土木学会論文集
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2002 巻, 719 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 井伊 博行, John SHERWOOD, Frank STAGNITTI, Nick TURCOZY, 平田 健正, 西川 雅高
    2002 年 2002 巻 719 号 p. 1-9
    発行日: 2002/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    オーストラリア, ビクトリア州南西部の半乾燥地において, 河川水の酸素・水素同位体比と溶存成分濃度から, 河川水の蒸発過程と塩水化の原因を解明した. 内陸部の降水量が少なく, 水の供給量が少ない場所では, 塩湖が存在する. 塩湖では, 乾季に周辺から供給された水が完全に蒸発することで塩が集積し, 雨季に新たに降水が加わることで, 塩濃度が高く, 同位体比はほとんど降水の値に一致する水が形成された. 湿地において, 蒸発と水の供給が繰り返し起こることによって, 水が完全に干上がった部分の塩と一部で干上がらずに残った水が混ざることで, 塩濃度も同位体比も高い水が形成された. 河川や湿地において, 水位低下が小さく, 干上がることがない場合は, 同位体比, 塩濃度は蒸発の割合で変化する.
  • 牛島 省, 竹村 雅樹, 禰津 家久
    2002 年 2002 巻 719 号 p. 11-19
    発行日: 2002/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    コロケート格子を用いたMAC系解法による流体計算において, 予測・圧力計算・修正段階における複数の計算スキームと計算手順を示した. 予測段階において, セル中心で圧力勾配を評価するCCPスキームと, セル境界で圧力勾配を評価するCBPスキームを比較し, 後者ではより局所的な圧力が用いられること, さらに, この相違が圧力pnの離散化表示に影響し, 計算で捕えられる圧力・水面変動の最小波長が両者で異なることを示した. 閉領域内の流れと自由水面流れを対象とした計算の結果, 予測段階でCBPスキーム, そして修正段階ではセル中心で圧力勾配を考慮するPGスキームが有効であること, さらに圧力計算段階ではHSMAC法を用いて流体の連続性に対する誤差を制御することが, 特に自由水面流れに対して効果的であることが示された.
  • 牛島 省, 禰津 家久
    2002 年 2002 巻 719 号 p. 21-30
    発行日: 2002/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    スタガード格子における Implicit SMAC法をコロケート格子配置に基づく流体計算法で利用するC-ISMAC法を提案した. C-ISMAC法では, 予測段階における圧力の取り扱いに検討を加えたことで, 流速の予測値の残差成分に対して低次のスキームを適用し, 高次精度スキームを陽的に扱うことを可能にした. 同手法を各種の流体計算に適用した結果, CFL条件と拡散数に基づく安定性条件が同程度である場合には, クーラン数と拡散数を適切に設定することにより, QSIスキームを用いたMAC系解法と同等の精度を有する計算が2~5倍程度の計算速度で行えることが示された. 特に自由水面流れにおいては, 定常解における流速分布や水面形だけでなく, 水位の時系列に関しても妥当な結果が得られることが示された.
  • 後藤 仁志, 林 稔, 酒井 哲郎
    2002 年 2002 巻 719 号 p. 31-45
    発行日: 2002/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水深平均を前提とした波浪変形モデルは, 計算負荷が小さく, 実務上広く用いられているが, 水塊の分裂・合体といった水面のトポロジーの変化には対応できないので, 物体が水面を直撃して発生する水面波については適用に大きな困難を伴う. この種の問題は, 例えば, 山体崩壊による津波の予測などに見られるが, 崩壊土砂が突入する場合には水面だけでなく, 水層・土砂層界面でのトポロジーの変化も含めた極めて複雑な移動境界問題となる. ここでは, 複雑な水面形に柔軟に対応できる粒子法の特徴を生かして, 粒子法によって離散化された固液二相流モデルを用いて, 大規模土砂崩壊に起因する土石流や海底地滑りによる水面波の発生過程を計算力学的に検討する.
