土木学会論文集B
Online ISSN : 1880-6031
ISSN-L : 1880-6031
66 巻, 2 号
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和文論文
  • 二瓶 泰雄, 酒井 雄弘
    2010 年 66 巻 2 号 p. 104-118
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     一般的な洪水流量観測法である浮子観測に必要な更正係数(=水深平均流速/表層流速)の実態を把握するために,超音波ドップラー流速分布計を用いて5つの大河川の洪水流における流速鉛直分布データを数多く収集し,更正係数に関する現行の標準値や既存の理論式,実験式の適用性を調べた.流速鉛直分布や更正係数の観測値は,安芸式よりも対数分布則とより一致することが定量的に示された.我が国の更正係数の標準値は安芸式に基づいて算定されているため,観測値と標準値の整合性は低く,喫水4mの浮子に関する観測データの平均値は標準値を0.04~0.10も下回る.これには,安芸式中の流速ピークの相対水深αの設定に問題があることが示された.以上の結果に基づいて,更正係数の評価法を整理した.
  • 寺本 雅子, 市川 温, 立川 康人, 椎葉 充晴
    2010 年 66 巻 2 号 p. 119-129
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     流域管理的治水対策の費用便益評価を行う枠組みの中で,世帯の所得分布を考慮できるように立地均衡モデルを拡張し,これを用いて寝屋川流域における土地利用規制の費用便益評価を行うとともに,土地利用規制が世帯に与える影響を所得の違いに応じて分析した.その結果,土地利用規制の影響は各所得層で異なることが明らかになった.所得に対する費用の割合は所得が低いほど大きく,低所得層の負担が大きくなることがわかった.また,再現期間で5年(時間45mm程度)相当の弱いレベルの土地利用規制で総便益が最大となり,再現期間で25年以上の強い土地利用規制を実施した場合は,費用が便益を上回る結果となった.以上より,本流域では,比較的高い頻度で浸水する地区の住宅地としての利用は避けた方がよい可能性のあることが明らかとなった.
  • 寺本 雅子, 市川 温, 立川 康人, 椎葉 充晴
    2010 年 66 巻 2 号 p. 130-144
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     二大都市圏である大阪地域と東京地域を対象として,二種類の土地利用規制(床下浸水規制と床上浸水規制)を実施した場合の費用便益評価を行い,土地利用規制の適用性について検討した.その結果,両地域ともに,床下浸水規制より床上浸水規制で総便益が正になりやすく,適用性が高いと思われる結果となった.ただし,大阪地域では,再現期間が5年の降雨を基準とした床下浸水規制を実施したときに総便益が最大となったことから,比較的弱い降雨で床下浸水する領域の土地利用規制が効果的であると考えられる.東京地域では,床下浸水規制の適用性が極めて低い一方で,床上浸水規制にある程度の適用性が認められた.当該地域は,床上浸水による被害が多いと予想されることから,床上浸水を許容しない土地利用規制を実施するのが適していると考えられる.
  • 市川 温, 寺本 雅子, 沼間 雄介, 西澤 諒亮, 立川 康人, 椎葉 充晴
    2010 年 66 巻 2 号 p. 145-156
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,大阪地域と東京地域を対象として,水災害危険度に基づいて建築規制を実施した場合に生じる費用と便益を比較することで,建築規制の利害得失や適用性について検討した.その結果,いずれの地域においても,今回検討した範囲では建築規制の総便益は正となり,建築規制は水防災対策として一定程度の適用性を有していること,大阪地域のほうが東京地域より建築規制の総便益が大きくなり,比較的少ない負担で効果的に水災害被害額を減少させうることが明らかとなった.さらに,同じ地区を規制対象とする建築規制と土地利用規制を比較したところ,建築規制のほうが土地利用規制より総便益が若干大きいか同程度となることがわかった.このことから,建築規制は床下浸水を許容する土地利用規制とほぼ同程度の適用性を有していると考えられる.
  • 小笠原 基, 関根 正人
    2010 年 66 巻 2 号 p. 167-178
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     土砂を輸送してきた流れが透水性の高い平地上に流入すると,そこには扇状地にも似た堆積地形が形成される.本研究では,このような堆積地形の形成過程を数値的に再現することのできる解析モデルを構築することを目的とする.ここでは,地形の縦横断勾配の影響を合理的に考慮した掃流砂量の評価方法と,斜面崩落モデルとを組み込んだほか,表面流に加えて飽和・不飽和浸透流についても同時に解析することにした.この解析モデルの妥当性については,模型実験の結果とこれと同一条件下で行われた数値解析の結果とを比較することにより検討された.これにより,堆積地形の拡大が「流路の移動・消滅・再形成」のプロセスと密接に関わりながら進行することが確認されたほか,本解析によりこの過程が概ね合理的に再現できることも示された.
  • 知花 武佳, 河内 香織, 渡辺 尚基
    2010 年 66 巻 2 号 p. 179-188
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,粗粒有機物の堆積過程と堆積物の質の関係を解析した.まず,河岸突出部の背後での有機物の堆積過程を調査し,物体背後の巻き返しには底層付近を漂う有機物が堆積しやすいという特徴を見出した.次に,表層を流れてきた葉の堆積場と底層付近を流れてきた葉の堆積場の違いに注目し堆積場を分類した.そして,分類された各堆積場より有機物を採集し,樹種,重量,分解度,底生動物相を調べた結果,これらの状態が堆積場間で異なっていた.これらから,葉の沈みやすさによって堆積場が決まり,堆積した葉の種類と堆積場の物理環境の相互作用で底生昆虫相が決まり,底生昆虫相と堆積期間で葉の質が決まるという一連の機構をまとめた.さらに,堆積場の中でも堆積期間の異なる葉が分級しており,空間的に堆積物の質が異なることを指摘した.
