土木学会論文集
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2003 巻, 732 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 川東 龍夫, 小林 孝一, 宮川 豊章
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 1-15
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    コンクリート中の鋼材腐食を非破壊手法によって的確に把渥することは, コンクリート構造物を維持管理する上で重要な項目の一つである. しかし, 現在用いられている非破壊手法は, 手法の種類と条件, 測定値の評価方法などの点で方法論的な検討が行われている段階にあり, 手法と評価方法の確立が望まれている.
    本研究は, 鋼材の腐食をマクロセル腐食, ミクロセル腐食に分けて評価することを目的に, 大きさの異なる鋼板を用いたモデル試験供試体の電気化学的な経時変化を非破壊的に測定し, 腐食に関する解析を行った.
    これらの解析結果と腐食減量測定結果から, 鋼材腐食をマクロセル腐食とミクロセル腐食によって区別することができ, それらを用いた鋼材の腐食量推定が可能であることを示した.
  • 伊代 田岳史, 魚本 健人
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 17-26
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    コンクリートの養生は水和反応の促進のために適切な温度と湿度を保持する必要がある. しかし, 現場においては型枠転用や工期短縮などを理由に早期脱型されることが多く, コンクリートが若材齢から外部環境の影響を受けることがある. 本研究では若材齢時における乾燥と配合の影響がセメント硬化体の水和反応, 内部組織構造, 圧縮強度にどの程度の影響を与えるかを定量的に評価した. その結果, 乾燥の影響により水和反応は一時的に停止し内部組織構造が粗になることが定量評価できた. また水和が一時停止した硬化体に再び水分供給すると再水和反応が起こり緻密化することも分かった. しかし, 圧縮強度はほとんど発現せず, その理由が反応の形態と内部組織構造によるものであることを明示できた.
  • 石橋 忠良, 小原 和宏, 菅野 貴浩, 小林 薫, 木野 淳一
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 27-38
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    鉄筋コンクリート柱の帯鉄筋は, 地震時に塑性ヒンジとなる区間 (柱の根元区間) に, 軸方向鉄筋を取り囲むように一般に配置している. 大地震に対応するために必要となる変形性能を保証するためには, 多くの帯鉄筋を配置する必要がある. しかし, 鉄筋コンクリート柱部材が大変形の繰り返し載荷を受けると, かぶりコンクリートの剥落以後で鉄筋コンクリート柱部材の耐力が急激に低下する傾向にある. 本研究は, 鉄筋コンクリート柱部材の柱基部付近に軸方向鉄筋の内側に矩形帯鉄筋を配置し, 大変形においても急激な耐力低下を防止することを目指したものである. この配筋をした柱の正負水平交番載荷実験結果から, 部材の変形性能と損傷程度について報告する.
  • 中村 博之, 近松 竜一, 十河 茂幸
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 39-46
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    フレッシュコンクリートの単位容積質量と空気量の測定結果をもとに単位水量を算定する方法に関して, 各種の誤差要因が算定結果に及ぼす影響を明らかにするとともに, 単位水量の推定精度について検証した. その結果, 細骨材や粗骨材の湿潤密度の設定誤差や空気量の測定誤差が単位水量の算定値に及ぼす影響が大きいこと, 単位容積質量および空気量を精度良く求めることで計量誤差やサンプリング誤差がない場合には単位水量を約±2kg/m3の範囲で推定できることを明らかにした. また, この方法は, 汎用のエアメータ装置を用いること, 約5分と比較的迅速に測定できること, などから現場での簡便な単位水量評価方法として適用性が高いことを示した.
  • 田邉 成, 小宮山 茂樹, 齋藤 修一, 三島 徹也
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 47-62
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    送電用鉄塔基礎の新しい基礎形式としての1本杭支持床板にいかり材で脚材を定着する方式において, 引抜き力が作用した際の破壊耐力について検討することが本論文の目的である. この定着方式には, 割裂応力による上端主鉄筋の降伏を伴う破壊と, コーン状のせん断破壊の2つの主要な破壊形式がある. そこで, これら2つの破壊形式について耐力算定式を検討した.
