土木学会論文集A
Online ISSN : 1880-6023
ISSN-L : 1880-6023
66 巻, 2 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
英文論文
和文論文
  • 南波 宏介, 白井 孝治, 三枝 利有
    2010 年 66 巻 2 号 p. 177-193
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     使用済燃料貯蔵施設に民間航空機エンジンが貫入した場合を想定し,水平方向から衝撃荷重を受ける金属キャスクの密封性能を明らかにすることを目的に水平衝突試験を実施した.試験では,内部にHeガスを充填した2/5縮尺キャスクに,高速飛来物を衝突速度57.3m/sで水平衝突させ,キャスク内部からのHe漏えい率,蓋部の横ずれ変位等を測定した.漏えい率は衝突直後に約4×10-6 Pa・m3/sまで上昇したが,試験後20時間経過時点で約1×10-6 Pa・m3/sに収束した.本結果を用いて実物大キャスクの漏えい率を評価すると,1×10-4 Pa・m3/s未満となり,衝突後,直ちに密封性能に影響を与えることは無いものと推察される.また,本試験を対象とした数値解析を実施し,材料モデルの検証,詳細な蓋部周りのモデル化,初期条件の設定を適切に行うことで試験の再現性を確認した.
  • 浅井 光輝, 木村 嘉之, 園田 佳巨, 西本 安志, 西野 好生
    2010 年 66 巻 2 号 p. 194-205
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,ケーソン護岸式処分場の目地部で使用を検討している織布強化ゴム止水板の材料構成モデルの構築のため,既存の異方性弾性モデルを改良し,さらに異方性粘性モデルへと発展させた.また,複数の材料パラメータを決定するための試験方法および同定手順を整理した.実験結果との比較より提案モデルの有効性を確認し,単調載荷時であれば十分な精度を確保した材料構成モデルを構築することができた.
     また,織布強化ゴムの破壊強度は,繊維の破断と織りの解れに支配されていることを実験より確認した.そして,それぞれに対応した破壊基準を設定すれば,上記の材料構成モデルと併用した数値解析より,十分に実用な範囲内で強度予測が可能であることを確認した.
  • 吉田 郁政, 石丸 真
    2010 年 66 巻 2 号 p. 206-218
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     終局限界状態すなわち破壊を適切に解析できる地震応答解析手法の需要が高まっている.そのための有効な数値解析法としてMPS法 (Moving Particle Semi-implicit)に注目し,基礎検討を行った.地震応答解析を対象として定式化を一通り示し,数値検討より空間離散の程度とせん断波及び疎密波の伝播精度の関係について示した.また,有限要素法で用いられることが多い要素型レイリー減衰と等価になるMPS法のための減衰の定式化,及び粘性境界条件,2E入力(上昇波だけを規定する入力)に関する定式化の提案を行い,その有効性を示した.さらに,レイリー減衰を考慮した2次元多層モデルに対して2E入力条件でMPS法と有限要素法による応答計算を行いほぼ同等の応答が得られることを確認した.
  • 西尾 真由子, 武田 展雄
    2010 年 66 巻 2 号 p. 229-238
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,分布型光ファイバセンサの一つであるPPP-BOTDAを用い,そのひずみデータの特長を生かした変位同定アルゴリズムの構築を行い,その有効性を示した.ここでは,取得される分布ひずみデータを逆解析のデータとして用いるだけでなく,ひずみ分布形状不均一度評価を行うことで,構造物の変位境界条件の変化を検知し,同定における最適な構造モデル構築に利用することを提案した.検証では,光ファイバネットワークを埋め込んだCFRP積層板供試体を作製し,その片持ち板曲げ試験におけるたわみ同定を行った.ひずみ分布形状の不均一度評価より固定端条件の変化を適切に検知可能であり,その結果に基づく有限要素モデルのアップデートによって,最適な変位が高い精度で同定可能であることが示された.
  • 忠 和男, 川西 直樹, 櫻井 孝昌
    2010 年 66 巻 2 号 p. 239-252
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     既設橋脚の上部工の耐震補強には,水平耐荷力の増加を抑え,変形性能のみを向上させるという二つの力学上の要求を同時に満たすことが必要とされる.本研究では,既設の円形断面鋼製橋脚について,従来までの縦リブ追加による補強に対して,縦リブの下端と橋脚底面との間にわずかな隙間を設けるという簡単なディテール上の工夫を施した耐震補強法(接触縦リブ補強)を提案し,実験および数値解析の両面からその耐震補強効果について検討した.これらの結果,提案した補強法によると,従来までの縦リブ補強法に比べて変形性能の改善効果については劣るものの,耐震補強により補強前の橋脚に対して水平耐荷力の増加をごく僅かに抑え,変形性能の向上を図ることができることが確認され,新たな耐震補強法としての可能性を示唆した.
