境界流れ解析法を構築した. ここでは, 水と空気のような高密度比条件下でも安定して計算できるように, 移動境界を挟む二つの連続体を別々に取り扱い, 移動境界をGALモデルで追跡する形の計算法を開発した. GALモデルの移動境界追跡モデルとしての適用性を検討するために, シンプルな移動境界問題にGALモデルを適用した結果, 境界追跡や勾配・曲率算定に関するGALモデルの計算精度は, 既存モデルと比べてより高精度であることが示された. さらに, GALモデルに基づく本計算法を砕波を伴う水柱崩壊問題や単一液滴運動に適用し, 既存の実験結果との比較を通じて, 本計算法の妥当性や有効性が示された.
  • 村本 嘉雄, Md. Munsur RAHMAN
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 31-43
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 非越流型の単一突堤周辺における静的洗掘を対象として, 突堤側面の傾斜角の影響を考慮した最大洗掘深とその時間的変化を予測するための簡易モデルを提案したものである. まず, 実験結果から, 接近流の掃流力が大きい場合には, 平衡洗掘形状が台形断面で近似でき, 突堤近傍に流量が集中することに注目してモデル化し, 簡易予測式を導出している. その結果, 接近流が限界掃流力に近い条件における最大洗掘深と突堤斜面勾配による洗掘軽減効果を推定でき, 突堤長・水深比と接近流の掃流力が最大洗掘深の支配因子であることを指摘している. 最後に, 洗掘の初期と平衡状態のモデルを時間的に補間して最大洗掘深の進行過程の式を導き, 掃流力の大きい条件に対する適用性を示している.
  • 中山 忠暢, 禰津 家久
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 45-56
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水面上に風が吹くと, 界面に働く風シアーによって吹送流及び風波が発生する. 水面波の形状は粗度レイノルズ数と密接な関係がある. また, 空気層での乱流構造は風速の増加とともに粗度要素が大きくなる点を除けば固定床上のものと類似している. 一方, 水流に対してスペクトル分離法を用いて波動成分と乱れ成分の分離を行った結果, 2次元重力波の発生下では乱れ成分はケースに無関係に開水路流れと同様に普遍的な特性を有することが明らかになった. このような両層での乱れ構造及びエネルギー収支関係は密接に関連しており, 風速の増加とともに空気層から水層へのエネルギー輸送が活発になることが示された.
  • 禰津 家久, 鬼東 幸樹, 藤田 正樹
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 57-66
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    系統的に圧力勾配を変化させた2次元開水路流の流速分布および乱れ諸量を高精度レーザー流速計 (LDA) で計測した. その結果, 順圧力勾配流れにおいては log 則が破綻し, 摩擦速度の算出に log 則を用いることができないこと, 外層において流速分布の一様化傾向が見られることおよび乱れ強度の再配分率が等流のものより変化することが示された. これは, 順圧力勾配流れにおいては乱れから主流にエネルギーが環流されることで速度勾配が減少するためである. 一方, 粘性底層においては, 主流速分布が直線分布を示すこと, 乱れ強度分布が等流のものよりも減少することなどが明らかとなり, 摩擦速度の算出には粘性底層の流速分布から評価することが不可欠であることが示された.
  • 鬼束 幸樹, 禰津 家久
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 67-75
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    順圧力勾配を有する2次元開水路流において, 摩擦速度と最大流速との比の流下方向変化が微小であるという仮定を用いて運動方程式を近似的に解いた. その結果, せん断応力分布が開水路等流のものと比較すると, やせた分布になるといった解を得た. この予測値はLDA (Laser Doppler Anemometer) によって計測したせん断応力分布と良好な一致を示し, 従来用いられていた多項式による予測よりも良好な解を示すことを明らかにした. また, 逆圧力勾配流れにおいては外部変数表示で基準化することが妥当であるが, 順圧力勾配流れにおいては内部変数表示で基準化する方が妥当であることも示した.
  • 金山 進, 田中 仁, 首藤 伸夫
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 77-86
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    長波近似方程式を多層連成させた非線形分散多層波動モデルは, 相対水深の大きな範囲にまで線形分散関係および2次の非線形干渉を精度良く表現できるとともに準3次元問題の取り扱いが容易であるという多層モデル特有の利点を有している. 本論文では, 計算効率の向上および準3次元問題への適用性向上をそれぞれ目的する2種類の新たな方程式系を提案して精度の理論的確認を行うとともに, 1次元での強非線形強分散波動場, 固定浮体の存在下での準3次元散乱波動場に対する数値計算を行い, 実験結果との比較通じてモデルの基本的適用性を検討した.
  • 八木 宏, 日向 博文, 足立 久美子, 日向野 純也, 灘岡 和夫
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 87-98
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    さまざまな外力条件の影響を受けることから, これまであまりその水環境特性の解明が進んでいない開放性の高い沿岸域に関して, 生態系も含めた環境変動が顕著となる夏季を対象として, その日スケールの変動特性を把握するための現地観測を典型的な開放性沿岸域である鹿島灘波崎海岸周辺海域において行った. その結果, 日スケールの水温変動・流速変動に関しては日周期の内部波の影響が大きいこと, またそれに伴って植物プランクトン, 濁質, 浮遊幼生なども活発な移動をしていることが明らかとなり, 夏季の開放性海岸域の水環境に対する日周期内部波の重要性が示された.
  • 神田 徹, 北野 陽一郎
    2000 年 2000 巻 642 号 p. 99-114
    発行日: 2000/02/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    兵庫県南部地震による表六甲河川の河川構造物被害についてデータベースを構築し, それをもとに主に護岸被害の分析を行った. まず, 表六甲河川の基本属性および河川構造物の被災箇所に関するデータベースを作成し, 被災箇所の属性情報と位置情報, 写真情報をリンクさせてその利便性を高めた. つぎに, 護岸の被害に関して, 護岸構造 (石積, ブロック積, コンクリート) と被災延長・被災率・被災形態との関係や, 被災形態と被災箇所数・被災延長との関係などを分析した. 激しい被災形態である護岸崩壊は, 震度7の地域に集中して発生していることが確認できた. 被災地の復旧・復興が進むなかで, 震災の経験を踏まえて, 表六甲河川では都市域における河川の防災・環境面の役割を考慮した整備が行われている.
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