土木学会論文集C
Online ISSN : 1880-604X
ISSN-L : 1880-604X
65 巻, 3 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
和文論文
  • 原 忠, 國生 剛治, 古地 祐規
    2009 年 65 巻 3 号 p. 587-596
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     細粒分含有率の異なる砂質土について,三軸試験機を用いた繰返し非排水せん断試験を行い,飽和度や細粒分含有率が砂の繰返し非排水せん断強度に与える影響を調べた.繰返し三軸試験結果から,繰返し非排水せん断強度は飽和度の低下により大幅に増加することがわかった.一方,不飽和砂質土の繰返し非排水せん断強度は,同程度の相対密度を有する供試体においても細粒分含有率が0%から20%まで増加する間に低下することもわかった.このように砂質土に非塑性な細粒分が混入した場合,飽和度の違いによらず繰返し非排水せん断特性が大幅に変化するので,その影響を適切に評価することが重要であることが明らかになった.
  • 三村 衛, 吉村 貢
    2009 年 65 巻 3 号 p. 597-608
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     高松塚古墳石室内部に描かれた極彩色の国宝壁画がかびや細菌,虫類による生物被害,および地震による墳丘地山の亀裂や漆喰の劣化による物理的被害によって危機的状況に陥ったため,その保全を目的として,石室を解体し,壁画を温湿度管理の行き届いた環境下において修復することになった.石室解体と石材の取り出しに際しては,壁画と石材に損傷を与えないことと同時に,クレーンと石材重量に対して基礎地盤の十分な支持力を確保し,発掘調査による掘削空間内に有害な変状を生じさせない適切な支保工の設置が求められる.本論文では,室内試験と原位置試験結果に基づいて設定した土質定数を用いて,石材吊り上げのためのクレーン基礎の支持力と,それに伴う発掘壁面の有害な変形を抑え込むために設置した支保工の評価を行った結果を報告する.
  • 加賀 宗彦, 米倉 亮三, 島田 俊介
    2009 年 65 巻 3 号 p. 617-627
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     この論文は水ガラス系溶液型注入材による改良固結砂のクリープ特性と簡易試験法による上限降伏値の予測法に関する研究をまとめたものである.注入材はゲル化領域およびシリカ粒径を重合によって大きくした形状の異なる3種類の注入材を使用した.クリープ特性は注入材のゲル構造によって上限降伏値やクリープ破壊時間に相違があるかどうかを検討した.結果として上限降伏値は,注入材の種類に関係なくほぼ同じであった.これに対し,クリープ破壊時間はゲル構造の違いによる影響がみられた.クリープ破壊時間は,クリープ最小ひずみ速度から推定が可能であった.段階載荷試験法は,上限降伏値を短時間に予測することが可能であった.上限降伏値を予測する簡易試験法として適用できることが示唆された.
  • 清水 賀之, 落合 博貴, 岡田 康彦
    2009 年 65 巻 3 号 p. 633-643
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     粒子-流体連成モデルを組み込んだ個別要素法(Discrete Element Methodc)を用いて流動化した土石流のシミュレーションを行い,粒子の挙動に及ぼす過剰間隙水圧の影響を検討した.モデルは近隣粒子で形成される四面体(3次元)あるいは三角形(2次元)を流体格子として,間隙水圧を粒子の運動により変化する間隙の体積変化と隣接する間隙間との流れの拡散により逐次追跡し,関連する粒子の濡れぶちに比例した力として粒子に作用させる.また,流体格子は粒子の運動とともにその形状が逐次更新され,前進先端法を用いて計算中に自動的に生成,消去される.実験結果あるいは乾燥状態や透水係数を変えた場合との比較を行った結果,土石流内部で発生する過剰間隙水圧が粒子の流動化に影響を及ぼすことを明らかにすることができた.
  • 小山 倫史, 赤尾 悟史, 西山 哲, 大西 有三
    2009 年 65 巻 3 号 p. 644-662
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     地震時における岩盤斜面の挙動および斜面崩壊後の岩塊の挙動を評価するためには,不連続体解析手法による地震応答解析が必要である.本研究では,不連続体解析手法の1つである不連続変形法(DDA)を用いて,単一ブロックおよび多層ブロックモデルの地震応答解析を行った.まず,単一ブロックの振動応答の理論解とDDAによる解析解の比較を行い,接触ばね剛性の設定に関する一定の基準を示し,岩盤斜面を模擬した多層ブロックモデルを用いた振動台実験のシミュレーションを行った.解析結果と理論解および実験結果を比較することで,DDAが単純なブロックモデルから多層ブロックモデルの地震時挙動を解析する手法として有効な数値解析手法であることを示した.また,DDAによる地震応答解析を行う際の課題や特性についても明らかにした.
