土木学会論文集C
Online ISSN : 1880-604X
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65 巻, 2 号
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英文ノート
和文論文
  • 里見 知昭, 酒匂 一成, 安川 郁夫, 深川 良一
    2009 年 65 巻 2 号 p. 334-348
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,降雨や日射によって地盤内の水分(間隙水圧,体積含水率)や温度が変化する特性に注目し,地中温度計測による不飽和地盤の水分変動評価手法を提案した.その提案手法において「熱-水分特性曲線」を定義し,提案手法の妥当性を検証するために降雨による室内土槽試験を行い,間隙水圧と地中温度を計測した.その結果,雨水が地盤内に浸透するとともに地中温度は水温に近づくことが確認され,地盤内の水分が急増したときの挙動に対して提案手法による算定結果は試験結果とほぼ一致した.したがって,地中温度計測による本手法は経過時間に対して温度が変化する範囲では有用であることが示された.
  • 小早川 博亮, 坪野 考樹, 久野 春彦
    2009 年 65 巻 2 号 p. 349-362
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
     複数の動きが重なった地盤の挙動を評価するために,種々の計測結果に主成分分析を用いる方法を提案した.2つの変位モード存在することが明らかな乾燥砂の圧縮試験に提案手法を適用し,変位モードを分離して分析可能であることを示した.この方法を,切り取り斜面に対する光波測量の結果に適用し,冬期の斜面の挙動を分析した.分析により,冬期の当該斜面は外気温に連動した地盤の凍結による斜面の山谷方向の変動が卓越していること,その傾向は地山で大きいことが明らかになった.さらに,既設構造物に近接する自然斜面の光波測量及び孔内傾斜計の結果に適用し,種類の異なる計測値への適用性を確認した.
  • 西岡 英俊, 神田 政幸, 平尾 淳一, 東野 光男, 前田 友章, 藤田 欽司, 近藤 政弘
    2009 年 65 巻 2 号 p. 363-382
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
     筆者らは,フーチング掘削時の仮土留め用鋼矢板を本設利用する鋼矢板併用直接基礎(シートパイル基礎)を提案している.シートパイル基礎は,鋼矢板の地盤拘束効果による高い支持力および地震時の水平抵抗特性が期待できることから,直接基礎に比べて広い範囲の地盤条件へ適用が可能である.本論文では,シートパイル基礎の実大規模の水平載荷試験として,実大模型に対して極限まで載荷した事例(事例1) と,実構造物に対して橋脚のひび割れ限界まで載荷した事例(事例2)について示す.事例1では,同一寸法の直接基礎との比較により,これを上回る高い水平抵抗特性を確認した.事例2でも,耐震設計で想定する以上の十分な水平抵抗特性を有することを確認した.
  • 小峯 秀雄, 安原 一哉, 村上 哲
    2009 年 65 巻 2 号 p. 389-400
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物の地層処分施設の建設地点として,廃棄体運搬の利便性等の観点から,沿岸域付近であることが考えられ,処分施設に流入する地下水には海水起源の塩類が含まれることが予想される.そこで本研究では,人工海水環境下での各種ベントナイトの一次元自己シール性挙動を実験的に調査した.その結果から,海水の影響を受けにくい緩衝材の仕様と自己シール条件を明らかにした.また自己シール性実験後のベントナイト供試体の交換性陽イオンの種類と組成を測定した.その結果,ベントナイトをブロック状に締固めることにより,海水成分が供試体中に侵入しにくくなること,ベントナイト中のモンモリロナイト結晶層により海水中の陽イオンが濾過されることが推察された.
  • 秦 吉弥, 一井 康二, 土田 孝, 加納 誠二
    2009 年 65 巻 2 号 p. 401-411
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     盛土の耐震性については,排水溝の整備状況によるが,降雨の浸透等により盛土の地盤物性が変化することを考慮する必要がある.そこで本研究では,盛土地盤の粘着力の低下を飽和度に応じて設定する方法を提案し,既往の人工降雨による盛土の振動台実験を対象として,有限要素法を用いた再現解析ならびにパラメトリックスタディを実施した.その結果,地下水位が生じない程度の降雨による盛土の耐震性低下については,提案手法により表現できることを示した.またパラメトリックスタディにより,盛土表層のみならず盛土内部の粘着力の値が耐震性に大きな影響を及ぼすことを示し,盛土の耐震性評価において特に粘着力の値が重要となる領域を示した.
