土木学会論文集
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2002 巻, 712 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 禰津 家久, 鬼束 幸樹, 高橋 俊介, 乙志 和孝
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 1-10
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    アスペクト比が5の凹部流れにおいて, 凹部と主流部との境界部に仕切板を設けることで5つのタイプの流れを作成し, PIV, レーザー流速計および超音波波高計を用いて流速変動および水面変動を計測した. 仕切板がない場合は, 渦の通過に伴う凹部側と主流側における水面変動は同位相であるが, 仕切板が長い場合は, 凹部内で渦は定常的に存在し, 凹部と主流部との流体混合は活発でなく, 水面変動もランダムである. 一方, 仕切板が短い場合は, 主流部から凹部に向かって高速流体塊が間欠的に流入し, 水面が凹部で上昇し主流部で下降する. 続いて, 凹部の低速流体塊が主流に放出することで凹部の水深が減少し, 主流部では増加する. こうした運動がセイシュと共鳴することで, 周期的な現象となっている.
  • 宮本 仁志, 神田 徹
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 11-23
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    開水路凹部流れを対象として, 多重解像度近似 (MRA) と固有直交関数展開 (POD) を複合的に用いる新しい方法 (MR-PO複合展開) によって流れの解析を行った. まず, MRAを適用することにより, PIV計測で得られた流速時系列を以下の三つの周波数帯階層成分に分解した: (1) 低周波変動を含む準平均流, (2) 凹部混合層での組織乱流, (3) 高周波変動の非組織乱流. 次に, 組織乱流の変動成分にPODを適用して変動の主成分を抽出し, 各モードの固有ベクトルとその振幅の相互関係を調べることにより組織運動の空間/時間構造, 凹部形状の影響など乱流特性を明らかにした. 以上の結果から, MR-PO複合展開は乱流中の組織的な構造を抽出・解析する方法として有効であることが確認できた.
  • 杉山 均, 齊藤 卓也
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 25-43
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    複断面蛇行開水路流れは, 高水敷上の流れと低水路流れとの運動量交換, 遠心力, 非等方性乱流による拡散現象を伴う複雑三次元乱流であると同時に, 氾濫河川を代表する流れであり河川工学上重要な流れである. この複断面蛇行開水路流れを対象に, 代数応力モデル, 境界適合座標変換を導入し数値解析を行った. 解析結果は実験結果と比較し解析手法の有用性を検証すると同時に, その流動挙動について検討を加えた. 本解析手法は時間平均速度場を比較的良好に予測すると同時に, 複雑に変動する二次流れの発達も良好に再現した. レイノルズ応力に関しては, その特徴的な分布は予測するが定量的な比較においては一部差異が認められた. さらに, 摩擦速度分布を示し流れの侵食に関し新たな知見を示した.
  • 泉 典洋
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 45-56
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    大陸棚周縁部には海底峡谷 (submarine canyon) と呼ばれる峡谷状の地形が見られるが, その成因の一つとして, 大陸棚上を流下する乱泥流 (turbidity current) と呼ばれる密度流が挙げられる. 本論文では乱泥流の運動方程式および連続式, 浮遊粒子の移流方程式, 乱泥流による海底地形変化を記述する方程式を組み合わせ, 線形安定解析の手法を用いることによって, 海底峡谷の初期形成機構について理論的説明を試みた. 理論によれば, 峡谷群の初期形成間隔は乱泥流の層厚のおおよそ1500倍~8000倍となることが明らかとなった. 乱泥流の層厚が10cm~1mのオーダーであるとすると峡谷群の間隔は150m~8kmとなり, 実際の間隔とも良好に一致する結果が得られた.
  • 横嶋 哲, 中山 昭彦
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 57-72
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    微小振幅波理論を用いて常流状態の幅広い Froude 数条件下で二次元完全発達開水路乱流の直接数値シミュレーション (DNS) を行い, 水面変動が流れ場に及ぼす影響について検討を行った. 水面変動は大きなスケールで等方的に発生し, Froude 数の増加とともにその振幅, 波長が増大することが明らかになった. また水面近傍では Reynolds 垂直応力の全ての成分が Froude 数とともに増加するが, 水面接線方向成分の増加は, 水面変動によって水面近くで促進された圧力変動が水面方向へのエネルギー輸送量を増加させ, これが圧力ひずみ相関によって再分配されてもたらされることが確認された. さらに速度場の空間スペクトル解析から, 水面近傍の乱流構造は Froude 数の増加とともに二次元的な状態から三次元的な状態に移行することが示唆された.
