土木学会論文集A
Online ISSN : 1880-6023
ISSN-L : 1880-6023
65 巻, 1 号
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招待論文
和文論文
  • 塩竈 裕三
    2009 年 65 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     ラジアルゲートの構造安全性照査において,支承部摩擦力によるモーメント荷重は重要な荷重である.しかし,摩擦力算出に必要な摩擦係数の供用中の変化については,十分な知見が得られていない.そこで,2門のゲートで脚柱ひずみの長期モニタリングを実施し,ゲート操作ごとに摩擦係数を推定した.
     ゲート操作反転時のひずみ変化量をもとに推定した摩擦係数はばらつきを持ち,2門のゲートでそれぞれ0.11,0.18の変動係数を得た.また,摩擦力は,ゲート操作終了後,次の操作まで残留していた.これより,ラジアルゲートの構造安全性照査においては,ゲート操作時の支承部摩擦係数のばらつきの考慮,ならびに,地震時荷重における摩擦力の考慮が必要である.
  • 野村 泰稔, 古田 均, 川谷 充郎, 広兼 道幸, 中津 功一朗
    2009 年 65 巻 1 号 p. 30-41
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     近年,カオス信号を入力とした構造物の応答からアトラクタを再構成し,その位相構造などの特徴量を損傷前後で比較することで診断を実施する方法が開発されている.本研究では,構造物の振動特性に応じたカオス信号を構造物に入力することで,その応答変位がカオス的挙動を呈することを確認する.さらに損傷前後で応答変位を比較したとき,損傷を有する層の応答変位に大きな違いが生じることを示すとともに,振動応答の定量評価手法として交差予測誤差率を導入し,損傷診断シミュレーションを通じて,提案手法の有用性を明らかにする.
  • 片出 亮, 香月 智
    2009 年 65 巻 1 号 p. 42-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,性能設計法の背景にある二つの概念,すなわち,性能規定型設計法と性能明示型設計法の相違点について言及したうえで,使用者と設計技術者との間にリスク分担原則を介在させることによって2つの性能設計法が合理的に調和できる構造安全性,すなわち目標信頼性指標を導出できることを示したものである.本論文では,まず,提案手法を簡便に行うために必要な瑕疵担保責任発生確率から目標信頼性指標を導出できる近似式を提案している.続いて,設計技術者側の総費用最小化原則に基づく目標信頼性指標の導出について砂防堰堤の剛体安定問題を例として検討している.
  • 後藤 芳顯, 小山 亮介, 藤井 雄介, 小畑 誠
    2009 年 65 巻 1 号 p. 61-80
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     鋼製橋脚の水平2方向地震動下の終局特性の解明ならびにシェル要素と構成則に3曲面モデルを用いた動的複合非線形解析の精度検証のために精密な3次元載荷装置を用いた擬似動的実験を実施した.つぎに,検証された複合非線形動的解析により水平2方向地震動下での鋼製橋脚の動的照査法で用いる限界値の設定法について検討した.限界状態としては現行の道路橋示方書の許容値の設定の考え方と同様に橋脚が極限点挙動で構造不安定が生じる場合と定義し,仕事の2次増分に基づく安定基準により同定した.限界値は水平面内の各方向へのPushover解析で得られる極限点での水平復元力の2方向成分を相関曲線として表す方法を提案した.この限界曲線の精度は各種2 方向地震動下の動的複合非線形解析で検証した.
  • 幸左 賢二, 田崎 賢治, 加藤 啓介, 庄司 学
    2009 年 65 巻 1 号 p. 81-97
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     台湾集集地震で被災したPC斜張橋を対象に詳細な被害分析と耐震性能評価を実施した.まず,非線形動的解析による分析の結果,RC主塔基部の損傷原因は,主塔部に高次モードの変形状態が表れることによることを明らかにした.ついで,パラメータ分析により,PC斜張橋のような長周期構造物に対しては,長周期成分の卓越する地震波の影響で応答が極めて大きくなる可能性があることを示唆した.最後に,本震で受けた初期損傷に着目し,同規模の繰り返し地震動が発生した場合の耐震性能を分析した結果,初期損傷が主鉄筋の降伏前後の損傷であった場合に対しては,同規模の繰り返し地震による影響は極めて小さいことを明らかとした.
