土木学会論文集D1(景観・デザイン)
Online ISSN : 2185-6524
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和文論文
  • 滝澤 恭平, 立林 泰典, 竹内 勇貴
    2022 年 78 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     都市の中小河川において,市民協働により河道内の自然再生を行うことは,河川環境・景観を改善させ,市民の川づくりへの関与を高める上で重要である.実施に際しては,多様な市民の合意形成,アイディア集約と,科学的な河川デザインが両立した計画・施工が求められる.横浜市帷子川での市民との石組み水制づくりの検討と市民普請のプロセスの分析を通して,協働型の河道内自然再生の方法について考察することを本研究の目的とする.施工一年後に,瀬の形成,流れの明瞭化,水制の主要構造の残存,土砂堆積が確認された.結果を踏まえ,a.合意形成プロセス:経験に基づいた学習コミュニティへの変換,b.計画プロセス:応答的プロセスマネジメント,c.河川の営力を踏まえた河川環境デザイン手法,d.市民が川づくりに関与するための技術について考察した.

  • 松岡 七海, 岡田 智秀
    2022 年 78 巻 1 号 p. 18-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,区立では都内初の人工海浜となる“大森ふるさとの浜辺公園”を対象に,都市型人工海浜の整備プロセスと開業後の利用特性について明らかにした.その結果,都市型人工海浜整備に向けた示唆として,[1] 整備期間は区立ゆえに国や都との調整で概ね10年が必要とされること,[2] 整備費用は区の独自財源を不要にできたこと,[3] 計画初期段階では地域住民に寄り添った行政対応が重要であること,[4] 海浜整備段階では,工事中であっても地域住民の関心を保つための工夫が重要であること,[5] 海浜地の維持・運営に関する継続性や発展性として,背後に隣接する複数の商店会による組織構築が重要な役割を担っていること,以上5項目とともに,「地縁性」「多様性」「市街地近接性」など5つの利用特性を導いた.

  • 谷川 陸, 山口 敬太, 川崎 雅史
    2022 年 78 巻 1 号 p. 31-48
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,大正期の京都三山における鉄道開発に対する眺望景観保全の実態を,[1]開発許可申請の手続き,[2]眺望景観の評価手法,[3]風致維持の方策,[4]風致保全の理念,の観点から明らかにし,以下の成果を得た.[1]許可申請においては,京都府土木課が計画段階から事前協議を行い,技師の調査や社寺課の意見に基づき風致指導を行った.[2]眺望景観の評価においては,市街地内の名勝や道路・橋梁からみた中遠景を基準とし,望見区間を明示するなどの技術的手法をとった.一方,不許可の場合には,山稜構成樹木の伐採等をその根拠とした.[3]風致維持方策としては,谷を通る経路選定,樹木による構造物の遮蔽等の指導が行われた.[4]山容・山姿の美しさだけでなく,史蹟・名勝の歴史的価値,神域・霊域の尊厳が重視され,その際には社寺課の意見が尊重された.

  • 田中 椋, 山口 敬太, 川崎 雅史
    2022 年 78 巻 1 号 p. 49-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,近代京都を代表する20編の随筆の中の風景記述を対象として,感覚表現に着目して表現の内容を分析し,風景記述の表現上の特徴を明らかにすることを目的とする.風景記述から589の感覚表現を抽出・分析することで,写実性や色彩,明暗などの視覚的表現,触覚や聴覚などの身体感覚的表現,様態から受ける印象や興味・快,気分の投影や追憶,季節感の感受に関わる主観的感覚の表現,文学や歴史性,宗教的意味に関わる連想的表現などの,多様かつ豊富な感覚表現の表現内容を整理し,その具体的内容を明らかにした.さらに,感覚表現の共起性について分析を行い,視覚的表現を中心とした複数の感覚による表現の組み合わせの傾向と表現上の特徴を明らかにした.

  • 安藤 理紗, 福島 秀哉
    2022 年 78 巻 1 号 p. 64-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,石垣島の赤瓦屋根を対象として,「地域らしさ」をその客観的特性とともに,住民等の主観的な認識に基づいて評価し,時代によって変化しながらも持続可能な「地域らしい」景観形成の可能性を探るものである.各赤瓦屋根の街並み景観の形成過程を整理した上で,在来赤瓦屋根家屋の居住経験の有無と,集落ごとの赤瓦屋根に関する特徴の違いに着目して,住民による愛着・選好の特徴を分析した.その結果,在来形式の赤瓦屋根への愛着・選好形成の一部は赤瓦屋根に関する生活経験に基づき,行政施策により形成された赤瓦屋根への愛着・選好形成の一部は在来形式との比較に基づくことを示した.行政施策の推進や新たに形成される赤瓦屋根への愛着・選好を在来形式の赤瓦屋根が支えていたことを確認し,今後のまちづくりへの課題を指摘した.

  • 田中 椋, 山口 敬太, 川崎 雅史
    2022 年 78 巻 1 号 p. 84-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,和歌表現を通じて歴史的に形成された場所固有の景物と場所のイメージの特徴を,その領域性に着目して明らかにするものである.具体的には,京都西山を対象に,近世地誌・名所案内記類から抽出した和歌を,その表現や景物,場所の歴史的・社会的文脈に基づいて類型化し,和歌に詠まれた場所のイメージの特徴について考察を行った.また,イメージの類似性に着目して,場所ごとのイメージの関係性やそれらの時代変化を考察した.その結果,複数の場所間で高い類似性・共通性をもつ,イメージの領域的なまとまりが形成されていたことを明らかにした.また,この領域内において,時代を越えたイメージの継承や再形成が認められたことを明らかにした.

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