土木学会論文集
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2003 巻, 747 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 楠田 哲也
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 1-14
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水理学は社会的課題に対応して研究領域を拡大し続けている. 発電水力, 治水・治山, 公害対策, 環境, 特に生物に関わる環境へと展開してきた. その研究成果は, 社会に大きく寄与した. 今後は持続型社会への対応が課題になるであろう. 対象領域の拡大につれ, 水理学のもつ論理性の範疇での扱いでは, 生物環境や持続型社会へ適用しても社会の要請に応えるには限界があり, 環境学のコンセプトと如何に整合させるかが本質的課題になる. さらに, 国内の課題だけでなく国際的課題への対応も求められている.
  • Chao HE, 福原 輝幸, 高野 保英, 南条 雅志, Jingsong YANG
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 15-28
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    乾燥地土壌において不適切な水管理によって生じる2次的塩害の特性を調べるために, 乾燥土壌中に初期塩集積層を設け, 散水と蒸発の繰り返しによる塩移動実験を行った. その結果, 塩再集積の進行速度および再集積した含塩量は散水量, 散水回数および初期塩集積層の深さに影響を受けることが明らかとなった. また, Kelvin の関係式と状態方程式を必要としない熱・液状水・水蒸気移動理論および物質移動理論を用いて, 散水-蒸発に伴う塩集積層からの塩の溶脱とその後の再集積に至る計算が可能になった. これは, Funicular 状態と Pendular 状態の水分移動理論を明確に体系づけたことによる. 計算された温度分布, 体積含水率分布, 水蒸気密度分布および含塩率分布は実験結果を良好に再現しており, 理論モデルの妥当性が示された.
  • 九州大学新キャンパス建設地を対象として
    堤 敦, 神野 健二, 森 牧人, 広城 吉成
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 29-40
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    開発行為が周辺地区の表流水あるいは地下水の循環に悪い影響を及ぼすことがある. 従って, 開発が行なわれる場合, 事前に, その地区の水循環システムに及ぼす影響について予測しておくことは重要である. 筆者等はこれまでの研究で, 地下水涵養モデルと準3次元地下水流動モデルを使用すれば, 地下水の流動だけでなく, 流域の水収支も同時に解析できることを確認した. 本論文では, 提案モデルによる直接流出率が図解法あるいは4段タンクモデルによる直接流出率と近い値を示すこと, 提案モデルのパラメータであるR0Hgは各流出成分に比較的大きな効果を及ぼすこと, また, 4段タンクモデルの各段のタンク底からの浸透量を地下水涵養量と考える場合, いくつかの問題があることなどを示した.
  • 藤田 光一, 李 参煕, 渡辺 敏, 塚原 隆夫, 山本 晃一, 望月 達也
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 41-60
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    多摩川の扇状地礫床河道部における安定植生域 (樹林地に代表される安定的に存在する密生植生域) の拡大の実態を調べた. それより, 安定植生域形成が河道の複断面化過程で現れた高水敷で起こったこと, 1981~1983年にかけての洪水により礫河原上に薄く広く堆積した「表層細粒土層」が安定植生域を担う植物群落 (ハリエンジュやオギなど) の急増を可能にしたこと, 複断面化と先駆的植物による高水敷上流速の低減効果が表層細粒土層の堆積を水理的に可能にしたことを明らかにし, 安定植生域拡大の包括シナリオを得た. これを基に, 安定植生域の消長を大局的に予測するモデルを構築・検証し, 安定植生域形成を促進・阻害する諸要因の影響度を計算により調べ, 植生動態を河川管理へ反映させる考え方を提案した.
  • 平田 勝哉, 舟木 治郎, 中島 宣武
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 61-69
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ポンプ吸込水槽の設計が不適当であると吸込管内部に空気塊が存在することがあり, それは振動, 騒音, さらには揚水不能という事態をもたらす. 本研究では, 空気吸込渦に関係した臨界没水深さScに着目して系統的な実験が行われている. すなわち, フルード数Fr, および, レイノルズ数Re, 吸込水槽の各種形状寸法 (背面間隙X, 吸込水槽幅B, 底面間隙Z) の影響が調べられている. ここで, 代表長さと代表速度としては, 吸込管外径Dと吸込管入口流速が採用されている. その結果, あるパラメーター範囲では, Re効果やZ/D効果が無視できることが示されている. また, ほとんどの形状効果は, 局所最大流速を考慮した実質的フルード数を考えることで, Fr効果に基づく解釈が可能である.