  • 田原 潤, 小野 潔, 西村 宣男, 宮田 亮, 田中 耕太郎, 美島 雄士
    2009 年 65 巻 1 号 p. 98-116
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     兵庫県南部地震以降,鋼製橋脚柱部の耐震設計法は確立されたが,はりと柱が交差する隅角部の耐震設計法は未だ確立されておらず,フィレットやスカラップといった疲労に配慮した構造詳細が耐震性に与える影響も明らかではない.本研究では鋼製ラーメン橋脚隅角部の変形性能や耐荷力を明らかにするため,部材の材質,補剛材配置について実構造物を再現した構造を有する試験体による正負交番載荷実験を実施した.その結果,疲労に配慮した構造詳細が隅角部の耐荷力に与える影響を明らかにした.さらに地震時に隅角部に発生する限界状態とその順序を整理し,隅角部のウェブパネルの初期降伏を既往の方法よりも精度よく評価する方法を提案した.
  • 小林 孝一
    2009 年 65 巻 1 号 p. 123-135
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,表面被覆した鋼材の海洋環境における劣化,すなわち母材の腐食と表面被覆の劣化の進行について明らかにすることを目的として実施された.特に,実構造物では被覆の損傷に起因する劣化が問題となることから,損傷の影響について,海洋環境における曝露試験および試験室内での浸漬試験を併用して検討を行なった.その結果,飛沫帯と干満帯・海中部とでは劣化の進行メカニズムが異なること,被覆の損傷が劣化の進展に大きな影響を与えること,被覆の厚さや有機ジンクプライマーの有無が腐食速度に影響を与えること,などを明らかにし,海洋環境における劣化の進展メカニズムについて考察した.
  • 阿部 雅人, 藤野 陽三
    2009 年 65 巻 1 号 p. 136-150
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     地震時における迅速な被害の把握は,災害軽減・リスクマネジメントの観点から極めて重要である.その実現には,信頼性が高くかつ簡易な地震動および被害の指標が求められる.地震動については,計測震度やSI値など,多くの簡易で迅速な判断が可能な指標が提案されてきたが,個別の構造物の応答,特に構造性能と関連が深い変位を簡易に評価することは困難であった.そこで,安価で信頼性の高い加速度センサによる記録から最大応答変位を推定することを目的として研究を行った.本研究では,不規則振動理論を援用して,地震動特性,応答加速度,応答変位の統計量間に成立する代数的関係を導出し,積分操作によらずに最大変位を簡易に推定する方法を構築した.また,併せて,この応答間の統計関係と理論的に整合的な地震動速度の簡易指標も提示した.
  • 岡田 淳, 加藤 真志
    2009 年 65 巻 1 号 p. 151-164
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     高強度鋼が保有する鋼材性能の有効活用による合成I桁橋の長支間化を目指し,まず,高強度鋼を用いた合成I桁の正曲げ実験を実施して,破壊モードと曲げ耐荷力について考察した.次に,実験供試体を対象としたFEM解析を行い,実験結果との比較によりその妥当性を検証した.さらに,実験結果,および鋼材強度とコンクリート強度に着目したパラメトリック解析結果に基づき,破壊モードが床版の圧壊に支配される場合の曲げ耐荷力の低減式を提案し,高強度鋼を用いて塑性化を考慮した合成I桁の曲げ耐荷力特性を明らかにした.
  • 車谷 麻緒, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史, 橋詰 知尚
    2009 年 65 巻 1 号 p. 165-177
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,コンクリートの破壊挙動を精度良くかつ効率的に再現するために,準脆性材料の破壊力学モデルである結合力クラックモデルを組み込んだ,FEMをベースとする離散ひび割れ進展解析手法を開発し,さらにこれを引張せん断型の混合モード破壊に応用することにより,準脆性材料の破壊力学挙動を検討するものである.まず,結合力クラックモデルの導入方法と,FEMをベースとする任意の離散ひび割れの表現技法について述べた後,そのひび割れ進展解析アルゴリズムについて説明する.そして,検証例題や数値解析例を示した後,準脆性材料のひび割れ進展解析のベンチマーク問題として多く利用されている混合モード破壊の再現解析に本解析手法を応用し,数値解析における再現性や破壊力学挙動のモデル化について検討・考察する.
  • 西川 隼人, 宮島 昌克
    2009 年 65 巻 1 号 p. 178-187
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では自治体観測点を対象に地震動予測において重要なサイト特性を推定するために,自治体観測点で得られる最大加速度と計測震度の地盤増幅度とサイト特性の関係を検証した.検証において,最大速度の地盤増幅度の代替指標を最大加速度と計測震度の地盤増幅度から求めた.観測点ごとに地震動指標の地盤増幅度を評価し,サイト特性との相関を調べたところ,地盤増幅度とサイト特性には明瞭な相関が見られた.最大加速度と計測震度の地盤増幅度をパラメータとするサイト特性の平均値を評価する手法を提案し,提案した手法によってサイト特性を精度良く評価できることを示した.本研究で提案した手法を用いれば地震波形記録の収集が難しい自治体観測点のサイト特性を推定することができ,従来に比べて高密度なサイト特性の評価が可能である.
