土木学会論文集A2(応用力学)
Online ISSN : 2185-4661
ISSN-L : 2185-4661
73 巻, 2 号
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応用力学論文集Vol.20(特集)
  • 佐藤 完, 北島 弘子, 高橋 美紀, 松島 亘志
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_517-I_526
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    砂礫粒子の破砕特性を評価するために,粒子形状の角張った山砂と丸い川砂の二種類の試料を用い,回転数,回転速度,拘束圧を変化させて回転せん断試験を実施した.また,試験前後の試料の粒度分析を行った.その結果,どの条件でも十分にせん断が進行すれば,間隙比とせん断応力比,試料の粒度分析から得られるフラクタル次元は,同様の定常状態に達すること,粒子破砕およびそれに伴う体積圧縮は,回転の比較的初期の段階でより顕著に進行すること,回転速度の変化は今回の実験条件の範囲(0.21≦γ≦210(1/s))ではせん断応力,間隙比の変化に顕著な影響を及ぼさないことなどがわかった.その上で,二試料の単粒子破砕実験結果を基に,回転せん断試験の結果を系統的に評価できるマイクロメカニックスモデルの構築を行い,せん断に伴う体積圧縮は,間隙率とせん断ひずみが両対数で直線的な関係があること,圧縮が顕著に始まるせん断ひずみは,与える拘束圧と単粒子破砕強度の比によって表現されること示した.
  • 当流谷 啓一, 松島 亘志
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_527-I_534
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    隕石衝突によるクレーター形成プロセスは,惑星表層の地形・地質進化に重要な役割を果たすため,その力学的メカニズムの詳細な解明が求められている.本研究では,NASAの月周回無人衛星(LRO)に搭載されたカメラ(LROC)の高解像度データを利用し,海と高地の比較的若い月面クレーター136個を対象として,その分析を行った.また,2次元SPH法を用いた数値解析を行い,様々なサイズのクレーターの形状特性や生成過程を調べて,観測との比較を行った.その結果,クレーターの直径に対する深さの比は,直径が10kmを超えると急激に減少すること,クレーター直径が20km以上では中央丘が現れること,などの特徴に対して,画像解析とSPH解析の結果が一致した.またクレーター中央丘は,隕石衝突直後に形成される掘削抗の斜面が内側に円弧滑りを生じることによって,より深い場所の岩石物質が表層に持ち上がる事によって形成されること,その円弧滑りメカニズムがクレーター直径深さ比の変化に影響を及ぼしている可能性があることが解析により示唆された.
  • 中井 健太郎, 野田 利弘, 河村 精一, 白鳥 洋平
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_535-I_544
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    地盤に長尺の杭が打設されている場合,地盤変位が大きく生じる大地震時には,杭の損傷が懸念される.これまでに,地盤の降伏および杭周面地盤の回り込みの影響を確認するために,土層内に配置された杭に強制変位を与える模型実験が実施され,杭に作用する地盤反力と粘性土のせん断強度の関係を把握している.本報では,模型実験のシミュレーションを行い,数値解析コードのValidationを行うとともに,自然堆積粘土地盤を想定した数値実験を実施した.その結果,1)間隙水のマイグレーションの影響で,地盤反力は,ある載荷速度領域内で急変すること,2)鋭敏比が大きく軟弱な自然堆積粘土地盤を想定した場合,再構成地盤に比べて地盤反力が小さくなるとともに,地盤内で局所的なせん断帯が次々と発生し,せん断ひずみの発生領域が広がることを示した.
  • 田中 仁, HOANG Vo Cong, DUY Dinh Van, 三戸部 佑太, VIET Nguyen Trung
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_545-I_552
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    河口部周辺における海浜の侵食問題は国の内外を問わず大きな課題である.そこで,本論文においては,(1) 河川流出土砂の増減,ならびに(2) 河口開口部の移動による河口デルタ地形の変化について解析的な検討を行った.解はワンラインモデルを基本とし,無限長の砂浜を対象とする基本解の線形重ね合わせにより二つの条件に対する解析解を導いた.これにより,河口デルタの侵食・回復過程を容易に予測することが可能となった.また,一般に砂浜端部には岬や人口構造物などの端部境界が存在することから,(1)のケースについて,すでに著者らにより得られている有限長砂浜でのデルタ発達過程に対する解の重ね合わせにより,デルタ変形過程に関する解を得た.侵食波の端部への到達以降,先述の無限域での解と比べて大きな差異を示すことが判明した.