  • 杉山 均, 杉山 真悟
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 71-83
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    粗面壁を有する曲がり開水路流れは, 圧力勾配による力, 遠心力, 粗面河床により生成される非等方性拡散現象が相互に関連する複雑三次元乱流であると同時に, 河川工学上重要な流れである. この粗面河床を有する曲がり開水路流れを対象に, 代数応力モデル, 境界適合座標変換を導入し数値解析を行った. 解析手法の妥当性は, 滑面河床の曲がり開水路流れを解析し実験結果と比較することより検証した. さらに, 粗面河床を有する場合の解析を行い, 乱流場への影響について検討を加えた. その結果, 本解析手法は時間平均速度場を比較的良好に予測すると同時に, 複雑に変動する二次流れの発達も良好に再現した. また, 粗面壁を設ける位置によって二次流れは大きく変化することを定量的に示した.
  • 牛島 省, 吉田 圭介, 竹村 雅樹, 禰津 家久
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 85-94
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    有限体積法により離散化された移流方程式に対する高次精度スキームについて考察した. 計算セル境界のフラックスを5次スプライン関数により空間内挿するFVM-QSIスキームを示すとともに, 保存性を損なわずに数値振動を抑制するためのフラックス制御法 (DC法とFP法) を提案した. 移流方程式へ適用した結果, DC法を用いたFVM-QSIスキームにより精度の高い安定な計算が行えること, またFP法ではDC法より精度は低下するが, 計算時間が短縮化されることを示した. さらに, 2次元キャビティ内の非圧縮性流体計算へ適用した結果, DC法を用いたFVM-QSIスキームにより, 既往の5次精度TVDスキームよりも精度が高い数値解が得られること, また計算時間の点においても本手法は十分実用的であることなどが示された.
  • 泉 典洋, 藤井 健司
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 95-109
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    粘土などの粘着性の強い土壌で構成された斜面上にはガリが形成され, それによって土壌侵食が促進されることが知られている. また粘着性が比較的弱い火山灰などで構成された斜面上にも同様のガリが形成され, 土砂の流出が急激に進む現象が観察されている. 粘着性が弱い場合, 土砂の侵食抵抗が弱く侵食量が大きくなるため, 流水中における浮遊砂濃度の上昇に伴って堆積が生じはじめる. 本研究では, 粘着性土砂で構成された斜面上における水路群形成の理論を, 堆積が無視できないような粘着性の弱い土砂で構成された斜面上におけるガリ群の形成に拡張したものである. 解析の結果によると, 底面勇断力が大きく十分な巻上げが存在するような場合, フルード限界水深の600-1500倍の間隔でガリ群が形成されることが明らかとなった.
  • 二瓶 泰雄, 綱島 康雄
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 111-124
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    マングローブ氾濫原における水理環境の平面構造を明らかにするために, 沖縄県石垣島吹通川マングローブ水域を対象として, 二つの河道部 (creek) に挟まれている氾濫原 (swamp) 上の水位や流速変動に関する長期連続観測と多点平面観測を実施した. その結果, 従来の知見と異なって, 氾濫原上では, creek に直交方向のみならず, 平行方向の流速成分が有意な大きさで生じていること, また, 上げ潮時と下げ潮時の流向や流速レベルが異なる, という潮汐流の非対称性が顕著であることが明らかとなった. このような流動構造に対しては swamp 内の水位勾配が駆動力となっており, さらに, creek 内における水位分布がこの swamp 内における水位勾配の形成過程に大きく関与していることが示された.
  • 中村 直史, 加納 正道, 空閑 幸雄
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 125-134
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    重み付差分法 (WFDM) は, 領域内を不規則四辺形の格子網で覆うことで複雑な形状の閉鎖性水域を数少ない分割で表現できる. また, 本法では, 考える点上の関数値を, その周辺格子点の関数値の重み付加算式で表示し, 次に, 基礎式を満足する変数の有限個の多項式を重み付加算式に代入して得られる重み (数個) に関する連立一次方程式を求め, これを解いて重みを決定するものである. 本報は, 重み付差分法による数値解が, 厳密解との比較により, 精度が良いことを示し, また, 幾何学的に複雑な地形かつ広大な干潟の出現する水理模型における浅海流方程式の潮流解析に適用可能な二次元重み付差分法を開発し, その解析方法および重み付差分法解が水理模型実験解の高い再現性を示すことについて述べたものである.
