土木学会論文集A
Online ISSN : 1880-6023
ISSN-L : 1880-6023
63 巻, 1 号
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和文論文
  • 児島 明彦, 糟谷 正, 鶴田 敏也, 南 邦明
    2007 年 63 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     道路橋示方書はSM570に対して7.0kJ/mmの溶接入熱量を規制している.その一方で,橋梁製作では高能率化を目指した大入熱溶接の適用拡大が望まれている.本研究では,SM570に対して橋梁製作を想定した1パスのエレクトロガスアーク溶接を行い,溶接熱影響部の靭性に着目して鋼成分と溶接入熱量の影響を調べた.その結果,大入熱溶接対応のSM570に対して13.0kJ/mm程度までのエレクトロガスアーク溶接が適用可能であることを確認した.また,溶接熱影響部の靭性を左右するミクロ組織の観点から,鋼成分と800℃から500℃までの冷却時間の重要性を示した.
  • 辻原 治, 澤田 勉
    2007 年 63 巻 1 号 p. 14-24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,地盤震動の鉛直アレー観測記録を用いた水平成層地盤の同定問題において,用いる評価関数とパラメータの推定精度との関係について明らかにすることを目的とした.同定の計算は一般にS波の重複反射を仮定して周波数領域で行われ,観測記録のスペクトル比をターゲットした評価関数がよく用いられる.そして,地盤モデルの周波数伝達関数とスペクトル比との残差を最小化するように,モデルのパラメータが同定される.しかし,スペクトルの平滑化の悪影響がしばしば指摘されている.一方,最近観測記録の時刻歴をターゲットした同定も行われるようになった.本小文では,新たな評価関数を提案するとともに,同定の精度,評価関数の形状および初期値の影響について比較・検討した.
  • 神谷 崇, 谷口 望, 碇山 晴久, 依田 照彦
    2007 年 63 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,橋梁の構造形式で連続合成桁を採用する際に検討しなければならない中間支点部において,負曲げにより生じるRC床版のひび割れの挙動を把握することを目的としている.特に,現在ではまだ検討事例の少ない疲労試験を行い,疲労挙動の解明に着眼点をおいている.RC床版のひび割れ挙動の把握を行う際に,近年の連続合成桁における設計指針や研究事例に数多く取り入れられているコンクリートの応力分担効果すなわちテンションスティフニング効果の考え方を導入した.連続合成桁の中間支点部を模擬した載荷実験を行うことにより,疲労試験におけるひび割れ幅は繰り返し載荷回数の増加と共に安定することを確認した.
  • 菅沼 久忠, 三木 千壽
    2007 年 63 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     鋼床版に生じるき裂の中で,デッキとトラフの片面溶接ルート部から生じるき裂がデッキを貫通する方向に進展する例が数多く報告されはじめている.このき裂はルート部から発生するため発見が困難な上,デッキの陥没を誘発し大変危険である.本論文では,このデッキとトラフの片面溶接ルート部から生じるき裂について,エフェクティブノッチストレスの概念を取り入れることで,発生要因の解明と発生を抑制するための構造の検討を目的とする.載荷パターンおよびデッキ板厚・トラフリブスパン・溶接形状をパラメータとして,それらの影響について詳細なFEM解析により検討を行った.本研究では,エフェクティブノッチを導入した詳細なFEM解析により,デッキ貫通型き裂の発生を抑制する構造の提案を行う.
  • 杉浦 邦征, 田村 功, 渡邊 英一, 伊藤 義人, 藤井 堅, 野上 邦栄, 永田 和寿
    2007 年 63 巻 1 号 p. 43-55
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     正弦波で単純モデル化した仮想的腐食形状および実腐食形状を有する周辺単純支持の鋼板に対する数値シミュレーションにより,様々な腐食形状が残存圧縮性能に与える影響について検討した.その結果,腐食鋼板の圧縮強度は断面積の減少により著しく低下すること,応力伝達軸方向のみならずその直交方向の板厚分布も耐荷力に大きく影響することが明らかとなった.数値シミュレーション結果に基づき,応力伝達軸方向,およびその直交方向の板厚分布を考慮して,任意の腐食性状を有する鋼板の実用的な圧縮強度推定法を提案した.一方,腐食に伴う減厚による板厚中心の偏心の影響について検討を行ったが,今回用いた板厚分布においては最大で10%程度の耐荷力変動であり,種々の耐荷力評価式による推定値のばらつきの範囲であり,大きく影響しないことがわかった.