  • 泉 典洋, Adichai PORNPROMMIN
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 73-86
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    単列交互砂州の非線形解析手法として従来行われてきた増幅率展開法は, 増幅率を微小パラメータとして展開するため, その適用は最も小さい臨界アスペクト比近傍, すなわち単列交互砂州の近臨界域のみに限られるという欠点があった. 本研究ではこの制限を除くために, 振幅を微小パラメータとして展開する振幅展開法を用い, 単列交互砂州のみならず複列砂州の場合にも適用できる弱非線形解析を提案した. 単列交互砂州および複列砂州の波長および平衡振幅について理論結果と実験結果を比較したところ良好な一致が見られた.
  • 鶴巻 有一郎, 傳田 篤
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 87-96
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水撃波の伝播する水圧鉄管に小径の弾性体エアチューブを挿入すると水撃波を減圧することができることを見出した. 本研究では, 小径の弾性体エアチューブを圧力変動に応答する微小変動量とする扱いによって, 圧力伝播波速項に含める理論展開を行い, さらに, この理論から水圧鉄管断面積におけるエア比に応じた最大水撃圧値を求め, その結果を一般図表に作成した. 一方, 密閉型エアクッションサージチャンバーのクッション項が大振幅であるとする扱いの解析および実験において, エア量を微小量にした場合でも減圧効果の大きいことから, 今後, 小径弾性体エアチューブの減圧作用の研究において, 圧力伝播波速項とクッション項が相乗的に作用する範囲を明らかにする必要があることを提記した.
  • 小谷 裕司, 吉村 知恵, 前野 詩朗, 名合 宏之
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 97-106
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    洪水時や高波浪時には, 河川護岸や海岸護岸の裏込め土砂の流出により堤防内部に空洞が発生し, 構造物が被災する事例が多く見られる. この裏込め土砂の流出による被災事例は, 構造物周辺地盤上に作用する変動水圧と密接に関係することが著者らの研究等から明らかにされている. 本研究では, 変動水圧による護岸裏込め土砂の流動を予測するための基礎的資料を得ることを目的として, 変動水圧特性や地盤特性を考慮した実験を行い, 護岸周辺部の土砂の流動状況を実験的に把握した. 加えて, 多孔質弾性体理論を用いて地盤内の応力状態を数値解析し, 地盤の流動に及ぼす各種の特性量の影響について検討した.
  • 松永 信博, 児玉 真史, 櫨田 操, 香月 理
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 107-116
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    冬期季節風によって消波護岸から発生した海水飛沫の陸域への輸送プロセスを明らかにするために, 現地計測を日本海に面した埋立地で行なった. 強風によって輸送される塩分量と降塩量は消波護岸付近で指数関数的に減少し, その減少率は地上10mにおける平均風速U10が増加するにつれて大きくなることを示した. 総塩分輸送量と降塩量を規格化・定量化する上で, U10と重力加速度gを用いて輸送距離を無次元化し, 代表量として無次元輸送距離lが25における総塩分輸送量Q(25)と降塩量S(25)を導入した. これらの代表量を用いて規格化された総塩分輸送量と降塩量の流下方向分布, はほぼ普遍的に表された. また, この規格化により, 季節風による降塩量の流下方向分布と大規模な塩害を引き起こした9117号台風による降塩量分布を一つの関係で表すことができた.
  • 小池 信昭
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 117-135
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    先験情報として解がなめらかであるという条件を, 線形長波理論の重ね合わせの原理に基づいた津波インバージョンに取り入れて, 検潮所などの観測点における津波の観測波形から直接的に海面の初期水位の2次元分布を推定する新しい方法を提案した. そして, 人工的な観測データを設定して, 観測点の位置, 個数, 観測時間, 観測時間間隔などのインバージョンの条件を変えた場合に推定誤差がどのように変化するかを調べた. その際に, パラメーター解像度という指標を導入するとインバージョンの条件と推定誤差との関係をうまく説明できることを明らかにした.