  • 柴木 秀之, 渡辺 晃
    2002 年 2002 巻 719 号 p. 47-66
    発行日: 2002/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    海水の密度成層, 陸上地形の影響を受けた内湾海上風, wave setup 等が高潮に与える影響を明らかにするために, 伊勢湾周辺における伊勢湾台風時の高潮推算を行った. 高潮推算は密度成層と wave setup が考慮可能な3層レベルモデルを用い, 波浪推算はスペクトル浅海波浪推算モデルを用いる. 密度成層の状態により, 沿岸の高潮は20~30cm程度増幅する. また, 陸上地形の影響を受けた内湾海上風により, 湾内の高潮は30cm程度増減する. さらに, wave setup により, 外洋に面する沿岸の高潮は50cm程度上昇する. これらの条件を考慮することにより, 広範囲における沿岸の高潮を精度良く再現できる.
  • 長谷川 一幸, 和田 明, 高野 憲治, 西村 玲輔
    2002 年 2002 巻 719 号 p. 67-79
    発行日: 2002/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地球温暖化は自然の営みに基づく変動よりも更に速い速度で気候変動を招く恐れがあり, 人類にとって最も脅威となる問題の一つと考えられている. 近年温暖化対策の一つとして二酸化炭素の海洋隔離技術が注目されている. この技術は, CO2を直接海洋の中深層に注入し, 海洋中に溶解・吸収させることを目的としたものである. 本研究ではデータ同化手法を用いた海洋循環モデルを構築し, 表層・中深層流動場の妥当性を検証したが, 再現性は良好であった. その後, 流動場の計算結果を使用して太平洋上での二酸化炭素の海洋隔離の可能性をCO2の挙動予測数値シミュレーションによって検討した結巣, 二酸化炭素の海洋隔離は1000m以上の深い水深で行う必要があることが確認された.
  • 八木 宏, 身崎 成紀, 灘岡 和夫, 中山 哲厳, 足立 久美子, 二平 章
    2002 年 2002 巻 719 号 p. 81-91
    発行日: 2002/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    典型的な開放性沿岸域である鹿島灘を対象として, 外洋変動がどのような形で広域沿岸水挙動に影響を与えているかを解明すべく, 著者らが行った広域現地観測結果を中心に検討を行った. その結果, 鹿島灘沿岸域への非定常性の強い外洋影響の具体的な形態として, (1) 沖合を流れる黒潮が北向きに大きくその流路を変化させた場合, 沿岸域全体に強い南下流が励起され, 北側の常磐海域から低温・低塩分の親潮系水がそのフロント部分を先鋭化させながら沿岸海域に侵入し水塊特性が急変すること, (2) 黒潮前線に発生した中規模渦 (前線渦) が沿岸域まで波及し, 沿岸水と外洋水の交換を促進することなどが明らかとなった.
  • 田中 規夫, 長谷川 敦, 浅枝 隆, 渡辺 哲広, 岸田 明義
    2002 年 2002 巻 719 号 p. 93-103
    発行日: 2002/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ガマ・ヒメガマの生長量と土壌の栄養状態との関係を Michaelis-Menten 型の式で表現し, モデル解析により窒素, リン濃度についての半飽和定数を求めた. 窒素濃度, リン濃度の相互影響はそれらの掛け合わせまたはリービッヒの最小値法則で表現可能である. また, 抽水植物間の競合に与える富栄養化の影響を評価するため, ガマ・ヒメガマの日射量競合モデルを作成し, 両種が共存する場所での生長解析を行った. 日射量をめぐる競合状態では, 競合による影響は葉茎高さよりもバイオマスやTLAIに大きく影響が現われる. 両種の競合は, 栄養飽和条件では緯度に関わらず地上部バイオマスについてはヒメガマに優位性が認められたが, 栄養が不飽和になるとヒメガマの優位性が減少する. 優位性の変化には栄養状態が大きく関連している.
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