  • 佐藤 文則, 岩波 光保, 横田 弘
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 63-76
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 応力状態が厳しい鉄筋コンクリート接合部に着目し, 内部鉄筋が腐食した場合の構造性能を評価することを目的とした. 実験は接合部を模擬したT形試験体を対象として, 電食により内部鉄筋の腐食度を変化させ, 載荷試験により耐荷性や変形性に与える影響を調査した. その結果, 鉄筋の腐食が耐荷力および変形性に及ぼす影響は, 鉄筋の断面欠損率と付着性能の低下を考慮することにより解析的に評価できることを示した. また, 劣化に伴う構造性能の変化を非破壊試験により評価することを目的として, アコースティック・エミッション計測および電気化学的計測を適用し, 接合部内部の劣化情報を検討した.
  • 佐藤 貢一, 小玉 克己
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 77-87
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ポリマーセメントモルタル増厚工法により補強された部材は, 補強構造と荷重の載荷状況により, 終局的に剥離を伴う破壊性状を示す. 本研究ではコンクリート試験体に補強筋とポリマーセメントモルタルを用いて増厚を行い, 接着界面の面内にせん断力を作用させ, この条件で生じる付着性状を実験的に解明し把握したものである. すなわち本工法の応力伝達機構を補強筋と増厚材のひずみ分布から把握し, 付着強度算定式の同定を行った. また, ポリマーセメントモルタル増厚工法に関しても付着界面のずれ量と付着応力度から同定した剥離破壊エネルギー算定式により, 剥離破壊エネルギーの算定が可能であることを示した.
  • 中山 実, 堀内 厚志, 細川 好則, 片山 傳生, 田中 基次, 小森 威和
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 89-94
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    冬期積雪や路面の凍結による交通被害の減少に凍結防止剤は大きな役割を果たしているが, 一方では年々増加する散布量が多方面より問題視されている. 現在は凍結防止剤の路面残留量を測定する技術が確立されていないため, 散布量の抑制にこの技術の開発が望まれている. そこで本研究では蛍光X線を用いて凍結防止剤中の塩素 (Cl-Kα) を定量的に測定することにより, 凍結防止剤の量を測定する装置の開発を目標とし, 蛍光X線分析の適応の可能性, 傾向, 精度に影響を及ぼす因子について調査した.
    分解能の高い半導体検出器と同様の傾向が得られた事から検出強度の高い比例計数管が路上での測定には適している. また照射面積の大きさ, 試料距離の影響は非常に大きいことがわかった.
  • 金光 寿一, 柳内 睦人, 三星 智典
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 95-108
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年, 道路橋RC床版は耐久性の低下や早期劣化などによる損傷欠陥の事例が数多く報告され, 維持管理の面からモニタリング体制の構築が望まれている. 検査効率の高いサーモグラフィー法を利用したRC床版内部の欠陥検出では, 日射量の変動を利用したパッシブ法と人為的な加熱によって温度差を生じさせるアクティブ法から検討されている. しかし, 対象となるRC床版下面は日射による温度差が期待できず, また人為的な加熱では温度むらや架設場所によって足場の設置に問題を残す. そこで, 本研究では改修工事におけるアスファルト舗設時の舗装熱を利用したRC床版内部の診断法を提案した. その結果, 試験体下面の内部空洞位置には, 欠陥を示す低温域が観測され検出精度の面からも本手法の有効性が確認された.
  • 塚原 絵万, 加藤 佳孝, 魚本 健人
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 109-120
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    コンクリートのひひ割れ部を開放面と同様に取扱い, ひび割れ深さ毎のひび割れ中のCl-濃度, ひび割れ部のCl-量, およびCl-量に対する質量保存則を考慮することにより, コンクリート中における濃度拡散と擬似吸着をマクロ的に表現したCl-移動評価モデルを構築した. 提案モデルは, 湿潤および乾湿繰返し環境下におけるひび割れを有するコンクリート試験体のCl-濃度分布を精度良く評価することが可能であった. また, ひび割れ幅およびひび割れ中の見かけのCl-拡散係数がコンクリート中のCl-移動に及ぼす影響について検討を行った.