  • 末次 大輔, 宮田 喜壽
    2009 年 65 巻 3 号 p. 663-672
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     石炭灰は混合水量によって,団粒状態,流動状態,分離状態を示す.本研究では混合水量の異なる3種類の石炭灰について三軸圧縮試験を行い,石炭灰の強度特性に及ぼす混合水量の影響を調べた.石炭灰の強度特性はスラリー作製時の状態の影響を受け,最大のせん断強度を発揮する混合水量が存在することが明らかになった.著者らが提案する石炭灰のコンシステンシー指標を用いると,その混合状態を合理的に推定できることを示す.そして,フォールコーン試験結果から最適混合比を簡便に評価できることを示す.
  • 伊豆田 久雄, 生頼 孝博, 谷本 親伯
    2009 年 65 巻 3 号 p. 673-683
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     塩分含有による凍土の曲げ降伏強度の低下が,シールド機発進や到達防護凍土壁をモデル化した円板型凍土にどの程度影響するかを調べるために,円板型塩分含有凍土の載荷実験を行った.塩分含有粘土凍土では,塩分による円板型凍土の降伏圧力の低下は直方体型での曲げ降伏強度と同程度であり,塩分を含まない凍土で適用性が確認されている降伏圧力推定法による値とほぼ一致した.一方,塩分含有砂凍土では,降伏圧力の低下は曲げ降伏強度より緩やかであるとともに,推定法による値よりも大きかった.発生クラックの分布状態からこの原因を円板型塩分含有砂凍土の変形に伴うドーム型化にあると推定し,有限要素解析と塩分含有砂凍土のせん断強度特性からドーム型化した凍土の降伏圧力の説明を試みた.
  • 清住 真, 日下部 治, 大内 正敏
    2009 年 65 巻 3 号 p. 684-702
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     固結した岩塊状の琉球石灰岩層は,比較的浅い位置に出現し,基礎の支持層として十分な強度を有するが,空洞を有することから支持力評価が難しい.本論文では,琉球石灰岩層を支持層とした基礎の設計方法の確立を目的として,空洞を有する模型地盤上の帯基礎の重力場支持力実験を実施した.現実の琉球石灰岩層は,多層性,不均一性を有し多様であるが,模型地盤の強度・変形特性は,琉球石灰岩層の中でも強度と変形係数が下限に近いものを想定した.実験は,模型地盤の破壊過程の観察及び支持力測定を行った.さらに,観察された破壊メカニズムに基づき極限解析を実施し,空洞が基礎中心線上に存在する場合について,空洞の位置や大きさに伴う支持力及び塑性領域が変化する傾向を概ね再現することができた.
  • 鈴木 俊一, 本島 貴之, 苗村 由美, 久保 紳, 蟹江 俊仁
    2009 年 65 巻 3 号 p. 703-715
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     放射性廃棄物処分施設を対象とした核種移行解析の多次元解析による安全性能評価の早期実現を目的として,非定常地下水流動方程式及び移流分散方程式の双方を対象に局所不連続ガラーキン法による数値解析コードを開発した.局所不連続ガラーキン法は混合型有限要素法の一種で,近年,主に流体力学分野等で均質場に対する精力的な研究が行われている解析手法である.本稿では,具体の放射性廃棄物処分施設の安全性能評価を視野に入れ,仮想の処分坑道周辺を対象に局所不連続ガラーキン法による施設周辺の地下水流動解析と均質地盤を対象とした2次元核種移行解析を実施し,各々の解析で得られた数値解を解析解との比較を行った結果,同手法により極めて高い精度の数値解が得られることを確認した.
  • 川端 伸一郎, 亀山 修一, 高見 雅三, 神谷 光彦
    2009 年 65 巻 3 号 p. 716-727
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
     5種類の確率分布モデルを用いて凍結指数の推定を行った.凍結指数は単に一つの確率分布で表されず,また,適合性が良い確率分布モデルとしては,対数正規分布と正規分布であることが示された.凍結指数が単一の確率分布で表せないため,最大値から上位1/3のデータによる推定法の適用を検討した.この推定法で求められた凍結指数は,真値との比較から高い推定精度であることが分かった.また,データ数が凍結指数の推定に与える影響を検討した結果,1990年代以降の凍結指数の変動が極めて大きいことが分かり,凍結指数の推定には,25年分以上のデータ数が必要になることが明らかとなった.
