土木学会論文集
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2002 巻, 705 号
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  • (CADMAS-SURF) の研究・開発とその将来展望
    数値波動水路の耐波設計への適用に関する研究会
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 1-17
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    数値計算を海域施設の耐波設計の実務に適用するためには, 多様な造波機能や無反射境界を持ち, 砕波・越波なども含め幅広い条件に対する波浪変形を精度よく再現でき, しかも扱いやすい数値モデルを開発する必要がある. そこで, 様々な研究機関の研究者による共同研究会を組織し, その条件を満たす数値モデルCADMAS-SURFを開発した. 本論文では, CADMAS-SURFの設計思想や機能, 開発成果などについて解説し, その将来展望について述べる.
  • 鍋坂 誠志, 江藤 剛治, 竹原 幸生
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 19-29
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水表面での気泡の破裂現象について高速ビデオカメラで可視化し, 観察した結果を報告する. 特にエタノール水溶液のもつ特殊な性質を利用して, 水に近い性質をもつ液体の表面張力と粘性を操作し, 水表面における気泡の破裂現象に対する表面張力と粘性のそれぞれの影響を調べるための実験手法を考案した. この手法を用いて直径が2mmと20mmの気泡の水表面での破裂現象に対する表面張力と粘性の影響を調べた. 観察により, 次のような結果を得た. (1) 2mmの気泡破裂で, 表面張力が jet drop のサイズ, 初髄度に影響を及ぼしている, (2) 2mmの気泡破裂で, 粘性は jet drop の形成に影響を与える, (3) 20mmの気泡破裂では, 表面張力もしくは粘性の変化により, film drop のサイズ, 速度, 方向が大きく変化する.
  • 秋山 壽一郎, 重枝 未玲, 浦 勝
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 31-43
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    洪水氾濫シミュレーションモデルの基礎モデルとして, 非構造格子を用いた有限体積法 (FVM) と流束差分離法 (FDS) に基づく1次および2次精度平面2次元洪水流数値モデルを提案した. 道路や水路に集中する洪水流を想定した Bellos et al. による漸縮・漸拡水路内の2次元ダム破壊流れ, および本研究で新たに得られた破堤点から氾濫原に広がる洪水流を想定した2次元ダム破壊流れの水深, さらにはフロントの広がりおよび水深平均流速の実験結果に基づき, 両数値モデルの予測精度と適用限界などの検討を行った. その結果, 計算精度と計算効率を勘案すると, 1次精度モデルが実用的な数値モデルであることがわかった.
  • 禰津 家久, 鬼束 幸樹
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 45-54
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    非定常性を大幅に変化させた開水路乱流場をレーザー流速計で計測すると共に, 3台の超音波波高計を用いて水面変化を同時計測した. その結果, 非定常パラメータαが2.0×10-3以下の場合はカルマン定数を0.41の普遍値と見なせることがわかった. 運動量式における各項のオーダー比較をした結果, 加速度項および圧力項が支配的で, 重力項の変化は前者に比べて2次的であることがわかった. 圧力項は増水期では底面せん断応力を増加させる効果があり, 減水期ではその逆の効果があること, 加速度項は圧力項とキャンセルする傾向があることが認められた. また, 加速度項が負から正に転じる時刻が非定常性の増加に伴い早まり, そのため, 底面せん断応力のピーク時刻が非定常性の増加に伴い早まることが明らかにされた.
  • 池田 駿介, 河村 一弘, 粕谷 泉
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 55-66
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    複断面河道湾曲部は, 横断面内では遠心力に起因する2次流が生じ, 低水路・高水敷境界部では大規模水平渦が発生する複雑な流れ場である. 本研究では複断面湾曲部を対象に2次流と水平渦の効果を取り扱うために準3次元数値解析を行い, さらに実験を行った. その結果, 乱れの三次元性が強い内岸側低水路・高水敷境界部を除いて, 水平渦の発生や時間平均流れ場をおおよそ再現することができた. 準三次元数値解析法の妥当性を実験値との比較により確認し, その後, 水深, 低水路幅, 曲率を変化させた数値実験を行い, 流れや横断方向運動量輸送に及ぼす影響を考察した.
