土木学会論文集A
Online ISSN : 1880-6023
ISSN-L : 1880-6023
66 巻, 3 号
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和文論文
  • 下里 哲弘, 三木 千壽, 時田 英夫, 町田 文孝, 柳沼 安俊, 小野 秀一
    2010 年 66 巻 3 号 p. 406-419
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     既設鋼製橋脚隅角部に多数の亀裂が発生し,その原因と対策が求められている.本研究では,隅角部の疲労上の弱点とされている3溶接線交差部の溶接状態および応力状態を実橋隅角部と同様に再現した実物大の疲労試験体を用いて,静的および疲労試験を行い,隅角部の疲労強度低下の主要因を調べた.その結果,疲労強度低下の主要因は,3溶接線交差部の溶接表面近傍の溶接欠陥と溶接内部に形成される板組固有の内在キズ(Δゾーン)の両者であった.また,亀裂発生隅角部の多くは1960~1970年代に製作されており,その年代の鋼材への補修溶接の適用は困難である.よって,隅角部の疲労強度低下要因である3溶接線交差部の溶接不具合を機械的に除去し,補修する大コア法を提案し,その大コア法は既設鋼製橋脚隅角部の疲労強度を大幅に向上することを示した.
  • 田村 洋, 佐々木 栄一, 山田 均, 勝地 弘
    2010 年 66 巻 3 号 p. 420-434
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,実際に被災した鋼製橋脚を対象に,地震時脆性破壊の発生要因を破壊起点の応力三軸度に着目し検討した.本研究では特に,破壊起点となった溶接部の形状が破壊起点の応力三軸度分布に及ぼす影響について検討するため,実際の破壊起点の溶接部形状の他にも複数の形状を対象とし,弾塑性FEM解析による解析的検討を行った.その結果,溶接部に発生する応力三軸度は止端半径や等脚・不等脚といった溶接部形状の影響を受けることが明らかとなった.特に,対象橋脚の破壊起点となった止端半径が小さく不等脚の溶接部では,地震時に高い応力三軸度が発生し脆性破壊発生のリスクが高まっていたことがわかり,破壊起点の溶接部形状が破壊発生要因の一つとなった可能性が示された.
  • 山野辺 慎一, 曽我部 直樹, 河野 哲也
    2010 年 66 巻 3 号 p. 435-450
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     RC橋脚の耐震設計では,橋軸および橋軸直角方向の地震動が個別に考慮される.しかし,実際には,それぞれの方向の地震動が同時に構造物に作用することが考えられ,各方向の地震動を単独で考慮した場合に比べ,橋脚の損傷が大きくなる可能性があることが報告されている.これに対し,超高強度繊維補強コンクリート(UFC)製プレキャスト型枠をRC橋脚の基部に適用すれば,塑性ヒンジ区間のかぶりが高強度化され,二方向からの地震動に対しても高い耐震性能を実現できることが考えられる.そこで,本研究では,UFC製プレキャスト型枠を基部に適用したRC橋脚に対し,二方向繰返し載荷実験および解析を行い,二方向からの地震動に対する同橋脚の耐震性能について明らかにした.
  • 街道 浩, 松井 繁之, 岩田 幸三
    2010 年 66 巻 3 号 p. 451-466
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     ロビンソン型の合成床版は,鋼板とコンクリートをスタッドにより合成し,コンクリート打設時の鋼板の変形を抑えるために鋼板を横リブで補剛した床版形式である.近年,わが国においてこの形式の合成床版が多くの道路橋の床版に適用されている.本研究では,著者らのこれまでの研究成果にもとづいて,この合成床版を対象とした性能照査型設計法を提案した.具体的には,床版に関する要求性能および性能項目を整理するとともに,性能照査に用いる床版固有の照査活荷重および部分安全係数について検討し,実際の合成床版の性能照査を実施した.この結果として,提案する性能照査型設計法によると,従来の仕様規定型設計法に比較して長支間床版の床版厚を20%程度低減できることを明らかにした.