  • 松崎 達也, 沼田 淳紀, 花村 哲也
    2009 年 65 巻 2 号 p. 412-424
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     廃棄物最終処分場の最も安全性が必要な部位として,遮水層があげられる.この遮水層には,フェールセーフの思想を取り入れたベントナイト混合土が用いられる場合が多くなってきている.遮水層の性能は透水係数で要求されるが,今まで一般的には,透水係数そのものよりも施工時の密度や含水比による間接的な品質管理が実施されてきた.処分場の安全性を直接評価するには,このような間接的な方法よりも,透水係数そのもので直接的に評価すべきである.そこで,サンプラそのもので透水試験が実施可能な簡易現場透水試験装置を開発し,直接的に透水係数を求めることを検討した.
  • MinSu JUNG, 澁谷 啓
    2009 年 65 巻 2 号 p. 431-441
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     神戸空港の埋立てに先立って建設された護岸構造物の基礎地盤のせん断強度に及ぼす各種要因の影響を適切に考慮した安全率を極限つり合い法により事後評価するために,基礎粘土地盤の非排水せん断強度Suに及ぼす異方性,圧密時間及びせん断速度の影響を室内試験により明らかにした.神戸空港の海底地盤から採取された沖積粘土を室内で一次元的に再圧密した正規圧密供試体を用いて,圧密時間及びせん断速度を様々に変化させた一連の非排水三軸圧縮・伸張試験および定体積一面せん断試験を実施した.Suvcσvc:鉛直圧密圧力)の値は,三軸圧縮,一面せん断,三軸伸張の順で大きな値を示し,それぞれの試験で圧密時間及びせん断速度が大きい程大きくなるアイソタック挙動が観察された.
  • 成川 達也, 松木 浩二, 新井 孝志, 大山 卓也, 竹内 竜史, 竹内 真司
    2009 年 65 巻 2 号 p. 442-455
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     地表付近の岩盤傾斜量を基に,筆者らが提案した逆解析法を用いて岐阜県東濃地域の超深地層研究所用地における立坑掘削の際の排水,冠水および再排水期間における地下水流動場を評価し,さらに,モデル解析によりその信頼性について検討した.その結果,局所的な影響を除いた傾斜量から評価した平面寸法1000m×1000m,深さ100m~180mの領域における大局的な地下水流動場は,遮水性があると推定されている二つの断層に挟まれた領域内で主立坑の南側100m~150mを中心に発達し,立坑の北西方向は収縮傾向,南~南東方向には広がる傾向にあることを明らかにした.しかし,同時に,傾斜計の配置方向の制約により,立坑の北西方向と南東方向の隅角部近傍は評価できない空白域であることも指摘した.
  • 松長 剛, 野城 一栄, 朝倉 俊弘
    2009 年 65 巻 2 号 p. 467-479
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     我が国の軟質な地質におけるトンネルでは,地質条件に適応できずにトンネルの断面形状や覆工構造が設計・施工される場合,供用後に覆工の変形,ひび割れ等の変状が生じることがある.一般に,変状トンネルの対策では,トンネル周辺の地山性状を正確に把握することが困難なため,過去の類似事例を参考に専門技術者の経験に基づく判断で対処しているのが現状である.このようなトンネルの維持管理に関する実情を鑑み,筆者らは経時的な変状の進展を適切に予測することを目的として研究を行っている.本論文では,変状トンネルの事例分析や変状要因に関するパラメータ解析を行うことで,トンネル周辺地山の強度低下の特性を分析し,トンネル変状の将来的な進展の予測手法について検討した結果について述べる.
  • 山田 正雄, 中川 光雄, 江角 淳, 近重 朋晃, 鵜飼 恵三
    2009 年 65 巻 2 号 p. 480-491
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     岩盤斜面崩落における岩塊の運動軌跡を評価する有用な手法の1つに,岩塊ブロックの3次元的な形状や寸法を忠実にモデル化できる個別要素法がある.しかし,実験観察などからも,崩落岩塊が斜面上で跳躍する際その接触形態により跳躍高さが大きく異なる状況が見受けられる.よって,跳躍をモデル化する際に,岩塊の接触形態の頻度分布およびそれに応じた反発係数の与え方が重要となる.本論文では,岩塊の軌跡を支配する主要なパラメータである反発係数に基づいて跳躍を適切に再現するために,岩塊と斜面の接触面積の変化を反発係数に反映させた接触機構の合理的な力学モデルを提案する.そして落石現地模型実験や実際の現場斜面においてこれを適用して良好な再現結果を得ることができた.