  • 木村 一郎, 北園 和也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_553-I_562
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    河川流域における取水ゲートや橋脚,水制などの河川構造部周辺の流木集積スタック現象の予測解明,治水,利水,環境において非常に重要であり,これには流れと流木挙動の三次元性が大きく関与する.本研究では,障害物周辺の流木挙動の三次元性の程度を表すパラメータとして流木リチャードソン数を提案する.実験結果から,流木リチャードソン数が10以下では三次元性が卓越し,これ以上では水面付近の二次元挙動が卓越することを示した.また,流木スタックの三次元性は障害物による流木捕捉率を低下させることも示した.一方,開水路三次元(3D)流れの数値解析モデルと,流木挙動を水面付近の二次元(2D)運動に限定した流木モデルにカップリングした3D-2D流木モデルを構築した.第一種二次流の影響を受ける湾曲場で本モデルと2D-2Dモデルの結果を比較することで,流れの三次元考慮の必要性を示した.一方,3D-2Dモデルにより前述の障害物周辺の流木スタック現象の再現を試みた結果,本モデルの適用範囲は流木リチャードソン数が10以上の場合に限定されることを示した.
  • 冨永 晃宏, 佐藤 理佳子
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_563-I_570
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    停滞した流れ場の水質改善を目的として,流水断面にスリットを設けた横断壁を設置し,流路を狭めて流れを加速する連続スリット壁を考えた.連続スリット壁のパラメータとして,スリット位置,スリット幅,流下方向間隔を変化させ,流れ構造の変化についてPIV実験により検討し,この結果を元に溶存酸素濃度に及ぼす影響について数値計算により検討した.スリット壁の設置により,高速な蛇行流とこれに伴う再循環流量域が形成された.スリット壁間の流速は,開口率の減少とともに増大するが,スリット位置が側壁へ近づくほど増大した.スリット壁を越流する場合は,スリット壁間の平均流速は著しく減少し,流れは3次元的となり,鉛直方向流速は大きくなった.水深平均2次元の数値計算は,非越流のスリット壁間の流れ構造を良好に再現し,溶存酸素に関しては,再循環渦内で溶存酸素濃度が増大し,滞留域が大きいほど全体としての濃度も増大することが示された.
  • 安田 陽一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_571-I_578
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    横引き管の排水機能を明らかにするために,自由放流端を有する管から流出する流れを対象に実験的な検討を行った.遮蔽板直上流側の相対水深の増加に伴って自然に満水状態になる条件では,横引き管の相対長さを短くした場合,横引き管の勾配を大きくし場合,Torricelliの定理に準じて定義された流量係数Cdの変化から,相対水深の増加に伴う排水機能の大きな向上が期待できることが分かった.この結果に伴い,相対水深の変化によって,流入口での局所損失係数が1.5から0.2前後まで変化することを明らかにした.ただし,横引き管の勾配を大きくしすぎたり,管路の相対長さが短くなりすぎたりすると,ある段階で,相対水深が増加しても,横引き管内の流れが常に開水路射流となり,流入部に剥離が継続するため,排水機能が極度に低下することが分かった.
  • Kattia Rubi ARNEZ FERREL, Ichiro KIMURA, Yasuyuki SHIMIZU
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_579-I_586
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    In this paper two numerical models are analyzed and then, the advantages of each model are combined in order to simulate bank erosion in a river bend. The coupled model includes the effect of slump blocks produced by cantilever failure in cohesive banks and a corrected velocity profile that takes into account the lateral inclination of velocity profile at a bend. The model is developed for simulating flow in an infinitely long circular channel and is applied to seven cases. Four cases are tested for cohesive banks and three cases in non-cohesive materials. The capacity of the model to simulate the effects of slump blocks in cohesive banks is qualitatively analyzed and, for the case of non-cohesive banks, the numerical model is validated using experimental data obtained from the literature.
  • 楊 宏選, 陸 旻皎, 熊倉 俊郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_587-I_596
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    自由噴流は周囲流体を連行しながら成長していく特性上,側方から流体が流入できるような開境界を要求するが,噴出面を除いたすべてを開境界にすることは,数値不安定を起こしやすく,数値流体力学において好ましくない.自由噴流の側方境界に決定的な方法がなく,安定的に計算するために様々な工夫がなされている.本研究は半無限静止空間に放出される自由噴流の側方境界条件をいくつか検討し,それぞれの長所と短所を層流の二次元自由噴流の計算で明らかにした.また,Traction-Free条件の短所を克服するために,直応力のみをゼロとするSimplified Traction-Free条件を提案して,二次元と三次元の層流と乱流で自由噴流の連行を損なわずに計算できたことを確認した.この条件は開境界でありながら比較的高い数値安定性を有し,OpenFOAMなどのソフトウェアへの実装も極めて簡単である.