  • 布川 修, 杉山 友康, 森 泰樹, 太田 直之, 岡田 勝也
    2009 年 65 巻 3 号 p. 728-744
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     鉄道沿線における降雨による盛土や切土の崩壊から列車の安全を確保するため,危険な箇所から順次ハード対策が講じられる.この対策を効果的に実施するためには,盛土や切土の崩壊に対する危険度に加えて,崩壊の形状や規模等を予測して崩壊発生時の被害を評価することも必要となる.そこで,過去に降雨により発生した盛土崩壊と切土崩壊事例のデータを統計的に分析することで,崩壊規模等を予測する手法を構築した.本手法は,簡易な調査結果から得られる盛土や切土の条件から崩壊規模等を概略的に予測するものである.鉄道沿線に数多く存在する盛土や切土に対する防災計画時など,崩壊規模等を予測する必要がある場合に,本手法は有用である.
和文報告
  • 岸田 潔, 柳 民峰, 崔 瑛, 木村 亮
    2009 年 65 巻 3 号 p. 609-616
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     パイプルーフ工法で鋼管を掘削挿入する際,鋼管表面の摩擦抵抗と継手部の摩擦抵抗を抑制するための拡大ビットとフリクションカッターによる余掘り掘削が行われる.結果として,鋼管周辺に余掘りによる空洞が生じ,土被りの小さい個所では地表面沈下を誘発する恐れがある.そこで本研究では,余掘り掘削による地表面沈下特性を明確にし,その余掘り掘削による地表面沈下対策を目的として,余掘り掘削を模擬した模型実験装置を開発し,実験を行った.実験では,土被り,余掘りの割合等の主要なパラメータが,地表面沈下に及ぼす影響を検討した.これらの結果を基に,地表面沈下を極力抑えるパイプルーフ工法の施工手順の提案を行った.
  • 石藏 良平, 落合 英俊, 大嶺 聖, 安福 規之, 松田 博, 松井 秀岳
    2009 年 65 巻 3 号 p. 745-755
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     浅層改良を併用した非着底型深層改良地盤は,非着底型の改良形式であり,経済性や環境面において有効な技術として期待されているが,従来の着底型地盤改良技術と比較すれば,大きな圧密沈下が発生するため,沈下量を定量的に評価することが重要となる.本報告では,実務において,著者らがこれまで提案している沈下量推定方法の実用性を高めるため,沈下計算に必要となる圧密沈下対象層厚を,改良率や改良深さなどの改良条件の変化に応じて合理的に決定できる計算図表を新たに提示し,実規模構造物への適用性について検証した.沈下量推定法は,現場施工された実規模盛土による改良地盤の沈下量についても実用的な精度で評価できることを確認した.
  • 岡村 未対, 武林 昌哉, 西田 克司, 藤井 直, 神宮司 元治, 今里 武彦, 安原 英明, 中川 恵美子
    2009 年 65 巻 3 号 p. 756-766
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
     近年,地盤に空気を直接注入するなどして地盤を不飽和化する液状化対策工法が検討されており,既存工法に比べて格段に安価で既設構造物直下にも適用ができる工法として実用化が期待されている.本報告は,空気注入により地盤が不飽和化されることを実証し,不飽和化された領域を特定する技術の適用性を検討することを目的として行われた現場実験について述べるものである.実験ではGL.-6mに設置した注入口から空気を地盤に注入したたところ,空気流量は注入圧力と共に概ね直線的に増加した.比抵抗トモグラフィーとFDRプローブによる測定の結果,注入地点を中心に直径3∼4m程度の領域が不飽和化されたことが確認され,測定された飽和度はその後採取した凍結サンプリング試料の飽和度と良い対応を示した.
和文ノート
  • 末永 清冬, 澁谷 啓, 長谷川 憲孝, 南部 光広, 山口 潤
    2009 年 65 巻 3 号 p. 628-632
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/17
    ジャーナル フリー
     神戸市の中心部から約8kmの沖合に新設した神戸空港島の建設に際して,神戸の内陸部で採取した凝灰岩を主体とする岩砕を埋立材として使用し,埋立工事を行った.埋立に伴う水中部の盛土圧縮の計測は,これまで事例がほとんどないことから,今回,独自の埋立地盤沈下計測システムから得られた結果を使用して盛土の圧縮を計測した.本システムの特徴は,潮位を利用したレベル算出システムとデータを無線伝送することにより,計測の自動化を図った点にある.本システムによる計測により,埋立に伴う水中盛土の体積変化率を明らかにすることができた.昨今の埋立工事では,大水深かつ軟弱地盤といった悪条件のもとで急速施工が行われるようになってきており,このような条件下で本システムの適用性が確認できた.
feedback
Top