  • 中山 太士, 木村 元哉, 池田 学, 北 健志, 長嶋 文雄, 松井 繁之
    2010 年 66 巻 3 号 p. 467-476
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     道路上を立体交差する鋼鉄道橋では,道路を走行するクレーン車等に衝突される事故が報告されている.この事故が発生した場合,現場技術者は即座に列車を抑止させ,鋼鉄道橋の損傷状況を調査し,抑止継続あるいは運転再開を判断している.軌道や支承部,主桁等に著しい損傷が発生した場合,抑止継続の判断は容易であるが,主桁下フランジの局部的な変形や面外変形のみが残留した場合,明確な運転再開評価法がなく,現場技術者の判断に委ねられているため,この評価法の策定が課題となっている.本研究は,この課題解決を目的に,過去の損傷事例の調査結果および鋼材の材料特性,鋼桁の耐荷力特性を検討した.その結果,下フランジの局部変形および面外変形の限界量を明らかにし,運転再開評価法を策定した.
  • 阿部 雅人, 藤野 陽三
    2010 年 66 巻 3 号 p. 477-490
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     メンテナンスや既設構造物の性能評価において,荷重が加わった際の変位応答値は重要な指標である.しかし,一般に,変位計測は固定点を要するため,土木構造物のスケールで常時実施するのは困難であるか高費用であって,多くの構造物に対して幅広く適用するには限界がある.本研究では,設置が容易な加速度計測に基づく最大変位推定の実現を目的として, 1自由度系を対象とした不規則振動理論に基づく加速度計測からの最大応答変位ならびに構造パラメータの推定法を構築し,数値例ならびに明石海峡大橋における実測例によってその精度・有効性を検証した.
  • 牧 剛史, 川村 力, 上田 多門, 土屋 智史, 渡辺 忠朋
    2010 年 66 巻 3 号 p. 491-504
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     アーチ材にRC構造,鉛直材に鋼管,補剛桁にPC構造が採用された鋼-コンクリート複合PCランガー橋が建設された.本研究では,複合構造接合部の有限要素(FE)解析による照査事例の蓄積と手法の確立を念頭に,過去に例がない本複合ランガー橋のアーチ材と鉛直材との鋼-コンクリート接合部を対象とした3次元FE解析を行った.この種の接合方式に対してFE解析を用いた照査を行う際の,モデル化と構成則の考え方について提示し,FE解析が接合部模型の実験挙動を精度良く追跡可能であることを示した.さらに,実橋りょう接合部の部分モデル解析を行い,終局状態はアーチ材の曲げ耐力によって決定され,当該接合部が鉛直鋼管から作用する引抜き荷重に対して十分な抵抗力を有することを数値解析的に確認した.
  • 車谷 麻緒, 寺田 賢二郎, 竹内 則雄
    2010 年 66 巻 3 号 p. 505-515
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,準脆性材料の破壊力学モデルを考慮した微視スケールの離散ひび割れ進展解析により,破壊進行領域での力学現象を再現し,その破壊進行メカニズムを説明するものである.空隙を起点とする準脆性破壊の解析例において,微細ひび割れが形成・連結・開口・閉口を繰り返すことにより,巨視的な強度・靱性に影響を与える可視ひび割れへと成長するといった,コンクリートに代表される準脆性材料に特有の破壊進行プロセスを再現した.また,材料の靭性の大小に起因して,微細ひび割れの形成パターンが大きく異なり,これが微視スケールでの変形・応力状態を特徴づけた後,巨視的な強度・靭性の相違につながっていることを示すことにより,微細ひび割れが分散・多発する繊維補強セメント系材料の力学機構を明らかにした.
  • 吉岡 勉, 伊藤 信, 山口 宏樹, 松本 泰尚
    2010 年 66 巻 3 号 p. 516-534
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     近年,損傷事故が相次いでいる鋼トラス橋に対し,振動特性変化に基づく健全度評価法の適用を意図して,トラス橋特有の振動特性を精緻に解明するとともに,維持管理の上でターゲットとなる振動モードや振動指標の整理を試みた.具体的には,実在するトラス橋において多点同期計測を行い,実験・理論の両モード解析から振動特性を分析するとともに,斜材に損傷を有したときの実測データから損傷検知の可能性について検討を行っている.その結果,トラス橋の振動モードとしてトラスモード,斜材卓越モード,斜材連成モードが存在し,斜材の局所的な構造特性の変化が斜材卓越・連成モードに比較的顕著に表れること,斜材連成モードのモード減衰に着目すれば少ない計測点で斜材損傷による変化を捉えられる可能性があること等,有用な知見を得た.