  • 森 猛, 平山 繁幸, 鴫原 志保
    2007 年 63 巻 1 号 p. 56-65
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     鋼I断面橋梁の主桁ウェブ・横桁フランジ交差部は,主桁ウェブ応力に加えて荷重分配作用による横桁フランジ応力が作用する2軸応力状態となることが多い.この部分の疲労破壊起点としては主桁ウェブ側溶接止端部に加えて横桁フランジ側溶接止端部も考えられる.主桁ウェブ溶接部の疲労強度に対する2軸応力(横桁フランジ応力)の影響については既に報告している.本研究では,横桁フランジ溶接部の疲労強度に対する2軸応力(主桁ウェブ応力)の影響を明らかにする目的で,既報と同じモデル試験体を用いた疲労試験と応力解析を行った.その結果に基づき,主桁ウェブ応力により横桁フランジ溶接部の疲労強度は低下し,その影響は応力集中係数を用いて評価できることを示した.
  • 秋山 寿行, 木村 充, 小澤 克郎, 西村 宣男
    2007 年 63 巻 1 号 p. 66-74
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     被接合材片に板厚差を有する高力ボルト摩擦接合継手のすべり耐力について,有限要素解析法およびせん断変形を考慮したはり理論による簡易算定法によって調査している.有限要素解析結果および提案する簡易算定法の精度については実験データとの比較により検証を行っている.有限要素解析結果と簡易算定法計算結果から,高力ボルト摩擦接合継手の設計・施工に対して被接合材片間の許容板厚差は,高力ボルトが等級F10Tでねじの呼びM22の場合,連結板板厚が16mm程度までであれば1mm(片面板厚差0.5mm)程度とすることができる.また,連結板板厚が16mmを超える場合は,継手中心部の母材の縁端距離を連結板の板厚に応じて増加することにより,1mm(片面板厚差0.5mm)程度の板厚差の影響を緩和することができる.
  • 松本 泰尚, 山口 宏樹, 冨田 直幹, 加藤 誠之, 鵜野 禎史, 廣本 泰洋, Khakimov Aziz RAVSHANOVICH
    2007 年 63 巻 1 号 p. 75-92
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     道路橋モジュラー型エクスパンションジョイントの騒音発生源と騒音制御策に関して,実物大試験体を用いた実験により検討した.まず,車両走行実験で,無対策時の試験体について,車両通過時にジョイント上面および下面から発生する音,およびその際のジョイント構造振動の特性を把握した.つぎに,試験体の音響・振動特性試験を行い,ジョイント上面からの音の主要な卓越周波数成分は止水ゴム空間の空気の急激な圧力変化に起因する音,また下面から発生する音の卓越成分はミドルビーム曲げ振動による振動放射音であるものと結論した.さらに,騒音制御策としての止水ゴム空間制御,騒音伝搬制御,およびミドルビーム振動制御の効果を車両走行実験により検討するとともに,騒音発生源に関する結論の妥当性を検証した.
  • 大嶽 公康, 大町 達夫, 井上 修作
    2007 年 63 巻 1 号 p. 93-107
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/01/19
    ジャーナル フリー
     本論文では,1995年兵庫県南部地震による非液状化地盤での埋設管路の実被害と現行設計指針による設計計算値との比較により,震源域においては,計算値が約2倍の安全率を確保していても,管路被害が発生したことを示す.さらに,その要因として推察された地盤変位について,観測値及び数値シミュレーションなどから震源域における非液状化地盤の変位量を求め,現行設計指針で求められる設計地盤変位量との対比を行う.その結果,観測値及び解析値による動的変位量と永久変位量の和は,現行設計指針による地盤変位をはるかに上回る大きさであったこと,震源域における地盤変位の特徴として,地表面のみでなく,工学的基盤においても動的変位量と永久変位量が大きくなることを示す.