  • 岡 二三生, 肥後 陽介, 中野 道夫, 向井 寛行, 泉谷 透, 武田 信一, 天野 健次, 長屋 淳一
    2009 年 65 巻 2 号 p. 492-505
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     大阪市北区中之島の地下鉄中之島線の建設において,駅部の工事では厚く堆積した軟弱な沖積粘土地盤の大規模な土留め掘削が行われた.都市部での施工であり,土留め壁と地盤の変形の厳正な管理が必要とされたが,無事掘削は完了した.本論文では,軟弱地盤大規模掘削時の土留め壁変形メカニズムを研究するため,弾粘塑性構成式による水-土連成有限要素法を用いた事後解析を行い,計測結果との比較から土留め壁の変形挙動を詳細に検討した.その結果,土留め壁根入れ部下端を固定点と仮定した土留め壁水平変位計測結果は,切梁軸力計測結果と矛盾しており,根入れ部の変位を計測に考慮する必要がある事を明らかにした.また,根入れ部の変位を考慮すれば,解析結果は土留め壁の変形モードを良く再現している.
  • 篠田 昌弘, 米澤 豊司, 丸山 修, 小島 謙一
    2009 年 65 巻 2 号 p. 506-517
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     従来,工法の選定を行う際には,初期建設費に重点がおかれ,所用安全率を満たしていれば安価な工法が採用されてきた.しかしながら,最近,構造物の性能を経済性と壊れにくさの両面から評価する手法が注目されている.本研究では,補強材により補強していない盛土(無補強盛土)と補強材により補強した盛土(補強盛土)の性能を定量的に評価するために,地震時の被災時損失費を地震時変形量の関数で定義した後,ライフサイクルコストの算定を実施した.ライフサイクルコストの算定に用いる初期建設費は実際の工事資料から算定した.無補強盛土と補強盛土のライフサイクルコストを算定した結果,耐用期間における補強盛土の優位性を明らかにした.
  • 中野 正樹, 山田 英司
    2009 年 65 巻 2 号 p. 518-531
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     窯業副産物であるキラを地盤材料として利用するため,粉砕,石灰混合(石灰混合率3%)により団粒化させ,締固めたキラ改良土の力学挙動を,室内試験および数値解析により解釈し,以下の結論を得た.1) 未改良キラの非排水せん断挙動は,砂のそれに類似し,骨格構造の働きに着目すると,せん断に伴う過圧密解消と構造劣化の速度が同程度であると解釈できた.2) 仮置きなしでの改良土の一軸圧縮強度は,28日養生により500kPaまで上昇し,0日養生の約5倍となった.また28日養生の一次元圧縮量も0日養生の1/2程度になった.3) 仮置きなしでの改良土の力学挙動をSYS Cam-clay modelの構成式応答によって再現した結果,破砕,石灰混合,締固めによって発展則パラメータが変化し,構造劣化速度,過圧密解消速度が遅くなった.また養生により初期構造が高位に,初期過圧密比が大きくなった.
  • 稲積 真哉, 磯部 公一, 木村 亮, 三津田 祐基
    2009 年 65 巻 2 号 p. 532-543
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究は鋼管矢板基礎の力学諸特性の詳細把握を目的として,鋼管矢板における各種継手形式に対して引張,圧縮およびせん断試験を実施し,各種形式の継手部が発揮する引張特性,圧縮特性およびせん断特性を評価する.さらに,鋼管矢板基礎や鋼管矢板で補強された構造物の構造解析に対して,得られた継手部の力学諸特性を考慮できる3次元骨組構造解析手法の提案を行う.
     本研究により,P-P,P-T,L-TおよびH-H継手に関する引張,圧縮およびせん断挙動を実験的に解明した.さらに,継手部の力学諸特性を考慮した3次元骨組構造解析手法の提案では,設計計算例および連結鋼管矢板に対する遠心模型実験結果と比較することで,その適用性・妥当性を確認した.