  • 松永 信博, 鵜崎 賢一
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 67-82
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ラングミュアー循環流の形成機構については, Graik と Leibovich が提唱した機構, つまり風波によるストークス・ドリフトと吹送流との相互作用が現在では通説となっているが, 彼らによって提案された形成機構が完全に受け入れられているとは言えないのが現状である. 本研究は, 「ラングミュアー循環流は, 主流である吹送流自体が微小擾乱によって不安定となり形成されるのではないか」というアイディアに基づいて行われている, これを検証するため, 風波が十分発達した場合と界面活性剤を用いて風波の発達を抑えた場合に対して流れの可視化実験と流速計測実験を行った. 実験結果から, 風波の発達が抑えられた場合においても明瞭なラングミュアー循環流が形成されること, また風波の存在は循環流を強化し安定させることが明らかとなった.
  • 熊谷 隆宏, Mostafa A. FODA
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 83-99
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    防波堤および基礎地盤の波浪応答は, 防波堤の耐波安定性を検討する上で非常に重要な問題である. そこで本研究では, 混成堤と海底地盤の波浪応答に関する理論解析モテウレを提案する. 本モテルは, マウンドと海底地盤の動的挙動を表すために二相混合体理論および近似解析法をそれぞれ用いる. そして, 応答問題を波浪応答モードとケーソン振動モードに分離し, これらのモードによるマウンドおよび海底地盤の応答解析を行った. すなわち, 応答問題に対する最終的な解は, ケーソンに作用する外力に応じて各モード解を合成することにより得られる. ここで, マウンドおよび海底地盤の動的挙動はすべて複素プーリ工級数で表現される. 本モデルの検証は, ケーソンー海底地盤およびケーソンーマウンドー海底地盤の波浪応答に関する他のモデルの計算結果との比較により行った.
  • 岩瀬 浩之, 後藤 智明, 藤間 功司, 飯田 邦彦
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 101-114
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    代表的な既往津波を対象とした数値解析から, 深海域の波数分散効果が近地津波の伝播に及ぼす影響について考察した. 水深200m点の波形比較および初期水位分布に対するスペクトル解析から, 近地津波であっても波数分散効果が無視できない津波があることを示した. さらに, 波数分散効果の影響を定量的に表す指標値を定義し, 数値解析において分散項の考慮が必要となる条件値を定めると共に, 代表的な断層パラメータ諸量と波源の平均水深から指標値を簡便に算出できる評価式を導いた. また, 海底地盤の変動時間が波数分散効果に及ぼす影響について検証し, その限界時間が約1分程度であることを示した. 最後に, 1983年日本海中部地震津波を対象とした実地形計算から深海域における分散効果が浅海域へ及ぼす影響について考察した.
  • 石田 啓, 楳田 真也, 由比 政年
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 115-128
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    振動流中に設置された直立円柱周辺の非定常・3次元流体場に対して, 一般曲線座標系 Navier-Stokes 方程式の数値解析およびPIVを用いた速度場の計測実験を行った. 本解析モデルは, PIV計測により明らかにされた直立円柱底面付近の複雑な渦流れの特性を正確に解析できることが確認された. KC数の変化によって生じる底面付近の流体場の変化について, 特に馬蹄形渦と後流渦の内部構造に着目して検討を行った. 馬蹄形渦の存在と, 内部流速および渦度分布を捉えると共に, 底面近傍での後流渦に伴う流れの特性と底面せん断力との関係について詳細な検討を行い, 渦放出を伴うKC数領域では, 渦周辺で発達する鉛直方向流れが底面せん断力の増加に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.