  • 柴沼 一樹, 宇都宮 智昭
    2007 年 63 巻 1 号 p. 108-121
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,均質材の二次元線形破壊力学問題に対し,曲線き裂を含むX-FEMの一般的なモデル化の提案及びそれらを用いた解析結果の総合的な評価を行った.モデル化として(1)曲線き裂と分割された積分領域のモデル化,(2)C属性節点領域の範囲のモデル化,(3)C及びJ属性節点領域で構成された曲線き裂モデルの写像変換手法を提案した.その解析結果の検証より,写像変換の有効性も含め,提案したモデル化の有効性が示された.また,曲線き裂に関してM積分の経路独立に関する制限を明確にした.さらに,き裂進展シミュレーションからき裂進展方向とM積分経路内部のき裂の角度変化を用いた精度評価方法を適用し解析結果の信頼性を確認した.
  • 後藤 芳顯, 江 坤生, 小畑 誠
    2007 年 63 巻 1 号 p. 122-141
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
     鋼製橋脚柱に要求される耐震性能をより正確に照査するには地震動の水平2方向成分の連成を考慮することが重要である.ここでは,まず,名古屋工業大学で開発した精密な3次元載荷装置を用い,縦リブ補強された矩形断面鋼製脚単柱を対象に一定鉛直荷重下の最も厳しい2方向載荷方法の一つである変位制御によるダイヤモンド型繰り返し載荷と1方向繰り返し載荷実験を行いその終局挙動特性を検討した.また,鋼材の繰り返し構成則である3曲面モデルとシェル要素を用いた複合非線形解析の適用性についても検証した.つぎに,解析によるパラメトリックスタデイによって,2方向繰り返し載荷による矩形断面鋼製橋脚柱の履歴特性を1方向繰り返し載荷と比較して2方向載荷による耐震性能低下について検討し,耐震性能を表す履歴特性値の予測式も誘導した.
  • 北川 徹哉, 太田 裕希
    2007 年 63 巻 1 号 p. 153-166
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     二つの円柱から成る構造物は多く,その周りの複雑な流れ場を明らかにすることは設計や事故防止の観点から重要であり,また,ケーブルに発現するウェークギャロッピングのメカニズム解明とその制振対策への基礎となる.本研究においては,比較的近接に配置されたタンデム2円柱まわりの流れ場を数値流体解析により検討する.得られた結果を多くの既往の研究と比較するとともに,流れ場と2円柱に作用する流体力との関係を明らかにする.特に,流れ場と流体力とを同時に追跡することにより,上流側の円柱から放出される渦の流下と下流側円柱からの渦との相互干渉のプロセス,ならびにそれが下流側円柱に作用する流体力に及ぼす影響について考察する.
  • 車谷 麻緒, 寺田 賢二郎, 久田 真
    2007 年 63 巻 1 号 p. 167-178
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,ひび割れ先端での非線形破壊力学モデルを組み入れた有限被覆法を用いて,鉄筋コンクリートの塩害劣化過程における鉄筋の腐食膨張のモデル化と,それに伴うコンクリートのひび割れ挙動について数値解析による検討を行うものである.具体的には,鉄筋腐食による膨張現象を再現するための変位制御や荷重制御などの制御方法に着目し,既往の研究で指摘されているコンクリートのひび割れモードを再現し得る解析条件について検討する.また,この検討結果をふまえて,死荷重が作用する構造物内部の塩害劣化によるコンクリートのひび割れ挙動について考察する.