  • 福林 良典, 木村 亮
    2009 年 65 巻 2 号 p. 550-563
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     開発途上国の多くは農業国である.それらの国々の農業収入向上のためには,農道やため池などの小規模なインフラの整備が欠かせない.農村部のインフラ整備には日常的に利用する住民自身が持続的に維持管理を行うことが重要である.この実現を目指し筆者らはこれまでに「土のう」による農道整備手法を開発したが,開発手法がより多くの現地の人々に定着し彼ら自身で運用することが課題であった.そのために本論文ではどのように技術移転を進めれば有効かを考察し,4カ国で4通りのアプローチを実践した.その結果,ある地域では現地住民の自発的な「土のう」を利用した道路整備や,橋の補修までもが行われた事例が確認された.農道整備を通して,技術開発から技術移転に至る開発途上国農村部の小規模インフラ整備に向けた一つのアプローチ手法を提案した.
  • 里見 知昭, 酒匂 一成, 安川 郁夫, 深川 良一
    2009 年 65 巻 2 号 p. 564-578
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     本論文では,京都市の重要文化財後背斜面を対象に,現地計測結果(10分間雨量, 間隙水圧, 地表面変位)を用いて降雨による斜面の崩壊危険度をリアルタイムに評価することを目的としている.具体的には多変量解析手法の一つである主成分分析を適用した評価方法を提案した.分析結果に基づく有効な雨量指標の組み合わせ,主成分得点を評価指標とした際の避難勧告・解除等のタイミングの基準設定の有効性を検討するため,3ケースの計測結果を用いて斜面の崩壊危険度を評価した.その結果,主成分分析を使うことで多変量データ間の関係を効果的に表現でき,避難勧告・解除等のタイミングがより具体的に設定できることが分かった.さらに,人工降雨装置を用いた室内土槽崩壊試験を行い,本手法の実効性を示した.
  • 濱本 昌一郎, 川本 健, 長森 正尚, 小松 登志子, Per MOLDRUP
    2009 年 65 巻 2 号 p. 579-586
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     原位置通気係数(Ka, insitu)は,比較的低コストかつ迅速測定が可能であり,地盤内でのガスや水の移動特性を把握する上で非常に有効な物質移動パラメータである.一般に,Ka, insituの計算には,地盤内の三次元空気流れを考慮するための形状係数が組み込まれる.本研究では,有限要素法による数値解析により地盤内空気流れをシミュレーションし,得られた形状係数やKa, insituを既往の研究結果と比較するとともに,形状係数に横境界や下端境界条件の変化が及ぼす影響を数値解析および模型実験により検証した.その結果,Ka, insitu測定時の下端境界条件が形状係数やKa, insituに大きな影響を与えることが明らかにされた.特に,地盤表層付近に不透気層が存在する場合は,調査地点での境界条件を考慮した形状係数を求め,Ka, insitu を適切に算出することが必要である.
和文報告
和文ノート
  • 重松 宏明, 西木 佑輔, 西澤 誠, 池村 太伸
    2009 年 65 巻 2 号 p. 425-430
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     石膏析出後の酸性硫酸塩土と,土質試験の一斉試験などでしばしば用いられる深草土の両者に対して,消石灰を異なる混合率で混ぜ合わせ,pH試験と一軸圧縮試験を各養生日数で実施した.これらの実験結果から,両安定処理土のpHおよび強度特性(特に強度発現速度)を比較し,その差異を明らかにした上で,石灰混合による酸性硫酸塩土の安定処理効果について詳細に検討した.また,実験に用いた供試体を走査型電子顕微鏡(SEM)で可視化し,土と石灰・石膏の水和反応によって形成されたエトリンガイトと土の強度特性が密接に関係していることを理解した.
  • 棚橋 秀行, 大東 憲二
    2009 年 65 巻 2 号 p. 544-549
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/19
    ジャーナル フリー
     高粘性で揮発しにくい機械油で汚染された地盤に対する効果的な非掘削浄化技術は,現在のところ確立されていない.本研究では植物油を機械油に混合させることで連続した油相流れを形成し,回収位置まで水平方向に輸送する非掘削浄化技術を着想した.植物油を地中から圧入するケースと,地表面から重力浸透させるケースの2つの室内土槽実験を行ったところ,ともに植物油の浸透により土中の機械油が溶解しつつ押し流され,徐々に回収井戸へと流出する様子が観察できた.しかし,重力浸透のケースにおいて,植物油の下面に回収されにくい機械油の層ができることが課題となった.生分解性の界面活性剤を併用して簡易的な実験を行ったところ,この機械油の層が乳化され効率よく回収できる可能性が見出された.
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