  • Kristine Domogoy SANCHEZ, Norihiro IZUMI, Kazuyoshi HASEGAWA
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_597-I_605
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    Linear stability analysis of fluvial sand bars with bank erosion is performed with the use of shallow water equations in two-dimensional flow, Exner equation and a process-based bank erosion model. An initially straight channel with erodible bed and constant width is assumed. The bank is also assumed to be erodible and composed of fine-grained sediment. The conditions allowed for alternate sand bars to grow are investigated considering the variation of aspect ratio, the magnitude of the transverse bank slopes, and the case of a channel with non-erodible banks. It is found that there exists a stable region in the range of small aspect ratios and small wavenumbers for the case of bar instability with bank erosion. The results also suggest that aside from the aspect ratio, the bank slope is one of the parameters that influence bed instability for the case of channels with erodible banks. This reveals that bank erosion has a stabilizing effect on the formation of alternate bars by increasing sediment supply, leading to an increase in bar wavelength.
  • 吉田 圭介, 前野 詩朗, 間野 耕司, 岩城 智大, 小川 修平, 赤穗 良輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_607-I_618
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    河川管理においては植生に起因する流水抵抗を精度良く推定することが重要である.近年,航空レーザー測深(ALB: Airborne Laser Bathymetry)技術が発達し,長い河川区間においても水面下を含む河道内の平面地形および植生高を高解像度で計測できるようになってきた.一般に,河川に繁茂する植生による流水抵抗はその植生種に依存するため,対象河川の植生種の空間分布を容易に把握できれば,洪水流解析の精度向上が期待できる.そこで,本研究では,旭川下流河道を対象として,ALB計測により得られる点群データを用いて植生種(草本類,木本類および竹林)を決定する方法を検討した.また,その結果を用いて流水抵抗に関する植生情報を得た.その後,植生情報を使った洪水シミュレーション結果と観測結果を比較して,提案した手法の妥当性を検討した.その結果,既往の植生種データを用いた解析結果よりも本研究で得られた植生種データを用いた解析結果の方が観測結果を良好に再現できることがわかった.
  • 横嶋 哲, 浅田 英義
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_619-I_629
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    静水中を多数の粒子が一様に沈降する系における粒子形状の影響を2次元数値実験によって検討した.本報は,楕円粒子を対象としてそのアスペクト比の影響を検討した前報(土木学会論文集A2, 71(2), I_719, 2015)の発展と位置づけられ,矩形粒子を検討対象に加え,より一般的な知見の獲得を目指した.沈降開始直後には,粒子の初期配置によっては特異な沈降挙動が認められるものの,これは粒子形状に対する球形仮定の有効性を大きく損なうものではない.他方で終端沈降挙動については,粒子形状やアスペクト比の違いの影響は,多数の粒子が同時に沈降する,より現実的な系では和らぐものの,依然として真円粒子の終端沈降速度は他のケースと比べて有意な差異を示し,球形仮定の適用性に注意が促された.
  • 石原 将太郎, 大塩 貴之, 河原 能久
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_631-I_638
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    河川における植生群は治水や河川環境に大きな影響を及ぼすため,植生を有する流れに関する研究が多く行われてきた.しかし,植生域への流入部や植生域からの流出部における流れの急激な変化や植生の傾斜が流れに及ぼす影響にb関する研究は数少ない.本研究は,水没する植生域を通過する際の流れの応答特性と剛で傾斜した植生が流れに及ぼす影響を実験的に明らかにすることを目的とした.計測結果より,植生域の流入部や発達部での流れの挙動は既往の研究成果と一致するが,流出部では植生域の直下流において主流速やレイノルズ応力が最大値をとることを明らかにした.また,植生の傾斜が植生層内の主流速の増加や全水深にわたってのレイノルズ応力の減少をもたらすことを示すとともに,植生の傾斜が植生の抗力係数を減少させることを示唆した.