  • 吉田 秀典, 高橋 恵介, 堺 孝司
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 121-133
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    コンクリートの品質評価やひび割れ深さの同定に, 非破壊検査法の一つである超音波の利用が試みられているが, 超音波がコンクリート中をどのように伝播しているのかが不明であることに加え, 境界条件や内部状況が超音波の伝播にどのような影響を及ぼすかについても, 依然として明らかにされていないのが現状である. そこで本研究では, コンクリートの品質評価手法としての超音波法の適用範囲拡大と信頼性向上を目標とし, ひび割れを有するコンクリートに対して, 超音波法によるひび割れ測定を行うと同時に, 数値解析的な検討を行った. 解析によってコンクリート中を伝播する超音波を視覚的に捉えることが可能となり, その結果, ひび割れを有するコンクリートにおける超音波の伝播状況を明確にした.
  • 青木 優介, 下村 匠
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 135-148
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, コンクリート部材の乾燥収縮ひび割れを予測するために必要な材料特性である, コンクリートの引張変形特性とひび割れ発生条件を対象としている. 載荷速度と乾燥時間を実験変数とした一軸引張試験を系統的に行い, コンクリートの引張変形特性およびひび割れ応力に及ぼす載荷速度と乾燥の影響について明らかにした. 一軸引張試験結果より同定されたコンクリートの引張変形特性とひび割れ発生応力を用いて, 実際に乾燥収縮が拘束されることによるコンクリート部材の収縮応力導入過程およびひび割れ発生を予測可能かどうか, 一軸拘束収縮試験により検討した.
  • 青木 優介, 下村 匠
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 149-161
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    種々の条件下で行ったコンクリートの一軸拘束収縮試験により, 乾燥収縮ひび割れを予測するために必要なコンクリートの材料特性である引張変形特性とひび割れ発生条件について検討を加えた. 引張変形特性とひび割れ発生条件に及ぼす, 養生期間中の自己収縮応力履歴の影響および部材の乾燥周長断面積比の影響を明らかにした. これらの材料モデルを組み込んだひび割れ予測法による解析結果は, 他の研究者らが行った広範な条件下における一軸拘束収縮試験結果に対し良好に一致したことから, 本研究で得られた引張変形特性とひび割れ発生条件に関する知見は, 広い適用性を有することを確認した.
  • 松尾 真紀, 恩田 雅也, 二羽 淳一郎
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 163-177
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    コンクリートのある部分にひずみが局所化して生じるひび割れを有限要素法で表現するため, これまでに分布型ひび割れモデルと離散型ひび割れモデルの2種類が提案されている. 本研究では, 分布型ひび割れモデルでこれまで問題点とされていた要素寸法依存性を低減できる, 一要素内にひずみの局所化領域を埋め込んだひび割れモデルの提案を行った. そして, この要素を用いて, 斜め引張破壊を生じるRCはりの解析を行い, 実験結果との比較を行った. その結果, 本研究で提案した埋め込み型ひび割れ要素を用いた有限要素解析により, 要素寸法依存性が低減され, 斜め引張破壊を生じさせるようなせん断ひび割れの発生および進展, そしてせん断強度の寸法効果を許容できる範囲内で予測可能であることが示された.
  • 村山 雅人, 姫野 賢治
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 179-191
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    アスファルト混合物の流動変形抵抗性を理解するには, 混合物性状と関係の深い材料特性評価方法の確立と各材料の影響度合いを知ることが不可欠である. そこで, 本研究ではアスファルトの粘弾性と粗骨材の形状に着目して, これらの測定方法と評価方法について検討した. 得られた材料特性値とポーラス混合物の性状との関係を検討した結果, アスファルトと骨材の細粒分からなるモルタルと混合物の動的安定度に高い相関が認められること, 混合物の流動変形には粗骨材の扁平性などの大きな形状よりも粗骨材表面のマイクロテクスチャが大きく影響していることなどが明らかとなった. さらに, 結果に重回帰分析を適用し, アスファルトの粘弾性や粗骨材形状特性値の混合物性状への影響度合いについて考察を行った.