  • 福岡 捷二, 黒川 岳司, 上原 浩, 三浦 心, 船橋 昇治
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 137-150
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    低気圧や台風がもたらす海水位変化, 風, 降雨は, 汽水湖の流動・水質場の重要な外力であるが, 様々な移動形態をとるため与える影響も一様でない. そこで, 低気圧や台風を移動経路で分類し, 中海の流動の特徴を移動形態との関係から明らかし, 水質場に与える影響を考察した. この結果, 次の知見を得た. (1) 低気圧は2種類, 台風は4種類の移動経路に分類でき, 特に日本海低気圧や台風 Type 1, 2による水位変動は特徴的で, これは移動速度や風系による. (2) 台風通過に伴う水交換は, 海水流入より河川流入の影響が大きいため, 降雨量の多い Type 2台風時に水環境が大きく変化する. (3) 台風や低気圧に伴う密度分布の変化は1週間程度で回復するが, 濁質分布は生化学的な影響を受け数週間その影響が残る. (4) 中海・宍道湖の流動・水質変化の把握には, 低気圧や台風が持つ水交換力の正しい評価が必要である.
  • NPO活動の一環として
    湯谷 賢太郎, 堺 かなえ, 西尾 三枝子, 吉井 陽子, 浅枝 隆, 山本 圭一郎, 藤野 毅
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 151-159
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    NPO (荒川市民会議川口ARAKAWAフォーラム) の活動の一環として, 荒川下流沿川にてアシ (Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steudel) の観測を行った.
    各観測地点間の塩分濃度は0.0~6.8psuであったが, 観測地点間でアシの生態に違いは見られず, 塩分による影響もほとんど受けていなかった. 荒川のアシの窒素含有量は海外のアシと比較して高い部類に入ることが確認された. アシの2次葉茎の性質は, 発芽時期や茎の直径, 生長パターンにおいて1次葉茎と異なることがわかった. 市民, 河川管理者, 大学関係者がアシについての最新の研究を勉強しながら, 市民自らが学会にて研究成果を発表するという試みが成功し, 今後のNPO活動の新たな可能性が示された.
  • 松梨 史郎, 井野場 誠治, 下垣 久, 宮永 洋一
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 161-173
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    手賀沼を対象に, 流動および水質・底質結合モデルによって年間に亘る時空間変動のシミュレーションを実施した. 水質の実測値の縦断分布から, クロロフィルaやCODは流下方向に増大し, 無機態窒素・リン, 全窒素・全リンは減少すること, 根戸下ではクロロフィルaやCODが概ね暖候期に高く寒候期に低いこと, 無機態リンは暖候期に低く寒候期に高いことなどが, シミュレーションによって概略再現された. さらに, 年間に亘る全リンの物質収支から, 流入負荷量の5割が下流に流出し, 5割が湖底に堆積することが確認され, 底泥からの溶出フラックスは, 静的な条件下では流入負荷量の2割であった.
  • 地下浸透流に着目して
    赤松 良久, 池田 駿介, 中嶋 洋平, 戸田 祐嗣
    2002 年 2002 巻 712 号 p. 175-186
    発行日: 2002/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    マングローブ水域における小潮期の有機物・栄養塩輸送に着目し, 沖縄県石垣島名蔵川河口域において河川内の流れ, 水質, 底質およびマングローブ林内の植生, 土壌環境, 地下水位と多岐にわたる計測を行った. 観測データと地下浸透流の流速場の再現計算によって, 引き潮時のマングローブ林内の地下浸透流による溶存態リンおよび有機炭素の流出フラックスを見積もった. その結果, 地下浸透流による溶存態リンおよび有機炭素の流出は引き潮時の河川内での溶存態リンおよび有機炭素の増加に寄与しており, 小潮期には地下浸透流がマングローブ林内から沿岸域への溶存態リンおよび有機炭素の供給に大きな役割を果たしていることがわかった.
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