  • 藤井 堅, 石川 晋介, 中茂 泰則, 田中 雅人
    2010 年 66 巻 2 号 p. 253-263
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     昨今,少数主桁橋などに極厚板が使用されるようになった.この種の鋼板では製造時の圧延,冷却過程における冷却速度差などにより,降伏応力などの材料特性が板厚方向に変化し,板厚方向に分布する残留応力が発生することが予想される.本研究では,板厚98mmのSM570材を用いて材料特性と残留応力の板厚方向の変化を実験的に調べ,その結果を用いて,弾塑性有限要素解析により力学挙動におよぼす影響を調べた.実験結果から,降伏応力,引張強度は,板の中央で最小,表面で最大となるような分布,逆に,伸びは表面で最小,中央で最大となる分布,また,残留応力は表面で圧縮,中央で引張の分布となること,さらに,有限要素解析結果からは,今回の鋼材では,現在の降伏応力の代表値を適用した場合よりも強度的に安全側となることがわかった.
  • 石川 敏之, 山田 健太郎, 柿市 拓巳, 李 薈
    2010 年 66 巻 2 号 p. 264-272
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     著者らは,疲労き裂の近傍の母材を叩いて疲労き裂の表面を閉口することによって疲労寿命を向上させる工法(衝撃き裂閉口処理:ICR処理)を開発した.この工法を,鋼床版デッキプレートと垂直補剛材の接合部に発生する疲労き裂へ適用することを考え,その効果を明らかにするために,デッキプレートと垂直補剛材の接合部と同じ構造ディテールである面外ガセット溶接継手試験体を製作し,板曲げ振動疲労試験を行った.予め面外ガセット溶接継手試験体に大きさの異なる疲労き裂を発生させ,その疲労き裂をICR処理により閉口し,再度疲労試験を行うことによって,ICR処理による面外ガセット溶接継手に発生した疲労き裂の寿命の向上効果を明らかにする.
  • 冨永 知徳, 高田 佳彦, 中島 隆, 松岡 和巳
    2010 年 66 巻 2 号 p. 273-285
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     近年,疲労損傷が多発している鋼床版構造橋梁の鉛直スティフナー上端部および縦横リブ交差部をUIT(Ultrasonic Impact Treatment)によって疲労性能を向上させることを考えた.供用中の実橋梁において,X線応力測定装置による残留応力測定,荷重車を用いた発生応力の測定,およびUITによる施工試験を行った.この実構造での計測結果を基に,局部応力に着目した疲労試験を実施した.疲労試験では局部応力の絶対値と応力範囲をパラメータに検討を行い,局部応力の絶対値が疲労性能に大きな影響を及ぼすことを確認することができた.また,その結果を現場計測の結果と対照することにより,UITにより鉛直スティフナー上端および縦横リブ交差部の止端部からの疲労き裂の発生を防止できることが確認された.
  • 白旗 弘実, 三木 千壽
    2010 年 66 巻 2 号 p. 286-296
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     鋼製橋脚隅角部の疲労損傷が深刻な問題となっている.既往の研究により,疲労き裂は隅角部の三溶接線交差部に残された溶け残り (未溶着部)から発生していることが多いことがわかっている.本研究では,主にアレイ探触子を用いた超音波探傷試験により,未溶着部を検出することを目的としている.三溶接線交差部の未溶着部は探傷位置が限られるため,板組に関する情報も利用した探傷を提案した.つまり,未溶着部を5つの開先面などにより構成されると考え,はじめに,角溶接部および十字溶接部の開先面の寸法を探傷により推定した.さらに,開先面の情報だけでは得られない面を探傷し,これらを組み合わせることで未溶着部の寸法を推定するものである.未溶着部からと思われるエコーを受信し,欠陥像を再構成した.
  • 岩崎 英治, 鹿毛 勇, 加藤 真志, 中西 克佳, 丹羽 秀聡
    2010 年 66 巻 2 号 p. 297-311
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     塗装を省ける耐候性鋼橋梁は,LCC(ライフサイクルコスト)を低減することが可能なことから数多く建設されている.橋梁断面の殆どの部位で良好な腐食状況にあっても,橋梁断面の部位によっては,好ましくない腐食状況になることがある.本論文では,新潟県内の苗引橋での一年間の観測により,橋梁断面の腐食分布への飛来塩分や降雨による付着塩の洗い流しなどの腐食環境因子の影響について調査し,断面部位別の腐食特性を環境因子から評価する方法について考察した.
  • 笠野 英行, 依田 照彦
    2010 年 66 巻 2 号 p. 312-323
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     2007年8月1日に起きた米国ミネソタ州ミネアポリス近郊のI-35W橋崩落事故をうけて,複数の崩落原因が推測され,原因解明のための調査や研究が行われている.本研究はI-35W橋崩落の原因を,有限要素法の汎用プログラムを用いて解析的に解明したものである.崩壊のメカニズムを解析することによりU10格点部ガセットプレートの損傷が崩壊の起点であることを特定した.また,事故当時の格点部の構造条件および荷重条件のもとでU10格点部が損傷する状態にあったことを明らかにした.さらに,I-35W橋崩落事故を回避できた可能性についても検討し,その回避方法の一例を示した.