  • 森 猛, 明見 正雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 188-195
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     国際溶接学会の疲労設計指針では,公称応力やホットスポット応力に加えて有効切欠き応力を用いた疲労強度評価法も示されている.そして、有効切欠き応力を求めることができれば,継手形式や疲労破壊起点(溶接止端と溶接ルート)によらず,一つの疲労強度曲線で容易に疲労強度評価を行うことができるとしている.荷重伝達型十字溶接継手ではルート破壊の恐れが高く,その疲労強度評価には疲労き裂進展解析が有効とされている.本研究では,板厚や溶込み深さなどをパラメータとした継手モデルを対象として,疲労き裂進展解析と有効切欠き応力を用いた疲労強度解析を行い,それらの結果を比較することにより,有効切欠き応力概念の十字継手・ルート破壊の疲労強度評価への適用性について検討する.
  • 松本 崇志, 川島 一彦, Stephen A. MAHIN, 右近 大道
    2009 年 65 巻 1 号 p. 196-215
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     米国等で広く用いられているインターロッキング式橋脚と我が国で用いられている矩形断面RC橋脚をそれぞれ2体,計4体を日米の耐震設計基準に基づいて設計・製作し,3次元加振実験を行い,両者の耐震性を検討した.その結果,両タイプの模型は設計レベル地震力に対しては想定される耐震性能を有すること,設計で想定する以上の地震力を受けると,矩形断面RC橋脚の方がインターロッキング式RC橋脚に比べて隅角部での損傷が大きくなることがわかった.しかし,隅角部が損傷を受けて初めて矩形断面橋脚はインターロッキング式橋脚と似た断面特性となること,最終段階に至るまで矩形断面とインターロッキング式は同様な曲げ耐力を有することから,矩形断面橋脚の適用性にも問題がないことを示す.
  • 車谷 麻緒, 寺田 賢二郎
    2009 年 65 巻 1 号 p. 216-227
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,材料内部の微細ひび割れ形成を考慮した均質化法に基づくミクロ・マクロ連成解析により,準脆性材料(コンクリート)の破壊力学特性として極めて重要な,寸法効果の発現メカニズムについて考察するものである.まず,微視的ひび割れ進展を考慮した均質化法に基づくミクロ・マクロ連成解析について述べる.そして,微視的非均質性の相違に焦点を当てたミクロ・マクロ数値実験を行い,微視的非均質性とそれに起因する微細ひび割れ形成が巨視的な破壊靱性に与える影響について検討する.さらに,材料の非均質性(ミクロ)と構造の寸法(マクロ)を考慮した見かけの寸法効果のケースステディを行い,ミクロ・マクロの観点から寸法効果の発現メカニズムについて考察する.
  • 柴沼 一樹, 宇都宮 智昭
    2009 年 65 巻 1 号 p. 228-242
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     従来のXFEMは節点単位で解の特性を有したエンリッチ関数を付加するが,これにより生じるBlending Elements (BE) の内部において近似精度の低下が指摘されている.本論文では,解析領域全体の近似精度が包括的に保証されるPUFEM近似のXFEMに対する適用法を再検討することで,XFEMに関する再定式化を行い,従来のXFEMにおけるBEの問題を本質的に解決した.さらに,本論文で定式化したXFEMを2次元の線形破壊力学問題に適用し,変位場の近似式を定義した.基本的な数値解析モデルを用いた評価より,本論文で再定式化したXFEMは,従来のXFEMに比べ,いずれの評価においてもより優れた数値解析精度が得られた.
  • 全 貴蓮, 川島 一彦
    2009 年 65 巻 1 号 p. 243-254
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,橋梁の耐震設計で従来無視されてきたフィンガー型Expansion Joint(EJ)の非線形履歴モデルを提案し,これが橋梁の地震応答に及ぼす影響を検討したものである.このモデルでは,EJ間の相対変位に応じて,橋軸方向と橋軸直角方向の連成を考慮すると同時に,EJが破断後摩擦力しか伝達しないとした場合と,EJが噛みこみロックするとした場合の2種類のモデルを提案している.EJに対する提案モデルを用いた動的解析の結果,EJを取り入れることによって,橋脚の塑性化や桁及び橋脚の応答変位,残留変位に大きく影響することを明らかにした.
  • 小池 武, 今井 俊雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 255-266
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/19
    ジャーナル フリー
     レベル2地震動に対する既設構造物の耐震性能を確保するためには,所要の耐震安全性能を実現できる耐震補強工法を選択できなければならない.本研究は,補強杭を用いた既設杭基礎構造物の性能設計法の定式化を行い,耐震性能に関する目標性能を実現するための新設計手法を提案したものである.
和文ノート
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