土木学会論文集B
Online ISSN : 1880-6031
ISSN-L : 1880-6031
63 巻, 3 号
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和文論文
  • 広城 吉成, 赤木 啓悟, 細川 土佐男, 神野 健二
    2007 年 63 巻 3 号 p. 178-188
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/20
    ジャーナル フリー
     沿岸部の帯水層では,不確定な水理地質構造のために,淡水と塩水の挙動が複雑であることが知られている.近年,栄養塩を含む海底地下水湧出などへの関心から,水文地質学者や海洋環境研究者らによって淡・塩水地下水の研究が注目されている.
     本論文は,地球化学的および水理地質学的な研究を同時に行う必要性から,その第一歩として地下水の水質変化に影響を与え,酸化還元反応に寄与する鉄に着目し,その化学反応を含んだ物質輸送モデルを開発し,鉛直一次元カラムおよび断面二次元帯水層による室内実験によってその有用性を確かめたものである.特に二次元浸透層による実験では,淡水-塩水の混合域に沿って二価鉄イオンの酸化による沈殿が観測され,本論文で提案した鉄に関係する化学種による輸送解析モデルによって鉄沈殿物の生成状況が再現された.
  • 天口 英雄, 河村 明, 高崎 忠勝
    2007 年 63 巻 3 号 p. 206-223
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,近年頻発する都市型洪水被害低減を目的に,人工的に形成された非常に複雑な都市型洪水流出過程のモデル化として,既往の土地利用情報のモデル化とは異なり,個々の建物,駐車場,道路等の実際の不浸透域を抽出できる地物データGISを活用し,さらに街区,道路,雨水・下水道管路,河道の情報を付加することにより,雨水の物理的な流出経路を忠実に表現する都市型洪水流出モデルの提案を行っている.東京都内中小河川を対象流域とし,地物データGISを用いて具体的に流域のモデル化を行い,実降雨と仮想豪雨を用いて流出解析を行った.その結果,本モデルにより河川水位を精度良く再現し,また排水不良や河川水位上昇に伴う浸水現象などを含めた洪水流出過程を詳細に表現出来ることを確認した.
  • 秋山 壽一郎, 重枝 未玲
    2007 年 63 巻 3 号 p. 224-237
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/20
    ジャーナル フリー
     都市域での外水氾濫では,河道からの越流箇所を特定した上で氾濫流量を評価でき,市街地構造等の氾濫原要素を考慮して氾濫流の挙動を予測できることが,浸水被害対策を講じる上で重要である.このような立場から,高解像度風上差分法,非構造格子等に基づく都市域氾濫解析モデルを用い,まず,(1)河道・氾濫原包括解析により,掘込み築堤河道から斜め溢水・越流する氾濫流量を評価できることを実証した.また,越流公式で氾濫流量を評価する際の問題点を明らかにした.次に,(2)同モデルを1986年の山陰豪雨災害時の三隅地区の破堤氾濫に適用し,河道特性,氾濫形態の違い,市街地構造等を考慮した上で,越流箇所を概ね予測できること,浸水プロセスや家屋被害に及ぼす影響の評価・検討が可能なことを示し,同モデルの有用性を明らかにした.
  • ―河道の水面形の時間変化を考慮した非定常二次元解析法の適用―
    福岡 捷二, 昆 敏之, 岡村 誠司
    2007 年 63 巻 3 号 p. 238-248
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/20
    ジャーナル フリー
     鶴見川多目的遊水地は2003年6月より運用を開始された.遊水地周辺には出水時の洪水調節量を測定するための観測体制を整備している.平成16年10月の台風22号による出水は運用開始後初めての大規模な出水であり,鶴見川多目的遊水地で約115万m3もの洪水調節がなされた.
     この出水における鶴見川多目的遊水地の洪水調節量の確認と観測体制の検証を目的として,河道で観測された水面形の時間変化を解とした二次元不定流解析を行い,遊水地の洪水調節効果算定の新しい方法を確立した.また,今後検討すべきより弾力的な遊水地の計画と整備について本解析手法の活用について述べるとともに,遊水地を効果的,効率的に活用するための観測体制の改善案を示した.
和文報告
  • 篠田 昌弘
    2007 年 63 巻 3 号 p. 195-205
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/20
    ジャーナル フリー
     土構造物の性能を評価する上で,作用となる地震や降雨の統計的性質を把握することは重要である.本研究では土構造物の作用となる降雨量に関して,最新の観測データを用いた確率降雨量の算定のための効率的な一連の統計学的手法を示した.将来における降雨量データの蓄積が現在の確率降雨量に大きな影響を与えないように,確率分布の適合度評価を行い,ある適合度評価規準を満たした統計データのみを用いて確率降雨量の算定を実施した.さらに,適合度評価規準の影響を把握するために,適合度評価規準の値を変化させて確率降雨量マップに与える影響を検討した.最後に,一連の手法を用いて再現期間100年の日降雨量と1時間降雨量に関する確率降雨量マップを提示した.
和文ノート
  • 松梨 史郎, 今村 正裕, 井野場 誠治
    2007 年 63 巻 3 号 p. 189-194
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/20
    ジャーナル フリー
     ダム貯水池堆積物の質的な変化は,湖沼水や下流河川水質に及ぼす影響が懸念されるため,物理的な観点のみではなく,化学的な観点からの検討が必要である.本研究ではダム貯水池で採取した柱状底泥堆積物と湖水を用いて,実験室内で10℃で,直上水の溶存酸素が飽和状態の場合と無酸素状態の場合について,それぞれ450日,388日間に亘る長期間の水質・底質変化の追跡実験を行った.実験開始後,直上水が好気条件下では硝酸還元の過程が進行すること,直上水が無酸素条件下では鉄還元の過程が進行していることが認められた.また,湖底の無酸素状態が2ヶ月間続くと鉄還元が一気に進行することがわかった.
  • 黄 光偉, 磯部 雅彦
    2007 年 63 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/20
    ジャーナル フリー
     渡り鳥の保護は地球全体の生態系保全観点から重要である.そのため,ラムサールという国際条約が制定された.現在,渡り鳥保護ための研究が盛んに行われているが,水鳥類が利用する湿地のcarrying capacityという視点が欠けている.鳥および人間のために湿地の持続的利用に着目する研究が不可欠である.本研究ではその第一歩として,渡り鳥集団が越冬水域の栄養塩挙動に与える影響について,知見を得ることを目的とした.
     ラムサール条約に登録された佐潟における渡り鳥の飛来・越冬実態の調査結果に基づいて,鳥の糞による栄養塩負荷の見積りを行い,1998年12月において,リンの上昇の70%,窒素の上昇の30%は渡り鳥の糞の寄与であった推定を導いた.また鳥の糞が底質に影響を及ぼすことを示唆した.さらに,佐潟のcarrying capacityを検討した.
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