  • 久保 全弘, 渡辺 孝一
    2007 年 63 巻 1 号 p. 179-193
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     波形鋼板ウェブ桁の面外曲げ強度は,波形腹板の形状と配置により圧縮フランジにせん断応力に伴う局部的な面外曲げと幅方向の力が複雑に発生し,その評価が複雑となる.既往の研究から,圧縮フランジの局部座屈耐力は波形腹板の偏心のため低下するが,横ねじれ座屈耐力については通常の平板桁に比べて上昇するとの報告もある.しかし,実験的な検証例が少なく,十分解明されていない.本論文は平板を含み4種類の腹板形状に対し,部材長を3種類に変化させた場合の横ねじれ座屈実験を行い,波形腹板桁の面外挙動特性と耐荷力を明らかにした.さらに,実験結果と有限要素法による非線形解析の比較,波形桁の曲げ・ねじり剛性の確認および横ねじれ座屈耐荷力の評価法を検討した.
  • 中尾 尚史, 野阪 克義, 伊津野 和行
    2007 年 63 巻 1 号 p. 194-205
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     落橋防止ケーブルはフェールセーフ機能を実現する重要なシステムであるが,連続桁における落橋防止ケーブルの設計法については検討例が少ない.本研究では多径間連続桁を対象とした静的解析と動的解析を行い,桁端部が支点からはずれた場合における落橋防止ケーブルの効果に関する検討を行った.その結果,静的解析では現行設計法でケーブルを設計すれば十分な効果があることが分かった.一方,桁の自由落下を考えた動的解析では,ケーブルの剛性が小さいと,桁が塑性化しなければ通常の6倍もの曲げモーメントが作用することが分かった.さらに,桁の剛性低下を考慮すると,桁端部から最も近い支点付近が桁落下によって局所的に塑性化することが分かった.
  • 麓 興一郎, 新里 英幸, 宇都宮 智昭, 田中 洋, 渡邊 英一
    2007 年 63 巻 1 号 p. 206-219
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     大型風洞の風路に設置された造波水槽内に非線形係留された分離ポンツーン型の弾性浮体橋模型を浮かべ,風と波が各々単独に作用する場合と同時に作用する場合について実験を行い,浮体橋の動揺特性を調べた.また,麓らが開発した浮体橋の動的挙動計算プログラムを用いて実験対応の計算を行い,その有効性を調べた.その結果,1) 波周波数とポンツーンの動揺の固有振動数とが一致する場合,浮体橋の応答は卓越すること,2) 風の影響によって浮体橋は風下側に定常変位し,この変位した状態で動揺すること,3) 風と波を同時に受ける場合の桁の応答ピークは,波が単独で作用する場合よりも大きくなること,4) 風洞内水槽実験の波浪中弾性挙動は,解析で得られた結果とほぼ一致し,本稿で実施された実験手法は妥当なものと判断されたこと,が明らかになった.
  • 麓 興一郎, 秦 健作, 楠原 栄樹
    2007 年 63 巻 1 号 p. 220-231
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     中央径間長が3,000mを超す超長大橋を実現するには,経済性・耐風安定性に優れた上部構造が必要であり,その課題克服のためハイブリッド吊橋を考案した.ハイブリッド吊橋とは,ケーブルとしては吊橋を基本として主塔近傍に斜張形式を採用したもので,桁については中央径間中央部に空力性の優れた二箱桁を配置し,主塔近傍には桁幅が狭く軽い一箱桁を配置した橋である.本論文ではハイブリッド吊橋の超長大橋への適用可能性を検討するため,構造解析と風洞実験及びフラッタ解析を実施した.その結果,塔形式をA型とし,ケーブルを中央径間中央部で桁の外側を吊る形式とした場合,耐風安定性に最も影響を与えるねじれの固有振動数を従来の吊橋より50%程度高くでき,さらに二箱桁断面の形状を工夫することで耐風安定性を向上できることがわかった.
  • 穐山 和男, 岸野 佑次, 村井 貞規
    2007 年 63 巻 1 号 p. 232-241
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     はり部材の細長比から定まるある限界振動数より高次の振動数領域において,Timoshenkoはり理論(TB 理論)の動的解の精度は保証されていない.ここでは,固有振動は波動方程式より求まる定在波であるという立場から,厳密な3次元理論に照らし合わせて TB 理論で算定される固有振動数の精度の考察を行った.その結果,高次振動数の定在波は,単純ばりを除き,2種類のモードの位相速度で伝播する横弾性波から生じる2つの定在波が重なり合ったものであり,各固有振動数と位相速度曲線との対応を調べることにより,第2モードの位相速度の精度が TB 理論の精度を支配することを示した.このことから,TB 理論が限界振動数を超えて適用される場合,はりの細長比によりその適用可能領域を見定める必要があることを示した.