  • 池田 裕一, 飯村 耕介, 泉 祐太, 橋本 幸志郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_639-I_648
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    直線水路に交互砂州地形を模した河床形状を成形し,勾配と流量を広く変化させて流況を観察したところ,4通りの流動形態が確認された.すなわち(A)局所的な射流が発生し砂州地形により流れが左右岸に集中するもの,(B)局所的な射流が発生するが左右岸への集中はさほど見られないもの,(C)明確な射流域は見られないが水面の揺動が見られるもの,(D)全体的に常流で流下するものである.つぎに,各種流動形態の水深・流速分布を測定したところ,流動形態AとBでは,跳水によるエネルギー損失が支配的であること,水面形や流速分布の変化が流れ構造に大きな影響を与えていることがわかった.さらに側岸侵食実験を実施したところ,流量が小さくても流動形態Aの場合は,流量が大きい流動形態Dと同等以上の側岸侵食を発生させることがわかった.
  • 関屋 英彦, 木ノ本 剛, 田井 政行, 古東 佑介, 丸山 收, 三木 千壽
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_649-I_660
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    橋梁の維持管理において,支承部の健全度評価は重要であり,簡易かつ定量的な手法が求められている.そこで,本研究では,MEMS加速度センサによるニ箇所同時変位計測に基づき,簡易かつ定量的な支承部の健全度評価手法の提案を行った.具体的には,まず活荷重に対する支承部の変位応答を分析し,その変位応答の特徴を明らかにした.明らかにした特徴を利用することによって,MEMS加速度センサを用いて計測した支承部の加速度記録から変位応答の算出を検討した.次に,MEMS加速度センサによる加速度計測から算出した支間中央主桁下フランジの変位応答と,可動支承部の変位応答に基づき,支承部の健全度評価手法を提案した.最後に,FE解析にて,健全時および損傷時の支承部を再現することにより,提案手法の実用性を検証した.
  • 谷口 賢斗, 石川 敏之, 堀井 久一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_661-I_669
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    損傷した鋼構造物の当て板接着補修が適用され始めているが,一方で,脆性的なはく離破壊が懸念されている.一般に接着剤の品質管理として,1.6mmの薄い鋼板を用いて,接着によるラップ長が12.5mmのシングルラップ接着接合の引張せん断強さ試験が行われ,平均せん断応力(引張せん断接着強さ)が利用されている.しかし,この試験では幾何学的非線形状態となること,平均せん断応力では,はく離破壊が適切に評価できないなどの課題がある.そこで,本研究では,幾何学的非線形を考慮したシングルラップ接着接合継手の接着端部に生じるせん断応力と垂直応力を数値解析により算出し,はく離破壊時のそれらの値が,これまでに提案されているはく離に対する破壊基準に適用できる可能性があることを示した.
  • 松本 理佐, 畠堀 貴秀, 服部 篤史, 田窪 健二, 河野 広隆
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_671-I_678
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    近年,鋼橋の溶接部から多数の疲労損傷が報告されている.実橋梁に発生した疲労き裂は,一般的に磁粉探傷試験(MT)によって検出される.しかし,MTによる検査では,塗膜除去と再塗装を要するため,コスト・時間を要するという課題がある.さらに,MTは計測範囲が小さいという問題もある.そこで,本研究では,表面弾性波の伝播の様子を画像計測によって可視化することで,塗膜上から疲労き裂を検知できるかどうかを確かめた.計測結果から,塗膜割れのみ生じている場合は,面外ガセット溶接継手やT字溶接継手に発生したき裂を塗膜の上から検知することができた.しかし,塗膜割れとともにと塗膜の剥がれが生じている場合は,塗膜上からき裂を検知することが困難であることがわかった.
  • 森 博啓, 廣畑 幹人
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_679-I_690
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    既設鋼構造物の補修に溶接接合を適用する場合,溶接残留応力が疲労強度に及ぼす影響や入熱による熱影響部の脆化が懸念される.これに対し溶接後熱処理の適用を考えると,薄い鋼板で構成されることの多い土木鋼構造物では熱処理に伴う入熱による変形が生じる可能性がある.本研究では,薄い鋼板で構成される部材の溶接後熱処理過程における応力緩和および変形挙動の解明を目的に,鋼板にビードオンプレート溶接を施し局所加熱による溶接後熱処理を行った.また,熱弾塑性解析による実験のシミュレーションを実施した.一連の実験および解析の結果から,鋼板全体の残留応力分布を低減させ,熱処理中の面外変形を抑制する熱処理条件を提案した.