  • 内山 雄介, 栗山 善昭
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 135-153
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    仙台湾北部の蒲生干潟前面海浜 (仙台港南海浜) における中期地形変動特性を主成分解析および複素主成分解析によって検討した. 約12年間の深浅測量データに対して両解析手法を適用し, 種々の要因による地形変動パターンを分離することを試みた, その結果, 蒲生干潟前面海浜における土砂の移動経路や変動周期等の諸特性を抽出することに成功するとともに, 外力データとの対応を検討することによって, 地形変動特性とそのメカニズムについて考察した. 対象海域全体の地形変化に対しては, 河ロテラスの発達・衰退と北向き沿岸漂砂による防波堤基部の堆積域の形成およびその拡大というプロセスが卓越しており, 次いで河川から沖合海域へ流出した土砂の岸向き輸送過程, 岸沖漂砂による浅海域での土砂移動が寄与していることを明らかにした.
  • 森 信人, 平口 博丸
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 155-171
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    気象庁の週間アンサンブル予報資料を用いて, 1日から4日のアンサンブル波浪予測を実施した. ついで, アンサンブル波浪予測手法の精度および誤差特性に関する検討を行った. その結果, アンサンブル波浪予測で得られた波高のアンサンブル平均値は, 客観解析値と高い相関を持つが, 予測時間が長くなると予測値はやや低めになることを示した. 波高に対するアンサンブル平均値とメンバー間のばらつき (Spread) は, 海上風についてのアンサンブル予報結果と同様に高い相関を持ち, 予測時間が長くなると Spread は大きくなることを明らかにした. ついで, アンサンブルメンバーの分布を2母数 Weibull 分布を用いて代表させ, 2つのパラメーターで予測結果を表現する方法を提案した.
  • 中嶋 洋平, 池田 駿介, 赤松 良久, 宮本 泰章, 山口 悟司, 戸田 祐嗣
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 173-185
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年, 沖縄地方では降雨による土砂流出が沿岸域の生態系の破壊, 畑地土壌の流亡などの問題を引き起こしており, 盛んに研究が行われているものの, 有効な解決策を見出せていない. また, 生態系に大きな影響を与える栄養塩動態に関して行われた調査・研究は僅かである. そこで本研究では, 土砂のみならず栄養塩の流出動態の把握を目的として現地観測を行った. その結果, 約16km2の流域において, 3ヶ月間で134ton, 単位面積あたりでは8.3gr/m2の土砂流出が発生し, 土砂流出とともに多くの粒子態栄養塩の流出が確認された. 土地利用別に見ると畑地からは溶存態栄養塩の流出が多くなっており, 栄養塩は溶存態としても多く流出していることがわかった. また, 降雨発生時が満潮であるか干潮であるかのタイミングが河口域への土砂流出量に影響を与えることが示された.
  • 梶原 義範, 富田 友幸, 中野 拓治, 磯部 雅彦
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 187-196
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    2002年夏季に有明海湾奥西側の海域において貧酸素水塊の現地観測を実施し, 得られたデータから貧酸素水塊の発生状況を把握するとともに, 当該海域での貧酸素水塊の形成・解消要因等について考察した. 佐賀沖の底層においては, 観測期間を通じてほぼ継続して貧酸素状況となっており、湾奥北部海域ほど貧酸素化の程度が著しいことが確認された. また, 諫早湾においては7月初旬と8月初旬の2回, 貧酸素水塊が確認され, これに関与する密度成層の形成要因として, 7月初旬は主に塩分が関与するとともに8月初旬には水温と塩分が同程度に関与していることが示唆された. さらに, 貧酸素水塊の解消には海域表層の風速増加による水域での上下混合の促進が関与していることが示唆された.
  • 牛島 省, 奥山 洋平
    2003 年 2003 巻 747 号 p. 197-202
    発行日: 2003/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    SOLA法とC-HSMAC法の解法と収束特性を比較することを目的として, 両手法の解法の手順や反復計算の主要な部分を示し, それらの相違を明らかにした. SOLA法とC-HSMAC法では, 圧力の連立1次方程式に対して, 対角成分のみを考慮するか, あるいは反復計算によりその数値解を求めるか, という点で解法の相違がある. また, SOLA法の反復計算は, 収束性能が比較的低い解法に基づいている. これに対して, C-HSMAC法では圧力の数値解を求める方法としてより高速の解法を選択できるため, 収束特性を向上させることが可能である. 3次元非圧縮性流体計算に両手法を用いた結果, 計算セル数の増加とともにC-HSMAC法の収束性能は相対的に向上し, SOLA法よりも高速な計算が行えることが示された.
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