  • 松本 勝, 水野 惠介, 大窪 一正, 伊藤 靖晃
    2007 年 63 巻 1 号 p. 252-264
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     長大橋梁桁断面に生じるフラッターは,構造物を直接破壊に至らしめる危険な現象である.そのためフラッターの安定化は長大橋梁の耐風設計における最重要検討項目であると言え,その実現にはフラッターの励振機構の解明が必要不可欠である.近年の研究において筆者らは,複素固有値解析及びStep-by-Step解析を用いて,連成フラッターの分枝のスイッチング特性を明らかにしてきた.本研究では,たわみ・ねじれの振動数比をパラメーターとして解析を行い,分枝のスイッチング特性に関しより詳細な考察を加えるとともに,2DOF自由振動実験によって検討を行った.
  • 袁 涌, 家村 浩和, 五十嵐 晃, 青木 徹彦, 山本 吉久
    2007 年 63 巻 1 号 p. 265-276
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,各種ゴム支承を対象として速度ベース載荷法を用いる実時間ハイブリッド実験システムを開発し,一連の高速・実時間ハイブリッド実験を行った.研究の目的は,新たに開発された実験システムの性能を検証するとともに,この実験法により免震ゴム支承の地震時応答を直接的に確認することである.天然ゴム系支承(NR)および高減衰ゴム支承(HDR)と,より減衰性能を高めたHDR-S を対象に,実時間サブストラクチャ・ハイブリッド実験を行い,これらのゴム支承を設置した免震橋梁の地震時応答を検討した.その結果,ゴム支承の免震性能の相違をより実現象に近い状態で評価することが可能であることを確認するとともに,HDR 支承より減衰性能の高いHDR-S 支承の方が免震効果が高くなることを明らかにした.
和文報告
  • 南 邦明, 三木 千壽, 糟谷 正, 鶴田 敏也, 渡部 義之
    2007 年 63 巻 1 号 p. 142-152
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
     道路橋示方書や鉄道構造物等設計標準では,SM570の溶接施工に対し,入熱量を7kJ/mm以下とする入熱制限が設けられている.しかし,近年の鋼材の進歩は目覚しく,入熱量を7kJ/mm以上の入熱量でも施工可能な570N/mm2級鋼材も開発されている.本研究では,橋梁用高性能鋼BHS500の大入熱仕様鋼材を用いて,12.2kJ/mmおよび18.2kJ/mmの入熱量で溶接施工試験を行い,BHS500の各性能を評価した.性能評価方法として,衝撃特性はシャルピー衝撃試験を実施し,破壊靭性特性の評価はCTODを実施した.また,一般のSM570材を用いて,BHS500との比較検討も行った.
  • -φ0.6mタンクモデルの振動実験-
    井田 剛史, 平野 廣和, 鈴木 森晶, 坂東 譲, 佐藤 尚次
    2007 年 63 巻 1 号 p. 242-251
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     やや長周期の地震により石油タンク貯蔵液のスロッシングが発生し,浮屋根の沈没,破壊,そして最悪の場合,火災発生といった問題が生じている.本研究は,これらの対策として浮屋根の外周部にゴム製の制振材を設置することで,スロッシングの減衰対策を行い,かつ浮屋根破壊を防ぐことを目的としている.本論文では,研究の第一段階として直径0.6mタンク(苫小牧での被害タンクの約1/66スケールレベル)での振動実験を行い,減衰材モデルの制振効果について評価を行った.この結果,粘弾性体である合成ゴムからなる制振材によって,地震時に発生するタンク内貯蔵液のスロッシングを抑制する効果が認められ,貯蔵タンクの地震対策において有用な工法としての所見を得たので報告する.
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