  • 角田 貴也, 鈴木 啓悟
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_691-I_698
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    超音波計測により得られた波形よりコンクリート内在欠陥を把握するための有効手段として,線形化逆散乱解析に基づく欠陥形状再構成手法が挙げられる.本研究では欠陥形状情報を含む独自のマザーウェーブレットを用いた寄生的離散ウェーブレット変換を適用し,欠陥からの散乱波の特徴を有する周波数帯を抽出することで,健全部と欠陥部の差別化を図る.空洞欠陥を模したコンクリート試験体に関して,超音波探傷実験で得られた散乱波に対して,欠陥からの散乱波をもとにした実信号マザーウェーブレットに対応する低周波側寄生フィルタを寄生的離散ウェーブレット変換に用いて特徴周波数帯を抽出し,キルヒホフ逆散乱解析を適用することで空洞部分の鮮明な画像化を可能とした.
  • 澤田 昌孝, 羽場 一基, 堀 宗朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_699-I_710
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    信頼ある地表断層変位の推定手法は断層変位に対する重要構造物の設計・安全評価を行うために重要である.断層変位の推定手法として数値解析による推定が考えられる.本論文では,1) 厳密に導出した高次ジョイント要素,2) エネルギー保存に優れた陽的シンプレクティック時間積分という2つの機能を有する有限要素法プログラムの開発を行った.本有限要素法プログラムは並列計算による大規模解析が可能である.断層を含む地盤の比較的単純な3次元モデルに開発したプログラムを適用し,その検証を行った.また,開発した解析手法は100万自由度程度のモデルに適用可能で,計算時間も十分に短いことを示した.
  • 猪苗代 大路, 堀 宗朗, 秋葉 博
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_711-I_720
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    RC構造物のFEM解析において,弾塑性に起因する剛性マトリクスの対称性および正定値性の喪失がCG法高速ソルバの適用を困難にしてきたが,解決策としてコンクリート構成則の再定式化が提案された.再定式化された構成則をPDS-FEMに実装すると上記の解析は可能だが,計算負荷が高く,実用に適していない.そこで,PDS-FEMの代わりに,再定式化で無視されていた引張の構成則を実装することが効果的である.上記を背景に,本研究ではRC耐震壁せん断交番載荷実験をモデル化し,収束性が担保される要素サイズの下限の存在を実証した.鉄筋を梁要素とするハイブリッドモデルをフルソリッドモデルと比較し,実験の荷重-変位関係の再現性において両者が一定の歪以下で高精度であり,計算負荷の低い前者が後者に代替可能であることを示した.
  • 有馬 直秀, 橘 吉宏, 深田 宰史, 黒木 孝司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_721-I_728
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    北陸地方の既設橋の鋼桁端部は,伸縮装置からの漏水等の影響で局部的に腐食し,鋼材が減肉している場合がある.本研究では,ウエブ振動モードを用いた点検手法を目指すため,実構造物の鋼桁端部の一部をモデル化し,腐食範囲および減肉量を変化させて固有振動解析(以下,振動解析)を行い,それらが変化した場合の振動数と振動モード形の影響を調べた.なお,腐食部を模擬した試験体を製作して振動計測を行い,検出可能な振動数と振動モード形の確認,ウエブ板厚や腐食範囲による影響,解析値の妥当性の確認,および現地計測の際に効率よく点検する計測方法を検討した.さらに,こられの検討結果を踏まえ,鋼桁端部腐食に対してウエブ振動に着目した振動モードを用いた点検手法を提案した.
  • Mahendra Kumar PAL, Takuzo YAMASHITA
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_729-I_738
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    Development of E-Simulator, which aims at reproducing the damage/collapse mechanism of soil, bridge and building structures against strong earthquakes, is a project of E-Defense. Data measured in E-Defense shake table tests are used for validation of E-Simulator. As a research subject in the field of soil structures, we aim to simulate the large-scale experiment of soil and underground structures conducted at E-Defense in February 2012. In this study, we conduct elastic analysis by using detailed solid model of soil and underground structures. Our main objectives of this research are to determine the suitable mesh of analysis model and to identify appropriate technique to impose lateral boundary condition. Then, we clarify how the detailed solid model can simulate the experimental result and the limitation of the elastic analysis and identify the issues to be taken care of in the elasto-plastic analysis.