  • 岩瀬 浩之, 見上 敏文, 後藤 智明, 藤間 功司
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 129-138
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    いくつかの断面平均および断面積分形の非線形分散長波式から線形分散関係式および孤立波に関する第1次近似解を導いた. 断面平均形の式の孤立波解は, KdV式の解に比べ急峻な波形になる. 一方, 断面積分形の式は, 比較的幅広な波形となる. 津波のソリトン分裂に関してこの相違は重要である. 本研究では, 線形分散特性および孤立波形の比較から, そして水理実験と数値解析の比較から津波の数値解析に適切な非線形分散長波式について考察した. その結果, 断面積分形の Peregrine 式または Madson & Sørensen 式が適切であるという結論を得た.
  • 米山 望, 松山 昌史, 田中 寛好
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 139-150
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    1993年に発生した北海道南西沖地震津波は, 奥尻島藻内地区において31.7mの痕跡高を記録した. しかし, 31.7mを記録した地点近傍の痕跡高は23-25m程度であったため, 局所的な原因により一部だけ高く遡上したと考えられる. この現象を再現し, 原因を解明するため, 当所で開発した自由液面解析コード (FRESH) を用いて藻内地区での遡上現象を解析した結果, 以下のことが分かった. 1) 解析された津波挙動は水理実験結果とよく一致する. 2) 最大遡上高の解析結果は痕跡高と定量的によく一致する. 3) 局所的な遡上は, ポケットビーチと津波来襲方向の傾き, 最大遡上高が発生した谷付近の形状および波形勾配の大きさが要因となって発生したと推察される. 4) 遡上域では, 水位が上昇している間, 鉛直流速が大きく, その大きさは鉛直方向に一様ではない.
  • 越村 俊一
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 151-160
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    岸沖方向に有限な陸棚斜面を想定し, 沖合からの任意の入射波形に対する斜面上の津波伝播を表す理論解を求めた. さまざまな入射条件において得られた理論解を整理し, 特に斜面上における津波の多重反射現象に着目し, 津波の捕捉・増幅・減衰特性に関する新たな知見を得た.
  • 戸田 祐嗣, 赤松 良久, 池田 駿介
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 161-174
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水理特性の違いが河床付着藻類の一次生産特性に与える影響について, 現地観測および室内実験による定量的調査を実施した. 現地観測では, 多摩川中の瀬と淵にモルタル製の模擬石を多数設置し, それらに付着する藻類量を1週間間隔で55日間計測した. その結果, 瀬の河床礫に付着する藻類は, 淵と比較して, 増殖初期の生産活性が高いことが示された. 室内実験では, 日射量, 水質が全く同じ条件で流速などの水理特性のみが異なる4つの開水路を作成し, 付着藻類現存量, 剥離量の測定および藻類の種分析を行った. 実験の結果, 底面付近の乱れが大きな水路ほど, 藻類一次生産が大きくなることが明らかになった.
  • 鶴田 泰士, 石川 忠晴, 西田 修三, 成田 舞, 藤原 広和
    2002 年 2002 巻 705 号 p. 175-187
    発行日: 2002/05/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    小川原湖は青森県東部の汽水湖でヤマトシジミの産地である. しかし, 湖の平常時の塩分は約1psuであり, シジミの産卵に適していると言われる値よりも低い. そこで, 本研究では小川原湖にシジミが多く生息する理由を, 現地観測と数値シミュレーションにより水理学的観点から検討した. その結果, 北東部湖口付近の浅瀬では, 比較的大規模な塩水侵入時に産卵・発生に適した塩分環境が形成されること, そのような規模の塩水侵入がシジミの産卵期に比較的高い頻度で発生することなどが示された. また, 湖北東部で発生したシジミの浮遊幼生が1週間前後の浮遊幼生期に湖水流動によって拡散し, 湖内の全域に分布する可能性が数値シミュレーションにより示唆された. 以上より, 小川原湖におけるヤマトシジミの再生産は, 主に湖北東部の浅瀬において行われているものと推定された.
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