  • 川島 一彦, 佐々木 智大, 右近 大道, 梶原 浩一, 運上 茂樹, 堺 淳一, 幸左 賢二, 高橋 良和, 矢部 正明, 松崎 裕
    2010 年 66 巻 2 号 p. 324-343
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     現在の技術基準で耐震設計した高さ7.5m,直径2mの大型RC橋脚に対する加震実験をE-ディフェンスを用いて実施すると同時に,動的解析により橋脚の耐震性を検討した.この結果,1) 本橋脚は1995年兵庫県南部地震による断層近傍地震動に対して曲げ損傷程度の被害で耐えること,2) 載荷繰り返しによる損傷の進展は大きく,さらに継続時間の長い断層近傍地震動に対する耐震性には検討の余地があること,3) コアコンクリートが圧壊して破砕し,軸方向鉄筋及び帯鉄筋の隙間から破砕したコンクリートがまるで爆発のように飛び出し,従来の小型模型を用いた実験とは異なった破壊特性となること,4) 動的解析は塑性応答が小さい段階ではかなりの精度を持つが,塑性応答が著しくなると,まだ精度不十分であることを明らかにした.
  • 今井 俊雄, 小池 武
    2010 年 66 巻 2 号 p. 344-355
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,水道管路として多用される継手構造管路の地震時被害率推定式を提案するものである.従来,地震ごとの観測データに基づいて推定されていた被害率に対し,継手構造の破壊メカニズムに基づく理論解析手法により被害率算定式を定式化している.得られた推定式から離脱防止付ダクタイル鋳鉄管の終局限界強度に対する被害率曲線を算定するとともに,この被害率と整合する新しい耐震設計法,性能設計法を提案する.
  • 佐藤 崇, 宇佐美 勉, 倉田 正志
    2010 年 66 巻 2 号 p. 356-367
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     橋梁の耐震性向上には,座屈拘束ブレ-ス(BRB)やせん断パネルダンパー(SPD)のようなエネルギー吸収部材を取り付けることが最も効果的な方法だとされている.本研究では,耐食性が高く,軽量で施工性に優れた構造用アルミニウム合金(A5083P-O)をBRBに使用することを試みた.ライフサイクルに渡って取り替えが不要で,3回程度の大地震に耐えうるような制震ダンパー(高機能制震ダンパー)の目標性能を保有するかどうかを確かめるために,A5083P-OでBRBを製作して一連の性能実験を行った.また鋼材に対して多くの実績のある修正2曲面モデルを修正した,構造用アルミニウム合金に対する新しい構成則を用いて,実験結果を数値解析的に再現すると共に,高機能BRBに要求される種々の性能に関する検討を行った.
  • 石川 敏之, 大倉 一郎
    2010 年 66 巻 2 号 p. 368-377
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     複数のCFRP板を鋼板に接着する際,CFRP板に段差を設けると,接着剤に生じるせん断応力を低減でき,CFRP板が鋼板からはく離するときの荷重,すなわち,はく離荷重が上昇することが知られている.これまでに,一つの段差を有するCFRP板接着鋼板に対して,鋼板の応力を所定の値まで低減させ,はく離荷重を最大にする各CFRP板の必要接着長さと最適剛性を理論的に明らかにした.本研究では,1枚のCFRP板が鋼板の上下面に対称に接着されたCFRP板接着鋼板において,CFRP板の接着長さが長くなると,鋼板中央に生じる応力と,CFRP板の付着端の接着剤に生じる高いせん断応力がそれぞれ一定値に収束する性質を各段に適用することにより,複数の段差を有するCFRP板接着鋼板のはく離荷重を最大にする各CFRP板の必要接着長さと最適剛性を与える.
  • 宮下 剛, 長井 正嗣
    2010 年 66 巻 2 号 p. 378-392
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,一軸引張りを受ける多層のCFRPが接着された鋼板に対する新たな応力解析手法を提案する.具体的には,まず,各層のひずみを状態変数とみなし,微小区間における力の釣合いから,1次のベクトル形式の同次微分方程式を導出する.次に,このとき構成される行列に対して,固有値解析を数値的に行い,ひずみの一般解を求める.一般解に含まれる未定係数は,各層のひずみに関する連続条件ならびに境界条件より決定する.提案手法の妥当性を解析解,屋内実験ならびに有限要素解析より検証したところ,提案手法は解析解と完全に一致する解を与え,さらに,解析解の存在していない3層以上の多層のCFRPが接着された鋼板の応力解析が可能となることを確認した.
  • 稲葉 尚文, 奥井 義昭, 長井 正嗣, 本間 淳史, 春日井 俊博, 野呂 直以
    2010 年 66 巻 2 号 p. 393-405
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     我が国における鋼および合成橋梁の設計法は許容応力度をベースとしているが,世界のスタンダードは限界状態設計法である.とくに合成構造では降伏強度に比べて大きな塑性強度が期待できることから,限界状態設計法への移行によるメリットが期待できる.限界状態設計法の導入にあたっては,合成I桁の終局強度の正確な評価が重要となる.本文では,合成I桁の曲げとせん断の相関強度及びせん断強度に着目した実験を行った結果を報告する.あわせて,曲げを対象とした著者らの過去の数値計算に基づく成果を交え,曲げ,せん断強度評価法ならびに相関強度照査法の提案を行う.
feedback
Top