  • 平尾 賢生, 鈴木 啓悟, 木村 定雄, 北 隆之介, 森山 守
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_739-I_746
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    近年,道路橋のRC床版の劣化が問題となっている.そこで,本研究ではRC床版内の水平ひび割れに焦点を当て,道路橋におけるRC床版を模擬した試験体を対象に超音波探傷を行い,水平ひび割れ位置の検出手法を提案した.本手法はアスファルト表面から低周波の超音波を入射して計測した波形の内,水平ひび割れおよびそれに形状を準ずる面状境界から得る反射波形データに基づき,複素型実信号マザーウェーブレット(CRMW)を作成する.作成したCRMWを用いて連続ウェーブレット変換処理(CWT)を行うことで反射波を信号処理し,水平ひび割れ位置情報を分析する.本手法を適用した結果,波形の極大値は水平ひび割れの位置と一致しており,良好な検出性能を有することが明らかとなった.
  • 山川 一平, 堀 宗朗, 秋葉 博, 市村 強, WIJERATHNE M. L. L.
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_747-I_756
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    構造物地震応答解析では計算コストの低い多質点系モデルが使わることがあるが,現在ソリッド要素モデルと整合する多質点系モデルとその適用範囲を明らかにすることが望まれている.本研究はメタモデリング理論に基づきソリッド要素モデルを縮約することで多質点系モデルを構築する方法を提案した.固有振動数・モードがソリッド要素モデルと完全に一致するような多質点系モデルは構築不可能なことを証明した上で,最も固有振動数・モードの近い多質点系モデルが構築される.線形・非線形動解析の数値実験を行い,構築された多質点系モデルの適用範囲を示した.最後に複雑な形状の構造物に対する多質点系モデルの適用可能性について論じた.
  • 谷口 哲憲, 森 猛, 遠藤 健太
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_757-I_768
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    桁形式の鋼橋に用いられることの多い面外ガセットすみ肉溶接継手の疲労破壊起点は,形状の急変による応力集中に起因して,溶接止端部となるのが通常である.この継手の疲労強度を改善するために溶接止端部を仕上げた場合には,溶接ルート部が破壊起点になることもある.しかし,ルート破壊する場合の評価応力と疲労強度は明らかとはされていない.本研究では,ルート破壊した疲労試験データを収集し,主板公称応力,ホットスポット応力,参照点応力,有効切欠き応力を用いて疲労試験データを整理する.そして,疲労試験データの整理結果とパラメトリックなFE解析結果に基づき,溶接ルートの有効切欠き応力と応力勾配を用いた疲労強度評価法を提示する.
  • 八ツ元 仁, 馬越 一也, 金治 英貞, 中村 真貴, 野中 哲也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_769-I_780
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    本検討では,スーパーコンピュータ「京」を用いることで,長大斜張橋の非線形領域における挙動を求めるという大規模計算を行った.本解析では,大規模計算が正しく計算を実行できているのか,非線形領域の挙動を追うことができる高度化した構造要素モデルを用いれば,そのモデル化を用いた部位で想定のとおり非線形挙動を示すのか,などを確認することを目的に,兵庫県南部地震において大きな被災を受けた長大斜張橋を解析対象として計算を行った.実被害状況と計算結果の比較を通して,大規模計算自体が正確に行われていること,高度化した構造要素モデルを用いた部位で被災状況を概ね計算で再現できていることを確認した.本稿では,本解析で実施した大規模解析の内容,解析結果の検証内容について述べる.
  • 横山 傑, 松本 高志
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_781-I_789
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    近年,インフラ構造物の老朽化が進み,またそうした構造物が増えてきている.特に,コンクリート構造物におけるひび割れは,劣化損傷要因を間接的に表すと共に,耐久性の観点から弱点となる存在であるため,その長さ,幅,範囲などを点検において取得することが重要であるとされている.そこで本研究では,Deep learningを用いて,コンクリート表面の写真から,ひび割れ,エフロレッセンス,チョークの文字の有無と位置を「自動的」に検出する検出器を開発した.さらに,使用機器によらず,インターネット環境にあれば不特定多数が利用できるように,Twitterの自動検出器アカウントにコンクリート表面の写真を添付しリプライすることで,サーバーから検出結果が返信されるWebシステムを構築した.