  • 木村 仁, 丸山 久一, 森末 晴男
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 193-209
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    鋳造工場から排出される煤塵 (以下, 鋳物灰という) と, 電気炉の還元工程から排出されるスラグ (以下, 還元スラグという) を, コンクリート材料として多量に使用し, 消波ブロックを作成するために必要な施工性能, 力学性能を満たす配合設計の確立を研究の目的とした. これらの廃棄物は粉体であるため, 単位水量の増加を招くと共に, 還元スラグには固結や膨張といったコンクリートの硬化阻害を引き起こす問題もある. これに対し著者らは, NaClや石膏の添加, 鋳物灰と還元スラグの混合使用等により問題点を解消し, 更に実寸大の消波ブロックを製作して海中曝露試験を行い, 消波ブロックの実挙動についても検討した. また近年問題視されている六価クロム溶出に関しても, 還元スラグの抑制効果を検討した.
  • 三村 陽一, 吉武 勇, 辻 和秀, 田中 浩, 浜田 純夫
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 211-223
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    マスコンクリートの温度応力 (ひび割れ) 予測の高精度化には, 若材齢期におけるコンクリートの力学特性の把握が必要とされる. そこで本研究では, コンクリートのひび割れ発生の応力場となるべく両引き試験を行い, 若材齢期を中心に時系列な付着特性について検討を試みた. また, 一部の供試体については再載荷試験を実施し, 若材齢期に応力履歴を受けた場合における付着特性の変化についての検討を行った. その結果, 材齢1日では付着効果がほとんど見込めないこと, および材齢1~7日にかけて付着特性が大きく変化することが確認された. さらにその破壊機構に関して, 既往の研究にて報告された鉄筋ふしを起点とする斜めひび割れは認められず, 鉄筋ふしによるせん断破壊の影響が大きくなる可能性が伺えた.
  • 三木 朋広, 二羽 淳一郎, Manakan LERTSAMATTIYAKUL
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 225-239
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    軸方向鉄筋の局部座屈挙動を考慮した動的格子モデルの有効性を検証するために, 鉄筋コンクリート橋脚の準動的載荷実験を対象とした非線形地震応答解析を行った. 繰返し水平力を受ける鉄筋コンクリート橋脚の復元力特性の把握に際し, 水平一方向静的交番載荷実験との比較・検討より, 静的格子モデルに鉄筋の座屈挙動を空間的に平均化したモデルを組み込むことで, 最大耐力以降の静的曲げ挙動が把握できることを確認した. また, 動的格子モデル解析による準動的載荷実験の検証より, 本解析による予測値の精度を確認した. さらに, 内陸型, および海洋型の地震動が作用した場合の鉄筋コンクリート橋脚の耐震性能を評価し, それぞれの地震動が鉄筋コンクリート橋脚の地震時応答に与える影響を明らかにした.
  • 八谷 好高, 高橋 修
    2003 年 2003 巻 732 号 p. 241-246
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    空港アスファルト舗装においては, 航空機の大型化と高頻度化に対処するために, 変形抵抗性に優れたアスファルトコンクリートを使用することが必要となっている. 本研究では, 大粒径アスファルトコンクリートに注目し, その空港舗装表層への適用性について, 屋外の試験舗装に対する載荷試験と室内試験によって評価した. その結果, 大粒径アスファルトコンクリートは現行の通常粒径の骨材を有するものに比較して変形抵抗性が非常に優れていること, その他の性能も同程度かそれ以上であることが明らかとなり, 誘導路, 滑走路といった空港舗装表層へは十分適用可能であることが認められた.
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