  • 伊藤 祐二, 宮本 英揮, 郡山 益実, 筑紫 二郎, 瀬口 昌洋
    2010 年 66 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     淡塩水境界面の位置計測に対する時間領域反射法(TDR)の有効性を評価するために,48cm長プローブを用いて,その先端から境界面までの距離hiの計測の可否と精度を調べた.hiを評価するために,本法では,プローブに与えたマイクロ波ステップパルスのTDR波形が,塩水によるエネルギー吸収によって急変する特徴を利用した.水質変化を想定し,淡水の電気伝導度σfwが異なる条件でhiを評価した結果,淡水中を伝播するパルスのエネルギー損失が大きい場合,すなわちσfwが高く,淡水層が厚い場合にhi計測が困難になった.しかし,高σfw条件でも,淡水層が薄くなりエネルギー損失が抑制されると,hiは計測可能となり,測定誤差は概ね1cm未満となった.また,たとえ境界面が変動しても,静的な水理条件では同等の精度でhiを評価できることを確認した.
  • 種浦 圭輔, 羽田野 袈裟義, 米山 治男, 池上 国広, 中野 公彦, Pallav KOIRALA
    2010 年 66 巻 2 号 p. 196-206
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,ワイヤ,フロート,カウンタウェイトなどを組合わせた可動物体型波力発電装置の共振特性の検討を行っている.共振解析モデルでは時々刻々のフロート変位と水面変位の相対座標を用いている.フロートの運動方程式では,フロート・流体間の相互作用力を,波強制力,付加質量,造波減衰により評価しており,これと回転体の力学と発電機関連の力学を組み合わせて方程式系を構成している.共振特性解析は,波の作用下で稼動状態にあるフロートの上下動の振幅を,波の振幅と比較することにより検討している.さらに発生電力,トルクやワイヤ張力などの物理量の波周期による変化を評価している.また,装置が安全に稼働しかつ発生電力が大きい条件を探るため,フロートが一部没水を維持できる条件下で発生電力を大きくする装置諸元を調べている.
和文ノート
  • 後藤 仁志, 堀 智恵実, 五十里 洋行, Abbas KHAYYER
    2010 年 66 巻 2 号 p. 217-222
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     粒子法は複雑な自由表面の変化の追跡に適していることから,水工学分野でも有用性が示され,海岸工学においては数値波動水槽への応用も進められている.しかし計算負荷が高いため,ハードウェアへの相応の投資が必要となり,これが一般利用の障害となっている.ところで,画像処理目的に開発されてきたGPUを,一般的な学術演算の高速化に利用する取り組みが最近活発となっている.本研究では,MPS法を高速化する手段のひとつとして,CUDAによるGPU併用コードを開発した.高速化を達成するための留意点を整理し,MPS法計算コード固有の特性に適合するように移植を行った.メモリ配置の工夫に加えて,計算のコアとなる近傍粒子探索や圧力のPoisson方程式の収束計算については,GPU計算を効率化するため,特に綿密に検討した.
英文論文
  • Muhammad Abdur ROUF, Eizo NAKAZA, Ryutarou KUDAKA, Liliane KOTLER
    2010 年 66 巻 2 号 p. 157-166
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
      Profiling and mooring measurements were carried out in Genka Bay, Okinawa, Japan to study the characteristics of the internal tidal current and its associated cooling system. The study results show that the depth-averaged current flows nearly parallel to the coastline. There is also an existence of a cross-shore internal tidal current according to the vertical structure of the horizontal current. This current influences on the bottom water temperature transmission from offshore to nearshore bottom water and changes the vertical temperature profile even of nearshore regions and thereby establishes a unique cooling system. Spectra of the baroclinic and bottom water temperature also congruent the internal tide based cooling system in GB.
  • Mazhar ALI, Geert STERK
    2010 年 66 巻 2 号 p. 207-216
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
      Sedimentation aspects have a major role during the design of new reservoir projects because life of the reservoir mainly depends upon sediment handling during reservoir operation. Therefore, proper sediment management strategies should be adopted to enhance the life span of reservoirs. Basha Reservoir is one of the mega water resources projects which are being planned to construct on the Indus river. Under this study, the efficiency of four sediment management strategies were evaluated by using the RESSASS model. The reservoir management strategies considered for sediment simulation of Basha reservoir include the normal operation, raising of MoL, draw-down the MoL (flushing) and controlling the sediment inflows. Under normal operation, the model predicted the life span of Basha reservoir around 55-60 years. But by raising of Mol 2.0m/year implemented after 35 years of operation may add 10-15 years more to the life-span of the reservoir. However, by adopting the flushing operation to draw-down the MoL at El.1010m initiated after 35 years of operation, it may also add about 15-20 years more. Moreover, the results obtained by considering 50% reduction in sediment inflow due to implementation of river basin management projects upstream of Basha within 30 years of reservoir operation, depicts that the life of the reservoir will be more than 100 years. It is therefore concluded that proper sediment mitigation measure can significantly enhance the life-span of planned reservoirs.
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