  • 深田 竜司, 肥後 陽介, 大竹 雄, 南野 佑貴, 加藤 亮輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_791-I_799
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,確率統計論に基づいて,盛土内の密度の自己相関性と分布幅を考慮した,透水性の不均質空間分布モデルを生成する方法を示すとともに,これを非定常の降雨外力を考慮した盛土の浸透解析に適用することで,盛土内部の透水性の不均質性が降雨浸透挙動に与える影響を検討した.実盛土で計測した密度幅と層厚に対応した自己相関距離を設定し,実際に考え得る盛土内の密度の不均質場を生成した.さらに,間隙比-透水係数関係を用いて透水係数の不均質場に変換し,これを用いた降雨浸透解析を行った結果,締固め層毎の密度の不均質性によって,盛土内部に局所的な飽和領域が発生することを明らかにした.
  • 山下 典彦, 甲田 啓太, 宮脇 幸治郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_801-I_812
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    高度経済成長期に全国で大量に整備された道路橋の経年劣化により,耐久性能の低下が社会問題となっている.それらを適切に評価することは維持管理や想定される大規模な地震に対して必要な耐震性能を把握する上で非常に重要である.本研究では,単柱RC橋脚を対象とし道路橋示方書耐震設計編(H24年版)で耐震設計を行い,柱基部でのM-θ関係を用いた回転1自由度系(近似,厳密(P-Δ効果考慮))の絶対応答加速度波形のウェーブレット変換から,残留変位に着目し,変位及びウェーブレット係数の増分の相関性をパルス地震動ごとに分析した.そして,時間軸上でウェーブレット係数と構造物の損傷の相関性を調べるために,時刻歴SI値及び時刻歴FSI値との関係を検討した.
  • 堂ノ本 翔平, 山口 隆司, 北原 武嗣
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_813-I_820
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    橋梁の維持管理として5年に1回の定期点検が義務づけられている.この際,近接目視点検が一般的であるが,点検橋梁数が膨大であることや経験豊富な専門技術者の不足,目視点検が困難な箇所が存在するなど,多くの問題が潜在している.したがって,目視点検の効率化を目的として点検位置をスクリーニングするための損傷検知手法が求められている.そのため,橋梁の力学特性や振動特性を用いた損傷検知手法が多く検討されている.著者らも鋼アーチ系橋梁を対象とし,損傷により振動特性の変化に着目した自己組織化マップを用いることにより,損傷位置や損傷程度を検知する手法を提案している.本研究では,目視点検が困難な部材が軽微な損傷を有している場合にも,提案手法による損傷検知の可能性を示した.
  • 羽場 一基, 園部 秀明, 澤田 昌孝, 堀 宗朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_821-I_830
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    原子力発電所の安全性を確保するためには,一定の信頼を得る断層変位の評価が求められる.本論文では,高性能計算を用いた数値解析による断層変位評価手法を提案する.また,検証用の計算モデルを用いた断層変位評価を実施し,基本的な断層挙動を整理するとともに,評価手法の有効性を確認する.その結果,地表面の断層変位は外力として入力される主断層底部のずれ変位に対して滑らかに変化せず,入力ずれ変位がある限界値を超えると急激に増大することがわかった.また,断層変位評価において,主断層底部の入力ずれ変位を強制変位として作用する場合には,副断層のずれ変位を過小評価する可能性があるため,ずれ変位を等価節点力として作用させる方法が有効であることが分かった.
  • 二出川 真, 石川 幹生, 高橋 悠太, 山本 亨輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_831-I_841
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,経済性,効率性に優れた橋梁点検手法を実現するために,車両応答分析による橋梁スクリーニングを提案する.車両応答分析とは,車両で橋梁上を走行した際の振動から,橋梁の損傷を検知する手法である.既往の研究では,橋梁損傷検知指標としてSSMA(Spatial Singular Mode Angle:空間特異モード角)の有効性が示されている.しかし,SSMAは路面凹凸や車両自身の振動特性など,橋梁損傷以外の要因にも影響を受ける.このことが実用化における課題となっていた.本研究では,これらの課題のうち,特に車両特性がSSMAに与える影響を明らかにする.検討に当たり,三次元空間内にトラス橋と車両数値モデルを作成し,VBI(Vehicle-Bridge Interaction:車両-橋梁相互作用)システムモデルを用いた数値計算プログラムを作成した.車両特性を様々に変化させて検討した結果,特に重量の影響が橋梁損傷により変化することがわかった.これより軽重の異なる車両を用いてSSMAを比較することで,橋梁損傷検知ができる可能性が示唆された.
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