  • 室野 剛隆, 野上 雄太, 宮本 岳史
    2010 年 66 巻 3 号 p. 535-546
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,広域な鉄道システムの地震時安全性に関するスクリーニングを目的として,想定される地震に対して構造物の損傷及び車両の走行安全性を統一的な指標で連続的に評価するための予測手法を提案した.本手法では,被害想定に必要な情報は,地震ハザードに関しては,地表面地震動の最大加速度PGAと最大速度PGVの2つのみである.また,構造物に関しては,降伏震度khyと降伏周期Tsのみである.非常に少ないパラメータで被害を予測でき,また,構造物の被害予測と車両の走行安全性を,構造物の応答塑性率を介して,互いに関連した指標を用いて連続的に評価できる点が利点である.また,その妥当性を兵庫県南部地震での構造物の損傷事例や新潟県中越地震における脱線事例を例に検証した.
  • 古市 耕輔, 一宮 利通, 平 陽兵, 藤井 秀樹
    2010 年 66 巻 3 号 p. 547-560
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     開削トンネルにおけるソイルセメント柱列壁芯材(H形鋼)と本体構造側壁(RC)を一体化した合成土留め壁構造は,芯材を有効利用することで掘削土量の低減など工費削減が期待できる構造である.本論文は,芯材と本体側壁とを孔あき鋼板ジベルで結合する合成土留め壁構造を提案するものである.この合成構造の耐荷性能及び隅角部の耐震性能を把握するために,側壁部と隅角部をモデル化した載荷試験をそれぞれ実施した.側壁部をモデル化した梁部材試験体では,適切に孔あき鋼板ジベルを配置することで H形鋼とRCとは一体として挙動し,合成構造部材として成立することを確認した.隅角部をモデル化したL形試験体においては,提案する配筋方法が地震時断面力,及び繰り返し荷重において十分機能することを確認した.
  • 酒井 久和, 長谷川 浩一, PULIDO Nelson
    2010 年 66 巻 3 号 p. 561-567
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     ライフラインなどの線状構造物の耐震性は,主として地表面の最大応答加速度(PGA)や速度(PGV)などに基づいて検討されているが,その被害は地盤ひずみの影響を大きく受け,過去の被害地震においても,PGAやPGVが最大の地域で埋設管の被害が集中しているとは限らない.そこで,本研究では,地盤ひずみに相関の強い地動の空間的変動を広域にわたり求める方法を示し, 2004年新潟県中越地震において水道管の被害に対する指標としてその有効性の検討を行った.その結果,新潟県中越地震では,液状化や構造物の被害に伴わない場合に,PGV GradientがPGVよりも管の損傷との相関が強く,提案手法が広域な上水道管ネットワークの被害予測の一次スクリーニング手法として有効であることが確かめられた.
  • 森 猛, 内田 大介, 福岡 哲二, 明見 正雄
    2010 年 66 巻 3 号 p. 568-575
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     荷重伝達型の十字溶接継手の疲労破壊起点としては,溶接止端部と溶接ルート部が考えられる.溶接ルート部から発生したき裂を表面に現れるまでに検出することは難しいため,その防止のための疲労強度評価は鋼構造物を維持管理する上で特に重要である.十字溶接継手がルート破壊する場合の疲労き裂発生・進展性状や疲労強度については,既に数多くの検討がなされているが,その多くは軸方向荷重を受ける場合を対象としている.しかし,構造によっては,主板に板曲げ生じる場合も考えられる.本研究では,モデル試験体の疲労試験と板厚や溶接サイズなどをパラメータとした疲労き裂進展解析の結果を報告するとともに,板曲げを受ける十字溶接継手・ルート破壊の疲労強度評価式を提示する.
  • 岡田 誠司, 小野 潔, 谷上 裕明, 徳永 宗正, 西村 宣男
    2010 年 66 巻 3 号 p. 576-595
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     レベル2地震動に対する耐震性能照査において,吊橋の鋼製塔柱等には降伏軸力比が50%程度の大きな圧縮軸力が生じることが報告されている.しかしながら,このような高圧縮軸力が作用する鋼部材の耐震性能は十分に明らかにされていない.そこで,本論文では,高圧縮軸力が作用する矩形断面鋼部材の耐震性能を把握するため,降伏軸力比が最大で50%程度の高圧縮軸力を供試体に作用させて正負交番載荷実験を行った.さらに実験を補完するため鋼材の繰返し塑性履歴特性を精度良く再現できる構成則による弾塑性有限変位解析を行った.そして,それら実験結果及び解析結果を基に,降伏軸力比,幅厚比パラメータ等の力学パラメータが鋼部材の耐震性能に与える影響を評価し,降伏軸力比が50%までの矩形断面鋼部材の耐震性能評価式を提案した.
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